北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ウクライナ軍南部要衝ヘルソン奪還-ロシア軍撤退とクリミア半島占領地への影響,シリア実戦経験通用せぬ戦場

2022-11-12 20:01:54 | 国際・政治
■日本から見るウクライナ
 ウクライナの防衛は日本にとってもロシアとの防衛安全保障という点で考えさせられる点が多いのですが戦争は政治の延長という点も強く考えさせられる次第です。

 ロシアのショイグ国防相はウクライナの南部ヘルソンからの撤退を命令しました。ヘルソン撤退についてはロシア側の偽装工作という可能性が指摘もありましたが、撤退の兆候というものではなく撤退命令という具体的な命令であるため、ロシア軍は実際に撤収、ウクライナ軍特殊部隊が市内に展開し、大きな転換点となりました。この意味するところは。

 ヘルソンはこのままですとウクライナ軍は両翼包囲、つまり包囲機動を行い圧迫することで市街に退去を強いる兆候がありました。ロシア軍は半年分程度の物資をヘルソンに備蓄しているならば、ヘルソンでの越冬という選択肢を採り、後方で体制を整え春季攻勢で再度攻略、こうした選択肢もとり得たのかもしれませんが、現実として成功した確率は低い。

 ウクライナ軍はドニエプル川に沿って着実に領土奪還を進めており、兵站線を確実なものとしているとともに砲兵火力ではロシア軍よりも射程の面で優位に立っています。またウクライナ軍の後方連絡線を叩くロシア航空宇宙軍の行動が緩慢であるため、ロシア軍に現状勝算はなく、ヘルソン市奪還はウクライナ軍の意志次第、こうした現状があるのですね。

 冬季戦闘はロシア軍、特に徴兵や予備役動員部隊にはヘルソンでの駐留継続ならば厳しいこととなった、それは装備の不足によるものです。発電装置や野戦用冬季築城資材、いや一般的な防寒着さえ不十分という現状、ソ連時代の備蓄などは既に放出済か転売しているという状況なのでしょうが、この状況では戦死者よりも凍死者や餓死者の危険さえある。

 市街地戦闘は、冬季戦闘以上に更に難しいでしょう。大量の兵力をヘルソン市内に潜伏させ市街戦をウクライナ軍へ強要することで近接戦闘により大量の犠牲を強いる、こうした運用もできなくはないのですが、市街地は錯綜地形で電波遮蔽物なども多数存在、部隊は分散を強要されるが相互の支援と連携がなければ友軍相撃となる、特殊な戦場なのです。

 スターリンク衛星と地上基地局により、市街地の錯綜地形でも通信を維持しうるウクライナ軍には逆に市街戦は有利であり、またロシア軍は冬季の暖房燃料も含めた兵站線をウクライナ軍の砲兵部隊により遮断されるならば、市街戦そのものよりも越冬できない可能性すら高いのですね。徴兵や予備役はもちろん市街戦は現役兵にも冬季の市街戦は、厳しい。

 ロシア軍の市街戦訓練がどの程度の水準にあるのかは寡聞にして知る機会はありませんが、シリア派兵でのシリア地域における市街戦には経験があることは確かです。またロシア軍は重度市街戦という、自衛隊やNATO軍が市街地訓練場で行うような整然とした地域での歩兵戦闘ではなく、瓦礫の多い地域での戦闘に関する戦訓を纏めた論文は発表している。

 戦術面では上記の通り在る程度の認識はあるのです。しかしこれもシリア市街戦は相手がSDFシリア民主軍など砲兵火力や装甲部隊をほとんど有さない相手に対するシリア軍行動の支援というものであり、ロシア軍自身が攻める戦闘、しかも相手は強力な砲兵と戦車に無人攻撃機を有する部隊という条件ではありません、シリアとウクライナでは立場が逆だ。

 ヘルソン撤退は、ロシア軍の現状では守れないとともに、指揮系統が寸断された場合に組織戦闘が行いにくい、また占領地であるために現地からの徴発にも限度がある、こうした認識が国防相命令となっているのかもしれません。ただ、単に後退するのか、別の意図とともに後退するのかについては、ウクライナ側には留意の必要があるのかもしれません。

 ダーティーボムを使用する兆候という懸念もある、市街地からロシア軍が引いたことは戦術核兵器の使用という懸念もゼロではない、これは可能性としては低いのでしょうが、留意する必要はあるでしょう。一方で仮にこの種の装備を使用した場合はNATOが通常戦力による介入を示唆、第三次大戦も辞さない覚悟を誇示し、封じている状況となっています。

 しかしロシアには痛手です、この撤退の意味はどういう点でしょうか。3月にロシア軍が占領したヘルソンは南部地域の要衝であり、特にロシア軍が2014年に占領したクリミア半島の北部に位置しています、ここを押さえることでウクライナの港湾都市オデッサへ脅威を及ぼしウクライナを海から切り離すという重要な意味がある地域でした。ここが絶たれた。

 マリウポリ方面、ウクライナ軍は過去、ヘルソン方面での攻勢を誇示しつつロシア軍がヘルソン防衛へハリコフ州東部から兵力を引き抜いた瞬間にハリコフ州での反撃を敢行し一気にハリコフ州全域を奪還した事例があります、故にヘルソン市内へのウクライナ軍部隊展開と平行してマリウポリ方面の奪還に動く可能性もあります、主導権を握ったという。

 撤退とはいうがロシア軍がどの方面まで引けるのかという点が一つの関心事です、ゼレンスキー大統領は繰り返しクリミアを含めた領土奪還を主張し、ソ連時代からロシアが維持しているクリミア半島のセバストポリ軍港への無人艦隊による攻撃さえ行いました、ロシアとしてはクリミアの占領地維持を意識し、ほかの地域から部隊を引き抜く可能性も。

 クリミア半島防衛を意識してヘルソンはじめ部隊をクリミア防衛へ集中した場合には、逆にアゾフスターリ製鉄所攻防戦で記憶に新しいマリウポリ奪還へウクライナ軍が前進し、例えばマリウポリ市内を奪還した場合、これは逆包囲の危険もあるのですが、成功した場合にアゾフ海に至る経路と、そして南部占領地のロシア軍を分断できる可能性が出ます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌-岐阜,織田信長慕う祭事は46万観衆越えて撮影の祝杯愉しむ

2022-11-12 14:44:41 | グルメ
榛名さんの総監部グルメ日誌
 大勢が集まっていたといいますがまさか46万名も来ていたとは。

 国際観艦式が相模湾を威風堂々の艦隊陣形をくむ頃、岐阜県では岐阜駅前に木村拓哉さんを織田信長役に招いて堂々の武者行列が市内を練り歩く信長祭が挙行された。3日の横須賀一般公開で各国艦艇撮影に時間を回しパレードを撮影できなかった私には渡りに船か。

 岐阜のぶなが祭、織田信長が稲葉山という地名を岐阜と命名したことにより岐阜が誕生したことを記念する祭事です。実はこのお祭り、例年第10師団創設記念守山駐屯地祭と重なっていたため、興味はあっても行くことができないというお祭り。一回途中からいったか。

 祇園祭を撮影してきましたわたしとしては、あの宵山が37万ですので、混雑していないところもあるだろう、という軽い気持ちで東海道本線を超えたのですが、なるほどすごい人気だ。それでも探せば望遠レンズを駆使することで、人のいない場所というのはある。

 信長さん、木村拓哉さんの人気の高さとともに信長京都上洛もこうした活況だったろうかと思いつつ撮影を終え、しかし重要なのは帰路、阪急と京阪とJRに分かれる祇園祭と異なり、岐阜は名鉄とJRが隣接しているので混雑あ予想される、そこでまあ一杯やろう、と。

 ビールをカウンターにおく。ここは"わかみや"という名前の居酒屋さん、信長を祀る建勲神社の参道という市内の中心部に在りまして、ほかにお客さんが見えないものですから、人が居なければコロナは大丈夫、と考え暖簾をくぐり、一組だけのお客をみつけつつ、まあ。

 お通しは冬瓜と小海老の煮もの。箸でつつきつつ、美味しい。そして店内のテレビでは信長祭りで一色、なんと46万人も来たという、入間基地航空祭よりも凄い。混雑は凄いというが、ただ岐阜駅を避けて名鉄なら加納、JRは西岐阜からタクシーを使えば混んでいない。

 小海老の紅色は、このお店にはチャージ料が必要という張り紙がありまして、ちょっと考えたのですが、チャージ料と書かずにお通し代と書いてくれれば、席料でなく一品つくと理解できる、お通しはそのお店の名刺、料理の腕前と気風というものがわかるものです。

 焼酎。なんだか、よい気分になってきた、というのは案外と客が居なくて店内は広々としている、店員さんには悪いけれども落ち着くのだ、だから焼酎と馬刺を追加してみました。相変わらずテレビでは、大きな混雑はあっても事故がなかった点を強調していました。

 馬刺にはニンニクが生のままスライスされ山葵に刻み生姜とともに薬味をたっぷりと。生肉由来の鉄分というか酸味が程良い、そしてこの歯ごたえも馬刺の刺したる所以だよなあ、と考える。しかし46万、凄いなあ、丁度韓国でハロウィン最中の群衆雪崩事故を思い出す。

 馬刺なんて久しぶりだなあとおもいつつ先ほどまでお祭りでお馬さんががんばっていたのを思い出す、もう少し考えて注文するべきだったかもしれなけれど美味しいのだから仕方ない。馬刺は今年夏、御殿場で富士学校祭の際に食べようと思ったら、暖簾が仕舞われた。

 名物らしい、つくね、そしてぽんじりととりかわをいただきます。なにしろカウンター席に座りましたので目の前で鉄板とグリルがなにか焼いてくれといわんばかりに熱々の炎がこちらに視線をとばす、ならばちょっと良さそうな焼き物を注文しよう、となるのですよ。

 つくね、名物というだけあって大きいですが、驚いたのはポンじりの方、ここまで柔らかい中に弾力を秘めた捌き方はいい腕している。串ものは大量に頼まず、一本一本熱々を五月雨式に、注文したが予想以上に熱かったので思わず焼酎で舌先を冷やす、が、旨い。

 わかみや。ちびりちびりと焼酎をいただきつつ、それでいてそろそろ岐阜駅のあたりの混雑も解消されたような雰囲気となりましたので、お会計を。端数ちょっとお負けしてくれましたのは、次も来ようという気につながる、そう信長祭りの翌週は、岐阜航空祭なのです。

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【国際観艦式2022】カナダ軍ハリファクス級フリゲイトバンクーバーとウィニペグ,護衛艦あさひ型あさぎり型

2022-11-12 07:00:46 | 世界の艦艇
■フリートウィーク
 東京ではフリートウィークがいよいよ最終週間となりましたが本日は先日の活況でした横須賀基地の様子などを。

 朝一番ということで海上自衛隊の護衛艦2隻の写真を掲載してみましょう。海上自衛隊の護衛艦もラティスマストの力強いが古めかしい設計からモノポールマストを採用し全体的にステルス性を、ここまで書きますとカナダ艦でないかと思われるでしょうが、右端を。

 カナダ海軍ハリファクス級フリゲイトのバンクーバーとウィニペグ、その背景と云いますか右端をズームしてみますと、あさひ型護衛艦、あさぎり型護衛艦、ましゅう型補給艦が並んでいます。桟橋に停泊しているよりも艦はやはり海上の方が迫力を伝えられますね。

 あさひ、艦番号119は汎用護衛艦として最新鋭の護衛艦あさひ型一番艦、二番艦しらぬい以降、むらさめ型を置換えるものだと思っていたのですが、むらさめ型を二桁護衛隊に転籍させる事無く、二桁護衛隊には護衛艦もがみ型の量産へ移行しましたのはご承知の通り。

あまぎり、と云われているのですが、8隻ある護衛艦あさぎり型のいずれかです。艦番号がロービジ塗装となりますと遠距離では分り難く、これは敵対国家や競合国家の艦船などに護衛艦稼働状況を秘匿するという意図があります。こちらは満艦飾も施されていませんね。

ハリファクス級フリゲイトのバンクーバーとウィニペグ、良く見ますとマスト部分など幾つか相違点が分ります。カナダ海軍ではハリファクス級フリゲイト後継艦計画は進められてはいるのですが、インフレの影響を受け建造費は一割近く高騰する現状に悩んでいる。

RWS遠隔操作銃搭、ハリファクス級は何度か見る機会があったのですが、今回特にこのRWS遠隔操作銃搭の追加が印象的でした。日本も一応護衛艦に国産RWSを搭載していますが、せっかく国産したのですからもっとさまざまな艦艇や車両に搭載して欲しいとおもいますね。

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