週報:世界の防衛,最新11論点
今回は陸軍関連の11の話題を集めました。陸上自衛隊も予算の枠よりも戦力と抑止力というものを真剣に考える為には欧州はじめ各国の努力をもう少し参考とすべき様に思うのです。
スロバキア軍は次期装甲戦闘車としてスウェーデン製CV-90装甲戦闘車を選定しました、スロバキア軍では冷戦時代の老朽化した東側仕様のBMP-2装甲戦闘車を置き換えるべく次期装甲戦闘車を選定していました。今回選定されたのはCV-90の最新仕様となるCV-90-mk4となります。今回CV-90が選定されたのは現地生産方式が評価されました。
CV-90はスウェーデンのFMV社による設計ですが流通はBAEシステムズ社が担当しています、BAE社はスロバキアの防衛産業と部分生産や最終組立及び定期整備や維持部品生産による合弁会社や提携を提示しています。CV-90はスウェーデン、ノルウェー、スイス、デンマーク、エストニア、フィンランド、オランダで採用、欧州標準的な装甲戦闘車です。
40mm機関砲を搭載するCV-90はスウェーデン積雪地域を想定した幅広の履帯を採用した為に重量増大に対しても設置圧増大を実用範疇に収める事が出来、一方で40mmCTA機関砲や35mm機関砲に30mm無人砲塔や機銃を搭載しない兵員輸送型など多種多様な運用に対応し、また105mm軽戦車型や120mm自走迫撃砲など派生型の柔軟さも有名です。
エイブラムスにトロフィー
日本の戦車も真剣に対戦車ミサイルへのアクティヴ防御を考える時代が来ているのですが、その際には随伴する普通科への被害を想定し装甲車の配備も並行してすすめねばなりません。
アメリカ国防総省はM-1A2SEP-V3戦車へのトロフィアクティヴ防護システム搭載についての固定価格契約を成約しました。これは7月7日にジェネラルダイナミクスランドシステムズ社との間で契約したもので、2億8011万2700万ドルの契約となっていて、2027年7月7日までに完了する事となっています。トロフィはイスラエルのラファエル社製だ。
トロフィアクティヴ防護システムはミリ波レーダーにより戦車の重大な脅威となっている対戦車ミサイルの接近を感知すると迎撃用擲弾を自動発射し戦車に命中前に撃墜する構造となっています、戦車砲の徹甲弾等に対しては全く用を為しませんが、近年増大する対戦車ミサイル脅威に対しては、特に新型のミサイルを含めて高い効果があるとされています。
M-1A2SEP-V3戦車へのトロフィアクティヴ防護システム搭載は砲塔左右側面のラック部分にレーダーと擲弾投射機と再装填装置、及び擲弾発射時の乗員防護板が追加する方式で対応します、M-1A2SEP-V3は正面装甲では頑丈な劣化ウラン装甲が採用され極めて堅い戦車ですが、戦車上部や側面を狙う対戦車ミサイルには防御力の限界が指摘されていました。
MPFにグリフィン
自衛隊の地域配備師団も戦車を廃止するならばこのくらいの装備は必要だ。
アメリカ陸軍は6月29日、次期軽戦車MPFにジェネラルダイナミクス社案グリフィン軽戦車を決定し96両を11億4000万ドルにて取得します。グリフィンはスペインとオーストリアが共同開発したASCOD装甲戦闘車の軽戦車型で、ASCOD-105軽戦車とは別にジェネラルダイナミクス社が開発したM-1戦車砲塔コンパクト型105mm砲塔を搭載します。
MPFは陸軍の歩兵旅団戦闘団へ配備される計画で評価試験には第82空挺師団が参加している、陸軍にはM-1A2SPE2主力戦車等を装備する機甲旅団戦闘団とストライカー装輪装甲車を装備する旧称ミディアム旅団ことストライカー旅団戦闘団、そしてハンヴィーと牽引式105mm砲を装備する歩兵旅団戦闘団がありますが、歩兵の重装備不足が課題でした。
グリフィンは重量28tで今回採用されたのは装甲強化型のグリフィンⅡに当り戦闘重量は38t、XM-35-105mm戦車砲を搭載しています。配備開始は2023年から2025年にかけ。ただ、ASCODの派生型としてイギリスが採用したエイジャックス装甲偵察車は、上院の精神に問題を起こす程の振動と騒音問題に曝され部隊配備が遅れており留意事項といえます。
MPF選定の舞台裏
ある意味もっとも妥当と思える装備なのですけれども設計が1990年代では古過ぎたということでしょう。
アメリカ陸軍のMPF軽戦車計画はジェネラルダイナミクス社製グリフィンが採用されましたがもう一つはBAE社が提案を行っていました。BAEは今回の選定について、コンプライアンス違反が在った為に決定から脱落しており、事実上グリフィン一択であった事が分ります。BAE社は1990年代に空挺部隊用に開発されたXM-8軽戦車を提案しました。
XM-8軽戦車はM-551シェリダン軽戦車の後継としてユナイテッドディフェンス社が開発したもので、戦闘重量は基本型が19.25tと軽量でありC-130輸送機への搭載能力を持ち空挺投下にも対応している。ただ、今回のMPFは空挺投下は要求されず、また対戦車戦闘能力も要求された為、基本設計に限界が指摘されています。しかし、それ以前の問題でした。
スイスがペトリオット
欧州ではアスターシリーズもありますのでアメリカ製に落ち着いたというのはF-35とのデータリンクの関係でしょうか。
スイス政府は次期地対空ミサイルとしてアメリカのレイセオン社製ペトリオットミサイル導入に関する21億ドルの予算案を議会に提出しました。スイス政府は同時にF-35戦闘機に関する55億ドルの予算を提出しており、これはスイス空軍のAIR-2030計画に基づく防空能力近代化として次期戦闘機と次期地対空ミサイルを同時に選定していたためです。
MIM-104ペトリオットミサイル、広域防空システムであると共に准中距離弾道弾を含むミサイル脅威にも対応する点が評価されました。スイス空軍は5個射撃中隊所要を導入する計画で、重ねてAN/MPQ-53を3基導入します。なお、その牽引車について、スイス空軍では兵站共通化の観点からオシコシ社製ではなくイヴェコ社製輸送車両を用いる予定です。
K-808KW2指揮通信車
自衛隊もそろそろ82式指揮通信車の後継を考えねばなりません、なにしろ232両もそろえたのですから例えばNBC偵察車との車体統合など。
韓国軍はヒュンダイロテム社製K-808KW2指揮通信車の量産調達を開始します。韓国陸軍は元来、北朝鮮の南侵からの首都ソウル防衛という必要上から、師団司令部などの指揮所は地下に固定される仮設式が採用されていましたが、機械化部隊の機動戦を指揮するには移動式の指揮通信車が必要であるとの認識から、K-808装甲車派生型が開発されました。
K-808KW2指揮通信車は八輪指揮のK-808を転用、同車には六輪型のK-806も量産されています、K-808は420hpのディーゼルエンジンを採用し小銃弾や砲弾片等から人員を防護する装輪装甲車で、在韓米軍として展開しているアメリカ陸軍ストライカー旅団戦闘団のストライカー装甲車が示した実績から、装輪装甲車の必要性を認識し開発されたものです。
レオパルド1改良計画
これ要するに74式戦車に16式機動戦闘車の砲塔を載せるという様な発想なのでしょうね。
ベルギーのコッカリル社はユーロサトリ2022国際装備展にてレオパルド1近代化砲塔コッカリル3105砲塔を発表しました。レオパルド1戦車は1963年にドイツのラインメタル社が開発した第一世代戦車で、ドイツでは2003年に運用が終了しましたが、輸出先ではまだ運用中の国があり、またベルギーでは用途廃止車輛が准稼働状態で保管されています。
コッカリル3105砲塔は電動式砲塔で仰角45度の105mm主砲と12発の砲弾を内蔵する自動装填装置を搭載、現用に対応する戦闘照準装置やデータリンク装置を一体化させています。この砲塔の利点は24時間以内に既存レオパルド1戦車砲塔と交換可能であり、中古市場に最適で、砲塔としてはインドネシアのハリマウ軽戦車にも採用された実績があります。
ナイジェリアが中古シミター
60式自走無反動砲の同世代程に設計が古く何故現役だったのだろうと考えさせられるもの。
ナイジェリア軍はヨルダンより中古のシミター装甲偵察車を受領しました。ヨルダン軍は2006年にイギリスで余剰となったシミター装甲偵察車175両を2000万ドルで取得しており、今回その一部を売却したかたち。ナイジェリア軍は国内のイスラム過激派との戦闘を背景に、限られた予算でも揃えられる多種多様な中古装備を取得し種類を増やしている。
シミター装甲偵察車はイギリスで1971年に開発された装軌式小型装甲車で重量は僅か7.8t、車体も前長4.9mで全高は砲塔を含めても2.1mしかありません、しかし強力なL-21/30mm機関砲を搭載していて、車体共通の姉妹車両に76mm低圧砲を搭載したスコーピオン軽戦車が開発されています、小型軽量で装軌式ながら最高速度85km/hを発揮するのが特色です。
パトリアAMV改良型
自衛隊に採用される事もあるのでしょうか。
フィンランドのパトリア社はユーロサトリ2022においてAMV装甲車多数を展示しました、AMV装甲車はモジュール式装甲車ですが屋内展示と屋外展示とともに機動展示も実施し、各国へ売り込みを強化しています。パトリアAMVは装輪装甲車ですが、非常に防御力が高い事でも知られ、正面装甲は30mmAP弾、BMP-2装甲車の機関砲攻撃に耐えるほど。
展示では八輪型とともに六輪の多目的輸送型も並び、機動展示にはパトリアNEMO-120mm自走迫撃砲型が参加、この自走迫撃砲は行進間射撃が可能となっており、間接照準の機動砲兵システムとして高い生存性を有し各国から注目を集めています。パトリア社ではAMVシリーズにより全ての陸軍戦闘システムを完結できると強調しています。
空中発射ミッションシステム
複合ヘリコプター時代が到来しますと現状の攻撃ヘリコプターはどのように生き残るのでしょうか。
アメリカ陸軍はコリンズエアロスペース社との間でヘリコプター空中発射ミッションシステム開発を契約しました、これは多用途ヘリコプターからの無人航空機運用能力等を想定したもので、現在アメリカ陸軍では対地攻撃能力は主としてAH-64E/D戦闘ヘリコプターに依存していますが、多用途ヘリコプターから徘徊式弾薬の投射も構想しています。
ヘリコプター空中発射ミッションシステムとは多用途ヘリコプターから徘徊式弾薬の投射を想定したもので、既に構成要素の研究としてUH-60多用途ヘリコプターからのALTIUS600UAV発進試験が行われています。今回は小型フォームからのミッションコンピューターとデータリンクの結合を想定し、発射試験に続く管制試験などがふくまれている。
将来ヘリコプターFVL計画の一環として行われるこの計画では、特に小規模の空中機動作戦において将来多用途航空機からの無人機による空中機動に先立っての情報優位の獲得や徘徊式弾薬による対地攻撃などを想定していると考えられます。システムはモジュール方式を想定していて、既存の多用途ヘリコプターキャビンに搭載する事も想定されています。
ストライカーTLS-BCT
ストライカー装甲車も年々改良が重ねられますが故にマルチキャリアとしての運用も広がっています。
アメリカ陸軍はサイバー戦対応のストライカーTLS-BCT装甲車調達に関してロッキードマーティン社と契約を結びました。これは7月13日に発表されたもので、契約金額は5880万ドル、試作車両は2023年10月までに納入されるとのこと。現在の戦場は多数のデータリンクと指揮統制に加えて無人航空機が飛び交い、将来は地上無人車輛も増加します。
ストライカーTLS-BCT装甲車はストライカー装輪装甲車を元に複数のアンテナと複合アレイアンテナや通信装置を搭載しており、敵通信システムの検出と妨害や遮断と位置標定、友軍通信装置の防護とサイバー攻撃対策を行うとのこと。なお、これまでの構成要素研究ではストライカー装甲車の電源能力の問題が指摘され、この解決も契約に含まれています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回は陸軍関連の11の話題を集めました。陸上自衛隊も予算の枠よりも戦力と抑止力というものを真剣に考える為には欧州はじめ各国の努力をもう少し参考とすべき様に思うのです。
スロバキア軍は次期装甲戦闘車としてスウェーデン製CV-90装甲戦闘車を選定しました、スロバキア軍では冷戦時代の老朽化した東側仕様のBMP-2装甲戦闘車を置き換えるべく次期装甲戦闘車を選定していました。今回選定されたのはCV-90の最新仕様となるCV-90-mk4となります。今回CV-90が選定されたのは現地生産方式が評価されました。
CV-90はスウェーデンのFMV社による設計ですが流通はBAEシステムズ社が担当しています、BAE社はスロバキアの防衛産業と部分生産や最終組立及び定期整備や維持部品生産による合弁会社や提携を提示しています。CV-90はスウェーデン、ノルウェー、スイス、デンマーク、エストニア、フィンランド、オランダで採用、欧州標準的な装甲戦闘車です。
40mm機関砲を搭載するCV-90はスウェーデン積雪地域を想定した幅広の履帯を採用した為に重量増大に対しても設置圧増大を実用範疇に収める事が出来、一方で40mmCTA機関砲や35mm機関砲に30mm無人砲塔や機銃を搭載しない兵員輸送型など多種多様な運用に対応し、また105mm軽戦車型や120mm自走迫撃砲など派生型の柔軟さも有名です。
エイブラムスにトロフィー
日本の戦車も真剣に対戦車ミサイルへのアクティヴ防御を考える時代が来ているのですが、その際には随伴する普通科への被害を想定し装甲車の配備も並行してすすめねばなりません。
アメリカ国防総省はM-1A2SEP-V3戦車へのトロフィアクティヴ防護システム搭載についての固定価格契約を成約しました。これは7月7日にジェネラルダイナミクスランドシステムズ社との間で契約したもので、2億8011万2700万ドルの契約となっていて、2027年7月7日までに完了する事となっています。トロフィはイスラエルのラファエル社製だ。
トロフィアクティヴ防護システムはミリ波レーダーにより戦車の重大な脅威となっている対戦車ミサイルの接近を感知すると迎撃用擲弾を自動発射し戦車に命中前に撃墜する構造となっています、戦車砲の徹甲弾等に対しては全く用を為しませんが、近年増大する対戦車ミサイル脅威に対しては、特に新型のミサイルを含めて高い効果があるとされています。
M-1A2SEP-V3戦車へのトロフィアクティヴ防護システム搭載は砲塔左右側面のラック部分にレーダーと擲弾投射機と再装填装置、及び擲弾発射時の乗員防護板が追加する方式で対応します、M-1A2SEP-V3は正面装甲では頑丈な劣化ウラン装甲が採用され極めて堅い戦車ですが、戦車上部や側面を狙う対戦車ミサイルには防御力の限界が指摘されていました。
MPFにグリフィン
自衛隊の地域配備師団も戦車を廃止するならばこのくらいの装備は必要だ。
アメリカ陸軍は6月29日、次期軽戦車MPFにジェネラルダイナミクス社案グリフィン軽戦車を決定し96両を11億4000万ドルにて取得します。グリフィンはスペインとオーストリアが共同開発したASCOD装甲戦闘車の軽戦車型で、ASCOD-105軽戦車とは別にジェネラルダイナミクス社が開発したM-1戦車砲塔コンパクト型105mm砲塔を搭載します。
MPFは陸軍の歩兵旅団戦闘団へ配備される計画で評価試験には第82空挺師団が参加している、陸軍にはM-1A2SPE2主力戦車等を装備する機甲旅団戦闘団とストライカー装輪装甲車を装備する旧称ミディアム旅団ことストライカー旅団戦闘団、そしてハンヴィーと牽引式105mm砲を装備する歩兵旅団戦闘団がありますが、歩兵の重装備不足が課題でした。
グリフィンは重量28tで今回採用されたのは装甲強化型のグリフィンⅡに当り戦闘重量は38t、XM-35-105mm戦車砲を搭載しています。配備開始は2023年から2025年にかけ。ただ、ASCODの派生型としてイギリスが採用したエイジャックス装甲偵察車は、上院の精神に問題を起こす程の振動と騒音問題に曝され部隊配備が遅れており留意事項といえます。
MPF選定の舞台裏
ある意味もっとも妥当と思える装備なのですけれども設計が1990年代では古過ぎたということでしょう。
アメリカ陸軍のMPF軽戦車計画はジェネラルダイナミクス社製グリフィンが採用されましたがもう一つはBAE社が提案を行っていました。BAEは今回の選定について、コンプライアンス違反が在った為に決定から脱落しており、事実上グリフィン一択であった事が分ります。BAE社は1990年代に空挺部隊用に開発されたXM-8軽戦車を提案しました。
XM-8軽戦車はM-551シェリダン軽戦車の後継としてユナイテッドディフェンス社が開発したもので、戦闘重量は基本型が19.25tと軽量でありC-130輸送機への搭載能力を持ち空挺投下にも対応している。ただ、今回のMPFは空挺投下は要求されず、また対戦車戦闘能力も要求された為、基本設計に限界が指摘されています。しかし、それ以前の問題でした。
スイスがペトリオット
欧州ではアスターシリーズもありますのでアメリカ製に落ち着いたというのはF-35とのデータリンクの関係でしょうか。
スイス政府は次期地対空ミサイルとしてアメリカのレイセオン社製ペトリオットミサイル導入に関する21億ドルの予算案を議会に提出しました。スイス政府は同時にF-35戦闘機に関する55億ドルの予算を提出しており、これはスイス空軍のAIR-2030計画に基づく防空能力近代化として次期戦闘機と次期地対空ミサイルを同時に選定していたためです。
MIM-104ペトリオットミサイル、広域防空システムであると共に准中距離弾道弾を含むミサイル脅威にも対応する点が評価されました。スイス空軍は5個射撃中隊所要を導入する計画で、重ねてAN/MPQ-53を3基導入します。なお、その牽引車について、スイス空軍では兵站共通化の観点からオシコシ社製ではなくイヴェコ社製輸送車両を用いる予定です。
K-808KW2指揮通信車
自衛隊もそろそろ82式指揮通信車の後継を考えねばなりません、なにしろ232両もそろえたのですから例えばNBC偵察車との車体統合など。
韓国軍はヒュンダイロテム社製K-808KW2指揮通信車の量産調達を開始します。韓国陸軍は元来、北朝鮮の南侵からの首都ソウル防衛という必要上から、師団司令部などの指揮所は地下に固定される仮設式が採用されていましたが、機械化部隊の機動戦を指揮するには移動式の指揮通信車が必要であるとの認識から、K-808装甲車派生型が開発されました。
K-808KW2指揮通信車は八輪指揮のK-808を転用、同車には六輪型のK-806も量産されています、K-808は420hpのディーゼルエンジンを採用し小銃弾や砲弾片等から人員を防護する装輪装甲車で、在韓米軍として展開しているアメリカ陸軍ストライカー旅団戦闘団のストライカー装甲車が示した実績から、装輪装甲車の必要性を認識し開発されたものです。
レオパルド1改良計画
これ要するに74式戦車に16式機動戦闘車の砲塔を載せるという様な発想なのでしょうね。
ベルギーのコッカリル社はユーロサトリ2022国際装備展にてレオパルド1近代化砲塔コッカリル3105砲塔を発表しました。レオパルド1戦車は1963年にドイツのラインメタル社が開発した第一世代戦車で、ドイツでは2003年に運用が終了しましたが、輸出先ではまだ運用中の国があり、またベルギーでは用途廃止車輛が准稼働状態で保管されています。
コッカリル3105砲塔は電動式砲塔で仰角45度の105mm主砲と12発の砲弾を内蔵する自動装填装置を搭載、現用に対応する戦闘照準装置やデータリンク装置を一体化させています。この砲塔の利点は24時間以内に既存レオパルド1戦車砲塔と交換可能であり、中古市場に最適で、砲塔としてはインドネシアのハリマウ軽戦車にも採用された実績があります。
ナイジェリアが中古シミター
60式自走無反動砲の同世代程に設計が古く何故現役だったのだろうと考えさせられるもの。
ナイジェリア軍はヨルダンより中古のシミター装甲偵察車を受領しました。ヨルダン軍は2006年にイギリスで余剰となったシミター装甲偵察車175両を2000万ドルで取得しており、今回その一部を売却したかたち。ナイジェリア軍は国内のイスラム過激派との戦闘を背景に、限られた予算でも揃えられる多種多様な中古装備を取得し種類を増やしている。
シミター装甲偵察車はイギリスで1971年に開発された装軌式小型装甲車で重量は僅か7.8t、車体も前長4.9mで全高は砲塔を含めても2.1mしかありません、しかし強力なL-21/30mm機関砲を搭載していて、車体共通の姉妹車両に76mm低圧砲を搭載したスコーピオン軽戦車が開発されています、小型軽量で装軌式ながら最高速度85km/hを発揮するのが特色です。
パトリアAMV改良型
自衛隊に採用される事もあるのでしょうか。
フィンランドのパトリア社はユーロサトリ2022においてAMV装甲車多数を展示しました、AMV装甲車はモジュール式装甲車ですが屋内展示と屋外展示とともに機動展示も実施し、各国へ売り込みを強化しています。パトリアAMVは装輪装甲車ですが、非常に防御力が高い事でも知られ、正面装甲は30mmAP弾、BMP-2装甲車の機関砲攻撃に耐えるほど。
展示では八輪型とともに六輪の多目的輸送型も並び、機動展示にはパトリアNEMO-120mm自走迫撃砲型が参加、この自走迫撃砲は行進間射撃が可能となっており、間接照準の機動砲兵システムとして高い生存性を有し各国から注目を集めています。パトリア社ではAMVシリーズにより全ての陸軍戦闘システムを完結できると強調しています。
空中発射ミッションシステム
複合ヘリコプター時代が到来しますと現状の攻撃ヘリコプターはどのように生き残るのでしょうか。
アメリカ陸軍はコリンズエアロスペース社との間でヘリコプター空中発射ミッションシステム開発を契約しました、これは多用途ヘリコプターからの無人航空機運用能力等を想定したもので、現在アメリカ陸軍では対地攻撃能力は主としてAH-64E/D戦闘ヘリコプターに依存していますが、多用途ヘリコプターから徘徊式弾薬の投射も構想しています。
ヘリコプター空中発射ミッションシステムとは多用途ヘリコプターから徘徊式弾薬の投射を想定したもので、既に構成要素の研究としてUH-60多用途ヘリコプターからのALTIUS600UAV発進試験が行われています。今回は小型フォームからのミッションコンピューターとデータリンクの結合を想定し、発射試験に続く管制試験などがふくまれている。
将来ヘリコプターFVL計画の一環として行われるこの計画では、特に小規模の空中機動作戦において将来多用途航空機からの無人機による空中機動に先立っての情報優位の獲得や徘徊式弾薬による対地攻撃などを想定していると考えられます。システムはモジュール方式を想定していて、既存の多用途ヘリコプターキャビンに搭載する事も想定されています。
ストライカーTLS-BCT
ストライカー装甲車も年々改良が重ねられますが故にマルチキャリアとしての運用も広がっています。
アメリカ陸軍はサイバー戦対応のストライカーTLS-BCT装甲車調達に関してロッキードマーティン社と契約を結びました。これは7月13日に発表されたもので、契約金額は5880万ドル、試作車両は2023年10月までに納入されるとのこと。現在の戦場は多数のデータリンクと指揮統制に加えて無人航空機が飛び交い、将来は地上無人車輛も増加します。
ストライカーTLS-BCT装甲車はストライカー装輪装甲車を元に複数のアンテナと複合アレイアンテナや通信装置を搭載しており、敵通信システムの検出と妨害や遮断と位置標定、友軍通信装置の防護とサイバー攻撃対策を行うとのこと。なお、これまでの構成要素研究ではストライカー装甲車の電源能力の問題が指摘され、この解決も契約に含まれています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)