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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

戦車三〇〇両時代の10式戦車【5】戦車を輸出せよ!戦車産業維持と海外実績無き日本戦車と安保政策の選択肢

2023-09-16 20:21:41 | 先端軍事テクノロジー
■国土を戦場とする現状
 自衛隊に賛成か反対か、変な話日本の防衛議論は進路指導で就職か進学かではなく生きるか生きないかの時点で止まっているような現状が問題をややこしくしているよう思う。その末端にこの問題がある。

 戦車について、輸出を真剣に考えて量産を進めてはどうかという。やれるものならやってみとろか、できるならば苦労しない、こうした反論もあるでしょう。いやそういうわけではなく輸出するのは中古の戦車を、と言い換えればどうでしょうか、74式戦車を中古車にてフィリピン迷彩や台湾迷彩を思い浮かべたかたには、そうではない、と追記します。

 10式戦車を年産36両、つまり月産3両で生産するとします。いや三菱重工の立場からしますと、月産5両は必要なのかもしれません、生産ラインというラインを構成するには、です。現状は作業場の中心に戦車を置いて部品を取り付けるという生産ラインさえ構成できないものなのですが。年産36両ですと9年以下で300両を充足することとなるという。

 年産36両といいますと324両、訓練所要と教育所要を考えますと360両程度の戦車を配備するとして10年間で一杯になります、すると、戦車の耐用年数を30年とした場合、要するにあと20年使える状態で用途廃止、となるのですね。これを輸出すればよい。もちろん有る程度減価償却が進んだ状態ですので格安ということになりますが、需要は有得ます。

 10式戦車をいまの時点でみて旧式戦車だ、といえるのは、トルコのアルタイ戦車の開発室の方くらいでしょうか、韓国のK-2戦車が完成したのは2008年ですので、いまでも10式戦車は、2010年に完成していますが、最新鋭です、これを中古市場に提供した場合は一定の需要があると考える。もちろんその場合の費用は減価償却分を差し引く、という構図で。

 RWS遠隔操作銃塔の追加が必要ならばオプションで取り付ければよい、通新装備の企画が違うならばL3ハリスでもタレスでもオプションで付け替えればよい、沖電気やNEC製システムのままでよいというならばそのまま減価償却分を差し引いた費用で売ればよい、74式車載機銃はこまるなあという場合は62式聞かん銃かM-240機関銃に付け替えればよい。

 日本の戦車というものについて、まず性能云々が不明だ、という場合には。これは国際協力の推進、という視点で考えるべきかもしれません。要するに今までは"武器を輸出しないことが平和的な美徳"であるとされ、"武器を輸出しないことによる装備上昇は受けれざるを得ない"状況でしたが、"防衛費負担が厳しい"で転換点を迎え、負担を避ける要求がある。

 専守防衛についても。有事の際にどこにも頼れないがアメリカだけは敵に回らないことが日米同盟で確約している、限定戦争が全面戦争に展開するような状況によっては直接支援が期待できる可能性がある、こうした状況です。要するに日本国民は防衛力を一刻だけで戦い抜く、国土が戦場となっても平和憲法を守る、この白紙小切手に署名していた構図だ。

 しかし、本当にそうなのでしょうか。憲法というものと日常の人権を並べて考えた上の結論なのではないか、専守防衛の実態を考えていたのか、という印象を受けなくもありません。実際、自分のローン残る家財が戦火に焼かれ、親類家族にも被害の懸念が及ぶ中、例えば沖縄戦のような本土決戦を運命づける平和憲法をわかって支持しているのでしょうか。

 戦車の話から大分はなれてしまいましたが、各国の軍隊は共同訓練を実施している、フランス軍は定期的に中東に部隊を派遣している、ルクレルク戦車から原子力空母シャルルドゴールまで。インドネシアにアメリカ軍が訓練を行っている、同盟国ではないのですが。インド軍は遠く日本までSu-30戦闘機を共同訓練へ派遣した、この意図を受け止めたい。

 合同訓練は自国のポテンシャルを示すとともに、有事の際に敵対に回らないように平時からの友好関係を蓄積しておく、軍事同盟は簡単に結べるものではありませんが、共同訓練ならばハードルは低い、いわば友好関係の延長線上に防衛協力はあります。戦争準備だという反論には、しかし国家だけが軍隊を持つという現実を突きつけたい。これが政治だ。

 戦車の輸出と戦車の維持、言い換えればフィリピンやインドネシア、台湾は政治的に難しいことがあってもタイやマレーシア、売る売らないは別としてオーストラリアにインド、必要ならばモザンビークやルワンダなど日本との過去に重要な関係があった諸国と、戦車を、共同訓練で派遣し、実力を共有しあうことには意味があるのです。外交上の、ですね。

 外交上の視点を示した上で、日本が有事に戦車部隊を維持できる程度の戦車産業を残した上で、その余剰戦車を有る程度現実的な取得費用で提示することができれば、これは需要があると考える。そのためには友好関係を防衛分やでも固められる共同訓練も重ねて重要ですが、これが戦車輸出と産業維持の一つの選択肢だと考えるのですね。他に選択肢は限られるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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