北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】ポーランド軍近代化!アパッチ大量調達と韓国製K-9,国産クラブ自走砲調達にM-1A2戦車正式調達

2022-11-08 20:17:53 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 ウクライナの戦況を見ますとやはり戦車と火砲に歩兵の機械化が重要なのだと痛感させられるのですが、次は自分だと自覚しているポーランドの最新の防衛計画を見てみましょう。日本も見習うべき。

 ポーランド陸軍はAHSクラブ自走榴弾砲48門を追加発注しました、クラブ自走榴弾砲は現在ポーランド軍が韓国製K-9自走砲と並行して調達を進めている52口径の自走榴弾砲で、2016年より96両が製造されています、しかしポーランド政府は2022年のロシア軍ウクライナ侵攻を受け18両を無償供与しているほか、更に60両の輸出を調整中とされます。

 AHSクラブ自走榴弾砲は砲塔システムにイギリスのAS-90自走榴弾砲を採用し旧式の39口径砲身はフランスのネクスターシステムズ社が製造する52口径砲身に切替えられており、車体部分は韓国のK-9自走榴弾砲を、またポーランドのWBエレクトロニクス社の開発したトパーズ射撃統制装置を採用、現在生産分を含め2024年までに120両が製造される。

 48両の追加契約とともに、弾薬補給車12両と射撃指揮車両22両及び移動整備車2両が付随して契約されており、この総額は38億1000万ズローチ、米貨換算で7億9709万ドルとなっています。ポーランド軍の砲兵連隊は自走榴弾砲24門を定数としており、これは2個連隊に相当するほか、ウクライナ輸出分の補てんなども含まれた追加契約となります。
■K9自走榴弾砲
 兎に角火砲が必要だという切実な事情が伝わりますが先日のHIMARS大量調達交渉に続いて韓国のK-9自走砲と更に国産火砲を造るという。

 ポーランド陸軍は8月26日、韓国のハンファディフェンス社へK9自走榴弾砲を24 億ドルで追加発注しました。K9自走榴弾砲は52口径155mm榴弾砲を1000hp級エンジンを搭載した装甲車体に搭載したもので、給弾機構こそ自動装填ではなく半自動装填ですが、その分は取得費用を非常に低く抑えており、世界の新造自動榴弾砲の52%がK-9とされる。

 ポーランド北部のモラグにておこなわれた契約式典にはポーランドのマリウスバシュチャク副首相兼国防相やハンファディフェンス社ソンジェイルCEOが出席しています。一方、この契約ではハンファディフェンスはポーランドが独自設計した自走榴弾砲についても製造協力を行う内容が含まれており、ポーランドは大車輪で砲兵部隊近代化を急いでいます。

 K-9自走榴弾砲は52口径155mm榴弾砲を採用しており、現代砲兵としては当面充分な射程を発揮する事が可能、そして搭載エンジンは1000hp級の自走榴弾砲としては強力なエンジンを採用しており、第三世代戦車に対しても随伴可能です。ポーランド軍ではこの自走砲の車体を転用しボルクス装甲戦闘車を開発、陸軍の重要な共通車輛となっているのです。
■アパッチガーディアン
 アパッチ戦闘ヘリコプター大量調達には驚かされる一方で冷戦時代に取得したハインドヘリコプターのミサイル枯渇という深刻な事情があるのですね。

 ポーランド政府はKRUK攻撃ヘリコプター計画として進める機種選定にAH-64Eアパッチガーディアン戦闘ヘリコプターを選定しました、これは旧ソ連製Mi-24ハインド攻撃ヘリコプターの後継機選定という非常に切迫した状況で進められています、こういうのもMi-24用の対戦車ミサイルは既に枯渇しており、機関銃とロケット弾しかない為とのこと。

 AH-64Eアパッチガーディアン戦闘ヘリコプターは96機の取得を計画しています、ポーランドの経済力を考える場合、この7カ月間のポーランド軍近代化計画はウクライナロシア戦争という隣国に迫る脅威を直視しているとはいえ、非常に野心的とも無謀ともいえるものですが、過去全土を占領された厳しい記憶が、国民の理解と忍耐を共有しているかたち。

 KRUK攻撃ヘリコプター計画ではボーイング社からそのまま調達するだけに留まらず、PGZポルスカグルパズブロイェニオワ社がボーイング社と提携する事により可能な限りポーランド国内の雇用を創出することなどが含まれる。Mi-24には12.7mm機銃と57mmロケット弾しか残っておらず、戦車を食い止められる戦闘ヘリコプターに目処がつきました。
■M-1A2エイブラムス
 ポーランドの念願であるアメリカ製エイブラムス戦車の調達です、ロシアウクライナ戦争ではウクライナへ大量のT-72戦車を供給したのはポーランドですから。

 ポーランド政府はアメリカのGDLS社との間でM-1A2エイブラムス戦車最新型250両に関する11億4800万ドルの契約を発表しました。これは8月25日にジェネラルダイナミクスランドシステムズ社が発表したもので、元々は2021年に決定していたものM-1A2SEP-V3戦車が2025年からポーランドへ引き渡しが開始されることとなっています。

 ロシア軍ウクライナ侵攻を受けポーランド軍は旧式化していたT-72戦車の後継取得を加速させています、これには性能的に限界のあるポーランド仕様であるPT-91戦車の後継も含まれていて、CV-90装甲戦闘車に105mm砲を搭載する軽戦車や独自開発するPT-16戦車に中古のレオパルド2戦車増強等が検討されていましたが、M-1系統に決定しています。

 M-1A2SEP-V3戦車の引き渡しに先立ち、アメリカ政府はポーランド軍へのM-1戦車による訓練を開始、先ず8月に28両のM-1戦車を提供しビエドルスコ演習場において基礎訓練が開始されています。一方、ポーランド軍は更に韓国のK-2戦車1000両をライセンス生産する計画も進めており、第一陣として2022年内に180両のK-2戦車が引き渡されます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イラン製弾道弾はウクライナ軍防空システムでは迎撃不能,欧州イージスアショア正当化したロシアの選択肢

2022-11-08 07:00:44 | 防衛・安全保障
■臨時情報ーウクライナ情勢
 NATOとロシアがオブザーバー国という関係から対立に転じたのがイージスアショアであった事を考えれば、なんという皮肉な出来事か。

 イランがロシアへ供給する弾道ミサイルに対してウクライナの防空システムは全く対応できない懸念があるという。まず供給が決定しているNASAMSは弾道ミサイルを全く想定していません、AMRAAM空対空ミサイルの地上発射故に仕方ないのですが、ウクライナに配備されているのは防空システムであり、ミサイル防衛システムは存在しない現状です。

 ホークミサイル、アメリカとスペインがウクライナへ供給する方針であるホークミサイルの弾道弾迎撃能力は一部の短距離弾道弾に対応するのが限度というものです。ホークミサイルでは対応できない、イランがロシアへ供給するとされる弾道ミサイルは射程300kmと700kmのものです。300kmのミサイルはぎりぎりホークの迎撃速度内の可能性はあるが。

 イランが供与する可能性として指摘されているもので問題は700kmのもの。700kmのものは準中距離弾道弾、これはペトリオットミサイルPAC-3やアスター30SAMP/Tミサイルであれば迎撃できる可能性もあります、03式中距離地対空誘導弾システムもです、しかしウクライナではS-300地対空ミサイルが迎撃可能、しかしこれらの弾薬はかなり枯渇する。

 欧州イージスアショア建設の正当化へ。ただ、ロシアのイランからのミサイル取得については新しい懸念を生みます、それはロシアがNATOとの協調路線から対立路線に転じた背景が、イランのミサイルに備えるとして欧州へ建設が決定した2007年のイージスアショア陸上配備型ミサイル防衛システム建設です。それまでロシアはNATOオブザーバーでした。

 イランは欧州へ配慮し、弾道ミサイルの射程延伸についてはイスラエルには届くが欧州には届かないという射程に配慮してきましたが、撃つのはロシアであっても結果的に欧州へ届くことになったのです。イージスアショアはロシアのミサイルを想定したものではないとし、その背景に欧州とロシアの関係が良好であるという根拠があったのですが、今は。

 イランのミサイルは結果として欧州への脅威を及ぼしている。今回の一連の動きにより結果的にイージスアショアの欧州における重要性を示したのは、皮肉というほか有りません。しかし皮肉を抜きにしましても、ロシアのミサイル脅威が欧州には向かないという認識そのものは結果的に間違いであり、イージスアショアの重要性を示す事となっています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする