北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

特殊武器防護部隊への理解と増勢無き、福島地域除染指示の一川防衛大臣への疑問

2011-11-20 23:40:48 | 防衛・安全保障

◆自衛隊は戦闘除染が専門、地域除染は専門外

 一川防衛大臣は、福島県内においてまもなく開始される福島第一原発周辺20km地域の除染に民間業者に先んじて自衛隊を300名程度投入する方針を示しました。

Img_9812 誇らしく部隊旗を掲げるのは第六化学防護隊の隊員、霞目飛行場において行われました東日本大震災以来最初の東北方面隊創設51周年記念行事における一枚。第六化学防護隊は東北南部を警備管区とする第六師団に所属しており、管内に福島第一原発があります。世界でも最も過酷な原子力災害の現場に立ち向かう部隊、方面隊行事ですが、第六化学防護隊からの部隊参加は彼ひとり、何故ならばこの時点で第六師団は原子力災害派遣に対応中であったからです。

Img_1904 300名、防衛大臣は簡単にいってくれますが、実質三個師団程度の化学防護隊に匹敵する数。さて、福島県内での除染作業はこれまでも一時帰宅者に対する除染作業が行われており、先週の防衛省発表では第十師団より化学防護隊が派遣が行われていますが、今回明示されたのは人員や車両に対する除染ではなく、地域そのものの除染です。実は、同じ除染でも全く異なるもので、この地域除染は自衛隊の専門外というものです。そういうのも、自衛隊はなぜ核兵器や化学兵器に生物兵器といった特殊武器に対する除染能力を持っているのか、ということを考えてみると非常にわかりやすいかもしれません。

Img_2865 化学防護部隊、特殊武器防護部隊を自衛隊が組織し運用しているのは、自衛隊が国土防衛に際して戦術核兵器や化学兵器による攻撃を受けた場合への対処を行うことを念頭に置いているからです。この場合の除染は、第一に攻撃を受けた部隊への治療と汚染物質の除去を行い戦闘能力を回復するという任務。そして第二には核物質や化学兵器により汚染された地域のなかでも特に自衛隊が作戦行動を行う上での展開地域や陣地、そして補給通路を維持するために除染を行う必要がある、これが自衛隊の化学防護部隊と特殊武器防護部隊が編制されている背景です。即ち任務は戦闘除染であるわけですね。

Img_3705 戦闘除染。自衛隊の部隊は個々に高度な特殊武器への防護能力を有しています。隊員一人一人は防護マスクを保有しており、化学兵器への防護力があると共に放射性降下物吸引による二次被曝としての体内被曝を防ぐことが出来ますし、自衛隊の戦車は全てNBC防護能力を有していて、数は十分ではないのですが、装甲車や自走榴弾砲にもNBC防護力があります。そして、自衛隊には戦闘地域の中で除染が必要な地域ではこの防護能力に依拠して任務を継続し、その汚染圏外に後方地域として物資集積所や車両整備拠点、飛行場や野戦病院といった策源地を設置する、こうした選択肢がありました。こうして、特殊武器防護部隊、化学防護部隊は汚染地域の画定、何処から何処までが汚染されているのかをまず化学防護車や生物偵察車により計測しその境界を明示します。

Img_3759 戦闘除染は、場合によっては戦闘状況中に実施され、上記検知作業を行い、そして除染車や除染装置に除染器といった装備を使い、除染するわけです。戦闘除染は、致死性毒物が充満している状況で実施、例えば地下鉄サリン事件の際にはサリンが充満する地下鉄に部隊が投入されていますが、ああいう状況での投入が想定されています。化学防護車には装甲防御力が施されていて、車内から操作可能な機関銃が搭載されていますが、これは除染作業中に攻撃を受けた場合の防御力と自衛戦闘能力を想定しているから、まさに自衛隊でしか実施できない任務といえるでしょう。

Img_2375 地域除染。今回自衛隊に付与されている任務は、地位全体に生活を取り戻すための徹底した除染を行う行動です。自衛隊員は緊急時には100mm?までの被曝を念頭に任務遂行が想定されているといいますが、住民には年間許容被曝量は1mm?まで、自衛隊員は汚染が許容量を超えている場合には後方地域に撤退することを念頭に置いているのですが、今回は後方地域から20km圏内に生活基盤を取り戻すための除染です。汚染が危険といって広報に避けるのではなく、前方と後方を区分しないための除染ということ。

Img_8755 地域除染は高い除染が求められます。当然の話ですが、一般市民は化学防護用のガスマスクは、基本的に装着せずに生活を営むのですから、戦闘除染とは次元の異なる徹底した除染が必要です。一般市民はNBC防護能力を持つ装甲車ではなく基本的に乗用車で生活しますので、そうした意味でも除染は戦闘時に想定されている線量まで下げることは無意味で、一年三百六十五日、何年も何十年も生活して差支えない水準まで除染しなければなりません。自衛隊はそこまでの除染任務を想定した編成を行っていないのです。

Img_9907 そして、今回の決定に問題があるのは、自衛隊の特殊武器防護部隊、化学防護部隊は非常に少ない、ということを無視していることです。自衛隊の化学防護部隊と特殊武器防護部隊は、まず中央即応集団に中央特殊武器防護隊があり、これは大隊規模という別格の大きさとなっています。しかし、それ以外には全国に15個ある師団・旅団に司令部付隊等として二個小隊規模の化学防護隊か特殊武器防護隊が置かれているだけです。実はオウム真理教による地下鉄サリン事件を受け拡大されて現在の規模になったのですが、地下鉄サリン事件以前には師団司令部隷下に化学防護小隊が一個置かれていただけでした。化学防護車2両と除染車2両、確か能力的に一日で汚染地域の車両を除染すると共に補給路として重要な400m×15mの道路を戦闘除染できる規模だったと記憶します。違ったらご指摘いただけると幸い。

Img_6006 先にも記載しましたが、自衛隊は検知という任務があります、補給路を維持するうえでの除染が必要な地域を確定し、除染が必要な地域と放棄しなければならない地域の区分を行わねばなりません。今回は原発から20km圏内と明示されていますが、実際に自衛隊が想定している任務ではどこが汚染されているのかわからず、何処まで拡散しているのかがわからないのですから検知に重点が置かれます。続いて除染能力、があるわけです。つまり、です、化学防護部隊と特殊武器防護部隊は規模が少ないのですが、その部隊の全てが除染部隊ではない、ということがあるわけでして、しかも特殊武器防護隊は規模が化学防護隊よりもやや大きいのですが、これは生物兵器対処能力を強化しているから、やはり除染部隊は少ない、この点は認識されているのでしょうか。

Img_4200 地域除染といえば、高圧放水により汚染された表土を剥離させ、必要であれば土壌そのものを撤去する。建築物への除染は研磨装置と高圧放水器を併せて実施し、浸みこんだ放射性核子を水流により削り取ることにより実施します。これは、除染装置ではなく高圧放水器だけでも対応できることなのですが、自衛隊の任務は高圧放水や研磨ではなく戦闘、余り数はないのです。もちろん、155mm榴弾砲や戦車砲で汚染された建物そのものを吹き飛ばすでもするならば別ですが、除染、しかも地域除染はなあ、というところ。

Img_3402 とにかく、無理を無理やり通そうと思っているようにもおもいます。携帯除染器は化学兵器の中和剤散布用だから圧力が足りず、使えるのは除染車と94式除染装置でしょうか。除染車と除染装置、数が足りないのは何よりも最初に分かるのですが、道路除染だけではなく建物除染となれば、建物となると当然寸法が車両よりはるかに大きいですから設計上除染車などは道路と車両除染までしか考えていないので、ノズルの長さが足りるのかなあ、ということ。それに建物の除染作業は自衛隊の化学学校でも実地運連や研究としてどれだけおこなっているのか。

Img_0529 建物除染、高圧放水、ううむ。原子炉冷却に投入した航空火災用消防車なら、もう少し高いところに届くのでしょうが、あれは除染用ではないですから建物全体に高圧放水を行うことになります。多分長時間行えば放射性物質は剥離してくれるでしょうが、航空機火災想定訓練用の実物旅客機が水圧で変形崩壊するほどですから木造建築物に長時間航空機火災用消防車が高圧放水を続ければ水圧で倒壊してしまうのでは、とも。しかし、除染車でないとこれくらいしか思い浮かびませんね。

Img_8457 そういえば、1972年のあさま山荘事件でも、機動隊の突入口を開いたのはハンマーではなく、遊撃放水車、冷却任務では角度と出力が足りず原子炉まで水が届かなかった装備ですがあの13t放水でしたよね。ううむ、木造家屋は確実に倒壊か全壊でしょう。ほかに何か除染に使えそうな装備あるでしょうかね。すると、建物が吹き飛ぶという理由で旧ソ連がやったような航空機用エンジンをトラックに搭載して高圧放水する方法もダメ。擦ればいいのだろうとデッキブラシの人海戦術も実際にやってみると効果がないことは既に証明されていますし、困りました。すると、やはり除染車で気長に、ですか。

Img_9982 どうしても、というのでしたら。これも今回対応すれば対応した、という先例を作ってしまい、次の原子力災害においても踏襲される可能性があるのですから、今回の任務では無理ととおすことになるという前提で、師団旅団の化学防護隊と特殊武器防護隊を二個中隊規模に増勢し、普通科連隊や特科連隊などの本部管理中隊にも化学防護小隊を配置、全国の方面隊五個すべてに中央特殊武器防護隊に匹敵する大隊規模の方面特殊武器防護隊を置く、この為に陸上自衛官定数を化学科隊員のみで2000名増勢、これくらいは実施してもらわねば。

Img_1905
 除染車。先ほどから見栄えのいい化学防護車ばかり掲載してきましたが、化学防護車は検知用の装備、除染は除染車の後ろに搭載された除染装置によりおこないます。薬剤を混ぜた中和剤を高圧噴射することで除染します。中和というのは化学兵器を想定しているから、放射性物質は中和できませんが、高圧噴射できる装備はこれだけです。次の原子力災害を想定して、今回前例を作り化学防護、特殊武器防護部隊の抜本的増強を図る、必要な予算は百億円単位で補正予算に盛り込む、というのならば、賛成なのですが、地域除染、やはり民間企業の仕事だと思います。これらの実情を提示したうえで、まだ自衛隊に地域除染を求めるというのは、民間企業に致死性毒物が充満する状況にて戦闘除染を行う要求を出す場合と同じほど無謀だと考えるのですが、どうでしょうか。

北大路機関:はるな

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第300回護衛任務を完了! ソマリア沖海賊対処任務護衛艦派遣

2011-11-19 22:38:58 | 防衛・安全保障

◆第300回護衛達成は11月12日

 防衛省によれば海上自衛隊はソマリア沖海賊対処任務における護衛任務第300回を無事完了したとのことです。

Img_6932 ソマリア沖に出現する海賊による船舶占拠や乗員拉致事案の連続は我が国のシーレーンへの重大な脅威です。このため海上自衛隊は既に十次に渡り派遣海賊対処水上部隊として護衛艦二隻を常駐させ、船団護衛に充てていると共に八次に渡り派遣海賊対処航空隊として哨戒機を派遣、任務にあたってきています。特にソマリアの位置が欧州とアジアを結ぶ地中海からアラビア海とインド洋への要衝というアデン湾に面していることもあり、ここを通行する船舶量が多いこともあるのですが、日本への関係船が多いという実情があります。

Img_8664 海上自衛隊の海賊対処任務は長期化しています。元来は、ソマリア沿岸に跳梁跋扈した外国漁船による漁業資源の不法奪取への自衛策として武装漁民が外国漁船を強制排除したのに端を発し、武装漁民が外国船舶を拿捕し懲罰的な身代金の要求を行ったところ大きな金額を得ることが出来ることが確認され、続いて貨物船や客船、タンカーなどの一般商船を標的し、期せずして海賊は外貨収入に乏しいソマリアにおける主要産業となってしまったことに加えて、ソマリアの治安機構が崩壊状態からの再興途上にあることから海賊を取り締まることができない状況がこれを助長しているという現状です。

Img_6678 第十次派遣海賊対処水上部隊は横須賀基地を10月11日に出港した護衛艦たかなみ、護衛艦おおなみ、を以て編成される第六護衛隊で、共に同型の、たかなみ型護衛艦。横須賀基地を出港して一か月後に海上自衛隊による海賊対処任務としての第300回護衛任務達成を迎えました。海上自衛隊による護衛は、各国海軍が海賊掃討に重点を置き紹介任務を行う中、海上自衛隊では船団を組みその前後に護衛艦を配置するという方式を採用し、現在まで護衛対象船舶への被害は零という記録の更新を続けており、恐らく今後も更新が続くことでしょう。

Img_9313 海上自衛隊の護衛方式は、護衛任務達成が確実であるという利点はあるのですが、他方で、船団を編成するまでに時間を要し、加えて船団が海賊出現海域をツウ供するまでは36時間から48時間、護衛船団の航行頻度が現状では低いという難点があります。目下のところ受動的ですので、主体的に相当するべき、という意見も参加国にあるようですが、同意に隣国などの海上治安機構再建への支援を行っている日本ですから、確実な護衛と確実な取締り体制、ということを考えた場合有効な案として上位に或るといえるやもしれません。

Img_2990 他方で、任務艦が増大する中、護衛艦不足が顕著化しています。今年三月の東日本大震災において、端的な事例を出せば第三護衛隊群では隷下の護衛艦八隻のうち、二隻が海賊対処任務派遣中、一隻が南西諸島警戒監視任務、四隻が定期整備中で、唯一の護衛艦しらね、は定期整備に向け燃料弾薬を陸揚げした状態で震災への派遣に向かいました。現在は経団連が海賊対処任務部隊の派遣と補給艦の派遣を求めています。船団のより高い頻度での護衛を考えると経団連の要請にも一理あるのですが、艦艇は不足し無い袖は振れません。やはり、護衛艦は現在の防衛大綱に明記された47隻では不足で、冷戦時代の約六十隻、とまではいかずとも冷戦後の約五十隻、編成定数では54隻でしたが、この水準まで戻す事も必要ではないでしょうか。

北大路機関:はるな

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平成二十三年度十一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2011.11.19-23)

2011-11-18 22:07:08 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 明日はかなりの雨量になるとのことですが、日曜日はどうなるのでしょう。今週末、そして来週の祝日に行われる自衛隊行事を紹介します。

Img_1637 金沢駐屯地創設記念行事。今週末の唯一の創設記念行事は金沢駐屯地祭です。金沢駐屯地には第10師団隷下の第14普通科連隊が駐屯している駐屯地で、写真は今年の守山駐屯地祭において観閲行進を行う第14普通科連隊。第14普通科連隊は連隊警備管区に金沢市の石川県に加え、原子力発電所が集中する福井県と中部方面隊東部方面隊の境界にあたる富山県という北陸三県の防衛警備及び災害派遣を担当する連隊で、一部では北陸方面隊と呼ばれるほど広大な地域を担当、豪雪地に強い精鋭部隊として知られる連隊。

Img_0805 また、NHKが三年目の放映にまもなく入る”坂の上の雲”において、恐らく大きく扱われるだろう日露戦争において、世界でも最も苛烈な対要塞攻城戦を展開した旅順要塞に立ち向かった第九師団は、いまでは陸上自衛隊第9師団は青森に司令部を置いていますが、かつてはこの金沢に司令部を置いていました。戦闘訓練展示は、邦人保護あり建物突入ありで、しかし迫力の野戦展示も大きなこの行事、なかなかのお勧めです。蛇足ですが大阪と青森を結ぶ寝台特急日本海の来春廃止が発表されました。一つ、青森から金沢へ日本海で足を運ぶのもいいやもしれません。

Img_4826 芦屋基地航空祭は、今年、芦屋基地創立50周年という節目の年を迎えることとなりました。芦屋といっても阪急でいける芦屋ではないので要注意、福岡県の芦屋です。この芦屋基地にはT-4練習機を運用する二個飛行教育隊を基幹とする第13飛行教育団、そしてロジスティクス全般の教育を行う第三術科学校、また芦屋救難隊といった部隊が置かれています。特にT-4は、芦屋基地が教育用にレッドインパルス塗装、と一部で呼ばれる鮮やかな塗装が知られています。写真はその影響を受けて浜松の第一航空団が実施した同様の塗装。

Img_5402 芦屋基地は、今年三月の東日本大震災に際して九州新幹線開通祝賀飛行を控え松島基地より展開したブルーインパルスが津波被害を免れたことでも記憶される場所かもしれません。基地航空機によるオープニングフライトより始まり、UH-60とU-125による救難飛行展示、T-4による航過飛行と訓練飛行展示、T-7による航過飛行、F-4戦闘機が実施する機動飛行が午前中に行われ、午後からはF-15とF-2が機動飛行を展示、そののちにブルーインパルスが飛行展示を行います。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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C-2輸送機!岐阜基地にて試験飛行を繰り返す航空自衛隊最新鋭輸送機

2011-11-17 23:20:25 | 航空自衛隊 装備名鑑

◆航空祭事前訓練?C-2輸送機の飛行!

 岐阜基地航空祭はいよいよ来週に迫っていますが、そんな中で気になる話題を今日はひとつ。

Img_4896 岐阜基地を離陸するC-2輸送機、航空自衛隊が初飛行から40年を経たC-1輸送機の後継機として導入するべく開発を進めている国産機。岐阜基地航空祭のポスターには飛行するC-2輸送機の様子が掲載されているのですが、航空祭では、果たしてこの最新輸送機は飛行するのでしょうか、ということ。

Img_4945 岐阜基地では航空祭事前訓練が開始されており、聞くところではすでにブルーインパルスも岐阜基地入りをしているとのことで、総合予行は来週行われるのでしょうが、やはり注目は最新鋭輸送機にも大きいものがあるわけで、それではポスターに掲載されていたC-2輸送機の去就は如何に、ということ。

Img_4961 昨年の航空祭では試作初号機が地上展示されており、来年は、と期待されつつもまだ飛行開発事件段位は配備されず技術研究本部が運用している状況、海上自衛隊の行事でもまだC-2と同時開発され、すでに先んじて初飛行を果たしている新哨戒機P-1の展示飛行はどの行事でも公開されておらず、そこから類推すると、なるほど。

Img_5018 そんなことを考えつつ、本日撮影したC-2輸送機の写真を連続して掲載しています。C-2は離陸するとT-4と共に何度も岐阜基地上空を飛行していました。これが通常の試験飛行の一環として岐阜基地周辺を飛行していたのか不明ですが正午過ぎに離陸して着陸は午後二時前、これ、航空祭の事前飛行ということなのかな。

Img_5039 着陸したC-2輸送機。その大きさがC-1輸送機と根本的に違うことが際立っています。とにかく大きいですね。航空祭プログラムが発表されるのは、そう遠くない事と思われるのですが、C-2輸送機の展示飛行、是非航空祭の場面にて是非見てみたいものだと、これは多くのかたと共通するものですが、願っています。

北大路機関:はるな

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米海軍ワトソン級車両貨物輸送艦チャールトン(T-AKR-313 USNS CHARLTON)

2011-11-16 18:20:38 | 世界の艦艇
◆米軍展開能力支えるワトソン級、佐世保で撮影!
 佐世保を大島にむけて航行していた際に撮影した写真です。建設中の米海軍LCAC整備施設沖合に見慣れない大型艦と出会いました。
Img_0600 この大型艦は、アメリカ海軍が陸軍部隊の緊急展開用に建造したワトソン級貨物車両輸送艦のチャールトン。ドック型揚陸艦や強襲揚陸艦、もちろん空母のような華やかさはありませんし、敵前上陸はもちろん揚陸任務にも支障があるのですが、重要な一隻、地味ですが重要な一隻。1998年から2002年にかけて8隻が就役した中で5番艦にあたる一隻。満載排水量は62968tに達し、推進にはガスタービン方式を採用しており、出力は64000hpで速力は24ノットを発揮する世界最大のガスタービン船です。
Img_0475 全長は290m、全幅32.33m、喫水は10.2mと非常に大型で、船体構造は貨物船に準じているのですが、艦橋前部にはヘリコプター発着スペースを有しており、航空機搭載能力はもちろん整備能力も皆無となっているので運用は行えませんが、発着は可能となっています。運用は民間要員により実施されており、洋上運用は25名、有事の際に乗降を行う際にも45名での運用が可能で、このほか50名の海軍要員を収容可能としています。 米海軍では日本と異なり、補給艦についても基本的に運用は民間人が主体として海軍要員が乗り込む方式を採っています。

Img_0482 輸送能力は絶大の一言に尽き、艦内には六層式車両甲板を設置、その面積は車両1000両を収容することが可能となっていて、重量換算で13200t、60tを超えるM-1A2戦車も収容可能。これら車両甲板は全てスロープにより接続されているので、乗降は極めて迅速に行う構造を採用しました。

Img_0491 本型は揚陸艦ではないため、揚陸用の設備は皆無、大型艦が接岸可能な港湾設備を必要とします。しかし、必要とするのは埠頭設備だけで、車両の乗降用にRoll on Roll off方式でそのまま車両が通行可能な大型ランプと艦上最前部には二基の110tクレーンを配置、埠頭が整備されておらずとも浮桟橋にクレーンを下すという運用が考えられるでしょう。

Img_0501 ワトソン、シスラー、ダール、レッドクラウド、チャールトン、ワトキンズ、ポメロイ、ソダーマン、同型艦はこの通り。さて、真横からの写真ですが後部には右舷左舷両方に稼働する大型車両ランプを設置しており、このランプよりM-1A2戦車が二列で通行可能となっています。加えて中部両舷側にもう一か所のランプを配置する構造です。この両舷のランプは後部の大型ランプほどの大きさはありません。

Img_0518 所属は海軍輸送司令部。この種の艦船についての運用は同型艦全てと同時期に建造された同種にあたるボブホープ級とともに海軍輸送司令部に一元化されており、海軍輸送司令部は本型や派生型とチャーター船を用いての輸送、事前集積艦による平時からの装備品事前集積、病院船と補給艦による支援、そして海洋観測艦やミサイル追尾艦による特殊任務も担っています。

Img_0519 事前集積とは、陸軍装備の中において装甲戦闘車や主力戦車など輸送機に搭載は可能であるものの、最大級の大きさを持つ戦略輸送機で持っても一度に1~2両しか輸送できない、空輸に適さない装備について平時から事前に洋上の貨物輸送船に搭載しておき、有事の際には乗員だけを輸送機で展開させ、第一線の後方地域で合流させる方法です。

Img_0520 ワトソン級はこの中の事前集積任務を担っており、8隻全てと2隻の貨物輸送艦により、重装備旅団を含む二個旅団分の資材を管理します。この二個旅団分の装備には機械化歩兵大隊戦闘群四個に相当するM-1A2戦車123両、M-2装甲戦闘車154両を含んでおり、この一隻にもM-1戦車15両前後、M-2装甲戦闘車約20両が搭載されているでしょう。

Img_0612 参考までに貨物輸送艦として運用されるSGTマティコカック級は満載排水量48754t、コンテナ貨物船構造を採用しています。元々がコンテナ貨物船なのですが、コンテナ532個とその他貨物を搭載し、25000tを収容する構造です。ワトソン級は車両以外の貨物も搭載しますが、SGTマティコカック級二隻が充当されていますので米陸軍の二個旅団は15日間の戦闘でも少なくとも50000tの物資を割り当てていることがわかりますね。 そこに、ワトソン級の膨大な車両が加わる、米軍の物量が凄いといわれるわけだ。

Img_0618 二個旅団といえども後方支援部隊を含めれば米軍の編成では20000名に達し、この20000名が15日間にわたり戦闘可能な弾薬や食料、燃料に補給物資、そしてそれらを支える4500両の車両を上記のとおり10隻が輸送することとなっています。 それにしても、現在、ここ佐世保を訓練区域の一つとして実施されている自衛隊統合演習では高速カーフェリーでの協同転地演習として展開した90式戦車と89式装甲戦闘車が演習参加部隊に挙げられていますが、本来の支援を考えた場合、車両のほかに必要な支援車両に加え燃料と弾薬が必要になるのですが、米軍ほどの規模は不要ですけれども、考えるべき点は多いのでは、と。

Img_0622 事前集積は、基本的に米陸軍により五つの部隊により実施されていますが、この中で事前集積船に備蓄されているのはひとつのみで、他は米本土と欧州、それに韓国と中東に陸上集積されています。集積船は潜水艦や航空攻撃の脅威にさらされることにもなりますが、米陸軍全体が保有する装備の中ではほんの一部分に過ぎず、機動力が重視されている、ということになるのです。 このあたり、予備というか装備と定数を充足さえできない自衛隊との違いが浮き彫りで、思い出すのは映画遠すぎた橋での連合軍の輸送機による空挺部隊同時展開の編隊を見上げてのヴィットリッヒSS第二機甲師団長を演じたマクシミリアンシェルの台詞、大した物量だ羨ましい。

Img_0626 このほか米海軍では海軍の各種弾薬を補給艦が集合する補給拠点へ輸送するコンテナ貨物船や、空軍が運用する航空燃料や弾薬を輸送するコンテナ貨物船、それに燃料全般を輸送するタンカーなど10隻を事前集積部隊として割り当てています。有事の際には民間からの徴用やチャーターが行われ、これら膨大な物資が輸送されることで潤沢な米軍の運用を支えて、戦域での優勢が担保されるということ、正面戦力では米軍に特に個々の分野で対抗しようという動きは地域大国の間において皆無ではないのですが、米軍の兵站基盤に対抗しよう、という動きを見せている国というのは聞いたことがないのですよね、そこが米軍の兵站の意義を経験と歴史から理解と実施に反映させているゆえの強さなのだと思います。
Img_0636 まあ、事前集積という方法だけを見ますと、これも自衛隊は見習うべき、ということは全く不可能です。というのも、いまだに本土には戦車は74式ですので、90式戦車を北海道からの展開に備えて九州に配備するのなら九州に或る2つの戦車大隊に配備しろ、ということになります。しかも、事前配備船の車両というのはバッテリーの維持等整備にも一定の必要性がありますし、いざ運用しようとすると輸送機で空輸された兵員がみれば部隊で使用している車両と同型でも微妙に仕様が違っていたり、整備度合などに相違点があったり、イラク戦争や湾岸戦争規模の戦争が無ければそのまま陳腐化して殆ど使われず不要になってしまったり、難点は多いです。米軍はそれでいいのでしょうが、この方式を自衛隊が踏襲するのは、ちょっと、ね。
Img_0645 しかしながら、自衛隊を見てみますと、かつては本州から有事の北海道に1個連隊戦闘団を送ることを念頭に、おおすみ型輸送艦3隻が整備されたのですが、師団輸送隊の73式大型トラック39両で普通科連隊を自動車化、といわれていた時代は遙か昔、いまは1個中隊だけで軽装甲機動車を25両前後に迫撃砲小隊等を持っており、おおすみ型一隻で1個中隊と支援の戦車小隊や戦砲隊と支援車両を搭載するのが限度。しかも最近は動的防衛力の整備を念頭に機動運用部隊に指定されているのが中央即応集団と、そして第7師団、戦車連隊を主力とした機甲師団である第7師団ですので、九州や南西諸島への展開を考えれば輸送力が圧倒的というか致命的なほどにに不足しているのは明白、ここまでおおきな貨物車両輸送艦は不要だけれども、しかし、と思ったりしましたのは確かでした。ところで、世界の艦艇カテゴリって、米軍艦船は扱わないのでは?、と思われる方もいるやもしれませんけれども、いやあ、この艦、珍しいので、通常はインド洋からアラビア海を遊弋していることが多いとのこと、なる程、ということで掲載しました。

北大路機関:はるな

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南スーダンPKO:補給の難題、域内に大型輸送機発着不能・港湾から活動地域へ2000km

2011-11-15 23:37:34 | 防衛・安全保障

◆必要輸送能力を明示し輸送力を整備するべき

南スーダンPKOへの自衛隊派遣ですが、これはかなり重大な問題点をはらんでいることが明らかになっています。

Img_77_51 海上自衛隊のジブチ航空拠点があるとはいえ、南スーダンは想像を是する距離。後方支援体制の維持、派遣部隊を支える上で不可欠な事柄ですが、まず、南スーダンが内陸部にあり、内陸部の国への大隊規模での派遣には全ての装備を空輸できるわけではありませんので、海路との併用が必要となります。もっとも、航空自衛隊のC-130H輸送機では小牧基地からフィリピン、タイ、インド、アラビア半島を経由して六日ほどを要しますので、海外の民間輸送機による支援が必要になるのですが。想像を絶する輸送任務が始まることになるのです。

Img_6672 海上輸送にしても、輸送艦が三隻しかないのはさておき、最寄はケニアのモアンバサ港とのことですが、ここから南スーダンへは距離にして2000km、青森~博多間に相当する距離があり、調べてみると機能する鉄道網もないわけで、この長大な距離を陸路にて輸送しなければなりません。イラク派遣任務のように依存できる後方支援基盤がありませんので、どうやって輸送するのか、まずODAでケニアから南スーダンまでの鉄道輸送網と高速道路網を整備したほうが早いのではないか、そんなことを思ってしまいます。

Img_0093 陸上自衛隊の任務地域は南スーダンのジュバ周辺といわれているのですが、ボーイング747やKC-767が発着できる空港、3000m級舗装滑走路を備えた飛行場というのはこの地域には無く、やはりケニアかウガンダの空港に一旦は物資を集約し、そこからC-130HかC-1のような輸送機に積み替える必要性があるようです。これまでは工区自衛隊の海外派遣はC-130Hのみにより実施されてきましたが、大隊規模の輸送を行うには相当な機数が必要となり、日本から集約拠点までの戦略輸送との並立は可能なのか、場合によっては2000kmという距離を考えればC-1との相互支援も必要になるかもしれません。

Img_8869 海上自衛隊の輸送能力、現状の三隻は冷戦時代に北海道へ一個連隊戦闘団を緊急輸送するという目安で整備されました。普通科連隊の車両化と装甲化を考えれば冷戦時代のトラック輸送主体と異なり既に運べなくなっているのは明白、旅団普通科連隊なら何とかなるかもしれないという水準ですが、それでもアフリカへの派遣は全く考慮されていなかったのは明白。民間貨物船による支援を受ければ、必要物資は海上自衛隊の輸送艦だけでなくとも対応できる部分はあるでしょうけれども、自衛隊統合演習で用いたようなカーフェリーでも距離が大きすぎることは確かでしょう。

Img_3660 それにしても自衛隊の任務範囲の拡大を考えれば輸送艦三隻は余りに少なく、車両輸送能力を備えた補給艦で最近の統合支援艦やそれから既存の輸送艦のようなものを二桁の単位まで整備しなくてはならないのでは、と考えてしまいます。輸送艦ですが、使用する港湾施設が小さく使用できない、もしくは接岸と荷揚げ設備が不足する、というような普通の車両貨物船では対応できないような状況も考えられます。この際、速力を現状の輸送艦の22ノットではなく17ノット程度に落として機関出力を最小化してでも安価な輸送艦を多数取得できないものか、こうも考えてしまうのですが。

Img_3234 空輸能力にしても全く不足しているのは確かですから、いっその事民間航空会社で用途廃止になるボーイング747を6~8機取得して貨物輸送機として運用してはどうなのだろうか、アフリカでの国際平和維持活動任務も今回で最後ということはないのだろうし、必要ならば747を用いての国際平和維持活動への輸送支援、という任務も考えられ、更に現行の二機の政府専用機に加えて一定数の747を航空自衛隊が運用すれば、それは必然的に在外邦人救出任務での輸送能力補強にもつながるので、この点は考慮の余地があるでしょう。

Img_2848 最新鋭のC-2輸送機が配備されていれば多少違ってきたのでしょうけれども、補正予算でC-17輸送機の緊急取得かリース取得、もしくは先ほど提示した中古のボーインング747取得、ということはできないものか、専守防衛で基本的に自衛隊は日本国内から出ないもの、という基本骨子のもとで防衛力を整備してきた我が国は、防衛計画の大綱が国際平和維持活動への参加を前提とする時代に至っても、輸送能力には言及されず今に至るのは大きな問題といわざるを得ません。

Img_8274 自衛隊に求められる輸送能力は、例えば10000kmあたり一日何トンの輸送能力が必要なのか、ということを今回の南スーダンPKOを契機に算出して、喫緊の課題として整備することが必要でしょう。これを念頭に、例えば輸送航空隊の規模や数量は現状のままで問題はないのか、輸送隊を自衛艦隊へ支援艦隊として拡大改編する必要はないのか、最悪の状況化に陥った場合に民間へどれだけの規模の支援を要請できるのかという法整備も含めて考える必要はあるでしょう。思いつきと無計画とは日本政治の代名詞になりつつあるやもしれませんが、そろそろ防衛計画の大綱、改訂されたばかりではあるのですけれども再改定の必要性はあるのだと、私は考えます。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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南スーダンPKO自衛隊派遣:空爆・国境衝突と悪化する情勢へ万全の備えを!

2011-11-14 23:24:14 | 防衛・安全保障

◆90式戦車や地対空誘導弾派遣も検討すべき

 南スーダンへの施設部隊を中心とした自衛隊PKO派遣が決定されましたが、ここ数日間国境地域でのスーダン軍との軍事衝突やスーダン軍による空爆が行われるなど状況は急速に悪化しています。

Img_2630 南スーダンは産油地域ですが、長い独立運動が実を結びスーダン国内での国民投票の結果独立が承認、今年独立を果たしました。しかし、国内には神の抵抗軍など武装勢力が存在しており、加えてスーダンと南スーダンの関係も決して良好ではない実情があり、この地域は独立後の国家創建についての国際社会からの支援を必要としていまして、野田内閣は自衛隊の派遣を決定したのですが、そこに情勢悪化が加わっているという状況。

Img_8845 自衛隊はこれまでも危険が想定される地域への海外派遣へは、主力となる施設科部隊に加えて普通科部隊の護衛を編成し、これまではルワンダ派遣の際に機関銃を持っていくのは憲法上禁止されている武力の使用にあたるかの議論が生じ、結局62式機銃を一丁ならば抵触しないとする討議が行われましたが2002年の東ティモール派遣には62式機銃10丁を携行、イラク派遣では重機関銃を搭載した96式装輪装甲車や軽装甲機動車、無反動砲が装備されていました。

Img_2376 現与党民主党が野党時代に激しくアフガニスタンへ派遣を提言していましたが、自らが与党となった際、海外派遣で犠牲者が出れば責任者の立場にあることを思い出したのか、一転して慎重となりました。このアフガニスタンでさえも、一応は国際治安部隊ISAFが治安の優勢を担っているという前提での散発的な戦闘が繰り返されているという実情を前に派遣を見合わせたのですが、今回の南スーダンは隣国から正規軍による圧力がかけられている、という厳しい現実があります。

Img_2261 イラクでも脅威対象は武装勢力でしたので、少なくとも相手が航空機を運用することや戦車を保有していることはなく、攻撃はもっぱら自爆テロや仕掛け爆弾、それに散発的な迫撃砲攻撃と場合によって狙撃があった程度でしょう、第三世代戦車など、イラク戦争以前のイラク軍でも旧ソ連仕様からスペックダウンされたT-72というくらいでした、スーダン軍の運用する99式G型はもっと強力です。

Img_2041 スーダン軍、アフリカ中部の国ですからどのくらいの軍事力を持っているのか、というとどうしても軽視する傾向がありますが、陸軍は中国製99式G型戦車のライセンス生産を行っており、陸上自衛隊の74式戦車よりははるかに高い攻撃力と機動力に防御力を備えています。

Img_0334 空軍は飛行隊規模でMiG-29を持っており、どの程度運用されるかは未知数ですが現実的に考えた場合、全面的な攻勢に出られるならばF-15Jの派遣も検討しなくては、というほどの規模、加えてハインドの愛称で知られる重武装の旧ソ連製Mi-24攻撃ヘリコプターを保有していますので、空からの脅威に対抗するためには最低限93式近距離地対空誘導弾、戦車による攻撃を想定すれば90式戦車の小隊くらいは、派遣するかもしくは周辺地域の洋上に輸送艦などにより事前配備しておく必要はあるでしょう。そして緊急撤収などの視点も必要ですが、自衛隊がこれまで考えてこなかったほどの地域への部隊派遣というところは重大な課題です。

Img_1659 自衛隊の警護はルワンダ軍が実施することとなっていますが、ルワンダ軍は装備戦車がT-55、装甲車は半世紀前のフランス製M-3,それにAML-60があるほどで、砲兵はなく主力火力は81mm迫撃砲。やはり自前で戦車や地対空誘導弾が無ければ丸裸というもの。実質、一個連隊戦闘団以下の規模の陸軍、という表現になるのでしょうか。

Img_7420 戦車を持っていかずとも01式軽対戦車誘導弾を携行すれば戦車が出てきてもタンデム弾頭を搭載しトップアタックにより対処できる、と考える方もいるかもしれませんが、それは対戦車戦闘を実施した場合の話でしてミサイルそのものはそこまで大きなよき視力とはなりません、しかし90式戦車を派遣していれば、戦車の存在そのものが大きなプレゼンスとなりますから相手に戦車の使用を思いとどまらせることが期待できます。師団対空戦闘システムから外れた近距離地対空誘導弾単体での運用も能力を著しく制限するのですが、こちらが地対空ミサイルを持ちこんでいる、という事実だけが日本に対する攻撃に大きなリスクを付与させることになります。こうした抑止という認識だけは忘れてはなりません。

Img_6037 南スーダンは内陸国ですので、移動や後方支援の基盤を構築するには中継地を設定することが必要ですからこのための輸送調整部隊を個々に置く必要があり、加えて内陸国であるという事実は緊急時に輸送艦によりそのまま撤収するということが難しくなることを意味します。派遣隊員が根本的な危険に曝された場合には、極端な話、かなりの決断の下準備が必要でしょう。

Img_7954 具体的にはソマリア沖海賊対処任務の派遣航空部隊拠点となっているジブチ航空拠点にF-15飛行隊とKC-767空中給油輸送機、E-767早期警戒管制機を緊急展開させ、一時的に航空優勢を確保、そのうえで洋上に輸送艦かヘリコプター搭載護衛艦を展開させ、派遣部隊員を収容できるだけの機数にあたるCH-47JA輸送ヘリコプター6機を展開させ、派遣部隊は装備を鹵獲されないよう破壊し隣国のケニアかエチオピアへ緊急離脱する、という選択肢も検討しなければなりません。

Img_1506 憲法上どうなのか、という次元ではなく危険な場所に派遣するのですから政府はそれだけ、安全を確保し最悪の場合に備える義務があります、現に空爆と武力衝突が始まり、スーダン軍は有力な装備を保有しているのですからね。とにかく、安易に派遣することは決定したのですけれども、緊急時に玉砕の強要をするような無為は政府には避けてほしく、最低限、重装備の派遣、更に緊急時における離脱というものを検討してほしいと切に願う次第です。

北大路機関:はるな

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陸上自衛隊の課題:装備近代化実現には防衛大綱での部隊編成の情報開示が必要

2011-11-13 23:13:09 | 防衛・安全保障

◆基幹部隊”師団2012編成”の画定と開示が必要

 備忘録的な放言の一つとして、いや、この北大路機関の大半はこれに当たるのですが、論議の叩き台として一つ。

Img_5176 最初に、事業評価開示により火力戦闘車に関する新しい概要が出されました。FH-70の後継ということで相応の装備を期待したのですが、現時点では取得性を重視したようです、何よりも数を揃えなければならないという配慮でしょうか、それとも変化があるのでしょうか。さて、防衛予算概算要求が提示されるたびに、これでは師団の近代化がままならない、とか除籍数が配備数を凌駕しているので定数割れが進む、という話を掲載しているのですが、そもそも必要な定数というものはどれだけなのか、これをはっきり明示する事が重要である、と考えます。この点について踏み込んでみましょう。

Img_3727 防衛大綱の別表には、戦車定数、特科火砲定数が明示され、加えて基盤的防衛力を構成する平時地域に配備する部隊として8個師団6個旅団、動的防衛力にあたる機動運用部隊として一個戦車師団と中央即応集団、という明示があります。防衛白書には、師団はいくつかの普通科連隊と戦車大隊に特科連隊などなどを基幹として編制、とありますので、単純計算で戦車定数は戦車師団所要を差し引いた上で、8個戦車大隊所要と旅団戦車部隊所要が必要になる、と記されているのです。

Img_2369 しかし、普通科連隊は師団普通科連隊で必要数は全て三単位編成の場合24個ですべて四単位編成では32個連隊あり、ここに旅団普通科連隊が二単位編成統一でも12個で最大の四単位編成では24個連隊がおかれるのですけれども、必要な装甲車の定数は何両か、必要な対戦車ミサイルの数はどれだけなのか、迫撃砲は全部でどのくらい必要か、ということがはっきりと示されていません。これら装備は、特に施設大隊についても、戦闘工兵としてどう運用するのかの編成や定数は明示されなければ、充足率という事業評価も難しくなります。

Img_4588 一応、師団旅団の編成、という公開されない資料は部内向けに作成されているのですけれども、こういうの神保町で売るなよ、と思いつつも、しかし実態を見てみますと概略の編成はともかくとして、普通科連隊の装甲化度合はもちろん、特科連隊における特科大隊の隷下におかれた中隊数などはそれこそすべて異なった編成といっても過言ではなく、師団火力の均一化という状態からはかけ離れている、という実情があります。もしかしたらば、地形障害などを念頭に中隊数を調整しているのかもしれませんが、機動運用を考えれば均一化が必要です。

Img_2283 ここで一つ考えるのは、師団編成と旅団編成を均一化し、その具体的な編成と一個師団、一個旅団に装備される火力構成や車両体系などを防衛計画の大綱に明示してはどうでしょうか、そういう視点を立ててみました。例えば米陸軍などはフォース21編成というかたちで90年代末期に師団機械化体系を明示し、これをもとに師団が対応できる任務範囲と火力投射能力、概略での機動打撃による進出能力から、一個師団が戦闘に要する物量の具体数や機動に要する輸送需要等を明示しており、ストライカー旅団構想、FCS計画、GCV計画と開示を続けました。

Img_4815 師団2012。編成については、概略のみ少し示せば、戦車大隊は師団直轄、普通科連隊は第五中隊をFV中隊とし、四個中隊は軽装甲機動車と装甲車を運用、特科連隊は直援大隊を火力戦闘車とし全般支援にあたる第五大隊を自走榴弾砲化し戦車部隊との協同を重視、長射程化した多目的誘導弾による火力支援網の構築と、機動運用部隊直協防空能力整備、偵察隊へは威力偵察中隊と共に無人偵察機隊による情報優位獲得を企図、通信大隊の搬送能力強化と電子戦中隊の新設、複数小隊規模の空中機動能力付与、といったところでしょうか。

Img_0099 師団2012、具体的な火砲数は、防衛計画に基づき、どの程度の火力の投射能力が必要か、その必要数は画定されるべきです。装甲化の度合いについても必要とされる機動力を念頭に置くべきで、誘導弾による防空や火力投射能力も同様のことが当てはまります。その具体性とは、即ち全国配置の基盤的防衛力にあって、大規模着上陸事案に際し、6時間以内の即応部隊派遣、12時間以内の管区連隊派遣、24時間以内の拡大阻止体制の構築、続く速やかな機動打撃による撃退、一連の行動を行う上での能力を念頭にしめされるべきでしょう。

Img_6446 こうして、防衛計画の大綱に具体的な陸上自衛隊基幹部隊編成の在り方を示す”師団2012編成”というものを明示することが出来れば、陸上自衛隊全体で必要な戦車数、装甲戦闘車数、装甲車数、軽装甲車数、機動戦闘車数、迫撃砲数、自走榴弾砲数、火力戦闘車数、近接戦闘車数、多目的誘導弾数、施設装甲車両数、航空機数等が見えてくることになります。こうすることで、師団が必要に応じ他管区への機動運用を行う場合に必要な燃料規模や維持部品、後方支援部隊の必要能力が数値化するので、運用への計画立案が容易となります。

Img_2273
 こうしたのちは、非常に明解で、防衛計画の大綱に示された部隊編成を実現するまでの具体的な期間について、例えば中期防衛力整備計画三期程度の15年を目安としたならば、必要数を年数で割った数量を毎年調達すれば近代化は可能となります。防衛計画の大綱は防衛省ではなく政治決定として公開される法的要素をもっていますので、財務省に対する必要予算要求は防衛省ではなく政府与党が主体となる構図になり、これまでよりはある程度予算の確保ができることでしょう。

Img_4731 装備品について、具体的な数量が明示されることとなれば、防衛産業としても突如として生産終了となる可能性が低減されますので、運用基盤を支える生産基盤の安定化に寄与します。この場合、旅団の位置づけはどうなるのか、師団に管区を任せ機動運用を念頭とした運用となるのか、旅団を師団に戻すのか、これは能力均一化には大きな課題となることは認識しています。いっそストライカー旅団に、と某外交研究所の主任さんから聞いたことがりますが、あの旅団はストライカー装甲車を300両以上必要とするので難しいところ、難しいところです。

Img_2480 旅団について、基盤的防衛力を担いつつ、必要に応じて管区師団を支援する機動運用部隊を増強する形、つまり現状では機動運用部隊は第七師団と中央即応集団ですが、脅威正面にある師団とその方面隊に対し他管区から優先的に展開する、いわば基盤的防衛力と動的防衛力の双方を兼ね備えた部隊、としてはストライカー旅団とまではいかずとも、装輪装甲車を大量配備する編成にも意味があるかもしれません。もっとも、機動運用部隊である第七師団は道南道央地区を、中央即応集団の第一空挺団も千葉県の基盤的防衛力なのですが。

Img_4949 方面隊直轄部隊はどうするのか、方面施設は補給線維持に活躍し方面後方支援部隊は増援部隊の後方支援を、そして方面高射特科部隊は全般防空をそれぞれ担うのですが、対戦車ヘリコプター隊を中心とした方面航空隊の打撃力は初動第一波を構成する部隊ですし、方面特科の地対艦ミサイル連隊や多連装ロケットシステムを運用する特科大隊は第一撃を担うもの。管区師団に臨時配備という形をとるのか、これも方面即応集団として統括運用し、独自の運用を行うのか、これも議論の余地はあります。

Img_0175 ”師団2012編成”は仮、です。予防線を張ってみました。このように、放言として始まったいつも通りの記事ですから、細部を煮詰めてゆけば矛盾難点論点百出、突っ込み甲斐溢れた記事に仕上がっているのですけれども、少なくとも防衛計画の大綱に具体的な部隊編成を明示したうえで、更に具体的な必要装備数を明示することが、実のところ装備更新を支えることになるのではないでしょうか。現状の別表に或る戦車数や特科火砲数等は師団等の基幹部隊の編制を無視したものという印象がありますし、終わらない更新を前に毎年概算要求を前に嘆息するよりは、何か明示したほうが、とも思うわけです。無論、防衛計画の大綱を画定する当事者に、この能力と編成までを考える能力があるか、という問題にもなりますが、それならばさらに進んで大綱という概念や画定課程までも踏み込んだ議論が必要となるかもしれません。長くなり、収拾もつかなくなりましたが、この辺で区切りとしましょう。

北大路機関:はるな

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韓国海軍駆逐艦ワンゴン・機雷敷設艦ウォンサン、日韓捜索救難共同演習で日本寄港

2011-11-12 23:28:24 | 世界の艦艇

◆舞鶴基地にて月曜日に一般公開

韓国海軍艦艇が舞鶴に来るようです。正確には本日から日韓合同救難訓練が実施されており、この関係での入港。

Img_1929前回韓国海軍艦船が舞鶴に入港したのは2009年7月。今回は舞鶴基地にて11月14日、1400時から1630時まで一般公開されます。入港するのはイスンシン級ミサイル駆逐艦ワンゴン、韓国では王建と表記する艦で、2009年に続いて2011年に二回目の舞鶴寄港。もう一隻は機雷敷設艦ウォンサン。

Img_1280 海上自衛隊からはホストシップとして護衛艦はまゆき、護衛艦まつゆき、が派遣されます。ワンゴンは満載排水量5500t、イスンシン級は6隻あり、財政難と部品不足から稼働率は決して高くはありませんが、ソマリア沖海賊対処任務に派遣できるほぼ唯一の型で、重要な位置づけ。ホストシップを務める、はつゆき型護衛艦は4000t、後期艦で4200tですから、やや大型、むらさめ型護衛艦よりも一回り小型の艦、ということになりますね。

Img_1584 今回は本日と明日にかけ、対馬北東海域において、海上自衛隊からは自衛艦隊第14護衛隊より指揮官斎藤聡1佐指揮下の護衛艦はまゆき、護衛艦まつゆき、が参加。韓国海軍からは第72機動隊隊長ホーチョル大佐指揮下の駆逐艦ワンゴン、機雷敷設艦ウォンサン、輸送艦コジュンボが参加します。

Img_5588 共同訓練は捜索訓練、救難訓練でこのほか海上自衛隊からはP-3C哨戒機1機、SH-60J哨戒ヘリコプター2機が、韓国海軍からはリンクス哨戒ヘリ1機とP-3C哨戒機1機が参加、日韓捜索救難共同訓練は今回が七回目とのことです。こののちに舞鶴基地へ寄港、ということ。一般公開は月曜日一日だけですが、お時間ある方は足を運ばれてみてはどうでしょうか。

北大路機関:はるな

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平成二十三年度十一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2011.11.12-13)

2011-11-11 22:57:26 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 ようやく戻ってきましたが、写真の整理もままならぬ中で今週末の行事紹介です。

File0134 今週末は横須賀の防衛大学校において防衛大学校創設記念行事が執り行われます。土曜日に訓練展示、日曜日には観閲式、そして防衛大学校名物の棒倒しが行われます。日頃の末期を除く海兵や陸士以上に厳しい日々を送る防衛大学校生徒の熱意が爆発する瞬間、それが棒倒しとのことで、下手な模擬戦よりは迫力があるとのこと。

Img_6525 久留米駐屯地祭。第四特科連隊と第四高射特科大隊が駐屯する駐屯地で、写真は豊川の10特科ですが、特科部隊駐屯地ということで迫力ある行事を期待してしまいます。近くには陸王自衛隊幹部候補生学校もあり、そういった意味でも気迫の伝わるような行事がみられるのではないでしょうか。

Img_2415 もう一つは都城駐屯地祭。第8師団隷下の第43普通科連隊が駐屯している駐屯地ですが、宮崎県は霧島火山噴火災害、口蹄疫災害といった災害派遣が続き更には東日本大震災へも部隊を派遣した連隊が駐屯しています。当方は九州南部というと中々容易には足を運ぶことはできませんが、ご近所の方は是非、郷土の連隊の姿を見ていただければ、と思います。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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