北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】装甲車最前線:BOV次期装甲車とMCWSストライカーにVCRドラゴン,パンドールEVO装甲車

2022-11-01 20:01:04 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 日本も例えばNBC偵察車や16式機動戦闘車をもっと様々な装甲車両の基本型とする工夫といいますか熱意は必要ではないかと考えさせられる、各国の装甲車事情を纏めました。

 スロバキア軍はBOV次期装甲車としてフィンランド製パトリアAMV装甲車を選定しました。これに伴いスロバキア政府はフィンランド国防軍へ導入支援を要請し両国はG2G包括政府間協定を締結しました。パトリアAMV採用は2022年3月に内定していますが、今回G2G包括政府間協定の締結に至り、今後スロバキア軍へ採用に向けて大きく進みます。

 AMV-XP,今回スロバキア軍が導入するのはその最新仕様でありXPとはエクストラプロテクションの略称とされています。パトリアAMVの特筆すべき点は原型は16tでしたが重装甲を想定した余裕ある懸架装置の採用により増加装甲を装着した場合に32tと重装甲重防御を誇る点で、正面部分は30mmAP弾さえ跳ね返すとともに高い汎用性を有しています。

 G2G包括政府間協定にはスロバキアのヤロスラフナド国防相とフィンランドのアンティカイコネン国防相が臨席しています。今回スロバキア軍へは76両が導入される計画です。パトリア社ではスロバキア国内企業との共同生産を提唱しており、スロバキアではコンストラクタディフェンス社を筆頭にEVPU社やCSM社などが参画する事となっています。
■MCWS方式ストライカー
 ストライカーはいつのまにか砲塔を積むようになり軽くて軽快という設計から抜け出したように思えるのですがよく96式装輪装甲車と比較されるもの。

 アメリカ陸軍はダブルVハル方式で30mm機関砲搭載MCWS方式のストライカー装甲車をオシュコシ社より受領開始しました。ストライカーダブルVハル方式とは年々増大する簡易爆発物IED威力に対応するべく車体底部をV字型とした上で耐爆能力を大幅に強化したものです。今後この車輛はアヴァティーン陸軍試験場での評価試験が開始されます。

 オシュコシ社は既存のストライカー装甲車269両を3億5600万ドルでダブルVハル方式に改良することとなります。MCWSシステムは30mm機関砲を無人砲塔化したサムソン社製RWS遠隔操作銃搭搭載型です。一連の改修により増加装甲と砲塔は車体重量と車高を高めていますが、オシュコシ社は懸架装置の強化により車体性能を維持しているとのこと。

 開発当時のストライカーは12.7mmRWSを標準としていましたが、今後はMCWSシステムの搭載により重旅団戦闘団に配備されるM-2ブラッドレー装甲戦闘車の25mm機関砲よりも大口径の機関砲を搭載することとなります。元々はC-130輸送機に搭載可能な装甲車での緊急展開が任務でしたが今後は歩兵旅団戦闘団の軽装甲車部隊の任務となるでしょう。
■VCRドラゴン/ピラーニャ
 ピラーニャⅤは一応自衛隊の次期装甲車候補に挙げられ試験車両調達予算を計上したもののメーカーが納入してこなかったので脱落した車種でした。

 スペイン陸軍が導入を進めるVCRドラゴン/ピラーニャⅤ装輪装甲車の量産が開始されました、これはアストゥリアスにあるGDELSサンタバーバラシステムズ社が生産するもので量産車両は秋にも評価試験を開始するとされています。もともとGDELSサンタバーバラシステムズ社はASCODピサロ装甲戦闘車を生産した工場で750名が勤務している。

 VCRドラゴン/ピラーニャⅤ装輪装甲車はスペイン陸軍が冷戦時代に大量生産したBMR装輪装甲車の後継に位置付けられる車輛ですが、六輪式で7.62mm弾耐弾構造だったBMRと比較すると遥かにVCRドラゴンは重装甲であり、また12.7mm機銃を搭載したBMRと比較し、VCRドラゴンは30mm機関砲を安定化砲塔に搭載、高い戦闘能力を有しています。

 348両の調達が当面予定されていますが、スペイン軍は様々な装甲車両の後継にVCRドラゴンを位置付けており最終的に1000両以上が調達される事でしょう。ピラーニャ装甲車は15t程度で小型という使いやすい装甲車でしたが、ピラーニャⅤは基本重量が33tあり、正面装甲は23mm機関砲弾、全ての角度からの14.5mm機銃弾に耐える頑丈な装甲車です。
■パンドールEVO装甲車
 これはなんというか日本でいえば82式指揮通信車の設計を現代風に直して取得費用を抑えた構図といえるのかもしれない。

 オーストリア国防省によればオーストリア軍はパンドールEVO装甲車の第50号車引き渡しを受けた。これは同国のクラウディアタナー国防相が発表したもので大臣はウィーンのジンメリングにあるジェネラルダイナミクスヨーロピアンランドシステムズシュタイア社の引き渡し式典にも出席しています。パンドールEVOは六輪式の装輪装甲車のひとつ。

 パンドールは冷戦時代にオーストリアのシュタイアーダイムラープフ社により設計された六輪示威の装輪装甲車ですが、冷戦終結後には使いやすい装輪装甲車としてPKO活動派遣を通じ認識が広がります、しかし2003年にジェネラルダイナミクス社がシュタイアーダイムラープフ社を経営統合すると、八輪式で砲塔を装備し高級なパンドール2へ転換した。

 パンドールEVO装甲車は安価なパンドール1へと原点回帰した装甲車で、オーストリア国防省は2016年にこの装甲車34両を 1 億 0500 万ユーロで取得契約を結んでいます。今回納入されたのは2020年10月30日に締結した30両の追加契約です。六輪駆動では小型の車体は使いやすくアメリカ陸軍も5580 万ドルの研究車輛契約を結んでいるところです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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E-2D早期警戒機初号機日本到着,新型レーダーでE-2C早期警戒機大幅に上回る航空機を自衛隊は9機導入予定

2022-11-01 07:01:15 | 先端軍事テクノロジー
■E-2Dがやってきた!
 E-2C早期警戒機の新型プロペラ改修が進む中ですが新しい航空機の話題です。

 航空自衛隊が導入するE-2D早期警戒機の初号機が10月18日、岩国基地へ到着しました。E-2D早期警戒機は航空自衛隊が三沢基地の第601飛行隊と那覇基地の第603飛行隊の二つの飛行隊で運用しているE-2C早期警戒機の増強へ用いられるもので、航空自衛隊は1979年にE-2Cを採用、現在に至るまで長期にわたり運用した実績ある航空機です。

 E-2D早期警戒機初号機は車両運搬船のオーシャングラディエーターがプラスティックコーティングし海上輸送しました。この機体はアメリカ海兵隊航空施設において最終点検を行い、引き渡されることとなります。E-2Cの改良型で形状もよく似ていますがレーダーはAESA方式となっている。自衛隊はE-2D早期警戒機を当面9機導入する計画となっている。

 9機のE-2Dは関連機材とともに31億3500万ドルで調達されることになっており、これにはT-56-A-427Aエンジン28基、予備を含め1APY-9レーダーを10基、AN/AYK-27統合ナビゲーションシステム30基、及びLN-251-GPS航法装置30基などが含まれています。今後自衛隊ではE-2Cの耐用年数限界等から更にE-2D調達を増大させる可能性もあります。

 E-2D早期警戒機の到着、初号機と二号機が到着したのですが、これは装備単体で考えますと非常に大きな防衛力の強化とはなります。一方で素直に喜べないという部分が有りまして、一時的ではあるのですが航空自衛隊はE-2C早期警戒機とE-2D早期警戒機にE-767早期警戒管制機という三機種の空中警戒機、三種類のレーダーを装備することとなります。

 E-767,そして留意しなければならないのは航空自衛隊にとり虎の子であるE-767早期警戒管制機のAPY-2レーダーの先が見え始めており、遠くない将来、恐らくE-7A早期警戒機を導入するかを検討しなければならなくなるのです、その背景として、アメリカ空軍がAPY-2レーダーを搭載するE-3早期警戒管制機の後継にE-7A早期警戒機を選んだため。

 E-3早期警戒管制機は2023年に半数に当る15機を除籍させる検討でアメリカ空軍はE-7Aへの置き換えを急ぐ方針ですが、APY-2のアメリカ軍での運用が終了しますと、能力向上等の開発契約を残るAPY-2運用国で行う必要が生じます、これはE-767の運用経費の増大も意味しますので、E-2Dの日本到着と共に日本は次の事を考えねばならないのです。

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