■小型装甲車としての設計
軽装甲機動車は当初小型装甲車という名称で研究されていました。
軽装甲機動車について。ここまで後継車両というものを中心に考えてきましたが、装備そのものの運用が当初の想定通りであったのか、という視点も必要なのかもしれません。もともと軽装甲機動車は、一個小銃班を3両に、現状は2両ですが開発当時は3両、分散させ機銃などの機動運用に充て、基本的に下車戦闘しない装甲車両として設計されました。
下車戦闘せず、一個小隊を従来の装甲車では3両乃至4両で運用したのに対し、一個小隊を3個小銃班に小隊長と合わせ10両を配備し、下車戦闘により装甲車から普通科隊員が散開せずとも、車両ごと散開している状態、という想定で設計されていたのです。しかし実際の運用では下車運用を執っています、この為に不規則な運用の装甲車となっている。
施錠する。小銃班に2両配備するということは運転手と車長だけで4名必要となりますので車両に操縦要員を残しますと下車戦闘のための人員が足らなくなる、その為に運転手は軽装甲機動車に施錠して相手に奪われないようにしたうえで全員突撃する、という運用が基本です。路上駐車された放置軽装甲機動車は、後続の部隊が後に回収するという。
機械化部隊は下車戦闘を可能な限り行わず実施する場合は短時間とする、2010年代以降の各国機械化部隊、特に装甲戦闘車を装備する部隊の基本はこのようになっています。つまり敵陣地、対戦車ミサイルや重機関銃で武装している、陣地の目の前まで接近できる重装甲と、そして制圧できる大口径機関砲を備え、故に装甲戦闘車は35t台まで重量化します。
CV-90装甲戦闘車などがまさにそうなのですが、スウェーデン軍の演習映像や訓練展示映像を見ますと、40mm機関砲で陣地からの反撃を封じ、なにせ3P弾という散弾を撃てる、機動力で近寄るとともに下車戦闘は敵陣地の20m前後で実施している、もちろんこの距離ならば掃討を終えて装甲戦闘車に戻るまで数十秒しか要さない実に短いものでした。
M-2ブラッドレイ装甲戦闘車が大量配備された時代には、下車歩兵についてはかなり柔軟な運用が想定されていましたし、米軍教範などを見ますと機動防御に際しても装甲戦闘車から下車して陣地構築など、ちょっと現代の装甲戦闘車の運用からはかけ離れた視点も記されていて、設計当時の軽装甲機動車運用はある意味画期的ですが、現実は違った。
機動防御、機動打撃、機甲部隊の運用には様々な要素が挙げられますが、実態としては単純な地点にこもることでの主導権の奪い合い、というものではなく機甲部隊の運用は現在、常に戦線を流動的に動くことで能動的に主導権を確保する、相手に新しい選択肢を突き付け続ける、と理解されています。つまり、運用の方式は進化しているといえるでしょう。
下車戦闘を避けることで機動力を発揮しようとした軽装甲機動車ですが、設計時点の構想に対して実際には下車したらば施錠し、結果動かすことのできない装甲車、結果的に機動力は徒歩の水準に落ちたままです。すると、自衛隊が軽装甲機動車を導入した当時に思い描いた運用を実現するには、CV-90の様な重厚な装甲戦闘車が必要なのかもしれません。
軽装甲機動車は、設計時点の運用と実際の運用の相違点を示しましたが、逆に第一線部隊では、まあ、重心が高いために横転しやすい難点や高機動車ほど軽快にうごく事ができない装甲車ゆえの重さなどが指摘されますが、安いという事はさておき、現場の部隊には“数が揃っている装甲車”、装備数でも稼働数でも、という点が評価されている点も重要です。
軽装甲機動車の後継装備に難しいところは、下車戦闘せずに機動運用する、という運用体系そのものは現実の運用で為されなかったのだから最早配慮する必要はなく、例えば小型無人先頭車両などとの連携を考えた方が部隊当たりの車両数を増やすという目的にはかなっています、他方で、これにより車体はある程度大型化する余地があるのですが、さて。
取得費用の面はどこまで妥協するのか、つまり高性能で大きくなったことによる費用の増大で、数が揃っているという点から軽装甲機動車の後継足り得るかという視点が必要ですし、また安易に新型装備や海外製装備に飛びついた場合、稼働率という視点で軽装甲機動車の利点の一つであった、必要な時に必要な数が動くか、に影響が及ぶのも避けたい。
機動防御にしても機動打撃にしても、軽装甲機動車の後継車両を陸上自衛隊が導入する場合、もちろん斥候や指揮官連絡と観測点や警戒車両としての運用も含めて、陸上自衛隊として機械化部隊をどのような運用で実戦に対応させるのか、そしてほかの装備体系との連接性の確保、またどういう戦闘を想定しているか明確にしなければならないでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
軽装甲機動車は当初小型装甲車という名称で研究されていました。
軽装甲機動車について。ここまで後継車両というものを中心に考えてきましたが、装備そのものの運用が当初の想定通りであったのか、という視点も必要なのかもしれません。もともと軽装甲機動車は、一個小銃班を3両に、現状は2両ですが開発当時は3両、分散させ機銃などの機動運用に充て、基本的に下車戦闘しない装甲車両として設計されました。
下車戦闘せず、一個小隊を従来の装甲車では3両乃至4両で運用したのに対し、一個小隊を3個小銃班に小隊長と合わせ10両を配備し、下車戦闘により装甲車から普通科隊員が散開せずとも、車両ごと散開している状態、という想定で設計されていたのです。しかし実際の運用では下車運用を執っています、この為に不規則な運用の装甲車となっている。
施錠する。小銃班に2両配備するということは運転手と車長だけで4名必要となりますので車両に操縦要員を残しますと下車戦闘のための人員が足らなくなる、その為に運転手は軽装甲機動車に施錠して相手に奪われないようにしたうえで全員突撃する、という運用が基本です。路上駐車された放置軽装甲機動車は、後続の部隊が後に回収するという。
機械化部隊は下車戦闘を可能な限り行わず実施する場合は短時間とする、2010年代以降の各国機械化部隊、特に装甲戦闘車を装備する部隊の基本はこのようになっています。つまり敵陣地、対戦車ミサイルや重機関銃で武装している、陣地の目の前まで接近できる重装甲と、そして制圧できる大口径機関砲を備え、故に装甲戦闘車は35t台まで重量化します。
CV-90装甲戦闘車などがまさにそうなのですが、スウェーデン軍の演習映像や訓練展示映像を見ますと、40mm機関砲で陣地からの反撃を封じ、なにせ3P弾という散弾を撃てる、機動力で近寄るとともに下車戦闘は敵陣地の20m前後で実施している、もちろんこの距離ならば掃討を終えて装甲戦闘車に戻るまで数十秒しか要さない実に短いものでした。
M-2ブラッドレイ装甲戦闘車が大量配備された時代には、下車歩兵についてはかなり柔軟な運用が想定されていましたし、米軍教範などを見ますと機動防御に際しても装甲戦闘車から下車して陣地構築など、ちょっと現代の装甲戦闘車の運用からはかけ離れた視点も記されていて、設計当時の軽装甲機動車運用はある意味画期的ですが、現実は違った。
機動防御、機動打撃、機甲部隊の運用には様々な要素が挙げられますが、実態としては単純な地点にこもることでの主導権の奪い合い、というものではなく機甲部隊の運用は現在、常に戦線を流動的に動くことで能動的に主導権を確保する、相手に新しい選択肢を突き付け続ける、と理解されています。つまり、運用の方式は進化しているといえるでしょう。
下車戦闘を避けることで機動力を発揮しようとした軽装甲機動車ですが、設計時点の構想に対して実際には下車したらば施錠し、結果動かすことのできない装甲車、結果的に機動力は徒歩の水準に落ちたままです。すると、自衛隊が軽装甲機動車を導入した当時に思い描いた運用を実現するには、CV-90の様な重厚な装甲戦闘車が必要なのかもしれません。
軽装甲機動車は、設計時点の運用と実際の運用の相違点を示しましたが、逆に第一線部隊では、まあ、重心が高いために横転しやすい難点や高機動車ほど軽快にうごく事ができない装甲車ゆえの重さなどが指摘されますが、安いという事はさておき、現場の部隊には“数が揃っている装甲車”、装備数でも稼働数でも、という点が評価されている点も重要です。
軽装甲機動車の後継装備に難しいところは、下車戦闘せずに機動運用する、という運用体系そのものは現実の運用で為されなかったのだから最早配慮する必要はなく、例えば小型無人先頭車両などとの連携を考えた方が部隊当たりの車両数を増やすという目的にはかなっています、他方で、これにより車体はある程度大型化する余地があるのですが、さて。
取得費用の面はどこまで妥協するのか、つまり高性能で大きくなったことによる費用の増大で、数が揃っているという点から軽装甲機動車の後継足り得るかという視点が必要ですし、また安易に新型装備や海外製装備に飛びついた場合、稼働率という視点で軽装甲機動車の利点の一つであった、必要な時に必要な数が動くか、に影響が及ぶのも避けたい。
機動防御にしても機動打撃にしても、軽装甲機動車の後継車両を陸上自衛隊が導入する場合、もちろん斥候や指揮官連絡と観測点や警戒車両としての運用も含めて、陸上自衛隊として機械化部隊をどのような運用で実戦に対応させるのか、そしてほかの装備体系との連接性の確保、またどういう戦闘を想定しているか明確にしなければならないでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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軽装甲偵察中隊を、10両編成の軽装甲偵察小隊3個と6-10両編成の火力小隊(中多ミサイル班、迫撃砲班で編成)、中隊本部で45両程度200名の部隊として編成して、できれば各連隊に、少なくとも各旅団(or師団)に配備すれば良かったのかと思います。
じつはこれは今からでもできるので、是非そうして欲しいですね。。。
歩兵部隊に配備するなら、ブッシュマスターのような(路上機動を原則とする)簡素な装甲車両が大量に必要だと思います。1両につき操縦手1名、車長1名、小銃班8名、支援員が必要により2名、合計12名の乗れる車両が欲しいですよね。。。