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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

AH-2/UH-2新対戦車ヘリの可能性を考える【4】対戦車ヘリコプターの運用ノウハウ継承と世界市場

2024-02-17 20:15:44 | 先端軍事テクノロジー
■安価な選択肢として
 国際市場の戦闘ヘリコプターを見ますと例外が無いわけではないのですが全般的に専用機はたかくなっています。

 AH-64EアパッチガーディアンにAH-1ZバイパーとEC-665/PAH-2ユーロコプタータイガー、主な戦闘ヘリコプターは三機種ですがいずれも9000万ドルから1億ドル以上、F-2戦闘機よりも高い。製造時期が違うために安易に比較することはできませんが、年間1機の維持生産であった最末期のAH-1Sと比較して3倍、富士重工のAH-64Dの倍だ。

 UH-2派生のAH-2を開発するならば安価な選択肢となるとともに、なにより整備互換性が高まり、もちろん欠陥が判明した場合には全機使用停止となる可能性は生じますが、短期間の欠陥の可能性を考えてむやみに機種を増やし運用コストを高めるよりは、万一の欠陥に備えて是正体制を盤石とするほうが重要です、すると分母は多い方が良い訳ですよ。

 AH-2,要するに射程の長い対戦車ミサイルを搭載できて、即座の致死性を発揮できる。ランセット無人機のような、解釈次第ではミサイルに区分されるものを簡単に日常的に飛行させることはできません。コストコストといいますと、それならばやはりガンシップで数を駆使する様な総当たりしてはどうか、と反論があるでしょうが、逆の難しさもある。

 ガンシップは、しかし前述しましたとおり生存性の問題があります、専用の機体は胴体が細身で対空砲火が当たりにくいとともに、細身であるぶんは装甲を施しても差ほど重量増加となりません、これも生存性を高める、ただ専用機は高価であり買えない国がある、ここにある程度の需要を見通すことができるのかもしれません。金が無いのはどこも同じ。

 アメリカ設計の機体といいますか、AH-2といわず既にAH-1があるのだからアメリカが反対するのではないか、もしくはF-16VとF-2戦闘機のように結局競合してしまって売れないのではないか、それならばAH-1ZのT-700に代えてPT6T-9エンジン、UH-2のエンジンを搭載したものを開発した方が整備面で有利では、といわれるかもしれないのですね。

 ベルヘリコプターテキストロン社は、おそらく歓迎します、それはUH-1Yヴェノムが輸出市場において苦戦している一方でスバルUH-2は少なからず採用国が増えていまして、ベル412の運用基盤を使えるとともになによりUH-2はUH-1Yよりも大幅に安価で、多用途ヘリコプターとして用いるのに十分、不足する性能や欠点が基本的に無いためでしょう。

 国際市場も、おそらく受け入れられる余地があります、それはAH-1Zが伸び悩み、その市場の隙間にトルコのTAI社製T-129ATAKのような安価な航空機が入っているためです。アメリカは冷戦時代にM-113やF-16とM-48にOHペリー級やC-130と、凡庸中庸といわれながら秀才といえるような安価な装備を世界に供給していましたが、いまはどうか。

 AH-2を開発し、ベルヘリコプターテキストロンがスバルAH-2として世界に提示した場合、費用を抑えて一定以上の性能を有しているならば、文字通りかつてAH-1Sのユーザーであった国が選択肢として受け入れられ得る。そしてもう一つ、日本の場合は96機を調達したAH-1Sの運用ノウハウを活かせる後継機の重要性という視座も必要でしょう。

 対戦車ヘリコプターの運用ノウハウ、戦域の段列地域など後方の航空基地よりも遙か前方に進出し、必要ならば即座の攻撃を行う。いっぽうでその実は航空機であるために方面隊単位の長距離展開を迅速に可能である。匍匐飛行で航空優勢の競合地域を踏破し地対空ミサイルの脅威さえ低空飛行のその下をかいくぐるのが匍匐飛行だ。訓練は大変ですが。

 MANDPSに代表される携帯地対空ミサイルに戦闘ヘリコプターの脆弱性が指摘され続けていますが、例えばその最新事例であるロシアウクライナ戦争では、フランス国防省の戦況分析によれば撃墜された機体は匍匐飛行ではなく低空飛行、MANDPSの有効射高を飛行したためという、匍匐飛行のノウハウの薄い要員が操縦していたための損害という構図で。

 自衛隊が有するノウハウ、いまならば継承できます。ただ、時間とともに厳しくなる、運用し続けることにより初めて継承できることがおおいことは、例えば行事一つとって僅か若干回のCOVID-19による中止が響いていることを目の当たりにされているでしょう。そうした意味でもUH-2からのAH-2の開発は必要な選択肢と考えるのですね。

 重要なのは無人航空機のノウハウが標的機くらいしか蓄積が無く出遅れている自衛隊が、中途半端に予算をつぎ込んで試験を行った結果、駄目だった、となった場合、対戦車ヘリコプター豚のノウハウが消滅した後では建て直すのに膨大な予算が掛かります、その予算を捻出できる見通しが無い、すると今あるものを維持する選択肢が合理的だと思うのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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