北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

US-2を増強せよ!【3】無人艦艇を拿捕から守るUS-2哨戒機運用とライバルは中国AG-600飛行艇の同様運用

2022-11-10 20:00:58 | 先端軍事テクノロジー
■哨戒飛行艇PS-2拓く将来
 US-2には哨戒飛行艇として、昔の対潜飛行艇としてではなく対潜任務や哨戒任務に当る無人艦艇を支援する用途というものが考えられるでしょう。

 US-2飛行艇の外洋に着水できる能力は、無人艦艇という広範囲を警戒監視し、更に潜水艦情報などにも持続的に情報収集を行う将来のシステム運用に対して、鹵獲を阻止するという用途に有用と考えます。そして前回示したように、無人艦艇セイルドローネクスプローラーが8月29日イランに公海上において鹵獲されかけるという事例はあったばかりです。

 サイクロン級哨戒艇が駆けつけるのが後一時間遅れていたらばどうなったでしょう。飛行艇、たとえば将来こうした無人艦艇を自衛隊が運用する場合に、この支援などに当てることは用途として考えられます、無人艦艇と支援するガーディアン無人機とともに基本的には無人での任務を展開しますが、拿捕そのたの緊急事態には飛行艇は有用な装備となる。

 US-2飛行艇により拿捕の懸念がある無人艦艇へ回収人員を急速派遣する、またこれは故障の際にも整備員を派遣する手段として飛行艇は活用できるでしょう。なによりUS-2はサイクロン級哨戒艇とは比較にならない速度です。そこまでしなくとも、と思われるかもしれませんが考えなければならないのは中国が他国無人艦艇拿捕に飛行艇を使う可能性はある。

 AG-600飛行艇を日本の、日本が導入しなくともアメリカなどの友好国の無人艦艇を拿捕する用途に用いられる可能性はある、危険行動をしていたとか、危険な漂流物を回収するなどの名目で鹵獲するとの口実など考えればイブンは何とでも成り立つ、無人艦艇などいくら拿捕されても安いものだし漏れる技術はなにもない、と言い切れるものなのでしょうか。

 簡単に拿捕されても自衛隊の威信は傷つかずかえって日本の平和主義を世界に訴える機会だからよいではないか、なんていう反論はありえません。もちろん、自衛隊は今後も無人艦艇は導入しないし、アメリカ海軍も日本近海で運用することはないだろう、こう考えるならばAG-600飛行艇の存在も無視できるのかもしれませんが、そこまで甘い話でもない。

 US-2にはKC-130が搭載しているようなハーヴェストホーク武装キットを搭載することは可能です、こうした装備を追加する事で非武装の救難機と侮られる事も無くなります。軽装備と侮られますと、アメリカのLCS沿海域戦闘艦が2010年代初めに南シナ海で重武装の中国ミサイルフリゲイトに追い回されたような事となりますが、武装が有れば別です。

 これは先日アメリカ海兵隊がヘルファイア空対地ミサイルのKC-130空中給油輸送機からの発射試験を実施しました、ハーベストハーキュリース兵装キットは24時間以内に脱着できる武装システムで、ミサイルの他に30mm機関砲や精密誘導爆弾の搭載なども計画されています。US-2に搭載するならば、警告射撃も、もちろんその先も、可能となるでしょう。

 ハーベストハーキュリース兵装キット、エンジン出力を考えますと、もちろんUS-2の主翼に搭載した場合は多少海水を被る懸念もないにはないのですが、いまのこところ武装を持たないUS-2であるけれども、救難任務以外の状況では武装を搭載できることを示すことは、その多用途性能を高めることとなります。現状は機体自衛装置さえ、装備がないのですが。

 US-2,機体自衛装置と必要に応じた武装の追加、これはたとえば戦闘救難任務というような、特にUS-2はUS-1Aのような救難塗装ではなく海洋迷彩を基本としていますので、こうした多少は戦闘が見込まれるような状況でも運用が可能となります。もちろん哨戒任務はP-1哨戒機が担うことにかわりはないのですが、上記の無人艦艇運用支援などでは有用です。

 任務の特性上、P-1哨戒機がいきなり対艦ミサイルを撃ち込むわけにはまいりません、そしてP-1の特性上、警告用として機関砲を搭載する訳にも参りません。必要ならば反撃できるが、この姿勢を堅持しつつ戦争にいたらない手段をえらぶ、これが抑止力といえるでしょう。この場合はUS-2というよりもPS-2哨戒飛行艇とするべきなのかもしれません。

 US-2の用途を考える。消防航空機は、US-2の多用途性能としてよく指摘されるところです、ただUS-2の機体費用の高さを考えますと、高度な外洋での発着性能を持つ分だけ取得費用が高いという状況、他の安い航空機、例えばアメリカのスカイワゴン農業用航空機に肥料に変えて消防用水を散布させたほうが、数を揃えられる利点はあるのですよね。

 スカイワゴン農業用航空機は日照りなどの際に農地に散水できるように散水性能が盛り込まれていますし、フロートキットを追加することで水上に降りることもできます、ならばこれをUS-2の代わりに、とはならないのが難しさです、スカイワゴンは50cm以上の波浪を想定していません、湖面におりる為の航空機なのですね。ただし、問題にはなりません。

 US-2の利点の一つに波浪への強さがあるのですが、消防用航空機が消防水利を外洋に求めることはあり得ません、1995年阪神大震災では神戸市消防局が神戸港からポンプ車14台を連結してリレー方式で大火災に挑んだことはありましたが、あれでも湾内といいますか港から、なかなか港の中でUS-2が得意とする3mの大波などのようなは発生しません。

 水を撒くだけならば、エアバスA-400M輸送機の消防用キットやKC-390輸送機にも散水タンクを搭載する試験が行われています、搭載能力を考えますとC-2輸送機のほうがよいのかもしれません。ただ、どう行った状況で火災を消すのか、その事と次第によってはUS-2には出番があります。単なる山林火災ならばC-2輸送機を転用した方が早いともいえる。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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Jアラートシステム改修へ政府検討-相次ぐ情報錯そう受け,しかし不規則機動弾道弾へは探知能力強化が必要

2022-11-10 07:00:21 | 国際・政治
■臨時情報-ミサイル防衛
 脅威が核攻撃の懸念である以上は誤報を恐れている場合ではないと考えるのですが。

 政府はJアラートシステムの改良方針を発表しました。これは相次ぐ北朝鮮弾道ミサイルの発射に対して、ミサイルの飛翔方向とは異なる地域への警報が発令した事例や、日本本土上空を飛翔した後の発令、日本本土上空を飛翔していないにもかかわらず不規則飛翔経路を追尾しきれず本土上空の飛翔情報を発令した後に訂正するなどが相次ぐためという。

 Jアラートシステム、早期警戒機を日本海上空に常時滞空させるならば、正確な情報が得られるかもしれません。それは現在のミサイル監視は日本本土のレーダーサイトに頼るものであり、弾道ミサイル飛翔経路から距離があるとともに、自衛隊のレーダーは防空監視用、航空機の領空侵犯を想定したものであり、弾道ミサイル監視専用のものは無い為です。

 Jアラートシステム、必要なのは従来の弾道ミサイルの様な放物線を描いて飛翔するものではなく、近年北朝鮮は極超音速滑空兵器を筆頭に探知されにくいミサイル開発を進めており、従来の監視手段では正確な情報が得られない、つまり相手の技術進歩に合わせた探知能力の近代化というものが求められるのです、当然それには相応の予算が必要とはなる。

 空中警戒監視、例えばE-7A早期警戒機を5機程度増強する事が出来れば、24時間365日連続で警戒監視が可能でしょう、浜松基地に4機のE-767早期警戒管制機が配備されていますが、任務は航空戦闘全般の戦域航空統制であり、ミサイル防衛専従に用いる事は出来ません、E-2C早期警戒機がありますが長時間飛行を想定したものではなく対応は難しい。

 イージスシステム搭載護衛艦、政府はミサイル防衛専従の専用護衛艦建造計画を立てています、この計画がどのように展開するかは現時点で未知数なのですが、現在のDDGは艦種区分が防空駆逐艦であるように、長期間一定海域に遊弋し警戒監視にあたる艦ではありません、この計画はこれから建造設計し建造するため、実用化は2027年頃となるでしょう。

 ミサイル防衛専従の艦艇が一定数揃えば、情報の正確性は増すとは考えられるのですが、兎に角現状は不規則軌道の弾道ミサイル、そして北朝鮮は核弾頭の搭載実用化を進めていますので奇襲の懸念は払しょくできず、しかも日本は政策として核抑止政策を選択肢から排除しています、Jアラートで退避姿勢は大変でしょうが、当面は耐える他ないでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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