■特報:世界の防衛,最新論点
今回の防衛情報は、極超音速ミサイルという新しい時代の脅威についてどのように取り組むかという視点を纏めてみました。

アメリカ海軍のギルディ海軍作戦部長は8月25日に行われたヘリテージ財団シンポジウムにて極超音速ミサイル対処用のレーザー兵器開発を発表しました。指向性エネルギーシステム、具体的には高エネルギーレーザーや高出力マイクロ波を用いたレーザーシステムを示しており、中国やロシアの極超音速兵器へ対抗能力を整備することが狙いとのこと。

極超音速兵器は従来のミサイルよりも高速であり弾道ミサイルと異なり不規則軌道を採るために探知や迎撃の難度は格段に高く、ロシアはウクライナで極超音速ミサイルキンジャールを実戦使用しているほか、中国も2021年に極超音速滑空体の発射試験を実施しています。これに対して、開発国の中国ロシアを含め世界各国の海軍は対処法がありません。

アーレイバーク級ミサイル駆逐艦プレブルにロッキードマーチン社製レーザーシステムヘリオスを搭載、2014年にはペルシャ湾に展開したトレントン級ドック型揚陸艦ポンスでレーザー兵器システムの試験を、2021年にサンアントニオ級輸送揚陸艦ポートランドにて高度なレーザーシステムの試験を実施しており、実戦配備を加速させるという事でしょう。
■MQ-9B無人攻撃機艦載機
これはMQ-9B無人攻撃機艦載機というものの可能性の一つを示すに過ぎない論点ではあるのですが。

MQ-9B無人攻撃機艦載機は艦隊防空戦闘機任務を担いうるか。新しい脅威である対艦極超音速滑空兵器については、かつてのF-14A戦闘機が担ったような防空圏の構築が必要となる可能性があります、これはF-14Aを退役に追いやったイージス艦による広域防空では会敵時刻という点で、迎撃にも用いるスタンダードミサイルの速度に限界があるためです。

MQ-9B無人攻撃機艦載機型はジェネラルアトミクス社が今年5月20日に発表したもので、現在MQ-9は発着に1067mの滑走路を標準としていますが、短距離滑走能力を強化し蒸気カタパルトや電磁カタパルトを用いずとも305m以下の滑走距離にて発進できる能力を付与する構想です。この場合、兵装搭載能力や滞空時間などに影響が及ぶとは考えられるが。

MQ-9B無人攻撃機は1000km以遠で数十時間に及ぶ哨戒飛行が可能で、搭載可能なミサイルには現時点で極超音速滑空兵器を迎撃可能とする装備はありません、しかしかつてのようなF-14戦闘機の役割をF-35やF/A-18Eに充てて、当時のバックファイア爆撃機よりも長距離から変則的な軌道を行う脅威に対応するよりは、無人機は選択肢となるでしょう。
■カリーニングラード
キンジャールは要するにF-15のような高高度まで短時間で到達する戦闘機から短距離弾道弾を発射するというもの。

ロシア国防省はカリーニングラードへのキンジャールミサイルとMiG-31戦闘機配備を発表しました。国防省によれば8月18日、キンジャールミサイル運用能力を持つ3機のMiG-31K戦闘機をチカロフスク基地に配備、カリーニングラードはロシア本土から離れた飛び地であり、NATO加盟国であるリトアニアとポーランドと国境を接しています。

キンジャールミサイルは地対地ミサイルであるイスカンデルミサイルをMiG-31戦闘機が高高度まで上昇した上で投射し、射程とともに落下速度を大幅に向上させ従来のミサイル防衛システムによる迎撃を困難とさせるもので、高高度から発射した場合にはマッハ10の速度を発揮するとされています。3機のMiG-31はチカロフスク基地で24時間待機を行う。

MiG-31戦闘機、ロシア軍の意図は不明ですがイスカンデルミサイルは射程が500km程度であるのに対して高高度から発射するキンジャールミサイルは射程2000km以上に達し、東欧地域に留まらず西欧地域まで射程に収める事となります。しかし、高高度から発射する必要があり、MiG-31はその間は無防備となります。政治的な配備といえるでしょう。
■NGI次期迎撃ミサイル
多種多様化するミサイル脅威に備えるNGI次期迎撃ミサイルについて。

アメリカ軍が開発するNGI次期迎撃ミサイルは八月までにシステム通信技術開発の実証実験を完了したとのこと。これはロッキードマーティン社が開発を進めるアメリカ本土ミサイル防衛システムの一環として開発されているもので、いちれんの通信試験はカリフォルニア州サニービルにありますロッキードマーティン社施設において実施されたとのこと。

NGI次期迎撃ミサイル、今回の実験は通信機能を広範囲のミサイル迎撃戦域において複数のデータリンクからの情報を暗号化して相互共有するとともに必要なデータを瞬時に作成し不具合や状況変更に際してのリセットを迅速化させたという、この開発にはテキサス州オースティンに本社を置くXマイクロウェーブ社が協力企業として参画しているという。

NGI次期迎撃ミサイルの開発は2027年の完成を期して開発を進めていますが、核戦力の運搬手段が従来の弾道ミサイルに加え、極超音速滑空兵器など多様化していると共に、従来のロシアからの核戦力に加え中国の核戦力増強と、何より北朝鮮弾道ミサイルのアメリカ東部地域射程圏内への延伸という状況を前に切迫感と迅速化を念頭に進められています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回の防衛情報は、極超音速ミサイルという新しい時代の脅威についてどのように取り組むかという視点を纏めてみました。

アメリカ海軍のギルディ海軍作戦部長は8月25日に行われたヘリテージ財団シンポジウムにて極超音速ミサイル対処用のレーザー兵器開発を発表しました。指向性エネルギーシステム、具体的には高エネルギーレーザーや高出力マイクロ波を用いたレーザーシステムを示しており、中国やロシアの極超音速兵器へ対抗能力を整備することが狙いとのこと。

極超音速兵器は従来のミサイルよりも高速であり弾道ミサイルと異なり不規則軌道を採るために探知や迎撃の難度は格段に高く、ロシアはウクライナで極超音速ミサイルキンジャールを実戦使用しているほか、中国も2021年に極超音速滑空体の発射試験を実施しています。これに対して、開発国の中国ロシアを含め世界各国の海軍は対処法がありません。

アーレイバーク級ミサイル駆逐艦プレブルにロッキードマーチン社製レーザーシステムヘリオスを搭載、2014年にはペルシャ湾に展開したトレントン級ドック型揚陸艦ポンスでレーザー兵器システムの試験を、2021年にサンアントニオ級輸送揚陸艦ポートランドにて高度なレーザーシステムの試験を実施しており、実戦配備を加速させるという事でしょう。
■MQ-9B無人攻撃機艦載機
これはMQ-9B無人攻撃機艦載機というものの可能性の一つを示すに過ぎない論点ではあるのですが。

MQ-9B無人攻撃機艦載機は艦隊防空戦闘機任務を担いうるか。新しい脅威である対艦極超音速滑空兵器については、かつてのF-14A戦闘機が担ったような防空圏の構築が必要となる可能性があります、これはF-14Aを退役に追いやったイージス艦による広域防空では会敵時刻という点で、迎撃にも用いるスタンダードミサイルの速度に限界があるためです。

MQ-9B無人攻撃機艦載機型はジェネラルアトミクス社が今年5月20日に発表したもので、現在MQ-9は発着に1067mの滑走路を標準としていますが、短距離滑走能力を強化し蒸気カタパルトや電磁カタパルトを用いずとも305m以下の滑走距離にて発進できる能力を付与する構想です。この場合、兵装搭載能力や滞空時間などに影響が及ぶとは考えられるが。

MQ-9B無人攻撃機は1000km以遠で数十時間に及ぶ哨戒飛行が可能で、搭載可能なミサイルには現時点で極超音速滑空兵器を迎撃可能とする装備はありません、しかしかつてのようなF-14戦闘機の役割をF-35やF/A-18Eに充てて、当時のバックファイア爆撃機よりも長距離から変則的な軌道を行う脅威に対応するよりは、無人機は選択肢となるでしょう。
■カリーニングラード
キンジャールは要するにF-15のような高高度まで短時間で到達する戦闘機から短距離弾道弾を発射するというもの。

ロシア国防省はカリーニングラードへのキンジャールミサイルとMiG-31戦闘機配備を発表しました。国防省によれば8月18日、キンジャールミサイル運用能力を持つ3機のMiG-31K戦闘機をチカロフスク基地に配備、カリーニングラードはロシア本土から離れた飛び地であり、NATO加盟国であるリトアニアとポーランドと国境を接しています。

キンジャールミサイルは地対地ミサイルであるイスカンデルミサイルをMiG-31戦闘機が高高度まで上昇した上で投射し、射程とともに落下速度を大幅に向上させ従来のミサイル防衛システムによる迎撃を困難とさせるもので、高高度から発射した場合にはマッハ10の速度を発揮するとされています。3機のMiG-31はチカロフスク基地で24時間待機を行う。

MiG-31戦闘機、ロシア軍の意図は不明ですがイスカンデルミサイルは射程が500km程度であるのに対して高高度から発射するキンジャールミサイルは射程2000km以上に達し、東欧地域に留まらず西欧地域まで射程に収める事となります。しかし、高高度から発射する必要があり、MiG-31はその間は無防備となります。政治的な配備といえるでしょう。
■NGI次期迎撃ミサイル
多種多様化するミサイル脅威に備えるNGI次期迎撃ミサイルについて。

アメリカ軍が開発するNGI次期迎撃ミサイルは八月までにシステム通信技術開発の実証実験を完了したとのこと。これはロッキードマーティン社が開発を進めるアメリカ本土ミサイル防衛システムの一環として開発されているもので、いちれんの通信試験はカリフォルニア州サニービルにありますロッキードマーティン社施設において実施されたとのこと。

NGI次期迎撃ミサイル、今回の実験は通信機能を広範囲のミサイル迎撃戦域において複数のデータリンクからの情報を暗号化して相互共有するとともに必要なデータを瞬時に作成し不具合や状況変更に際してのリセットを迅速化させたという、この開発にはテキサス州オースティンに本社を置くXマイクロウェーブ社が協力企業として参画しているという。

NGI次期迎撃ミサイルの開発は2027年の完成を期して開発を進めていますが、核戦力の運搬手段が従来の弾道ミサイルに加え、極超音速滑空兵器など多様化していると共に、従来のロシアからの核戦力に加え中国の核戦力増強と、何より北朝鮮弾道ミサイルのアメリカ東部地域射程圏内への延伸という状況を前に切迫感と迅速化を念頭に進められています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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