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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】F-117復活とWIG地面効果航空機再起動,MC-130J特殊輸送機水上機型発表

2021-11-23 20:01:38 | インポート
■週報:世界の防衛,最新12論点
 今週は航空防衛を中心に給油する無人機や引退したはずのステルス機と謎の巨人機等の話題をお伝えしましょう。

 アメリカ空軍第144戦闘航空団はF-117ステルス戦闘機による訓練を開始しました。これは2021年9月13日にカルフォルニア州フレズノ空軍基地へF-117が到着し開始されました。第144戦闘航空団はカリフォルニア州兵空軍部隊でありF-15戦闘機を運用しています。しかし驚くべきはこれが2021年の話題だという事です。F-117は一時全廃されました。

 F-117戦闘機は2008年に全機用途廃止されましたが、2014年に航空愛好家がパナミントバレーにて飛行している様子を撮影し公表、全世界を驚かせました。この後も幾度かF-117が目撃され、秘密作戦用ではないかとも一部報道機関により報じられています。これを受け空軍は2008年に全機用途廃止されたが、解体した機体は一部であると認めています。

 F-117は年間4機が解体されているが飛行可能な水準に維持されており、必要に応じ訓練に参加すると発表、2021年時点で48機が運用中です。今回は第144戦闘航空団のF-15部隊への対ステルス機戦闘能力養成が目的であり、この訓練へはF-117が2機が参加しています。F-117は運用費用の高さが指摘されていますが、運用飛行隊などは発表されていません。
■ロシアMiG-31改修へ
 F-15Jと並ぶ迎撃専用機であるMiG-31も新しい時代への変化を遂げるもよう。

 ロシア航空宇宙軍はMiG-31戦闘機の抜本的近代化改修を本格化させる、抜本的近代化改修とはキンジャール極超音速ミサイル運用能力を有するMiG-31Kと能力向上型であるMiG-31BM戦闘機への改修、特にMiG-31K改修により迎撃専用機であったMiG-31は空中発射短距離弾道ミサイルというべきミサイルを投射する強力な航空打撃力へ一新しよう。

 MiG-31BM戦闘機への改修はArgon-Kレーダーにより探知能力が320kmへ延伸すると共にBaget55-06火器管制装置により24目標を追尾し脅威度の高い4目標へ同時対処する。MiG-31は世界でも少数派となった迎撃専用機で、編隊情報共有による擬似早期警戒機機能を有するなど高い水準であるが、この改修により能力は2.6倍に強化されるとされている。
■MC-130Jを水上機へ改造
 US-2では駄目なのだろうかと真剣に考える、巨大なフロートを装着すれば後部カーゴハッチなどは使えなくなるのに。

 アメリカ特殊作戦軍USSOCOMはMC-130J特殊戦輸送機水上機型の開発を発表しました。MC-130J特殊戦輸送機はC-130シリーズの最新型であるC-130Jの特殊作戦支援型であり、特殊部隊の支援やその展開及び特殊作戦ヘリコプターへの空中給油等を任務としています。この航空機を水上から発着可能な水上機へ改修するという大胆といえるもの。

 MC-130J特殊戦輸送機水上機型は動体の設計をそのままに巨大なふたつのフロートを装着し海上から発着する構想で、飛行艇のような胴体再設計を含まない分、迅速に実用化できる一方、抵抗の大きさから構造上波浪の無い静水面での発着に限られる。飛行艇ではなく水上に発着できる輸送機として、早ければ2022年にも試作機を完成させる方針とのこと。
■MQ-25無人艦上給油機
 MQ-25はステルス性もある為に最前線まで給油に展開できると共に万一撃墜されても人的損害は避けられるという利点があります。

 アメリカ海軍が評価試験を進めるMQ-25スティングレイ無人機はE-2Dホークアイ早期警戒機との給油試験に成功しました。これは8月18日にセントルイスより試験飛行を実施した際に第20航空試験評価飛行隊所属のE-2Dが給油を受けました。MQ-25スティングレイ無人機同士の、F/A-18Eへの給油試験に続きE-2Dは無人機から給油を受けた有人機です。

 MQ-25スティングレイ無人機は無人戦闘機や無人攻撃機としての任務を想定し、ニミッツ級空母やジェラルドフォード級空母から運用される航空機ですが、無人戦闘機としては技術が充分ではなく、ステルス空中給油機として用いられる事となりました。MQ-25スティングレイ無人機は燃料タンクを搭載しホースを展開するバディ給油という方式を採ります。

 E-2Dホークアイ早期警戒機からの空中給油、海軍は空母には大型の空中給油機を搭載出来ない為、バディ給油としてF/A-18E戦闘攻撃機などを空中給油に用いていますが、これは言い換えれば貴重な戦闘攻撃機を支援任務に用いる事に他なりません、この為、性能面で現在未だ充分ではない部分のある無人航空機の転用は、ある意味で合理的と云えましょう。
■マレーシアへMiG-35売込み
 MiG-35はF-2戦闘機と同じ4.5世代戦闘機でインド空軍等へも提案されていますがラファールに敗れています。

 マレーシア空軍次期軽戦闘機計画へロシアはMiG-35戦闘機を提案すると正式に発表しました。マレーシア空軍は旧式化したホーク200軽戦闘機とホーク高等練習機の後継機を模索しています。ホーク200軽戦闘機の後継機にMiG-35戦闘機は如何にも大袈裟であるよう思えますが、ロシアはYaK-130軽戦闘機とのパッケージを提案しているもようです。

 MiG-35戦闘機はMiG-29戦闘機改良の最新型で、マレーシア空軍次期軽戦闘機計画へは中国パキスタン共同開発のJF-17戦闘機やインドの新型戦闘機LCA-Mk1A戦闘機が提案されているとされ、ホーク軽戦闘機が量産されたような安価で実用性ある軽戦闘機というものが国際市場に存在しないという現代航空機市場の特性を顕在化した選定ともいえましょう。
■F-16再生産へイスラエル参加
 この調子でF-2を再生産できればなあと思ったりもするのですが。2040年代を考えればF-16は良いとも言えないが予算面で現実的だ。

 イスラエルのIAIはライセンス生産用F-16主翼工場を再稼働させるとのこと。IAIイスラエルエアロスペースインダストリーズ社は、ロッキード社が新たに稼働させるサウスカロライナ州グリーンビルのF-16戦闘機製造ラインへ主翼を供給する事が決定しました。これは従来のフォートワース工場F-16製造ラインをF-35製造ラインへ転用した影響です。

 IAIイスラエルエアロスペースインダストリーズ社は世界的に需要が高まりつつあるF-16戦闘機、その最新のblock72等を製造するに当たり、従来のアメリカ一国での部品供給網を見直し、下請けとして選定された構図です。アメリカ空軍はF-16追加の計画こそありませんが、世界は第4.5世代であるF-16最新型をまだまだ必要としているといえましょう。
■カザフスタンA-400M採用
 日本も真剣にC-2輸送機を売り込んでみる機会だったのかもしれない。

 カザフスタン空軍はエアバスA-400M輸送機2機を取得すると発表した。現在空軍にはCASA-C-295輸送機を運用している、これは空挺兵48名や人員75名、もしくは貨物を9.2tまで輸送可能なターボプロップ輸送機であるが、カザフスタン空軍は、その性能を充分と考えておらず、今回、敢えて大型で高性能であるエアバスA-400M輸送機取得を決定した。

 エアバスA-400M輸送機の引き渡しは2024年に予定されているという。エアバス社によればこのカザフスタンの契約によりエアバスA-400M輸送機運用国は9か国となり、また生産予定数も176機となる。エアバスは現在同社が整備を担当するCASA-C-295輸送機の近代化改修を行うとともに、A-400Mの定期的なメンテナンスと運用支援も行うとの事だ。
■WIG地面効果機へ米国関心
 日本のUS-1がかすむほどの冷戦時代の航空機で飛行艇の怪物のようなオリョーノクの再来は実現するのか。

 アメリカ国防高等研究所DARPAは新たにWIG地面効果航空機の研究を開始する、8月18日に防衛事業各社へRFI情報要求を開示しました。WIG地面効果航空機は冷戦時代のソ連がカスピ海モンスターやオリョーノクとして実現させた地面と航空機の中間圧縮空気を利用し、超低空を高速滑空する航空機と船舶の中間に当るような大型水上航空機です。

 WIG地面効果航空機をDARPAが研究する背景には、今後想定される太平洋などでの島嶼部戦において100t以上の従来の航空機よりも遥かに多数の物資や装備品を、船舶よりも遥かに迅速に輸送する必要があるためで、海上における輸送プラットフォームを一大転換させ、EABO遠征前進基地部隊構想やDMO分散海上作戦構想などを実現させる構想です。
■インド,中古ミラージュ輸入
 インド空軍の話題となりますと、そういえば小松基地にSu-27を訓練展開させる話はどう名たのだろうと思ってしまいますよね。

 インド空軍はフランスよりミラージュ2000戦闘機中古機24機の取得を発表しました。ミラージュ2000戦闘機の中古契約は2700万ユーロで、フランス空軍において用途廃止となった機体がそのままインド空軍に渡され、多くは予備部品供給に用いられますが、この内8機は作戦飛行可能な状態で渡され、整備中の予備機としても対応できるとのこと。

 ミラージュ2000戦闘機は1985年にインド空軍へ採用され、フランスとの整備契約は2005年で満了しており、インド国内での整備支援を受けている状態です。しかし、インドは新しくフランス製ラファール戦闘機の導入を開始しており、これを機に更なるラファールの採用まで繋ぎとしてミラージュ2000戦闘機中古機を受領、既存機の稼働率へ寄与させます。
■スーパーホーネット最新型
 F/A-18F-blockⅢスーパーホーネットはサイレントホーネットの話題もここ数年きかなくなりスーパーホーネットをスーパーホーネットで置換える時代も来るのかと心配します。

 アメリカ海軍は最新のF/A-18F-blockⅢスーパーホーネットの受領を開始しました。これはボーイング社との間で78機の新造機で、2019年に40億ドルで契約されています。新型機は従来のスーパーホーネットと比較し将来戦闘においても高い生存性を有しているとともに情報表示装置が一新され、操縦士への状況認識の容易性が強化されたとしています。

 F/A-18F-blockⅢスーパーホーネットについて、ボーイング社ではスーパーホーネットの生産ラインを2030年まで維持するとともに、既存のF/A-18F-blockⅡについてもF/A-18F-blockⅢへ順次改良と延命改修がなされるとしています。ただ、今回受領した初号機はアメリカ海軍での評価試験を受けるといい、実戦部隊飛行隊の配備はもう少し先です。
■ドイツ,P-8A導入決定
 ボーイングP-8Aポセイドンが自由主義世界にとりほぼ唯一の現実的な選択肢なのかもしれませんね。

 ドイツ海軍はボーイングP-8Aポセイドン海洋哨戒機5機の調達をボーイング社との間で契約したとのこと。ドイツ海軍は現在P-3Cオライオン哨戒機を運用していますが、老朽化が進んでおり、後継機を必要としていました。P-8A 哨戒機はドイツ海軍においてESG–GmbH社とルフトハンザテクノロジー社が整備支援及び運用支援を行うこととなります。

 P-8Aポセイドン海洋哨戒機は2024年にドイツ海軍へ配備が開始されるという。ドイツはこれにより、アメリカ、オーストラリア、インド、イギリス、ノルウェー、韓国、ニュージーランドに続く第八のP-8Aポセイドン海洋哨戒機運用国となります。アメリカは本機種の国際運用基盤構築も構想、2030年代に向けての新しい防衛協力となるかもしれません。
■アルゼンチンJF-17輸入断念
 JF-17戦闘機はお財布に限界のある国の中で中古のF-16よりも無難な選択肢と云えるのかもしれない。

 アルゼンチン国防省は同国空軍が希望していたJF-17戦闘機導入を却下しました。アルゼンチン空軍はダガー戦闘機など若干数の戦闘機を保有していますが何れも老朽化が著しく、後継機を選定していました。この為に安価で性能も充分のJF-17戦闘機が模索されていましたが、アルゼンチンはイギリスとの間で外交上の摩擦が続き、影響していました。

 JF-17戦闘機は12機を6億6400万ドルで取得する計画でしたが、JF-17戦闘機はイギリスのマーチンベーカー製射出座席を採用しており、イギリスが輸出を拒否した形です。アルゼンチン空軍は同じ理由でスウェーデン製JAS-39や韓国製FA-50戦闘機も導入不能となっており、国防省はロシアとの間でSu-35戦闘機の導入を模索していると伝えられます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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