■週報:世界の防衛,最新12論点
今週は陸戦関連の話題を中心に。戦車の重戦力とともに無人航空機やヘリコプターと陳腐化云々ではなく戦場は複雑化する様相がみてとれます。
イギリス陸軍が進めるチャレンジャー3主力戦車計画は予定より順調に進み前倒し量産の可能性がある、ラインメタル社が発表しました。現在運用するチャレンジャー2主力戦車は分離式弾薬を用いる120mmライフル砲を採用していますが、砲弾は20年近く前に製造終了となっており、砲弾備蓄がチャレンジャー戦車の最終寿命であるとされていました。
チャレンジャー3主力戦車はラインメタルL55A1戦車砲をチャレンジャー戦車に搭載するもので、これはレオパルド2A6以降のドイツ製戦車にも採用されている標準的な120mm滑腔砲です。陸軍戦車計画主任のウィルウォー大佐は、この搭載によりチャレンジャー戦車の打撃力は将来に渡り担保されるとしており、計画は一定程度順調といえるでしょう。
■チェコ,カエサル自走砲採用
牽引砲の装輪自走化ではなく今回は従来型の重厚な自走砲をややコンパクト化した装輪自走砲に置換えるという。
チェコ陸軍はフランス製カエサル自走榴弾砲52両の採用を発表しました。これはチェコ政府が9月13日に発表したもので、旧式化が進むダナ152mm装輪自走榴弾砲の後継に充てられるとのこと。ダナ152mmは冷戦時代にチェコスロバキアが開発した密閉砲塔を有する極めて強力な自走榴弾砲ですが、砲塔システムが複雑であり旧式化も進んでいました。
カエサル自走榴弾砲はフランス軍の主力砲兵火砲であり52口径長砲身砲をルノーシェルパ10トラックに搭載したものですが、輸出仕様のものにはドイツ製ウニモグU2450Lトラックも採用、サウジアラビアやタイ、インドネシア等に輸出される。ダナ自走榴弾砲は現在チェコ軍に48両が装備されており、予備車両を含めてほぼ1:1で更新される事となります。
■米軍の戦車用4852型貨車
戦車は重要だけれども重い戦車を最前線に送らなければ意味が無いという事への正面からの挑戦だ。
アメリカ陸軍第405全般兵站旅団はドイツ鉄道用M-1A2SEP2V3戦車対応4852型貨車の評価試験を開始した。M-1A2SEP2V3はこれまでのM-1戦車シリーズよりも重量が増大し73tに達しており、既存の貨車では戦車輸送車に対応できない為に開発された、M-1A2SEP2V3の搭載試験は既に開始されており、試作車評価を経て量産開始の予定だ。
M-1A2SEP2V3戦車対応4852型貨車は最大92tまでの車両等を搭載可能で最高速度は100km/hとなる、量産開始に際してはドイツのカイザースラウテルンに集積される計画という。アメリカは重旅団にあたる機甲旅団戦闘団に多数の戦車を配備し、戦車輸送車も多数を装備しているが、戦略輸送における重装備鉄道貨物輸送の重要性は依然として高い。
■ノルウェー,MINIMI-Mk3
やはり30口径機銃というものも重要だと示しているような構造なのですね。
ノルウェー国防省はFNハースタル社との間でMINIMI-Mk3機関銃4000丁の取得に関する契約を締結しました。MINIMIは5.56mm分隊機銃として高い評価を得ましたが、最新型のMINIMI-Mk3機関銃は7.62mm口径となっています。ノルウェーはMINIMIを採用しており、今回はその後継に充てる形、調達は複数年度に分け実施されるとのことです。
MINIMI-Mk3機関銃、FN社は既に7.62mm機銃としてFN-MAG軽機関銃を世界に広く供給しアメリカ陸軍でもM-240機銃として採用されていますが、MINIMI-Mk3機関銃はMINIMIと構造を極力同一とする事で教育訓練期間の短縮を図り、既にMINIMIを導入している国へ分隊機銃の他に7.62mm汎用機関銃として採用を容易とする利点があります。
■ロシアの2S41軽自走迫撃砲
迫撃砲は簡易な火力投射手段ですが昨今は射程の延伸により火砲の代替となりつつある。
ロシアは2S41ドロック軽自走82mm迫撃砲システムの評価試験を開始します。本装備はロステック社子会社のウラルワゴンザヴォド社が製造を担当する装備でGAZ-2330ティグル軽装甲車やVPK-3927ヴォルク軽装甲車に砲塔式で搭載するものです。これらの装甲車両はロシア版軽装甲機動車と云うべき近年整備されている軽快な四輪駆動軽装甲車です。
K-4386タイフーン軽装甲車やVPK-3927ヴォルク軽装甲車に2S41ドロック軽自走82mm迫撃砲システムを搭載した場合、標準装備の12.7mm機銃と共に車体中央部に搭載し、射程は6000m、ただ直接照準射撃が可能で、間接照準射撃から直接照準の火力支援戦闘へも応用できます。本装備は非常に軽量で緊急展開部隊には貴重な第一線火力となるでしょう。
■バイラクタルTB2無人機
バイラクタルTB2戦闘無人機のような装備が一方的に闊歩するのは一瞬で対無人機用無人機が空中で無人航空戦を始める時代になりそう。
イラク政府はトルコIDEF-21 兵器見本市の会場においてバイラクタルTB2戦闘無人機の導入をトルコ政府との間で進めている事を発表しました。イラク軍はイランとの国境地域での警戒監視任務において滞空型無人航空機を必要としています。そしてトルコ製無人機は2020年のナゴルノカラバフ紛争において大きな威力を発揮した事で知られています。
バイラクタルTB2戦闘無人機は最大離陸重量650kgで兵装やセンサーなど150kgを搭載し27時間にわたる警戒監視が可能です。また比較的取得費用を抑えているほか、アメリカ製無人機や中国製無人機を政治的に導入できない諸国に注目されている装備でもあります。イラクとトルコの政府間交渉は詳細が未発表ながら、交渉は行われているとのことでした。
■ラトビア,パトリア装甲車採用
パトリア6×6装甲車は値段も手ごろな主張しすぎない伝統的な装輪装甲車と云えるやも。
ラトビア国防省はフィンランドのパトリア社よりパトリア6×6装甲車200両を取得します。これは8月30日にパトリア社が発表したもので、納入は2021年から2029年にかけて段階的に行われるという。パトリア6×6装甲車はAMV装甲車で知られるパトリア社が1980年代に開発した傑作XA-180装甲車や改良型XA-200の系譜に在る装甲車両です。
パトリア6×6装甲車の特色はパトリアAMVのような戦闘車両型の車両ではなく、ドイツのフクスやフランスのVABのようなキャブオーバートラック方式の運転台を有する装甲輸送車で全長7.5mと全幅2.9m、戦闘重量は24t、兵員10名か車内に8.5tまでの装備を輸送可能です。装甲輸送車型ですが防御力は相応に高く、第一線での戦闘に対応しています。
■イラクのT-129導入計画
やはり攻撃ヘリコプターは必要なのだと実戦経験を持つ国が示している。
イラク政府はトルコIDEF-21 兵器見本市にて、T-129戦闘ヘリコプターのトルコからの導入構想を発表しました、イラク軍は2016年のISILイスラム国武装勢力との戦闘においてアメリカより供与されたM-1A1エイブラムス戦車の長距離打撃力を活かし、バクダッドへのISIL浸透を阻止しましたが、この際に課題となったのが航空支援能力の不足でした。
T-129戦闘ヘリコプターはトルコがアグスタウェストランド製A-129マングスタヘリコプターを国産化し、改良したもので2014年より運用、ヘルファイアミサイル8発と20mm機関砲、ミサイルの数を減らし70mmロケット弾発射器を搭載する事も可能です。この設計は、純粋な対戦車任務と火力支援に軸を置いた攻撃ヘリコプターと云えるでしょう。
イラクはフセイン政権時代にソ連製Mi-24ハインド攻撃ヘリコプターを多数運用しましたがフセイン政権崩壊と共に大半が湾岸戦争やイラク戦争において破壊され、今はありません。T-129戦闘ヘリコプターはトルコ製エンジン開発などの能力向上も行われており、性能の割には取得費用が抑えられ整備も隣国で可能、イラクには理想的選択肢と云えましょう。
■2S40フロックス自走迫撃砲
迫撃砲の自走化というよりもこの車輛に搭載できる最も強力な火砲が迫撃砲であったという印象だ。
ロシアは2S40フロックス120mm自走迫撃砲システムの導入を開始します。これはロステック社子会社のウラルワゴンザヴォド社が生産開始を発表したもので、ウラル4320型6×6装甲トラックの車体に120mm2S40フロックス迫撃砲システムを搭載したもので、2S31ヴェーナ自走式迫撃砲システムを一部流用した簡易版に当る自走迫撃砲システムです。
フロックス120mm2S40自走迫撃砲システムは28発の弾薬を搭載しており、迫撃砲そのものは2A80 型、自動装填装置により毎分8発乃至10発を投射し射程は7.2km、射程延伸弾を用いた場合には13kmに達し、この内の一部の砲弾は精密誘導砲弾を搭載しています。ロシアは近年、緊急展開部隊の再編に当っており、本装備もその一例と云えるでしょう。
■マグノリア自走迫撃砲
迫撃砲の自走化というものにロシアはソ連時代から熱心だが、ロシアの場合はソ連時代に砲兵が上級部隊の所属であり第一線指揮官が即座に使える火力が迫撃砲しかなかったという歴史も影響するのか。
ロシアはマグノリア自走82mm迫撃砲システムの取得に向けて前進しています。これはロシアが近年重視している極地方での作戦を想定しDT-30全地形車両に大型の迫撃砲システムを搭載、このDT-30は連接車体を有する水陸両用車ですがBV-206やBvS.10全地形車両と各国先行する車両よりも遥かに大型で、自走ミサイルシステム等にも用いられている。
マグノリア自走82mm迫撃砲システムの搭載する82mm迫撃砲は射程6000m、この種の迫撃砲としては平均的なものですが、最低射程は100mと直接照準射撃も想定しています。マグノリア自走182mm迫撃砲システムの運用を想定する極地方では既存の自走榴弾砲などが運用できる環境ではなく、ある意味で貴重な砲兵火力と云い得るのかもしれません。
■ロシア無人戦闘車演習参加
これは見方を変えればRWSを車体から操作するか後方から操作するかの違いですけれども、陸戦体系を根本から変革するのかもしれませんね。
ロシア連邦軍はウラン9無人戦闘車をザーパド2021軍事演習へ参加させました。サーパドとは友愛を意味し冷戦時代のソ連より実施されている軍事演習です。ウラン9はロシア軍が開発を継続している装軌式の遠隔操作型無人戦闘車両で、砲塔を有し30mm機関砲と7.62mm機銃に対戦車ミサイル及びサーモバリック焼夷ロケット弾などを搭載したもの。
ウラン9無人戦闘車は3000mから5000mの距離での防御戦闘を実施するとともに攻撃に当る歩兵部隊を火力支援しました。この他、ネフレタ無人工兵車輛も陣地攻撃訓練等に参加しています。ロシア軍はシリア内戦介入等から膨大な地上戦データを備蓄しており、特にこの種の戦闘での装甲車両の重要性を認識、その無人化を世界に先駆け進めています。
ロシアではT-14アルマータ戦車など、次世代装甲車両体系に大胆に無人砲塔を組み込んでおり、これはいわば車内の装甲カプセルから砲塔を遠隔操作している構図ですが、言い換えれば遠隔操作は更に離隔した位置からも可能であり、この種の装備無人化はT-14アルマータの技術応用により目処が就いているとも言えるでしょう。ただ、コストも関心事です。
■インド,アージュン戦車量産か
戦車業界のザグラダファミリアとよばれたアージュン戦車も装いを新たにアージュンMk-1A戦車として今度こそ量産か。
インド陸軍は9月23日、アージュンMk-1A戦車118両の取得を発表しました、アージュンMk-1A戦車はインド初めての国産戦車としてDRDO防衛研究開発機構が開発、初期のアージュンMk-1と比較し72項目の改良が施され、量産一号車が2021年2月14日に引き渡し式を迎えており、チェンナイ市のアバディ大型車両工場において生産されています。
アージュンMk-1A戦車は1974年から延々と開発が行われ、完成しないのではないかと危惧された戦車ですが、当初の第二世代戦車としての設計を改め試作車は1998年に完成、評価試験に20年以上を要しましたが、遅参した第三世代戦車として今度こそ完成、複合装甲と1400hpのエンジンを搭載し55口径120mmライフル砲を備えた58.5tの主力戦車です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今週は陸戦関連の話題を中心に。戦車の重戦力とともに無人航空機やヘリコプターと陳腐化云々ではなく戦場は複雑化する様相がみてとれます。
イギリス陸軍が進めるチャレンジャー3主力戦車計画は予定より順調に進み前倒し量産の可能性がある、ラインメタル社が発表しました。現在運用するチャレンジャー2主力戦車は分離式弾薬を用いる120mmライフル砲を採用していますが、砲弾は20年近く前に製造終了となっており、砲弾備蓄がチャレンジャー戦車の最終寿命であるとされていました。
チャレンジャー3主力戦車はラインメタルL55A1戦車砲をチャレンジャー戦車に搭載するもので、これはレオパルド2A6以降のドイツ製戦車にも採用されている標準的な120mm滑腔砲です。陸軍戦車計画主任のウィルウォー大佐は、この搭載によりチャレンジャー戦車の打撃力は将来に渡り担保されるとしており、計画は一定程度順調といえるでしょう。
■チェコ,カエサル自走砲採用
牽引砲の装輪自走化ではなく今回は従来型の重厚な自走砲をややコンパクト化した装輪自走砲に置換えるという。
チェコ陸軍はフランス製カエサル自走榴弾砲52両の採用を発表しました。これはチェコ政府が9月13日に発表したもので、旧式化が進むダナ152mm装輪自走榴弾砲の後継に充てられるとのこと。ダナ152mmは冷戦時代にチェコスロバキアが開発した密閉砲塔を有する極めて強力な自走榴弾砲ですが、砲塔システムが複雑であり旧式化も進んでいました。
カエサル自走榴弾砲はフランス軍の主力砲兵火砲であり52口径長砲身砲をルノーシェルパ10トラックに搭載したものですが、輸出仕様のものにはドイツ製ウニモグU2450Lトラックも採用、サウジアラビアやタイ、インドネシア等に輸出される。ダナ自走榴弾砲は現在チェコ軍に48両が装備されており、予備車両を含めてほぼ1:1で更新される事となります。
■米軍の戦車用4852型貨車
戦車は重要だけれども重い戦車を最前線に送らなければ意味が無いという事への正面からの挑戦だ。
アメリカ陸軍第405全般兵站旅団はドイツ鉄道用M-1A2SEP2V3戦車対応4852型貨車の評価試験を開始した。M-1A2SEP2V3はこれまでのM-1戦車シリーズよりも重量が増大し73tに達しており、既存の貨車では戦車輸送車に対応できない為に開発された、M-1A2SEP2V3の搭載試験は既に開始されており、試作車評価を経て量産開始の予定だ。
M-1A2SEP2V3戦車対応4852型貨車は最大92tまでの車両等を搭載可能で最高速度は100km/hとなる、量産開始に際してはドイツのカイザースラウテルンに集積される計画という。アメリカは重旅団にあたる機甲旅団戦闘団に多数の戦車を配備し、戦車輸送車も多数を装備しているが、戦略輸送における重装備鉄道貨物輸送の重要性は依然として高い。
■ノルウェー,MINIMI-Mk3
やはり30口径機銃というものも重要だと示しているような構造なのですね。
ノルウェー国防省はFNハースタル社との間でMINIMI-Mk3機関銃4000丁の取得に関する契約を締結しました。MINIMIは5.56mm分隊機銃として高い評価を得ましたが、最新型のMINIMI-Mk3機関銃は7.62mm口径となっています。ノルウェーはMINIMIを採用しており、今回はその後継に充てる形、調達は複数年度に分け実施されるとのことです。
MINIMI-Mk3機関銃、FN社は既に7.62mm機銃としてFN-MAG軽機関銃を世界に広く供給しアメリカ陸軍でもM-240機銃として採用されていますが、MINIMI-Mk3機関銃はMINIMIと構造を極力同一とする事で教育訓練期間の短縮を図り、既にMINIMIを導入している国へ分隊機銃の他に7.62mm汎用機関銃として採用を容易とする利点があります。
■ロシアの2S41軽自走迫撃砲
迫撃砲は簡易な火力投射手段ですが昨今は射程の延伸により火砲の代替となりつつある。
ロシアは2S41ドロック軽自走82mm迫撃砲システムの評価試験を開始します。本装備はロステック社子会社のウラルワゴンザヴォド社が製造を担当する装備でGAZ-2330ティグル軽装甲車やVPK-3927ヴォルク軽装甲車に砲塔式で搭載するものです。これらの装甲車両はロシア版軽装甲機動車と云うべき近年整備されている軽快な四輪駆動軽装甲車です。
K-4386タイフーン軽装甲車やVPK-3927ヴォルク軽装甲車に2S41ドロック軽自走82mm迫撃砲システムを搭載した場合、標準装備の12.7mm機銃と共に車体中央部に搭載し、射程は6000m、ただ直接照準射撃が可能で、間接照準射撃から直接照準の火力支援戦闘へも応用できます。本装備は非常に軽量で緊急展開部隊には貴重な第一線火力となるでしょう。
■バイラクタルTB2無人機
バイラクタルTB2戦闘無人機のような装備が一方的に闊歩するのは一瞬で対無人機用無人機が空中で無人航空戦を始める時代になりそう。
イラク政府はトルコIDEF-21 兵器見本市の会場においてバイラクタルTB2戦闘無人機の導入をトルコ政府との間で進めている事を発表しました。イラク軍はイランとの国境地域での警戒監視任務において滞空型無人航空機を必要としています。そしてトルコ製無人機は2020年のナゴルノカラバフ紛争において大きな威力を発揮した事で知られています。
バイラクタルTB2戦闘無人機は最大離陸重量650kgで兵装やセンサーなど150kgを搭載し27時間にわたる警戒監視が可能です。また比較的取得費用を抑えているほか、アメリカ製無人機や中国製無人機を政治的に導入できない諸国に注目されている装備でもあります。イラクとトルコの政府間交渉は詳細が未発表ながら、交渉は行われているとのことでした。
■ラトビア,パトリア装甲車採用
パトリア6×6装甲車は値段も手ごろな主張しすぎない伝統的な装輪装甲車と云えるやも。
ラトビア国防省はフィンランドのパトリア社よりパトリア6×6装甲車200両を取得します。これは8月30日にパトリア社が発表したもので、納入は2021年から2029年にかけて段階的に行われるという。パトリア6×6装甲車はAMV装甲車で知られるパトリア社が1980年代に開発した傑作XA-180装甲車や改良型XA-200の系譜に在る装甲車両です。
パトリア6×6装甲車の特色はパトリアAMVのような戦闘車両型の車両ではなく、ドイツのフクスやフランスのVABのようなキャブオーバートラック方式の運転台を有する装甲輸送車で全長7.5mと全幅2.9m、戦闘重量は24t、兵員10名か車内に8.5tまでの装備を輸送可能です。装甲輸送車型ですが防御力は相応に高く、第一線での戦闘に対応しています。
■イラクのT-129導入計画
やはり攻撃ヘリコプターは必要なのだと実戦経験を持つ国が示している。
イラク政府はトルコIDEF-21 兵器見本市にて、T-129戦闘ヘリコプターのトルコからの導入構想を発表しました、イラク軍は2016年のISILイスラム国武装勢力との戦闘においてアメリカより供与されたM-1A1エイブラムス戦車の長距離打撃力を活かし、バクダッドへのISIL浸透を阻止しましたが、この際に課題となったのが航空支援能力の不足でした。
T-129戦闘ヘリコプターはトルコがアグスタウェストランド製A-129マングスタヘリコプターを国産化し、改良したもので2014年より運用、ヘルファイアミサイル8発と20mm機関砲、ミサイルの数を減らし70mmロケット弾発射器を搭載する事も可能です。この設計は、純粋な対戦車任務と火力支援に軸を置いた攻撃ヘリコプターと云えるでしょう。
イラクはフセイン政権時代にソ連製Mi-24ハインド攻撃ヘリコプターを多数運用しましたがフセイン政権崩壊と共に大半が湾岸戦争やイラク戦争において破壊され、今はありません。T-129戦闘ヘリコプターはトルコ製エンジン開発などの能力向上も行われており、性能の割には取得費用が抑えられ整備も隣国で可能、イラクには理想的選択肢と云えましょう。
■2S40フロックス自走迫撃砲
迫撃砲の自走化というよりもこの車輛に搭載できる最も強力な火砲が迫撃砲であったという印象だ。
ロシアは2S40フロックス120mm自走迫撃砲システムの導入を開始します。これはロステック社子会社のウラルワゴンザヴォド社が生産開始を発表したもので、ウラル4320型6×6装甲トラックの車体に120mm2S40フロックス迫撃砲システムを搭載したもので、2S31ヴェーナ自走式迫撃砲システムを一部流用した簡易版に当る自走迫撃砲システムです。
フロックス120mm2S40自走迫撃砲システムは28発の弾薬を搭載しており、迫撃砲そのものは2A80 型、自動装填装置により毎分8発乃至10発を投射し射程は7.2km、射程延伸弾を用いた場合には13kmに達し、この内の一部の砲弾は精密誘導砲弾を搭載しています。ロシアは近年、緊急展開部隊の再編に当っており、本装備もその一例と云えるでしょう。
■マグノリア自走迫撃砲
迫撃砲の自走化というものにロシアはソ連時代から熱心だが、ロシアの場合はソ連時代に砲兵が上級部隊の所属であり第一線指揮官が即座に使える火力が迫撃砲しかなかったという歴史も影響するのか。
ロシアはマグノリア自走82mm迫撃砲システムの取得に向けて前進しています。これはロシアが近年重視している極地方での作戦を想定しDT-30全地形車両に大型の迫撃砲システムを搭載、このDT-30は連接車体を有する水陸両用車ですがBV-206やBvS.10全地形車両と各国先行する車両よりも遥かに大型で、自走ミサイルシステム等にも用いられている。
マグノリア自走82mm迫撃砲システムの搭載する82mm迫撃砲は射程6000m、この種の迫撃砲としては平均的なものですが、最低射程は100mと直接照準射撃も想定しています。マグノリア自走182mm迫撃砲システムの運用を想定する極地方では既存の自走榴弾砲などが運用できる環境ではなく、ある意味で貴重な砲兵火力と云い得るのかもしれません。
■ロシア無人戦闘車演習参加
これは見方を変えればRWSを車体から操作するか後方から操作するかの違いですけれども、陸戦体系を根本から変革するのかもしれませんね。
ロシア連邦軍はウラン9無人戦闘車をザーパド2021軍事演習へ参加させました。サーパドとは友愛を意味し冷戦時代のソ連より実施されている軍事演習です。ウラン9はロシア軍が開発を継続している装軌式の遠隔操作型無人戦闘車両で、砲塔を有し30mm機関砲と7.62mm機銃に対戦車ミサイル及びサーモバリック焼夷ロケット弾などを搭載したもの。
ウラン9無人戦闘車は3000mから5000mの距離での防御戦闘を実施するとともに攻撃に当る歩兵部隊を火力支援しました。この他、ネフレタ無人工兵車輛も陣地攻撃訓練等に参加しています。ロシア軍はシリア内戦介入等から膨大な地上戦データを備蓄しており、特にこの種の戦闘での装甲車両の重要性を認識、その無人化を世界に先駆け進めています。
ロシアではT-14アルマータ戦車など、次世代装甲車両体系に大胆に無人砲塔を組み込んでおり、これはいわば車内の装甲カプセルから砲塔を遠隔操作している構図ですが、言い換えれば遠隔操作は更に離隔した位置からも可能であり、この種の装備無人化はT-14アルマータの技術応用により目処が就いているとも言えるでしょう。ただ、コストも関心事です。
■インド,アージュン戦車量産か
戦車業界のザグラダファミリアとよばれたアージュン戦車も装いを新たにアージュンMk-1A戦車として今度こそ量産か。
インド陸軍は9月23日、アージュンMk-1A戦車118両の取得を発表しました、アージュンMk-1A戦車はインド初めての国産戦車としてDRDO防衛研究開発機構が開発、初期のアージュンMk-1と比較し72項目の改良が施され、量産一号車が2021年2月14日に引き渡し式を迎えており、チェンナイ市のアバディ大型車両工場において生産されています。
アージュンMk-1A戦車は1974年から延々と開発が行われ、完成しないのではないかと危惧された戦車ですが、当初の第二世代戦車としての設計を改め試作車は1998年に完成、評価試験に20年以上を要しましたが、遅参した第三世代戦車として今度こそ完成、複合装甲と1400hpのエンジンを搭載し55口径120mmライフル砲を備えた58.5tの主力戦車です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
装甲はイギリス自慢のチョバムアーマーで、基本形状もチャレンジャー2のものと同じですが。
あと、チャレンジャー3で一番力を入れているところは防御力で、イスラエル製のTrophy アクティブ防御システムも採用しています。
必ずしも良い戦車とは言えないし、イギリス陸軍も色々と苦労していますが、曲がりなりにもチャレンジャー2の近代化をしっかり行ったのは評価できると思います。
陸自が90式を放置しているのとは大違いですね。10式にしても強化型装甲は結局影も形も存在せず、防御力は低いままですし。10式の軽さを見ていると、10式ベースで装軌IFVを作った方が良い気がしてくるのですが、陸自の89式の改造版のような新型IFVはその後どうなったのでしょう?