■週報:世界の防衛,最新11論点
防衛情報、今回は各国のヘリコプターに関する最新の話題を11まとめてお伝えしましょう。
NATO次世代統合多用途ヘリコプター計画がイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ギリシャ参加の下で11月19日に正式に発動しました。これは五か国国防大臣がオンライン会議にて共同声明の形で票召したものです。この次世代統合多用途ヘリコプター計画は欧州NATO諸国がアメリカ製兵器への依存度を低減する一連の流れにあって開発するもの。
欧州NATO加盟国が現在運用する多用途ヘリコプターのうち、UH-60やSA-332及びH-160にUH-1とNH-90などのヘリコプターが2035年から2040年にかけ耐用年数を迎える事を見越したものです。ただ、現段階では次世代統合多用途ヘリコプター計画により開発される航空機が要求性能や要目を含めて、どのような機体となるかは盛り込まれていません。
多段階共同開発と新技術開発を念頭に欧州NATOの技術的優位性を確保する事が目的であるとされ、これは単なる中型ヘリコプターを開発するに留まらず可動翼機や複合ヘリコプターのような高性能機を志向する可能性も示しています。どういった技術を盛り込むか、どのように開発分担し費用分担するかは、今後数年間により議論し画定するとのことです。
■フランスのNH-90一部を転用
自衛隊のUH-1後継機も20機の飛行隊を8機編成に縮小してでも高性能機としておけば、こうした離れ業が出来たのですがMV-22でやろうとしている。
フランス陸軍はNH-90ヘリコプターの一部を特殊作戦用ヘリコプターへ強化する契約をエアバスヘリコプターズ社とNHインダストリアル社との間で締結したとのこと。NH-90特殊作戦ヘリコプターは既存の機体の改修ではなく2025年に納入されるフランス軍向けNH-90ヘリコプター最終納入分を通常仕様から特殊部隊へ切替えて取得するとのことです。
NH-90ヘリコプター特殊作戦型は10機の取得が計画され、通常型と比較しEOS-FLIR次世代型電子光学式前方赤外線監視装置とDAS分散開口型赤外線システムやヘルメントマウンドディスプレイ型3D立体暗視装置、M-3航空重機関銃システム、機内キャビンタブレット情報装置等搭載、この特殊作戦ヘリコプターにより長距離の侵攻作戦が可能となります。
■仏,EC-665用新ミサイル
ヘリコプター用ミサイルの長射程化が進む中でフランスは従来型のミサイルを開発するようで、自衛隊も無理に高望みしない冷静な視点も必要でしょう。
フランスのパルリ陸軍長官は11月、ミサイル大手のMBDA社がEC-665/PAH-2戦闘ヘリコプター用次世代戦術空対地ミサイルの開発を開始した、と発表しました。これはMAST-F計画とされ、既存の対戦車ミサイルより重量を20%軽量化させることにより定数である8発を搭載した場合に100kgが軽量化され、その分航空燃料を多く搭載可能となる。
MAST-F計画では、MHT高層ミサイルとMLP長距離移動ミサイルの二系統を統合させる事となり、対戦車ミサイルとしては第五世代の装備品を目指す方針です。そしてこれはEC-665/PAH-2戦闘ヘリコプター搭載用に留まらず、様々な空中戦闘システムへの適合性を期しており、既存ミサイルシステム技術延長線上で実用化、開発しリスクを低減します。
EC-665/PAH-2戦闘ヘリコプター搭載用のミサイルは低高度から射撃した場合でも少なくとも射程は8kmを越えるものとするとともにミサイル本体からの高解像度画像情報を発射母機に送信するBLOS視程外戦闘能力を付与し、またこの画像送信能力により発射母機は次目標に関する情報収集に充てるという。射程は特段長くはないですが次世代装備です。
■仏三軍統合機H-160M
陸上自衛隊のUH-1後継機にフランスも変な新型計画ではなく、ゲパールの様なこういった手堅いが用途が広い航空機を提案して欲しかったですね。
フランス空軍は旧式化が進むAS555フェネック軽ヘリコプターの後継機としてエアバスH-160Mゲパールヘリコプター40機を導入する計画です。H-160はHILフランス軍統合軽ヘリコプター計画として開発されたもので、今回、空軍用H-160Mのモックアップが完成、10月29日に空軍司令部の航空救難団司令官オリビエファブレ准将が視察したとのこと。
H-160MはEO/IRセンサーを機首部分に搭載し左右のスタブウィングに20mm機関砲及びFZ275レーザー誘導ロケットを搭載しドアガンとして7.62mm機銃を設置可能です。空軍は航空救難用に採用しますが、陸軍も軽攻撃用に80機、海軍が捜索レーダーとANF軽対艦ミサイルを搭載し哨戒用に49機を導入する計画で、2026年より引渡開始となります。
■オランダはAH-64Dを延命へ
自衛隊もAH-64DについてはAH-64Eを増強すると共に既存の機体を延命させる必要があるでしょう。
オランダ陸軍は現在のAH-64Dを2050年まで運用するべく最初の三機をアメリカへ搬出したとのこと。これは2018年に決定されたアパッチロングボウ長期運用計画に基づくもので、アントワープ港からアメリカへ海上輸送されたのちに二年間にわたる改修へ入るとのこと。AH-64はオランダ軍に28機が配備、内17機はロングボウレーダー搭載型です。
AH-64DアパッチロングボウからAH-64Eアパッチガーディアンへ。今回のアメリカでの改修作業はボーイング社メサにあるボーイング工場が実施、AH-64Dは最新型のAH-64Eに改造されると共に老朽部分の徹底的なオーバーホールが行われ、エンジンも強化される。今回改修が開始される3機は2023年から2025年にかけ、オランダ軍へ戻る計画です。
■リトアニアUH-60採用
陸上自衛隊も数を揃えられませんでしたがUH-60シリーズはどうしても高価格になってしまうものなのですね。
リトアニア軍は11月13日、アメリカ製UH-60M多用途ヘリコプター4機を2億1300万ドルで導入すると発表しました。これはリトアニアのカロブリス国防大臣が公表したもので、2億1300万ドルの契約には精密航法装置や訓練費用と整備支援なども含んだものとなっており、リトアニア軍では近い将来更に追加の2機を調達したい意向と伝えられる。
UH-60M多用途ヘリコプターはリトアニア軍に残る旧ソ連製Mi-8輸送ヘリコプターを代替するものであり、兵員輸送とともにTOW対戦車ミサイルやハイドラ70ロケット弾を搭載し武装ヘリコプターとしても運用する計画である。UH-60M多用途ヘリコプターはNATOでも幾つかの加盟国が運用するとともに隣国ラトビアにおいても採用されている。
■米海兵隊AH-1W運用終了
陸上自衛隊のAH-1Sについても製造元の富士重工に拘らずとも能力向上改修を行い2040年代まで延命できないものか。
アメリカ海兵隊は2020年10月、最後のAH-1Wスーパーコブラ運用を完了しました。スーパーコブラはAH-1ヒューイコブラの双発型として1983年に初飛行を迎えて以来、海兵隊の危険な洋上飛行任務を経ての両用作戦において常に第一線に在り、1999年までに179機を取得しました。AH-1Wの除籍は老朽化によるものですが機体は解体されません。
AH-1Wスーパーコブラ。アメリカ海兵隊において用途廃止となったAH-1Wスーパーコブラはいったん解体され、その機体の主要部分をAH-1Zバイパー攻撃ヘリコプターの機体構成要素へ再利用されています。AH-1W機体部分は実に30年以上にわたり酷使されていますが、機体寿命と無関係の部位も少なくは無く、この部分が主として再利用されるかたち。
AH-1Zバイパーは外見上の最大の特色がAH-1Wの2枚ローター構造に対して4枚ローター構造を採用した点ですが、機体には大胆なC4I戦対応のアヴィオニクスが搭載され、アメリカ陸軍が運用するAH-64Dアパッチロングボウに比肩する性能を付与する事が可能です。AH-1Zへの改修により、将来的に半世紀近く飛行するヘリコプターも現れましょう。
■HH-60W戦闘救難ヘリ
航空自衛隊の救難ヘリコプターと異なり戦場に取り残された操縦士を救助する為の米軍救難機は一種の特殊部隊機となっています。
アメリカ空軍はHH-60W戦闘救難ヘリコプターの第一線部隊への初受領を11月5日に実施したとのこと。HH-60Wはジョージア州ムーディ空軍基地第23航空団第347救難飛行隊に2機が配備されました。HH-60Wの愛称はジョリーグリーン2、UH-60M多用途ヘリコプターの改良型となっています。今後は現行HH-60Gペイブホークを順次代替します。
HH-60W戦闘救難ヘリコプターは航法装置や通信装置等を一新、回転翼を複合素材製に切り替えるとともに機体形状を一部変更し燃料搭載能力を強化、この形状変更に併せ低空域での高機動性に配慮した空力形状へ改めると共に海上での長期運用を視野に腐食防止構造を採用しています。空軍はHH-60W戦闘救難ヘリコプターを108機導入予定とのこと。
■アルプス救難用にAW-169
救難ヘリコプターというのは要求性能に上限が無いものなのですが、まだアルーエットⅢを運用していたというには驚きでしたね。
オーストリア陸軍はアルプス山脈の捜索救難用にアグスタウェストランドAW-169多用途ヘリコプター18機を導入する方針を9月に発表しました。アグスタウェストランドAW-169は10名を輸送可能である軽多用途ヘリコプターで15名を空輸可能であるAW-139を一回り小型としたもの、派生型というだけではなく整備や操縦資格の大半が共通という。
アグスタウェストランドAW-169多用途ヘリコプターは旧式化が進むアルーエットⅢの後継機として位置付けられています。アルーエットⅢはテイルローター付近の形状が一見して前時代的ではありますが整備性が高く、山間部での運用性の高さからも重宝されていますが、オーストリア軍では救難用と共に多用途ヘリコプターとして運用を見込んでいます。
■トルコ,TAI-T-625用エンジン
各国ともに稼働率や費用管理の名目から部分部分の国産化を進める方式は似たようなものなのですね。
トルコが国産開発を進めるTAI-T-625ヘリコプターはこのほどTEI社製国産エンジンを搭載する改修に成功し、これを受け、年内にも国産エンジンを搭載し飛行試験を開始する方針を示しました。T-625多用途ヘリコプターでは試作機がアメリカのLHTEC社製 CTS800エンジンの双発型でしたが、トルコ政府は国産エンジン搭載を切望していました。
T-625ヘリコプターは5t級多用途ヘリコプターで、人員12名を空輸可能です。トルコ国内防衛産業大手TAIではフランス製AS-532最終組立やイタリア製AW-139胴体分担生産等で航空機製造の実績を積んでいる事から一定の国産能力があると考え、技術開発協力としてアメリカのシコルスキー社と提携、2013年より35億ドルを投じ開発を進めていました。
■マレーシアのMD-530G
自衛隊では引退したOH-6の原型MD-500シリーズは特殊作戦用や軽攻撃用として今も用途がある模様です。
マレーシア軍は納入が遅れていたアメリカ製MD-530G軽攻撃ヘリコプターの受領を開始したとのこと。MD-530G軽攻撃ヘリコプターは当初2017年納入予定でしたが遅れに遅れ2020年6月に納入予定となっていましたが、諸般の事情により更に数カ月遅れています。器材納入は遅延していますが、要員訓練はアメリカ国内で実施され、こちらは順調という。
MD-530G軽攻撃ヘリコプターは7.62mmミニガンと40mm擲弾銃及び70mmロケット弾派生のAPKWSミサイルを6発搭載しガンシップとして用いる。マレーシア政府は2016年にMD-530G軽攻撃ヘリコプター6機を7640万ドルにて調達する契約を締結、マレーシアではサバ州等において武装勢力行動を制圧する為にこの種の機体を必要としていました。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
防衛情報、今回は各国のヘリコプターに関する最新の話題を11まとめてお伝えしましょう。
NATO次世代統合多用途ヘリコプター計画がイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ギリシャ参加の下で11月19日に正式に発動しました。これは五か国国防大臣がオンライン会議にて共同声明の形で票召したものです。この次世代統合多用途ヘリコプター計画は欧州NATO諸国がアメリカ製兵器への依存度を低減する一連の流れにあって開発するもの。
欧州NATO加盟国が現在運用する多用途ヘリコプターのうち、UH-60やSA-332及びH-160にUH-1とNH-90などのヘリコプターが2035年から2040年にかけ耐用年数を迎える事を見越したものです。ただ、現段階では次世代統合多用途ヘリコプター計画により開発される航空機が要求性能や要目を含めて、どのような機体となるかは盛り込まれていません。
多段階共同開発と新技術開発を念頭に欧州NATOの技術的優位性を確保する事が目的であるとされ、これは単なる中型ヘリコプターを開発するに留まらず可動翼機や複合ヘリコプターのような高性能機を志向する可能性も示しています。どういった技術を盛り込むか、どのように開発分担し費用分担するかは、今後数年間により議論し画定するとのことです。
■フランスのNH-90一部を転用
自衛隊のUH-1後継機も20機の飛行隊を8機編成に縮小してでも高性能機としておけば、こうした離れ業が出来たのですがMV-22でやろうとしている。
フランス陸軍はNH-90ヘリコプターの一部を特殊作戦用ヘリコプターへ強化する契約をエアバスヘリコプターズ社とNHインダストリアル社との間で締結したとのこと。NH-90特殊作戦ヘリコプターは既存の機体の改修ではなく2025年に納入されるフランス軍向けNH-90ヘリコプター最終納入分を通常仕様から特殊部隊へ切替えて取得するとのことです。
NH-90ヘリコプター特殊作戦型は10機の取得が計画され、通常型と比較しEOS-FLIR次世代型電子光学式前方赤外線監視装置とDAS分散開口型赤外線システムやヘルメントマウンドディスプレイ型3D立体暗視装置、M-3航空重機関銃システム、機内キャビンタブレット情報装置等搭載、この特殊作戦ヘリコプターにより長距離の侵攻作戦が可能となります。
■仏,EC-665用新ミサイル
ヘリコプター用ミサイルの長射程化が進む中でフランスは従来型のミサイルを開発するようで、自衛隊も無理に高望みしない冷静な視点も必要でしょう。
フランスのパルリ陸軍長官は11月、ミサイル大手のMBDA社がEC-665/PAH-2戦闘ヘリコプター用次世代戦術空対地ミサイルの開発を開始した、と発表しました。これはMAST-F計画とされ、既存の対戦車ミサイルより重量を20%軽量化させることにより定数である8発を搭載した場合に100kgが軽量化され、その分航空燃料を多く搭載可能となる。
MAST-F計画では、MHT高層ミサイルとMLP長距離移動ミサイルの二系統を統合させる事となり、対戦車ミサイルとしては第五世代の装備品を目指す方針です。そしてこれはEC-665/PAH-2戦闘ヘリコプター搭載用に留まらず、様々な空中戦闘システムへの適合性を期しており、既存ミサイルシステム技術延長線上で実用化、開発しリスクを低減します。
EC-665/PAH-2戦闘ヘリコプター搭載用のミサイルは低高度から射撃した場合でも少なくとも射程は8kmを越えるものとするとともにミサイル本体からの高解像度画像情報を発射母機に送信するBLOS視程外戦闘能力を付与し、またこの画像送信能力により発射母機は次目標に関する情報収集に充てるという。射程は特段長くはないですが次世代装備です。
■仏三軍統合機H-160M
陸上自衛隊のUH-1後継機にフランスも変な新型計画ではなく、ゲパールの様なこういった手堅いが用途が広い航空機を提案して欲しかったですね。
フランス空軍は旧式化が進むAS555フェネック軽ヘリコプターの後継機としてエアバスH-160Mゲパールヘリコプター40機を導入する計画です。H-160はHILフランス軍統合軽ヘリコプター計画として開発されたもので、今回、空軍用H-160Mのモックアップが完成、10月29日に空軍司令部の航空救難団司令官オリビエファブレ准将が視察したとのこと。
H-160MはEO/IRセンサーを機首部分に搭載し左右のスタブウィングに20mm機関砲及びFZ275レーザー誘導ロケットを搭載しドアガンとして7.62mm機銃を設置可能です。空軍は航空救難用に採用しますが、陸軍も軽攻撃用に80機、海軍が捜索レーダーとANF軽対艦ミサイルを搭載し哨戒用に49機を導入する計画で、2026年より引渡開始となります。
■オランダはAH-64Dを延命へ
自衛隊もAH-64DについてはAH-64Eを増強すると共に既存の機体を延命させる必要があるでしょう。
オランダ陸軍は現在のAH-64Dを2050年まで運用するべく最初の三機をアメリカへ搬出したとのこと。これは2018年に決定されたアパッチロングボウ長期運用計画に基づくもので、アントワープ港からアメリカへ海上輸送されたのちに二年間にわたる改修へ入るとのこと。AH-64はオランダ軍に28機が配備、内17機はロングボウレーダー搭載型です。
AH-64DアパッチロングボウからAH-64Eアパッチガーディアンへ。今回のアメリカでの改修作業はボーイング社メサにあるボーイング工場が実施、AH-64Dは最新型のAH-64Eに改造されると共に老朽部分の徹底的なオーバーホールが行われ、エンジンも強化される。今回改修が開始される3機は2023年から2025年にかけ、オランダ軍へ戻る計画です。
■リトアニアUH-60採用
陸上自衛隊も数を揃えられませんでしたがUH-60シリーズはどうしても高価格になってしまうものなのですね。
リトアニア軍は11月13日、アメリカ製UH-60M多用途ヘリコプター4機を2億1300万ドルで導入すると発表しました。これはリトアニアのカロブリス国防大臣が公表したもので、2億1300万ドルの契約には精密航法装置や訓練費用と整備支援なども含んだものとなっており、リトアニア軍では近い将来更に追加の2機を調達したい意向と伝えられる。
UH-60M多用途ヘリコプターはリトアニア軍に残る旧ソ連製Mi-8輸送ヘリコプターを代替するものであり、兵員輸送とともにTOW対戦車ミサイルやハイドラ70ロケット弾を搭載し武装ヘリコプターとしても運用する計画である。UH-60M多用途ヘリコプターはNATOでも幾つかの加盟国が運用するとともに隣国ラトビアにおいても採用されている。
■米海兵隊AH-1W運用終了
陸上自衛隊のAH-1Sについても製造元の富士重工に拘らずとも能力向上改修を行い2040年代まで延命できないものか。
アメリカ海兵隊は2020年10月、最後のAH-1Wスーパーコブラ運用を完了しました。スーパーコブラはAH-1ヒューイコブラの双発型として1983年に初飛行を迎えて以来、海兵隊の危険な洋上飛行任務を経ての両用作戦において常に第一線に在り、1999年までに179機を取得しました。AH-1Wの除籍は老朽化によるものですが機体は解体されません。
AH-1Wスーパーコブラ。アメリカ海兵隊において用途廃止となったAH-1Wスーパーコブラはいったん解体され、その機体の主要部分をAH-1Zバイパー攻撃ヘリコプターの機体構成要素へ再利用されています。AH-1W機体部分は実に30年以上にわたり酷使されていますが、機体寿命と無関係の部位も少なくは無く、この部分が主として再利用されるかたち。
AH-1Zバイパーは外見上の最大の特色がAH-1Wの2枚ローター構造に対して4枚ローター構造を採用した点ですが、機体には大胆なC4I戦対応のアヴィオニクスが搭載され、アメリカ陸軍が運用するAH-64Dアパッチロングボウに比肩する性能を付与する事が可能です。AH-1Zへの改修により、将来的に半世紀近く飛行するヘリコプターも現れましょう。
■HH-60W戦闘救難ヘリ
航空自衛隊の救難ヘリコプターと異なり戦場に取り残された操縦士を救助する為の米軍救難機は一種の特殊部隊機となっています。
アメリカ空軍はHH-60W戦闘救難ヘリコプターの第一線部隊への初受領を11月5日に実施したとのこと。HH-60Wはジョージア州ムーディ空軍基地第23航空団第347救難飛行隊に2機が配備されました。HH-60Wの愛称はジョリーグリーン2、UH-60M多用途ヘリコプターの改良型となっています。今後は現行HH-60Gペイブホークを順次代替します。
HH-60W戦闘救難ヘリコプターは航法装置や通信装置等を一新、回転翼を複合素材製に切り替えるとともに機体形状を一部変更し燃料搭載能力を強化、この形状変更に併せ低空域での高機動性に配慮した空力形状へ改めると共に海上での長期運用を視野に腐食防止構造を採用しています。空軍はHH-60W戦闘救難ヘリコプターを108機導入予定とのこと。
■アルプス救難用にAW-169
救難ヘリコプターというのは要求性能に上限が無いものなのですが、まだアルーエットⅢを運用していたというには驚きでしたね。
オーストリア陸軍はアルプス山脈の捜索救難用にアグスタウェストランドAW-169多用途ヘリコプター18機を導入する方針を9月に発表しました。アグスタウェストランドAW-169は10名を輸送可能である軽多用途ヘリコプターで15名を空輸可能であるAW-139を一回り小型としたもの、派生型というだけではなく整備や操縦資格の大半が共通という。
アグスタウェストランドAW-169多用途ヘリコプターは旧式化が進むアルーエットⅢの後継機として位置付けられています。アルーエットⅢはテイルローター付近の形状が一見して前時代的ではありますが整備性が高く、山間部での運用性の高さからも重宝されていますが、オーストリア軍では救難用と共に多用途ヘリコプターとして運用を見込んでいます。
■トルコ,TAI-T-625用エンジン
各国ともに稼働率や費用管理の名目から部分部分の国産化を進める方式は似たようなものなのですね。
トルコが国産開発を進めるTAI-T-625ヘリコプターはこのほどTEI社製国産エンジンを搭載する改修に成功し、これを受け、年内にも国産エンジンを搭載し飛行試験を開始する方針を示しました。T-625多用途ヘリコプターでは試作機がアメリカのLHTEC社製 CTS800エンジンの双発型でしたが、トルコ政府は国産エンジン搭載を切望していました。
T-625ヘリコプターは5t級多用途ヘリコプターで、人員12名を空輸可能です。トルコ国内防衛産業大手TAIではフランス製AS-532最終組立やイタリア製AW-139胴体分担生産等で航空機製造の実績を積んでいる事から一定の国産能力があると考え、技術開発協力としてアメリカのシコルスキー社と提携、2013年より35億ドルを投じ開発を進めていました。
■マレーシアのMD-530G
自衛隊では引退したOH-6の原型MD-500シリーズは特殊作戦用や軽攻撃用として今も用途がある模様です。
マレーシア軍は納入が遅れていたアメリカ製MD-530G軽攻撃ヘリコプターの受領を開始したとのこと。MD-530G軽攻撃ヘリコプターは当初2017年納入予定でしたが遅れに遅れ2020年6月に納入予定となっていましたが、諸般の事情により更に数カ月遅れています。器材納入は遅延していますが、要員訓練はアメリカ国内で実施され、こちらは順調という。
MD-530G軽攻撃ヘリコプターは7.62mmミニガンと40mm擲弾銃及び70mmロケット弾派生のAPKWSミサイルを6発搭載しガンシップとして用いる。マレーシア政府は2016年にMD-530G軽攻撃ヘリコプター6機を7640万ドルにて調達する契約を締結、マレーシアではサバ州等において武装勢力行動を制圧する為にこの種の機体を必要としていました。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)