週報:世界の防衛,最新11論点
今週は陸軍関係について世界各国の11の話題を纏めてみました。日本の防衛に関しては採用していれば安上がりだったものや財務省が進めたものだったが妙に高価な装備などなど注目の情報です。
ギリシャ陸軍は将来装甲戦闘車としてドイツ製KF-41リンクス装甲戦闘車の評価試験を開始します。ドイツのラインメタル社は7月21日にリンクスの試験車両をギリシャのアブロナス港に到着させています。ギリシャ軍は冷戦時代に導入したオーストリア製レオニダス装甲車を東ドイツ軍余剰の中古BMP-1装甲戦闘車で置換えましたが老朽化が深刻です。
KF-41リンクス装甲戦闘車はラインメタル社がプライベートベンチャーにより開発した装軌式装甲戦闘車で重装甲として開発されたプーマ装甲戦闘車をさらに上回る主力戦車なみの重装甲を誇っており、またラインメタル社はリンクスについて、採用国での現地生産を強調し、オーストラリア陸軍とハンガリー陸軍が採用を計画、ギリシャが続くかたちです。
ギリシャ軍は現在ドイツから導入したレオパルド2A4戦車の旧式化にも直面しており、ラインメタル社ではこれらをレオパルド2A7+相当への近代化改修を提示、この際に改修作業をギリシャ国内で行うとした場合に工場ラインの一部をリンクス製造に用いる事で効率的な運営と雇用に繋がるとし、またラインメタル社は繋ぎにマルダー1A3も提示している。
スカイフォール自走迫撃砲
汎用装甲車があるとこうしたものを簡単に完成させられるという点は重要ですね。
韓国陸軍は新型のスカイフォール120mm自走迫撃砲を報道公開しました。報道公開に当った部隊はヴェトナム戦争に参加した事でも知られ首都防衛に当る陸軍の精鋭猛虎師団で、この報道公開は8月10日に行われています。韓国陸軍は現在K-242A1自走迫撃砲を機械化歩兵師団へ配備していますが、これは旧型で107mm口径の迫撃砲となっています。
スカイフォール120mm自走迫撃砲は装軌式装甲車であるK-200A1装甲車を原型とするもので、通常砲弾による射程は8km、RAP弾による最大射程は13kmに達すると共に毎分10発、持続射撃であっても毎分3発の射撃が可能となっています。特筆すべきはデジタル射撃統制装置を採用しており、小隊規模のTOT同時弾着射撃能力を高めている点でしょう。
戦車用無人機検知レーダー
戦車がそれほど多く配備されない時代において戦車をミサイルから防護する手段は重要ですね。
スペインのインドラ社は戦車用無人機及びミサイル検知レーダーの開発を発表しました。これは近年戦車や装甲車両に深刻な脅威となっている携帯対戦車ミサイルへの防御方式として各国で研究されているもので、対戦車ミサイルとともに自爆ドローンとして知られる徘徊式弾薬の検知能力も付与、迎撃システムと併せ戦車などを防護する装備となります。
インドラアクティブプロテクションレーダーと称されるこの新しい装備はAESA電子走査レーダー方式を採用、インドラ社では併せて開発している弾薬は2ユーロ硬貨程度の大きさの高硬度金属体を超音速で標的に命中させ撃破する方式が採用されます。スペイン軍ではドイツのレオパルド2A6主力戦車をライセンス生産、おり強力な機械化部隊があります。
アイアンドーム米軍へ
アイアンドームそのものを採用するのではなくレーダーシステムとミサイルシステムの米軍使用を完成させるという方向性とのこと。位置づけとしては自衛隊の師団高射の扱いに近い。
アメリカ陸軍は八月までにホワイトサンズミサイル射撃場でのイスラエル製IDDS-Aアイアンドーム戦術ミサイル防衛システムの評価試験を完了しました。この試験にはイスラエルよりアイアンドーム2セットが試験調達され、イスラエルのラファエル社とともに、アメリカ陸軍第43防空砲兵連隊第3大隊-3/43防空砲兵大隊が評価試験に当っています。
IDDS-Aアイアンドーム戦術ミサイル防衛システムは弾道ミサイル等に対しての迎撃能力は持ちませんが、射程数kmから数十km以内の近中距離、迫撃砲弾や砲弾、ロケット弾と小型無人機等による飽和攻撃から人口密集地などを防衛する為の防衛システムで、数十発が同時攻撃が行われた場合でもレーダーが脅威目標を選定し迎撃する能力を有しています。
EL/M-2084レーダーと20連装のミサイル発射装置3基及び射撃統制装置から構成されるアイアンドームは、イスラエルがイスラム過激派からの都市防空切り札として運用していますが、開発には2011年以降アメリカ政府が16億ドルを供与しています。なお、現在はミサイルを用いていますが将来的には発射コストの安い指向性レーザーが追加の計画です。
MLRS能力向上
MLRSは自衛隊では三個大隊所要を残して実際に解体されているようですがロケット弾の改良により途轍もない威力を持つ装備に生まれ変わろうとしています。
ドイツのクライスマッファイヴェクマン社はロケット砲開発においてイスラエルのエルビットシステムズ社との間で提携を発表しました。クライスマッファイヴェクマン社はドイツ政府の進めるMLRS多連装ロケットシステムの能力向上に取り組んでおり、ATACMS陸軍戦術ミサイルシステムを大幅に上回る戦術ミサイルシステムの開発も発表しています。
エルビットシステムズ社は現在、PULS自動ロケット砲兵システムを開発しており、これは射程40kmのAccularロケット弾、射程150kmのEXTRAロケット弾、射程300kmのPredatorHawkロケット弾を開発、Accularは122mm口径の精密誘導ロケット弾ですがMLRS用弾薬コンテナに18発を装填する事も可能で、リンクスシステムからも発射可能だ。
リンクスシステムはトラック式ロケットシステムで、エルビットシステムズ社ではリンクスの無人運用型であるPULS自動ロケット砲兵システム開発を進めています。仮にAccularロケット弾をMLRSに搭載した場合、GMLRSのM-30ロケット弾と比較し弾薬を12発から36発へ一気に拡大できる事となり、MLRSの運用寿命を更に延伸できる事となります。
AC-352中型ヘリコプター
日本の民生ヘリコプターは鳴かず飛ばずの状況なのですが。
中国のハルピン航空機社は新型のAC-352中型ヘリコプターの中国型式証明交付を受けたとのこと、これはエアバスヘリコプターズ社との間で設計されていたエアバスH-175の中国版にあたるもの。AC-352中型ヘリコプターについては、人民解放軍への採用ではなく今回の中国型式証明交付は民間ヘリコプターとしての販売を視野にいれたものとのこと。
AC-352中型ヘリコプターは最大離陸重量7.5tで乗員の他に14名から16名の定員、航続距離は850kmとされている。エアバスH-175ヘリコプターは現在イギリス軍次期中型ヘリコプター候補として売り込みが行われている機種であるが、この原型機は2016年12月にハルピンにおいて初飛行した機種である。製造は両社が独自のサプライチェーンを組む。
カエサルMK1装輪自走榴弾砲
新型ではなく他の装備との整合性を考えて敢えて旧型を再生産するとのこと。
フランス陸軍はネクスター社との間でカエサルMK1装輪自走榴弾砲18両の追加生産契約を結んだとのこと。これは7月13日にフランス国防省がネクスター社との正式契約を結んだものといい、2024年中ごろまでにフランス軍へ納入されるという契約です。フランス政府はウクライナへ軍事援助としてカエサル自走榴弾砲を供与しており、補填が必要です。
カエサルMK1、今回注目されるのは初期型のMk1を製造するということで、最新型のMk2ではありません、このMk1は車体部分にルノー社製シェルパトラックが採用、対して近年欧州などに輸出される車両はMk2でドイツ製ウニモグトラックが採用されています。Mk1の方が最高速度は低いものの軽量であり、既存フランス軍装備体系を考慮したのでしょう。
52口径155mm榴弾砲を車載するカエサル自走榴弾砲ですが、砲身始め砲システムの製造には量産に向かない部分があり、一朝一夕に製造できるものではありません、特にフランス軍の現用火砲は100門以下であり、多数の火砲を必要とした冷戦時代とは生産基盤が異なります、18門とはいえ納入に二年以上を要する背景にはこうした事情があるようです。
ブルースピア地対艦ミサイル
ここまで集団的自衛権を進められるというのはロシア軍ウクライナ侵攻がとんでもないふたを開けている状況です。
エストニア国防省は8月、今後導入するブルースピア地対艦ミサイルの統合運用を発表しました。具体的には新しくNATOへ加盟を表明したフィンランド軍と協同し、フィンランド軍は運用するMTO-85M/RBS-15地対艦ミサイルと指揮系統や火力統制等の部分で共同運用し、バルト海最狭部の海上封鎖を両国の統合運用により可能とさせるということ。
ブルースピア地対艦ミサイルはイスラエルとシンガポールの合弁会社プロテウスアドバンストシステムズが開発、イスラエルのIAI社がガブリエルV対艦ミサイルを地対艦ミサイル型へ改修した派生型で、この開発にはシンガポールからSTエンジニアリング社が参加しています。射程は250kmに達し、エストニア軍は2021年にミサイル導入を発表しました。
ジャベリン対戦車ミサイル
ジャベリンは年々改良が進んでいますので自衛隊の01式軽対戦車誘導弾と安易に比較はできないのですが、それにしても高いという印象で発射器33基というのは日本では一個連隊所要だ。
ブラジル国防省はジャベリン対戦車ミサイル222発を7400万ドルにて導入します。これはアメリカ国務省の対外有償軍事供与承認として発表されたもので、今回の取得計画ではジャベリンCLU発射装置33基とミサイル本体222発を導入します。発射装置33基と初度弾薬だけで7400万ドルは高く感じますが、導入支援の教育費用も含んでいるとのこと。
ジャベリン対戦車ミサイルは第六世代型対戦車ミサイルとして開発され、初期には射程は2000mとされていましたが画像シーカーの改良により射程を最大2500mまで延伸させています。またジャベリンCLUも改良により目標座標のGPS情報標定や熱線暗視装置機能を用いての夜間監視装置として転用可能で、ミサイルを全て撃ち尽くした後でも有用です。
ストライカー装甲車中古
エンジンがキャタピラー社製なのですが古いものでもまだ製造から20年程度ですしどの程度性能を維持しているのか、自衛隊の96式装輪装甲車ともう少し比べてみたいとも思いますね。
タイ陸軍はアメリカ製M-1126ストライカー装甲車の増強を発表しました、タイ陸軍は2022年8月に10両を受領しており、これによりタイが導入したストライカー装甲車は130両に達しました。今回受領した10両のストライカーは9億バーツで取得したものといい、すべてコスト低減の為にコングスベルク社製RWS遠隔操作銃搭は搭載されていません。
ストライカー装甲車の導入は2019年に決定し先ず第一段階として37両を導入決定、オプション契約を結び2019年だけで70両を導入、続いて2020年に50両と2021年に10両を追加しています、今回納入されたものは2021年に契約したものでチャチェンサオ州の第11歩兵師団に配備されています。タイ陸軍では更なる増強を希望しているとのことです。
THAAD高高度迎撃システム
自衛隊もイージスアショアで右往左往している合間にTHAADを採用して首都圏と京阪神地域だけでも防衛する基盤を構築していれば20億ドルで済んだという。
アラブ首長国連邦はTHAAD終末高高度迎撃システムの有償供与についてアメリカ国務省からの承認を受けました。今回輸出が承認されたのはTHAADミサイル96発とTHADD-TOS戦術支援システムとTHAAD-LCS発射管制システム2セット、THAAD-COMSEC戦術通信システムとロジスティクス及びプログラムサポートなどです。
THAAD関連の輸出は全体で10億ドル規模とのこと。アラブ首長国連邦は近年、アラビア半島のフーシ派武装勢力からのイラン製弾道ミサイル攻撃脅威を受けており、需要な産油施設や天然ガスプラントを防衛するべくミサイル防衛能力強化を進めています。アラブ首長国連邦はイージスアショア陸上配備イージスシステムと比較しTHAADを採用している。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今週は陸軍関係について世界各国の11の話題を纏めてみました。日本の防衛に関しては採用していれば安上がりだったものや財務省が進めたものだったが妙に高価な装備などなど注目の情報です。
ギリシャ陸軍は将来装甲戦闘車としてドイツ製KF-41リンクス装甲戦闘車の評価試験を開始します。ドイツのラインメタル社は7月21日にリンクスの試験車両をギリシャのアブロナス港に到着させています。ギリシャ軍は冷戦時代に導入したオーストリア製レオニダス装甲車を東ドイツ軍余剰の中古BMP-1装甲戦闘車で置換えましたが老朽化が深刻です。
KF-41リンクス装甲戦闘車はラインメタル社がプライベートベンチャーにより開発した装軌式装甲戦闘車で重装甲として開発されたプーマ装甲戦闘車をさらに上回る主力戦車なみの重装甲を誇っており、またラインメタル社はリンクスについて、採用国での現地生産を強調し、オーストラリア陸軍とハンガリー陸軍が採用を計画、ギリシャが続くかたちです。
ギリシャ軍は現在ドイツから導入したレオパルド2A4戦車の旧式化にも直面しており、ラインメタル社ではこれらをレオパルド2A7+相当への近代化改修を提示、この際に改修作業をギリシャ国内で行うとした場合に工場ラインの一部をリンクス製造に用いる事で効率的な運営と雇用に繋がるとし、またラインメタル社は繋ぎにマルダー1A3も提示している。
スカイフォール自走迫撃砲
汎用装甲車があるとこうしたものを簡単に完成させられるという点は重要ですね。
韓国陸軍は新型のスカイフォール120mm自走迫撃砲を報道公開しました。報道公開に当った部隊はヴェトナム戦争に参加した事でも知られ首都防衛に当る陸軍の精鋭猛虎師団で、この報道公開は8月10日に行われています。韓国陸軍は現在K-242A1自走迫撃砲を機械化歩兵師団へ配備していますが、これは旧型で107mm口径の迫撃砲となっています。
スカイフォール120mm自走迫撃砲は装軌式装甲車であるK-200A1装甲車を原型とするもので、通常砲弾による射程は8km、RAP弾による最大射程は13kmに達すると共に毎分10発、持続射撃であっても毎分3発の射撃が可能となっています。特筆すべきはデジタル射撃統制装置を採用しており、小隊規模のTOT同時弾着射撃能力を高めている点でしょう。
戦車用無人機検知レーダー
戦車がそれほど多く配備されない時代において戦車をミサイルから防護する手段は重要ですね。
スペインのインドラ社は戦車用無人機及びミサイル検知レーダーの開発を発表しました。これは近年戦車や装甲車両に深刻な脅威となっている携帯対戦車ミサイルへの防御方式として各国で研究されているもので、対戦車ミサイルとともに自爆ドローンとして知られる徘徊式弾薬の検知能力も付与、迎撃システムと併せ戦車などを防護する装備となります。
インドラアクティブプロテクションレーダーと称されるこの新しい装備はAESA電子走査レーダー方式を採用、インドラ社では併せて開発している弾薬は2ユーロ硬貨程度の大きさの高硬度金属体を超音速で標的に命中させ撃破する方式が採用されます。スペイン軍ではドイツのレオパルド2A6主力戦車をライセンス生産、おり強力な機械化部隊があります。
アイアンドーム米軍へ
アイアンドームそのものを採用するのではなくレーダーシステムとミサイルシステムの米軍使用を完成させるという方向性とのこと。位置づけとしては自衛隊の師団高射の扱いに近い。
アメリカ陸軍は八月までにホワイトサンズミサイル射撃場でのイスラエル製IDDS-Aアイアンドーム戦術ミサイル防衛システムの評価試験を完了しました。この試験にはイスラエルよりアイアンドーム2セットが試験調達され、イスラエルのラファエル社とともに、アメリカ陸軍第43防空砲兵連隊第3大隊-3/43防空砲兵大隊が評価試験に当っています。
IDDS-Aアイアンドーム戦術ミサイル防衛システムは弾道ミサイル等に対しての迎撃能力は持ちませんが、射程数kmから数十km以内の近中距離、迫撃砲弾や砲弾、ロケット弾と小型無人機等による飽和攻撃から人口密集地などを防衛する為の防衛システムで、数十発が同時攻撃が行われた場合でもレーダーが脅威目標を選定し迎撃する能力を有しています。
EL/M-2084レーダーと20連装のミサイル発射装置3基及び射撃統制装置から構成されるアイアンドームは、イスラエルがイスラム過激派からの都市防空切り札として運用していますが、開発には2011年以降アメリカ政府が16億ドルを供与しています。なお、現在はミサイルを用いていますが将来的には発射コストの安い指向性レーザーが追加の計画です。
MLRS能力向上
MLRSは自衛隊では三個大隊所要を残して実際に解体されているようですがロケット弾の改良により途轍もない威力を持つ装備に生まれ変わろうとしています。
ドイツのクライスマッファイヴェクマン社はロケット砲開発においてイスラエルのエルビットシステムズ社との間で提携を発表しました。クライスマッファイヴェクマン社はドイツ政府の進めるMLRS多連装ロケットシステムの能力向上に取り組んでおり、ATACMS陸軍戦術ミサイルシステムを大幅に上回る戦術ミサイルシステムの開発も発表しています。
エルビットシステムズ社は現在、PULS自動ロケット砲兵システムを開発しており、これは射程40kmのAccularロケット弾、射程150kmのEXTRAロケット弾、射程300kmのPredatorHawkロケット弾を開発、Accularは122mm口径の精密誘導ロケット弾ですがMLRS用弾薬コンテナに18発を装填する事も可能で、リンクスシステムからも発射可能だ。
リンクスシステムはトラック式ロケットシステムで、エルビットシステムズ社ではリンクスの無人運用型であるPULS自動ロケット砲兵システム開発を進めています。仮にAccularロケット弾をMLRSに搭載した場合、GMLRSのM-30ロケット弾と比較し弾薬を12発から36発へ一気に拡大できる事となり、MLRSの運用寿命を更に延伸できる事となります。
AC-352中型ヘリコプター
日本の民生ヘリコプターは鳴かず飛ばずの状況なのですが。
中国のハルピン航空機社は新型のAC-352中型ヘリコプターの中国型式証明交付を受けたとのこと、これはエアバスヘリコプターズ社との間で設計されていたエアバスH-175の中国版にあたるもの。AC-352中型ヘリコプターについては、人民解放軍への採用ではなく今回の中国型式証明交付は民間ヘリコプターとしての販売を視野にいれたものとのこと。
AC-352中型ヘリコプターは最大離陸重量7.5tで乗員の他に14名から16名の定員、航続距離は850kmとされている。エアバスH-175ヘリコプターは現在イギリス軍次期中型ヘリコプター候補として売り込みが行われている機種であるが、この原型機は2016年12月にハルピンにおいて初飛行した機種である。製造は両社が独自のサプライチェーンを組む。
カエサルMK1装輪自走榴弾砲
新型ではなく他の装備との整合性を考えて敢えて旧型を再生産するとのこと。
フランス陸軍はネクスター社との間でカエサルMK1装輪自走榴弾砲18両の追加生産契約を結んだとのこと。これは7月13日にフランス国防省がネクスター社との正式契約を結んだものといい、2024年中ごろまでにフランス軍へ納入されるという契約です。フランス政府はウクライナへ軍事援助としてカエサル自走榴弾砲を供与しており、補填が必要です。
カエサルMK1、今回注目されるのは初期型のMk1を製造するということで、最新型のMk2ではありません、このMk1は車体部分にルノー社製シェルパトラックが採用、対して近年欧州などに輸出される車両はMk2でドイツ製ウニモグトラックが採用されています。Mk1の方が最高速度は低いものの軽量であり、既存フランス軍装備体系を考慮したのでしょう。
52口径155mm榴弾砲を車載するカエサル自走榴弾砲ですが、砲身始め砲システムの製造には量産に向かない部分があり、一朝一夕に製造できるものではありません、特にフランス軍の現用火砲は100門以下であり、多数の火砲を必要とした冷戦時代とは生産基盤が異なります、18門とはいえ納入に二年以上を要する背景にはこうした事情があるようです。
ブルースピア地対艦ミサイル
ここまで集団的自衛権を進められるというのはロシア軍ウクライナ侵攻がとんでもないふたを開けている状況です。
エストニア国防省は8月、今後導入するブルースピア地対艦ミサイルの統合運用を発表しました。具体的には新しくNATOへ加盟を表明したフィンランド軍と協同し、フィンランド軍は運用するMTO-85M/RBS-15地対艦ミサイルと指揮系統や火力統制等の部分で共同運用し、バルト海最狭部の海上封鎖を両国の統合運用により可能とさせるということ。
ブルースピア地対艦ミサイルはイスラエルとシンガポールの合弁会社プロテウスアドバンストシステムズが開発、イスラエルのIAI社がガブリエルV対艦ミサイルを地対艦ミサイル型へ改修した派生型で、この開発にはシンガポールからSTエンジニアリング社が参加しています。射程は250kmに達し、エストニア軍は2021年にミサイル導入を発表しました。
ジャベリン対戦車ミサイル
ジャベリンは年々改良が進んでいますので自衛隊の01式軽対戦車誘導弾と安易に比較はできないのですが、それにしても高いという印象で発射器33基というのは日本では一個連隊所要だ。
ブラジル国防省はジャベリン対戦車ミサイル222発を7400万ドルにて導入します。これはアメリカ国務省の対外有償軍事供与承認として発表されたもので、今回の取得計画ではジャベリンCLU発射装置33基とミサイル本体222発を導入します。発射装置33基と初度弾薬だけで7400万ドルは高く感じますが、導入支援の教育費用も含んでいるとのこと。
ジャベリン対戦車ミサイルは第六世代型対戦車ミサイルとして開発され、初期には射程は2000mとされていましたが画像シーカーの改良により射程を最大2500mまで延伸させています。またジャベリンCLUも改良により目標座標のGPS情報標定や熱線暗視装置機能を用いての夜間監視装置として転用可能で、ミサイルを全て撃ち尽くした後でも有用です。
ストライカー装甲車中古
エンジンがキャタピラー社製なのですが古いものでもまだ製造から20年程度ですしどの程度性能を維持しているのか、自衛隊の96式装輪装甲車ともう少し比べてみたいとも思いますね。
タイ陸軍はアメリカ製M-1126ストライカー装甲車の増強を発表しました、タイ陸軍は2022年8月に10両を受領しており、これによりタイが導入したストライカー装甲車は130両に達しました。今回受領した10両のストライカーは9億バーツで取得したものといい、すべてコスト低減の為にコングスベルク社製RWS遠隔操作銃搭は搭載されていません。
ストライカー装甲車の導入は2019年に決定し先ず第一段階として37両を導入決定、オプション契約を結び2019年だけで70両を導入、続いて2020年に50両と2021年に10両を追加しています、今回納入されたものは2021年に契約したものでチャチェンサオ州の第11歩兵師団に配備されています。タイ陸軍では更なる増強を希望しているとのことです。
THAAD高高度迎撃システム
自衛隊もイージスアショアで右往左往している合間にTHAADを採用して首都圏と京阪神地域だけでも防衛する基盤を構築していれば20億ドルで済んだという。
アラブ首長国連邦はTHAAD終末高高度迎撃システムの有償供与についてアメリカ国務省からの承認を受けました。今回輸出が承認されたのはTHAADミサイル96発とTHADD-TOS戦術支援システムとTHAAD-LCS発射管制システム2セット、THAAD-COMSEC戦術通信システムとロジスティクス及びプログラムサポートなどです。
THAAD関連の輸出は全体で10億ドル規模とのこと。アラブ首長国連邦は近年、アラビア半島のフーシ派武装勢力からのイラン製弾道ミサイル攻撃脅威を受けており、需要な産油施設や天然ガスプラントを防衛するべくミサイル防衛能力強化を進めています。アラブ首長国連邦はイージスアショア陸上配備イージスシステムと比較しTHAADを採用している。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)