週報:世界の防衛,最新11論点
今週は空軍関連の11の論点を並べてみましたがまだ飛ばすのかと驚く話題や手堅い話題など世界は広い。
アメリカのL3ハリステクノロジーズ社はF-5軽戦闘機用GH-4001電子航法装置を発表しました。F-5戦闘機はアメリカが中小国へ供与するべく1959年に開発した戦闘機で、1972年には改良型のF-5Eタイガーが開発、更に空軍では複座型をT-38コンバットタロン練習機として採用しています。安価ではありますが、全般的に老朽化と旧式化はいなめません。
GH-4001電子航法装置は第四世代戦闘機並の戦術航法装置であり、誤差20mで精密な低空侵攻等が可能となります。もっとも、F-5戦闘機にはAIM-9Xを除く前世代型のサイドワインダーミサイルを運用可能ですが、中距離空対空ミサイル運用能力などが無く、精密航法装置の改良による空対空戦闘能力向上はありませんが、近接航空支援能力は強化されます。
F-5タイガー戦闘機は冷戦時代に中小国向けに開発されたものの、アメリカ空軍でも近接航空支援や練習型のT-38が大量配備されています、しかし、近年の問題はアメリカが生産する最も安価な戦闘機でもF-16Vとなっており、これはかつてのF-16Cの三倍以上の価格帯となり、この為にアメリカ製戦闘機を採用するには相応の経済力が必要となっています。
スイスF-35戦闘機36機導入
F-35戦闘機のスイス軍導入は決定していましたが調達費用がいよいよ議会で議論されます。
スイス政府はF-35戦闘機36機の導入に関する55億ドル予算案を議会に提出しました。スイス政府は2021年にF-35戦闘機導入を決定しており、世界では15番目のF-35採用国となっています、F-35の採用は当初有力と見られたF/A-18E戦闘攻撃機とユーロファイターEF-2000戦闘機やラファール戦闘機といった有力候補機種を抑えて採用されています。
ロッキードマーティン社とスイス政府は導入契約を締結していますが、購入予算については議会を通過する必要があり、今年中ではなく2023年に予定されている。機種は既に決定されていますが、議会では予算を通じての導入機数が議論され、スイス政府は議会へF-35が選定された背景には導入費用からライフサイクルコストまで最も安価と説明しています。
F-35の取得費用は2021年の段階では36機は54億ドルとされていました。もっとも安価と説明された背景には30年間の運用を見積もった場合、F-35戦闘機は地上シミュレータによる訓練比率が他の第4.5世代戦闘機に対して高く、運用費用が抑えられる事から総費用は155億スイスフラン、対して次点の機体は175億フランでであったためとされています。
A-10攻撃機主翼換装
対地攻撃専用で低空を飛行している限り機関砲では落とされにくいという攻撃機は更に延命する。
アメリカ空軍はA-10攻撃機主翼換装をボーイング社とKAI韓国航空宇宙産業により実施しています。A-10攻撃機は57mm砲にさえ耐える強力な装甲と戦車の上部装甲を破壊する30mm機関砲、そして多数の爆弾搭載能力を持つ世界に残る数少ない対地攻撃専用機です、しかし、代替機は無く当初の構想以上に長期間の運用を継続し老朽化が進んでいます。
A-10攻撃機は頑丈さから陸軍は空軍に期待する最良の近接航空支援機となっていて、その運用期間を延命するべく50機の主翼換装が決定、新しい主翼はボーイング社とKAI韓国航空宇宙産業が製造しユタ州ヒル空軍基地に納入、第571航空機整備群により機体への装着が行われているとのこと。これによりA-10攻撃機は2030年代まで運用可能となります。
ハンガリーKC-390輸送機
開発国のブラジル空軍が調達を大幅削減した事で岐路に立たされているKC-390の話題です。
ハンガリー国防省はエンブラエル社との間でKC-390空中給油輸送機に関する包括支援協定へ署名しました。ハンガリー空軍はKC-390輸送機2機を導入予定で、初号機は2024年に納入予定となっています。この包括協定に先立つ2021年8月、エンブラエル社はハンガリーの首都ブダペストに現地事務所を設立しており、サポート体制を構築してきました。
現地整備ではエアロプルックス社が対応、KC-390はブラジルのエンブラエル社が開発した双発ジェット輸送機でC-130輸送機並の貨物をジェット旅客機並の速度で輸送可能であり、更に空中給油機としての装備を標準装備しています。ハンガリー空軍が運用するJAS-39戦闘機はブラジル空軍にもF-39として採用されており、空中給油ノウハウを共有可能です。
エアフォースワンVC-25B
現在のエアフォースワンをもう少し長く見られるのかもしれない。
アメリカ空軍が導入する次期大統領専用機エアフォースワンVC-25Bプログラムはその運用開始が三年間遅れる可能性があるとのこと。これは5月19日に海軍小委員会においてアンドリューハンター空軍補給技術担当次官補が表明したもので、当初の計画では、VC-25Bは2024年後半に完成される計画でしたが、ここで大幅な遅れが示唆されたかたち。
エアフォースワンVC-25Bの大幅な遅延は機内担当のボーイング社下請けの協力会社が、予定された重要な変更を期間内に完了させられず、他の事業者に担当させる変更が在った為です。ただ、4月にウォールストリートジャーナルは17カ月の遅延可能性を報じていますが、今回の海軍小委員会での発言は、その遅延がさらに長引く可能性を示した構図です。
スペインユーロファイター増強
F-35Bを調達して強襲揚陸艦ファンカルロス一世に搭載するかと思いましたが既存のEF-2000を増強するという手堅さ。
スペイン空軍は老朽化したF/A-18戦闘攻撃機後継にユーロファイターEF-2000戦闘機20機を導入決定しました。これは6月22日に開催されたベルリン航空ショーにおいて明らかにされたもので、エアバスディフェンスアンドスペース社との間で21億ドルの契約になるとのこと。スペイン空軍にはF/A-18A/Bという初期型のホーネットが70機残っている。
F/A-18A/Bの内、今回置き換えられるのは大西洋上のカナリア諸島に配備されている機体で、スペイン空軍は既にユーロファイター戦闘機を70機運用中、既存の機体を増強する事で旧式機を代替する方針です。またユーロファイいたーはマドリードの南に在るエアバスヘタフェ工場にて最終組立が行われており、スペイン雇用にも寄与する選択肢といえます。
イラクの韓国製T-50初飛行
日本もT-4練習機を訓練支援機や飛行点検機や捜索救難機など幾つかの用途で増強し生産継続していればと思う。
イラク国防省は韓国製T-50超音速練習機の初飛行を発表しました。イラク空軍が導入する機体はKAI韓国航空宇宙産業が開発したTA-50のイラク仕様となるT-50IQで、このほど納入された機体が6月22日、イラクのムハンマドアラ空軍基地にて初飛行に成功したとのこと。TA-50は純粋な練習機に留まらず、超音速攻撃機としての機能を有しています。
イラク空軍は2016年に24機の導入を発表、T-50IQは20mm機関砲を装備する他AIM-9空対空ミサイル運用能力、対地攻撃能力などを有しています。T-50の派生型であるF/A-50はF-16戦闘機の高性能化に伴う高価格化などで中小国には戦闘機が導入しにくくなる中、空対空戦闘能力や対地攻撃能力を一通り備えた機体として各国の注目を集めています。
アルゼンチン空軍戦闘機問題
国際関係を良好としないと全ての面で締め上げられる国が有るということ。
アルゼンチン空軍はパキスタンのJF-17戦闘機部隊へ視察団を派遣しました。これは6月14日から二日間の日程でアルゼンチン空軍のフアンマルティンパレオ中将がパキスタンを訪問した際の視察で、パキスタン空軍のザヒールアフメドバベルシドウ大将との会談も含まれています。アルゼンチンの喫緊の課題は戦闘機の更新、JF-17は最有力候補です。
JF-17戦闘機導入への最大の課題は、フォークランド紛争後のイギリスによるアルゼンチン経済制裁が継続しており、特に世界シェアの大きなイギリスのマーチンベイカー社製射出座席をアルゼンチンへ供与禁止としたことは、ロシア製戦闘機を除く大半の戦闘機に輸出規制が加わる事を意味します。JF-17も採用していますが、抜け道を模索しているようです。
A-400M輸送機価格高騰
A-400M輸送機でさえもロシア製のチタンなどをつかっていたという。
インドネシア空軍とエアバスミリタリーはA-400M輸送機の導入価格へ再交渉を開始しました、これはインドネシア空軍が導入する2機のA-400M輸送機が当初契約された6億8500万ドルの費用では製造できない可能性が高まっている為です。具体的にはエアバスは原材料としてチタンの50%をロシアから輸入しており、この供給が不安定化しているため。
アメリカの業界筋として、エアバスへのチタンの供給は停止していませんが、仮にロシアからの供給が停止した場合にはボーイング社がエアバスへチタン部品一部を供給する可能性を示唆しているとのことです。しかし、これにより部品が確保出来たとしても製造価格高騰は必至である為、エアバスはインドネシアへ価格の再検討を要請しているかたちです。
防衛装備品は調達が長期間に及ぶため、その価格交渉は慎重でなければなりません、例えばノースロップグラマン社はF-14戦闘機の長期製造契約でインフレ率を見通せず大きな損害を被り航空機部門を手放す事となっています。ただ、今回のウクライナ戦争に伴う資源価格の高騰を数年前から予測するのは、少し現実的ではなかったともいえるでしょう。
マレーシアテジャス戦闘機
テジャス戦闘機が輸出できる可能性がでてきましたが開発の遅延を考えると驚くべき飛躍といえますね。
マレーシア空軍は次期戦闘機の候補にインド製テジャス戦闘機を追加しました。マレーシア空軍は次期戦闘機の後継機候補として、ロシアのMiG-35戦闘機かYak-130軽戦闘機、韓国のFA-50軽戦闘機、中国のJF-17戦闘機を候補としています。マレーシア軍は東西のバランスを意識し、F/A-18戦闘機とMiG-29戦闘機を同時購入する等調達が独特です。
マレーシア空軍は老朽化したMiG-29戦闘機の後継機を模索しています。この中でも当初はMiG-29の後継という事で発展型に当るMiG-35が有力ではありました、しかしMiG-35とYak-130はロシアのウクライナ侵攻後、予備部品調達の難しさから候補機種から外されている。テジャス戦闘機は、マレーシア空軍が要請する幾つかの有力点から採用されています。
テジャス戦闘機、インド製ですが同時にインドはSu-30戦闘機を多数運用しており、それはマレーシア空軍が運用するロシア製Su-30戦闘機の運用維持と抱き合わせ契約が可能であったということで、候補航空機の中で最も最安であったのは中国製JF-17戦闘機であるとされましたが、マレーシアはSu-30戦闘機運用継続も視野に、テジャスを加えています。
KC-46A空中給油機の憂鬱
空中給油機を厳しい戦場でどのように運用するかの論点ですが使い捨てにする非情な案もあるという。
アメリカ空軍はボーイングKC-46A空中給油機から副操縦士を廃止し2名常務での運用を検討しているとのこと。これは危険な空域においてKC-46Aのような空中給油機は空対空ミサイルの長射程化により生存性の確保が難しくなっており、ボーイング社との間で操縦士と給油要員の2名のみで運用する事で撃墜された際の被害局限を考えているという。
ただ、空軍機動軍団は空軍の空中給油機を消耗品のように扱う運用について厳しい反発もあるようです。空中給油機の運用には操縦士と副操縦士にブームオペレーターが搭乗する事となっています。なお海軍では空中給油にF/A-18E/F戦闘攻撃機からの増槽によるバディ給油を行い、将来的にはMQ-25ステルス無人機の空中給油任務等を想定しています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今週は空軍関連の11の論点を並べてみましたがまだ飛ばすのかと驚く話題や手堅い話題など世界は広い。
アメリカのL3ハリステクノロジーズ社はF-5軽戦闘機用GH-4001電子航法装置を発表しました。F-5戦闘機はアメリカが中小国へ供与するべく1959年に開発した戦闘機で、1972年には改良型のF-5Eタイガーが開発、更に空軍では複座型をT-38コンバットタロン練習機として採用しています。安価ではありますが、全般的に老朽化と旧式化はいなめません。
GH-4001電子航法装置は第四世代戦闘機並の戦術航法装置であり、誤差20mで精密な低空侵攻等が可能となります。もっとも、F-5戦闘機にはAIM-9Xを除く前世代型のサイドワインダーミサイルを運用可能ですが、中距離空対空ミサイル運用能力などが無く、精密航法装置の改良による空対空戦闘能力向上はありませんが、近接航空支援能力は強化されます。
F-5タイガー戦闘機は冷戦時代に中小国向けに開発されたものの、アメリカ空軍でも近接航空支援や練習型のT-38が大量配備されています、しかし、近年の問題はアメリカが生産する最も安価な戦闘機でもF-16Vとなっており、これはかつてのF-16Cの三倍以上の価格帯となり、この為にアメリカ製戦闘機を採用するには相応の経済力が必要となっています。
スイスF-35戦闘機36機導入
F-35戦闘機のスイス軍導入は決定していましたが調達費用がいよいよ議会で議論されます。
スイス政府はF-35戦闘機36機の導入に関する55億ドル予算案を議会に提出しました。スイス政府は2021年にF-35戦闘機導入を決定しており、世界では15番目のF-35採用国となっています、F-35の採用は当初有力と見られたF/A-18E戦闘攻撃機とユーロファイターEF-2000戦闘機やラファール戦闘機といった有力候補機種を抑えて採用されています。
ロッキードマーティン社とスイス政府は導入契約を締結していますが、購入予算については議会を通過する必要があり、今年中ではなく2023年に予定されている。機種は既に決定されていますが、議会では予算を通じての導入機数が議論され、スイス政府は議会へF-35が選定された背景には導入費用からライフサイクルコストまで最も安価と説明しています。
F-35の取得費用は2021年の段階では36機は54億ドルとされていました。もっとも安価と説明された背景には30年間の運用を見積もった場合、F-35戦闘機は地上シミュレータによる訓練比率が他の第4.5世代戦闘機に対して高く、運用費用が抑えられる事から総費用は155億スイスフラン、対して次点の機体は175億フランでであったためとされています。
A-10攻撃機主翼換装
対地攻撃専用で低空を飛行している限り機関砲では落とされにくいという攻撃機は更に延命する。
アメリカ空軍はA-10攻撃機主翼換装をボーイング社とKAI韓国航空宇宙産業により実施しています。A-10攻撃機は57mm砲にさえ耐える強力な装甲と戦車の上部装甲を破壊する30mm機関砲、そして多数の爆弾搭載能力を持つ世界に残る数少ない対地攻撃専用機です、しかし、代替機は無く当初の構想以上に長期間の運用を継続し老朽化が進んでいます。
A-10攻撃機は頑丈さから陸軍は空軍に期待する最良の近接航空支援機となっていて、その運用期間を延命するべく50機の主翼換装が決定、新しい主翼はボーイング社とKAI韓国航空宇宙産業が製造しユタ州ヒル空軍基地に納入、第571航空機整備群により機体への装着が行われているとのこと。これによりA-10攻撃機は2030年代まで運用可能となります。
ハンガリーKC-390輸送機
開発国のブラジル空軍が調達を大幅削減した事で岐路に立たされているKC-390の話題です。
ハンガリー国防省はエンブラエル社との間でKC-390空中給油輸送機に関する包括支援協定へ署名しました。ハンガリー空軍はKC-390輸送機2機を導入予定で、初号機は2024年に納入予定となっています。この包括協定に先立つ2021年8月、エンブラエル社はハンガリーの首都ブダペストに現地事務所を設立しており、サポート体制を構築してきました。
現地整備ではエアロプルックス社が対応、KC-390はブラジルのエンブラエル社が開発した双発ジェット輸送機でC-130輸送機並の貨物をジェット旅客機並の速度で輸送可能であり、更に空中給油機としての装備を標準装備しています。ハンガリー空軍が運用するJAS-39戦闘機はブラジル空軍にもF-39として採用されており、空中給油ノウハウを共有可能です。
エアフォースワンVC-25B
現在のエアフォースワンをもう少し長く見られるのかもしれない。
アメリカ空軍が導入する次期大統領専用機エアフォースワンVC-25Bプログラムはその運用開始が三年間遅れる可能性があるとのこと。これは5月19日に海軍小委員会においてアンドリューハンター空軍補給技術担当次官補が表明したもので、当初の計画では、VC-25Bは2024年後半に完成される計画でしたが、ここで大幅な遅れが示唆されたかたち。
エアフォースワンVC-25Bの大幅な遅延は機内担当のボーイング社下請けの協力会社が、予定された重要な変更を期間内に完了させられず、他の事業者に担当させる変更が在った為です。ただ、4月にウォールストリートジャーナルは17カ月の遅延可能性を報じていますが、今回の海軍小委員会での発言は、その遅延がさらに長引く可能性を示した構図です。
スペインユーロファイター増強
F-35Bを調達して強襲揚陸艦ファンカルロス一世に搭載するかと思いましたが既存のEF-2000を増強するという手堅さ。
スペイン空軍は老朽化したF/A-18戦闘攻撃機後継にユーロファイターEF-2000戦闘機20機を導入決定しました。これは6月22日に開催されたベルリン航空ショーにおいて明らかにされたもので、エアバスディフェンスアンドスペース社との間で21億ドルの契約になるとのこと。スペイン空軍にはF/A-18A/Bという初期型のホーネットが70機残っている。
F/A-18A/Bの内、今回置き換えられるのは大西洋上のカナリア諸島に配備されている機体で、スペイン空軍は既にユーロファイター戦闘機を70機運用中、既存の機体を増強する事で旧式機を代替する方針です。またユーロファイいたーはマドリードの南に在るエアバスヘタフェ工場にて最終組立が行われており、スペイン雇用にも寄与する選択肢といえます。
イラクの韓国製T-50初飛行
日本もT-4練習機を訓練支援機や飛行点検機や捜索救難機など幾つかの用途で増強し生産継続していればと思う。
イラク国防省は韓国製T-50超音速練習機の初飛行を発表しました。イラク空軍が導入する機体はKAI韓国航空宇宙産業が開発したTA-50のイラク仕様となるT-50IQで、このほど納入された機体が6月22日、イラクのムハンマドアラ空軍基地にて初飛行に成功したとのこと。TA-50は純粋な練習機に留まらず、超音速攻撃機としての機能を有しています。
イラク空軍は2016年に24機の導入を発表、T-50IQは20mm機関砲を装備する他AIM-9空対空ミサイル運用能力、対地攻撃能力などを有しています。T-50の派生型であるF/A-50はF-16戦闘機の高性能化に伴う高価格化などで中小国には戦闘機が導入しにくくなる中、空対空戦闘能力や対地攻撃能力を一通り備えた機体として各国の注目を集めています。
アルゼンチン空軍戦闘機問題
国際関係を良好としないと全ての面で締め上げられる国が有るということ。
アルゼンチン空軍はパキスタンのJF-17戦闘機部隊へ視察団を派遣しました。これは6月14日から二日間の日程でアルゼンチン空軍のフアンマルティンパレオ中将がパキスタンを訪問した際の視察で、パキスタン空軍のザヒールアフメドバベルシドウ大将との会談も含まれています。アルゼンチンの喫緊の課題は戦闘機の更新、JF-17は最有力候補です。
JF-17戦闘機導入への最大の課題は、フォークランド紛争後のイギリスによるアルゼンチン経済制裁が継続しており、特に世界シェアの大きなイギリスのマーチンベイカー社製射出座席をアルゼンチンへ供与禁止としたことは、ロシア製戦闘機を除く大半の戦闘機に輸出規制が加わる事を意味します。JF-17も採用していますが、抜け道を模索しているようです。
A-400M輸送機価格高騰
A-400M輸送機でさえもロシア製のチタンなどをつかっていたという。
インドネシア空軍とエアバスミリタリーはA-400M輸送機の導入価格へ再交渉を開始しました、これはインドネシア空軍が導入する2機のA-400M輸送機が当初契約された6億8500万ドルの費用では製造できない可能性が高まっている為です。具体的にはエアバスは原材料としてチタンの50%をロシアから輸入しており、この供給が不安定化しているため。
アメリカの業界筋として、エアバスへのチタンの供給は停止していませんが、仮にロシアからの供給が停止した場合にはボーイング社がエアバスへチタン部品一部を供給する可能性を示唆しているとのことです。しかし、これにより部品が確保出来たとしても製造価格高騰は必至である為、エアバスはインドネシアへ価格の再検討を要請しているかたちです。
防衛装備品は調達が長期間に及ぶため、その価格交渉は慎重でなければなりません、例えばノースロップグラマン社はF-14戦闘機の長期製造契約でインフレ率を見通せず大きな損害を被り航空機部門を手放す事となっています。ただ、今回のウクライナ戦争に伴う資源価格の高騰を数年前から予測するのは、少し現実的ではなかったともいえるでしょう。
マレーシアテジャス戦闘機
テジャス戦闘機が輸出できる可能性がでてきましたが開発の遅延を考えると驚くべき飛躍といえますね。
マレーシア空軍は次期戦闘機の候補にインド製テジャス戦闘機を追加しました。マレーシア空軍は次期戦闘機の後継機候補として、ロシアのMiG-35戦闘機かYak-130軽戦闘機、韓国のFA-50軽戦闘機、中国のJF-17戦闘機を候補としています。マレーシア軍は東西のバランスを意識し、F/A-18戦闘機とMiG-29戦闘機を同時購入する等調達が独特です。
マレーシア空軍は老朽化したMiG-29戦闘機の後継機を模索しています。この中でも当初はMiG-29の後継という事で発展型に当るMiG-35が有力ではありました、しかしMiG-35とYak-130はロシアのウクライナ侵攻後、予備部品調達の難しさから候補機種から外されている。テジャス戦闘機は、マレーシア空軍が要請する幾つかの有力点から採用されています。
テジャス戦闘機、インド製ですが同時にインドはSu-30戦闘機を多数運用しており、それはマレーシア空軍が運用するロシア製Su-30戦闘機の運用維持と抱き合わせ契約が可能であったということで、候補航空機の中で最も最安であったのは中国製JF-17戦闘機であるとされましたが、マレーシアはSu-30戦闘機運用継続も視野に、テジャスを加えています。
KC-46A空中給油機の憂鬱
空中給油機を厳しい戦場でどのように運用するかの論点ですが使い捨てにする非情な案もあるという。
アメリカ空軍はボーイングKC-46A空中給油機から副操縦士を廃止し2名常務での運用を検討しているとのこと。これは危険な空域においてKC-46Aのような空中給油機は空対空ミサイルの長射程化により生存性の確保が難しくなっており、ボーイング社との間で操縦士と給油要員の2名のみで運用する事で撃墜された際の被害局限を考えているという。
ただ、空軍機動軍団は空軍の空中給油機を消耗品のように扱う運用について厳しい反発もあるようです。空中給油機の運用には操縦士と副操縦士にブームオペレーターが搭乗する事となっています。なお海軍では空中給油にF/A-18E/F戦闘攻撃機からの増槽によるバディ給油を行い、将来的にはMQ-25ステルス無人機の空中給油任務等を想定しています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)