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【京都幕間旅情】鷲峰山高台寺,関ヶ原から大坂城へと悸慄高まる高台院のみた分岐の地に想う

2020-12-17 20:02:12 | 写真
■いまも大坂を望見する高台寺
 豊臣秀吉の正室高台院はほんとうに大坂城落城を京都から見ていたのか、これは稀に聞かれる話題ですが、実際に視てみると分かる。

 高台院、京都の四季折々の情景は常に趣き深いものではありますが、中でも悸慄高まる由縁は、やはり日本史、幸いにして当時の日本と現代の日本は同じ天皇制と共に在る、そのなかで歴史の舞台となりましたその地に直接結ばれているところなのかもしれませんね。

 鷲峰山高台寺は東山区下河原通八坂鳥居前の少し小高い所に位置します臨済宗建仁寺派の寺院です。そして此処は高台院こと北政所、天下人豊臣秀吉の正妻正室にて戦国の世に甘酸っぱい恋愛を以て結ばれた戦国武将の出世頭を常に支えて支え続けた傑物でもあります。

 慶長11年の西暦1606年に造営された御山は、慶長年間1614年の大坂冬の陣での騒擾も、そして慶長年間1615年大坂夏の陣での大阪城落城も遠望している。高台寺の伽藍からは現在大坂は方角が見えるのみですが、駐車場からは大阪駅付近の摩天楼が望見出来るのです。

 豊臣秀吉菩提寺として造営されたお寺は、天下分け目の戦いである関ヶ原の戦い頃にはまだ無く、1599年石田三成襲撃事件に際し徳川家康と並び事変を仲裁した事で豊臣秀吉後継ではなくとも威光を継ぐ正統性を示した北政所は、しかし政治的基盤を持ちませんでした。

 京都新城屋敷、現存しない京都御所北辺を護る城郭が北政所の住処だったという。ここは有名な聚楽第が破却され近年まで遺構の位置さえ知られなかった洛中の城郭に代わり豊臣秀頼の京都での居城として整備されたものですが、秀頼は当時大坂城を拠点としています。

 淀殿、豊臣秀吉側室は豊臣秀頼の後見人として大坂城に在り、明らかに豊臣家の正統性は大坂の地に在った訳です。京都新城屋敷も天守閣や櫓と城門等は破却され急速に城郭としての要諦を省かれ、北政所は実兄木下家定が大坂より時折護衛に手勢を送る程度だった。

 関ヶ原の戦いでは、東軍が西軍を破りつつ最終確保地域が明示されていなかった為に大坂城と共に京都新城屋敷も安泰ではなく、身を案じた木下家定が大坂より自ら手勢五百と共に駆け付けています。そして歴史の不思議なのですが小早川秀秋は木下家定の実子という。

 小早川秀秋と云えば関ヶ原の戦いにおいて防御戦闘を固めた西軍に在って逆襲部隊を指揮する要諦に在りながら手勢19000名を以て東軍に寝返り西軍敗北の端緒を造った今日に続く裏切りの代名詞、中立を保ったとはいえ、木下家定と北政所の立場は微妙といえました。

 木下家定は中立を保ったことが徳川家康により評価され西軍武将ながら備中国足守藩主として石高は減封されず、その際に臨済宗建仁寺へ出家しています。北政所はこの際に京都新城屋敷を出て京都御所仙洞御所に移り住みました。まだこの時点で高台寺はありません。

 豊臣秀頼と千姫の婚儀、後の徳川幕府二代将軍徳川秀忠の実娘との婚儀が1603年に行われますと出家し高台院となります。高台寺造営の三年前の。大坂冬の陣では高台寺を出て停戦調停を試みますが幕府により木下利房備中国足守藩主が目付け役として高台寺に遣わる。

 大坂冬の陣の頃には木下家定は既に亡く、高台寺造営の頃に既に鬼籍にありました。こうして大坂城の降伏と続く夏の陣による落城は、この京都の高台寺から眺めている事しか出来なかったのですね。徳川秀忠の高台寺訪問等、しかし不思議な交友を維持していました。

 高台寺から大阪は見えます、そして当時は今ほど灯火がありませんでしたので遠く大坂城の落城の焔は、あれだけの巨城故に望見できた事でしょう、赤々明々と照らす豊臣家の最後を望見しつつ高台院は何を想ったか、こうした事を考える思考の旅も京都の醍醐味です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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