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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

横須賀サマーフェスタにおける米海軍在泊艦艇

2006-12-23 12:48:41 | 海上自衛隊 催事

■横須賀基地

 夏に開催された横須賀サマーフェスタは、小生も富士総合火力演習に先んじての公開行事とあり、基地を訪問したのは既報であるが、今回はその際の米海軍在泊艦艇を特集したい。

Img_6259  海上自衛隊横須賀基地は、第一護衛隊群や第二潜水隊群、掃海隊群、横須賀地方隊といった艦艇部隊に加え、自衛艦隊司令部などが置かれる海上自衛隊の一大根拠地である。ここでは毎年、サマーフェスタが実施される他、間もなくの大晦日では、元旦にかけ花火や艦艇夜間電飾、基地一部特別公開が開催される。今回の特集はサマーフェスタにおける体験航海で乗艦した写真の右端、“しらゆき”から撮影したものである。

Img_6304  同じく体験航海に向かうDDG171“はたかぜ”、前方からの航空目標に迅速に対処するべくスタンダードミサイル発射機が前甲板に配置されており、独特の艦容で知られている。体験航海の整理券は確か二回に分けて先着1000名であったか、記憶が定かではないが、0810時に小生はShin氏や“とんぺいの機械博物館”の皆さんと合流し、0820時頃に基地前に並んだが、整理券配布には揃って五名、運良く間に合った。

Img_6205_1  DDG54 Curtis Wilbur: カーティスウィルバーは1994年に就役したアーレイバーク級ミサイル駆逐艦の四番艦で、満載排水量8422㌧、ステルス性を考慮したモノポール式マストが特色であるが、第二次大戦中の駆逐艦マストに先祖がえりしたような印象を持たせる。最大の装備はイージスシステムと90基のVLS(垂直発射器)に内蔵されたミサイルである。しかし、固有のヘリを搭載していないのが問題とされ、ヘリ格納庫を増設した改良型のフライトⅡAが2000年より就役している。

Img_6209  この場所からの写真は、平日でもウェルニー公園やショッピングモールから撮影することが出来る。向こう側に“たかなみ”型護衛艦の一部分が写っている。さて、写真は、CG62 Chancellorsville:チャンセラーズヴィル、CGとはミサイル巡洋艦を意味する。タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の16番艦で、満載排水量は9516㌧、航空母艦の直衛用に開発されたイージス艦だが、本級は対潜用のスプルーアンス級駆逐艦の船体設計を流用した艦で、導入当初は重い上部構造物が問題となった。スプルーアンス級が有した2機分のヘリ格納庫を維持しつつ、122基のVLSとイージスシステムを搭載できたのは、その設計の余裕からである。

Img_6223  海上自衛隊横須賀地方隊の輸送艇2号がチャンセラーズヴィル右舷を通過する。輸送艇1号型は満載排水量540㌧であるから巡洋艦の大きさが際立っている。専守防衛の国是があるとはいえ、災害派遣に必要なこの種の艦艇の不足は深刻で、代替として1900㌧型の輸送艇(輸送艦とも二転三転)が建造される見込みである。ちなみに、タイコンデロガ級は1983年から1994年にかけ27隻が就役したが、既に一部では退役が始まっている。

Img_6291  さて、ここから体験航海の際に撮影したものである。海軍基地とは戦略上の要衝であり、この区画は基地外からは見えにくくなっており、体験航海ならではの写真である。本来ならば、空母キティーホークや、第七艦隊旗艦ブルーリッジが停泊していて然るべきなのだが、この日は外洋に演習に展開していた。陸上からは空母が帰港していても一部が桟橋などで隠れてしまう為、この日に在泊していなかったのは、残念であった。

Img_6414  チャンセラーズヴィルに二門搭載される5in54口径砲Mk45。“はるな”型“しらね”型“はたかぜ”型などに搭載される5in54口径砲Mk42の後継である。発射速度は17~34発から16~24発へ、旋回速度も40°/秒から30°/秒に落ちているが、射程は22kmから23kmに若干伸びた他、何よりも軽量化が為され、58.6㌧から22.22㌧へと大幅に軽量化されている。現在は62口径のMk45 Mod4が導入開始され、射程延伸砲弾では117km(162kmという資料もある)の射程を有する。

Img_6399  FFG-51 Gary:ゲアリィは、オリヴァーハザードペリー級ミサイルフリゲイトの41番艦で、満載排水量は4100㌧、初期型は3638㌧であるから、はつゆき型護衛艦よりも小型であるが、対潜ヘリコプター2機とスタンダードSAM発射機を搭載し、艦隊防空に充てられるフリゲイトである。海上自衛隊の護衛艦と異なり、対潜用のアスロックを搭載していないが、対潜フリゲイトであるノックス級(既に全艦退役、台湾海軍やタイ海軍などが中古艦を運用)の任務とされた。

Img_6297  中央部分のアップ、上部構造物中央に海上自衛隊でもお馴染の76㍉単装砲が搭載されているが、これは前部甲板にSAM発射機を搭載した為である。1977年から1989年までに、実に51隻が就役した本級はスペイン海軍や台湾海軍でライセンス生産され、中古艦がポーランド海軍など友好国にて運用されている。他方、米海軍では冷戦後の経空脅威激減に対応してスタンダード発射機を撤去し、FF、つまりフリゲイトに種別変更が為されている。

Img_6398  DDG89 Mustin:マスティンは2003年に就役したフライトⅡA型で、39番艦(フライトⅡA型では11番艦)。ヘリコプター格納庫を有し、VLSを挟む形で二機を搭載する(火災が起これば誘爆しそうだ)。洋上での補給を考慮せずVLSのクレーンを撤去した結果、96基にVLSが増えている。また、搭載艇をコスト低減の為に複合艇へ代え、ハープーンSSM発射筒も装備していない。結果、価格が15~20%程度低減できたといわれている。

Img_6391  31番艦より5in砲が新型のMod4となっており、海上自衛隊の“あたご”型もMod4を搭載している。射程100kmを越える砲は対地攻撃に大きな威力を発揮する。なお、艦の手前に見える海上柵はボートによる自爆テロ対策である。最終的に50隻以上が就役する予定であり、イージス艦をこれだけ揃える米海軍の規模に驚かされると共に、では対空用途のイージス艦を揃える一方で、ペリー級からはSAM発射機を撤去するのか、考えてしまう。せめてESSM用VLSに換装するなど選択肢はあったはずだ。

Img_6324  こうして米海軍艦艇を見つつ出港、艦隊機動の展示やヘリ上空航過などの展示を終え、帰港した。一方で車輌展開にて体験航海整理券配布に間に合わなかったC.ジョニー氏一行は、三笠記念艦から出港する民間の軍港巡りツアーにて、音響測定艦や海洋観測艦などのいる区域を撮影することが出来たという。開発隊群の艦艇は見たことがないので来年は是非そちらも見てみたいところである。

HARUNA

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