北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:航空機搭乗員用自衛装備の必要性、SIG P-220やPDWなど携行性と両立

2016-08-21 21:41:00 | 先端軍事テクノロジー
■9mm拳銃SIG P-220
 AH-64D,陸上自衛隊航空打撃力の骨幹戦力であると共に頑丈で強力なヘリコプターですが実戦での損傷や故障による墜落事例は海外では幾つもあります。『新しい不安定の弧』最終回をお送りする予定でしたが、諸般の事情で変更させていただきました。

 SIG P-220など拳銃の再評価と広範な配備が必要ではないか。イギリスのヘンリー王子が陸軍将校として任官中、WAH-64D戦闘ヘリコプターの操縦士としてアフガニスタンへ派遣され、実任務に当たった事は広く知られ、ノブレスオブリージェという今日的には大時代的な認識が欧州においてはまだまだ広範な認識であると感心させられたものですが、ヘンリー王子はイギリス陸軍が67機導入し最重要装備として世界中で駆使しているWAH-64Dの操縦士として文字通り第一線で戦われたようです。

 ブローニングハイパワー、報道などを観ますと王子がWAH-64Dにて任務飛行に当たる際、着用しているボディーアーマーのSTANAG マガジン用パウチにブローニングハイパワー拳銃を押し込んで飛行に当たっている様子が報じられています、嵩張ります、STANAG マガジンは22口径NATO弾30連弾倉で形状として自動拳銃とはかなり異なるものですが、差し込めば装着できることを示しています、そして即座に取り出すことができる。

 実はWAH-64Dには操縦士の操縦席にL-85小銃固定器具が用意されており、万一不時着の際には自衛用に用いる事が出来るのですが、航空機搭乗員用自衛装備の必要性としまして我が国ももう少し拳銃の位置づけを再検討し、広範な装備を考えるべきかもしれません、不時着した場合でも搭乗員さえ無事であれば予備機を以て即座に復帰できますし、拳銃一丁でも落伍者救出線まで退避できる可能性は高まります、航空救難部隊展開まで時間を稼ぐこともできるでしょう。

 拳銃一丁あるだけで、最後の瞬間の自衛戦闘が可能であるか、できないのか、おおきく変わってくることは言うまでもありません。ただ、9mm拳銃として採用されているSIG P-220はトリガーカバーが大型でMOLLE用STANAGパウチにはやや大柄であるのが難点です。こうした大型拳銃とMOLLEですが、MOLLE方式のボディアーマーであればホルスターも存在するのです、拳銃用ホルスターメーカーではブラックホーク社やサファリランド社などが、マガジンパウチではなく専用のホルスターが開発されていますので拳銃は官品としまして、ホルスターなど、こちらを部隊単位の部隊長使用承認を経ての私物扱いで装着する、ということも考えられるところ。

 航空搭乗員は航空機以上に重要な防衛力です、乱暴な話ですが例えばAH-64D戦闘ヘリコプターが戦闘により喪失した場合でも、搭乗員さえ装甲車などで救出できたという前提では、予算を積めば同盟国アメリカから緊急にAH-64E戦闘ヘリコプターを調達し、空輸し在日米軍基地にて引き渡す事も可能でしょう、しかし搭乗員は代えが無く、民間軍事会社等から探そうにも法的及び人的限界があります、航空機搭乗員用自衛装備の必要性、かなり真剣に考えるべきではないでしょうか。報道写真に残るマガジンパウチのブローニングハイパワーは、ふとそんなことを考えさせられるものでした。

北大路機関:はるな くらま
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新しい不安定の弧【中篇】 シリア・イラク・イエメンと地中海からアラビア海へ中東全域を覆う暗渠

2016-08-20 22:16:45 | 国際・政治
■不安定は中東全域を蝕む
 新しい不安定の弧、ここには従来の不安定の弧に含まれた中東地域が含まれますが、中東地域の全域へその懸念が及んでいる実状を無視してはなりません。

 中東地域での最大の懸念要素は、ISILの台頭やアラブの春民主化運動を原因とする内戦、以上の影響に乗じたパワーバランスの変化です。ISILの台頭は確かに脅威ではありますが、世界規模のイスラム国家運動につながることは、少なくとも暴力至上主義と回教法典曲解を訂正できない現在のISILには不可能です。アラブの春民主化運動は、リビアやシリアの内戦、エジプトの騒擾とチュニジアの動揺、懸念すべきものがありますが、これらの行動そのものよりも、その結果として生じるパワーバランスの変化が、特に力の不均衡、空白地帯の醸成、などを通じ、地域大国の枠組みに影響が及ぼすことの方が長期的な課題です。

 中東情勢では最大の焦眉は、シリア内戦とイラクISILで、シリアへはロシア軍が展開しており、米英有志連合も空爆、一歩間違えれば世界大戦へと繋がる世界の導火線です。ここでは国境なき医師団が、シリア内戦でシリア軍に包囲されたアレッポの開放、アメリカ政府へ具体的な行動を促しました、アレッポは反政府勢力が展開している為シリア軍が完全包囲しているのですが、ここを開放するようアメリカ軍に要請する、という事は、外交的な呼びかけはやりつくし、経済制裁もやりつくし、この上でやれることは、と問われますと、もう、具体的な坑道、米軍にISILに加えてシリア政府との全面戦争に入りかねない支援しか想定できない為、難しい所です、人道危機ですが、過度に介入すれば、更なる人道危機へ繋がる、という懸念を忘れてはなりません。

 シリアのアレッポ包囲、人道危機へ発展しています。シリア政府は市外への離脱への安全回廊を設定し、全市民へ市外へ離脱するよう促していますが、回廊へは検問所が設置されるとともに、徴兵適齢期のシリア市民がそのまま通行できるとの保証がない為、これを断念するのではないか、シリア軍はアレッポ全域を戦闘地域として無力化する姿勢を示していますが、このままでは離脱を断念した市民がさらに追い詰められる可能性、更に、市街地の食料などの備蓄品は既に尽きており、シリア政府が実質的なISILとの共生関係を強いられたアレッポ市民がシリア軍による解放後、どのように扱われるかを考えますと、問題は根深いところです。

 イエメン情勢について。イエメンはアラビア半島のアラビア海側、世界最大の産油地域中東とアジア地域を結ぶ重要航路に面し、世界最大の石油貯蔵量を誇るというサウジアラビアの隣国です。同じく、国境なき医師団によれば、イエメン内戦、激化しているようです。反政府武装勢力フーシ派の首都制圧、内戦の拡大と共に周辺地域へ被害が出始めた事で有志連合が介入、一時的な停戦と共にサウジアラビア軍を中心とした有志連合の任務もひと段落しましたが、停戦後の和平への端緒へ繋げる事が出来ず、結果的にサウジアラビア軍を中心とする有志連合軍が再度介入、特にこの一週間は戦闘が激化しているとの事でして、今回はサーダ州にて、学校が誤爆され犠牲者が出ました。

 不安定の当事者は安定を求めます。この必要性と合致した、ロシアの中東進出、これはこの地域に新しい枠組みを形成することとなるでしょう。シリア内戦の長期化に際し、ロシアは一貫して関与を継続してきています、シリアの独裁政権に対しては欧米諸国は距離をおくと同時に、内戦へ関与することは、例えばアフガニスタン治安作戦、例えばイラク治安作戦、などの経験から忌避し続けてきました。ここにロシアはシリア政府支援という明確な意志を示し、その上で武器供与や軍事顧問派遣など支援策を実施してきました。欧米諸国はシリア政権の崩壊を期待しつつ、しかし関与しないという空隙を生み、そこにシリアとロシアの関係が構築されたかたちです。

 イランとロシアの接近も新しい兆候で、イランは宗派との相違からこの地域へ2000年以来の脅威となっているタリバンやテロ組織アルカイダとの対決姿勢を明示してきましたが、イランはイスラム国家建設以来、その革命のさなかでの外交官拘束や各国の在外公館を占拠するなど、不法行為により経済制裁を受けており、地域的な影響力の大きさとは反面、友好関係を締結できる諸国を求めていました。確かに近年であればアメリカとイランの関係良好化という動きはありますが、経済制裁解除、という程度にとどまるもので、この空隙にロシアはイラン領内に基地使用の協定を締結、軍用機上空通過など軍事協力態勢を強めました。

 この意味するところは、中東地域においてアラブの春民主化運動が、暴動化する状況に陥った場合にロシアの介入基盤を構築できた点に他なりません。かつて、アメリカなどは冷戦時代に民主化運動が例えばソ連の支援下に、もしくはその疑いがある場合において、その運動を支援することはなく、南米や中米においては独裁に定義される政権であっても、共産化を防ぐ上で必要ならば政権支援を実施してきました。こうした行動は近年、特に東西冷戦の枠組みが崩壊して以降為されなくなり、一方で民主化運動に対しては間接的な支援、留学生受け入れや政治亡命の受け入れという形で受け入れるほか、最大限のものとしてはシリアにたいして実施しているような、民主化運動勢力への訓練受け入れ、という範疇で為される程度です。こうした消極的姿勢は、アメリカの地域的ポテンシャルが、ロシアの積極的姿勢に対し劣勢に留まることを意味し、結果的にパワーバランスの変化という形へ収斂してゆくのです。

北大路機関:はるな くらま
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平成二十八年度八月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2016.08.20/21)

2016-08-19 21:29:33 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
防衛予算概算要求の発表が近づく中、天気図を視れば台風まで近づき、場合によっては三つの台風が発生しそうな状況下、皆様いかがお過ごしでしょうか。

今週末の自衛隊関連行事は、北海道、釧路駐屯地祭と函館駐屯地祭が行われます。函館駐屯地祭、40年前の1976年にMiG-25函館亡命事件が発生、ソ連軍スペツナズの奪還作戦の可能性がアメリカより示唆され、臨戦態勢を執った事で知られる第28普通科連隊の駐屯地です。当時の緊迫した写真などが残されており、防衛の第一線、思いをはせてみるのは如何でしょうか。

釧路駐屯地には第5旅団隷下、第27普通科連隊と第342施設中隊が駐屯しています、第27普通科連隊は第3中隊のみ別海駐屯地に駐屯していますが、連隊創設記念行事という位置づけでもありますので、隷下中隊が勢ぞろいしての行事となるでしょう、自衛隊最大の演習場である矢臼別演習場にちかい連隊で、訓練環境に恵まれている。

さて、北海道の話題。航空券は航空会社と格安航空会社の競争によりそうとう安価となり、全日空や日本航空でも九州北海道へかなり安価に足を運ぶという事が可能となりました、が、困るのはホテルの確保です、航空券だけ確保出来てもそれでは意味がありませんから、ね。外国人観光客の増大なども背景に全国的なホテル不足が指摘されていますが、特に北海道は顕著です。

北海道の千歳市内での自衛隊行事へ展開するべく、千歳空港付近のホテルを予約しようとしたのですが、提示されたホテルの大半が定山渓という札幌近郊の観光地で札幌駅からバスで70分、それでは駅に近いホテルは、となりますと、滝川駅近く、という、これでは札幌駅よりも旭川駅の方が近いではないか、というホテルを勧められたこともありました。

一泊ひとり25000円前後という水準のホテルならば、一定数空きがあるのですが、それ以外はバックパッカー向けの簡易宿くらい、10000円前後のホテルというものが、需要に対し異常に少なくなっているように感じる次第なのですが、困ったものです。インターネットで検索できない宿などが穴場らしいのですが、この当たり今後は開拓したいですね。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・8月21日:釧路駐屯地創設63周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/5d/01_unit/butai/03_kushiro.html
・8月21日:函館駐屯地創設66周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/11d/jgsdf-post/images/hakodate/


■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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新しい不安定の弧【前篇】 欧州とアジアの境界点、トルコ騒擾の長期化とクリミア情勢の蠢動

2016-08-18 21:25:34 | 国際・政治
■新しい不安定の弧の広がり
中東から中央アジアを経て北東アジアに掛け、“不安定の弧”が広がっている、2001年に時のブッシュ米大統領が地域紛争多発地域と潜在的紛争地域の広域化へ警鐘を鳴らせたものです。しかし現在、新しい不安定の弧、というものが広がっています。そこで短期集中としてこの問題を考えてみましょう。

新しい不安定の弧は、クリミア半島、トルコ、中東、北アフリカ、中央アフリカ、へと分布します。トルコクーデター危機を受けての大規模な粛清は、世界からの懸念を集めていますが、トルコ政府は子の粛清への圧力を加えるEU欧州連合に対し、EUとの難民協定を破棄する示唆を行っています。アフリカと中東からのEUへの難民をトルコ政府は管理する見返りに経済協力の強化や、EU加盟交渉での繁栄を要求していますが、クーデター未遂後の粛清や死刑制度再開などの示唆はEUとの関係を難しいものとしていました。

トルコ政府は難民管理放棄を一つの交渉材料とする示唆を行い、今後も溝は深まりそうです。トルコを突き放せばロシアと接近する可能性があり、問題は単純ではありません。トルコでは核兵器の問題もあります、トルコの核兵器と云えば、その撤去が課題となった1962年のキューバ危機を思い出させるものですが、トルコ国内のインジルリク空軍基地、アメリカ空軍が展開しますが、核兵器が事前配備されている可能性が高いとのこと。

トルコクーデター危機、未遂に終わりましたがトルコ国内で進むクーデター関係者とその知人や団体に関係した人物、人口の一割以上に対する粛清が新たな危機を及ぼしていまして、インジルリク空軍基地トルコ部隊司令官が逮捕されたことで警備が手薄となっておりここらテロリストに襲撃された場合、インジルリク空軍基地内の米軍核兵器が危険に曝されるのではないか、というものです、粛清による社会不安の長期化は、こうした新しい問題を出してしまいました。トルコの弱体化、現時点で既に杞憂ではありません。

黒海沿岸、トルコ北方でも危機が再燃しています。クリミア半島、ウクライナ領からロシアにより事実上割譲されましたが、この情勢が最近再度緊迫化していまして、ムーディーズが格付けに影響があるとの見解を示しています、市場は敏感に反応しました。今月に入り、ロシア法施行機関職員とウクライナ法執行機関か陸軍部隊との銃撃戦が発生したとの報道があり、この地域はいまだ半島とウクライナ本国との間で緊張状態にある事を世界に示しましたが、市場の反応は、報じられている以上に懸念要素がある事を示しました。

クリミア情勢の主導権を握るのはロシアです。このロシアは、建国以来不凍港の確保を政策の重点としてきたことは世界史に記されているところですが、現代では中東地域への航路維持、そしてもう一つ、冷戦初期からアメリカの同盟国であり、モスクワへの匕首を突き付けたトルコの米軍基地を排する機会へ繋げようとする視点、若しくは、トルコクーデターを契機として、欧米が距離を置こうとする情勢に乗じて自陣営への編入、影響力の拡大を理想として接近する可能性はあるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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将来艦隊戦闘と巡航ミサイル【3】 旧式潜水艦の巡航ミサイル潜水艦への延命改修案

2016-08-17 22:51:47 | 先端軍事テクノロジー
■潜水艦の除籍前有効活用
 海上自衛隊にも巡航ミサイル潜水艦、という区分を構築し得るのではないか、将来艦隊戦闘を考える際にこうしたもう一つの視点を提示してみましょう。

 魚雷を全部降ろしてミサイルを搭載したらば本来の潜水艦任務を果たせません。海上自衛隊の潜水艦への魚雷及び対艦ミサイル搭載能力は20発とされていますが、ここに巡航ミサイルを大量に搭載した場合、肝心となる艦対艦ミサイルや魚雷を搭載する余地が小さくなってしまいます、潜水艦の任務には対水上戦闘及び対潜戦闘という重要な任務がある訳ですから、巡航ミサイルを大量に搭載した場合でも、その主任務は不変であり、即座に必要では無い装備品の搭載に必要なミサイル及び魚雷搭載能力が制約される事は避けなければなりません。

 潜水艦の総数に余裕がない故にできない、と。他方、対水上戦闘や対潜水艦戦闘を想定しない潜水艦を確保する事が出来たならば、即ち最小限の自衛戦闘に充てる対潜魚雷のみを若干数搭載し、それ以外の修養容積を全て巡航ミサイルの搭載に充て、日本近海を遊弋させることでUGM-109E,UGM-109Hの非常に長い射程を活かし、日本本土の着上陸に際しての着上陸点に対する打撃手段、また日本本土が大規模な攻撃、核攻撃を含めた攻撃に曝された場合には我が国は核兵器の報復手段を持ちませんし持つべきでもありませんが、日本国家が必要な措置としてその決意を示す事だけは可能となるでしょう。

 巡航ミサイル潜水艦があればその分、我が国本土への攻撃を抑止できる幅が広くなるという視点を挙げました。さて、巡航ミサイル潜水艦という視点についてですが、これは上記の対水上戦闘及び対潜水艦戦闘にも通る潜水艦の任務を終えた潜水案で、老朽化により所要の潜行能力や航行能力を喪失した旧式潜水艦を原型として、魚雷搭載能力を大きく縮小し、その装備搭載能力を巡航ミサイルに特化する、という方式が考えられます。対潜戦闘用の自衛用魚雷としては4発程度とし、16発をUGM-109E,UGM-109Hの搭載にあてる。

 トマホークキャリヤーとしての除籍前のもう一仕事を潜水艦に、という。日本の潜水艦は比較的早い時期で除籍されていますが、性能上潜水艦のポテンシャルはそれほど低下しているものではないため。そして対潜バリアーにより防護された海域を潜行し遊弋する、日本版ミサイルパトロールというべき運用です。日本周辺海域には、小笠原諸島と本州島により三角海域を構成する相模湾や遠州灘、九州島と四国島に防護された周防灘と日向灘、能登半島と丹後半島に囲まれ舞鶴基地と舞鶴航空基地により防護されている若狭湾、九州島と天草諸島に囲まれ佐世保基地及び大村航空基地からの防衛を受ける事が可能な天草灘、巡航ミサイル潜水艦を遊弋させることが可能な海域がいくつも存在します。

 潜行できるというだけで潜水艦は巨大なポテンシャルを維持します。勿論、こうした海域は良好な漁場でもありますから、潜水艦が漁船の底引き網や延縄に巻き込まれないよう、潜行しつつ注意しなければなりませんが、哨戒機のレーダーや水上戦闘艦のソナーから回避する第一線の新鋭潜水艦ほどにはその負担は大きくないでしょう、もちろん、通常動力潜水艦ですので、原子力潜水艦の様に先行したまま充電する事は出来ませんし、また、巡航ミサイル、それも通常弾頭を搭載した巡航ミサイルの能力には限度がありますが、現時点で戦略爆撃機から1500発もの長剣10巡航ミサイルを突き付けられているという状況に対して、打つ手として考えられるでしょう。

 数の余裕は実のところ、早めの除籍という贅沢を改めれば生まれる。海上自衛隊は毎年一隻の潜水艦を建造し、潜水艦定数が16隻の時代には毎年1隻を除籍させていました、潜水艦は概ね30年程度現役に留まる能力がありますので、勿論老朽化とともに潜行能力や船体への歪みによる水中騒音の増大といった不具合は生じますが、諸外国では16年間という短期間で潜水艦を除籍させるようなぜいたくな運用は行っていません、このため、延命改修を含め潜水艦運用年数を32年程度とし、勿論運用基盤構築に時間を要しますが、応用する施策は考えられるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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陸上防衛作戦部隊論(第五六回):航空機動旅団、装甲車21両を駆使する中隊戦闘群

2016-08-16 21:44:02 | 防衛・安全保障
■増強普通科中隊の機動力
 前回提示しました中隊戦闘群、中隊戦闘隊、呼称は指揮官階梯により幾つかの余地があるものですが、連隊戦闘団の骨幹戦力として空中機動部隊の支援を受け、段列地区からの補給と火力支援下、速度戦を実現する、この作戦単位について。

 独立した作戦単位ですので、増強普通科中隊規模であっても自己完結できる装備が必要で、普通科部隊としては機械化中隊若しくは軽装甲中隊、この中隊に軽装甲機動車小隊を増加配備する事となり、各小隊は、小隊本部と3個小銃班の軽装甲車若しくは高機動車4両を基本、中隊は中隊本部、中隊本部班を配置します。その上で普通科中隊は14両の装甲車両か機動車両を装備します、此処に軽装甲機動車小隊を加入させ、装甲車両は21両となります。

 ここで想定する普通科中隊の編成は現在の全国の部隊編制、中隊本部班、小銃小隊、小銃小隊、小銃小隊、対戦車小隊、迫撃砲小隊、を基幹としている現在の編成をそのまま応用しますが、対戦車小隊は中距離多目的誘導弾若しくは87式対戦車誘導弾を装備、各小隊は4門を射撃班ごとに分散します。迫撃砲小隊は81mm迫撃砲4門を射撃班ごとに配置し、小隊本部には観測班を置く。その上で重迫撃砲班を分散配備する場合には増強小隊編成を採る想定です。

 中距離多目的誘導弾や81mm迫撃砲など、火力面では現在の普通科部隊はかなりの能力を有しています、中距離多目的誘導弾は射程が8km程度とされ、対して現在配備されている81mm迫撃砲の射程は5.6km、射程の面から対戦車誘導弾が射程で優位に立つことになります、これは観測班の重要性を端的に見出すことができる部分で、各中隊の交戦距離の延伸を意味します。併せて、この射程の延伸は中隊に所属する小銃手全員にも可能な範囲内で個人用情報端末を配備する。

 情報共有という能力が、この中隊戦闘群を単なる小規模部隊の羅列から、戦域的戦闘基盤、部隊のクラウド配置として機能します。そこで広範囲に展開する中隊の戦闘正面での目標標定等の戦闘へ参加する手法が求められるでしょう。個人用端末は、スマートフォン規模のものであっても、目標情報は伝送可能で重要な要素は受け手となる迫撃砲部隊の情報装置や対戦車小隊の中距離多目的誘導弾側に処理能力を付与させることで対応できるでしょう。無論、迫撃砲小隊観測班に充分な観測能力を付与させ対戦車小隊へも情報班等を置き、戦域情報優位を追求する選択肢はあるにはあるのですが。

 戦域情報優位に資するにはその背景として端末の広範な配置が有利であることは云うまでもありません。他方、四輪駆動軽装甲車というものの必要性を併せて強調する事となりますが、これは個人用情報端末の広範な配布と重なる部分があります、四輪駆動軽装甲車には個人用情報端末の充電という戦闘基盤としての機能が求められるわけです。逆に言うならば、人間は社会性の生き物という社会学の原則の通り、情報基盤さえ確保されるならば、自己状況と全体の状況、所謂、使命の自覚と目的の完遂、へ明確な方向性が示される、ということ。

 個人用情報端末は、その配布の可否について、配布すれば当たらに個々人の小銃手に装備費用が上昇する事となりますが、部隊がどの程度分散し、且つ独立した運用能力を有するかについてを左右する重要な要素でもあります。所謂RMA,部隊間データリンクを個々人まで普及させるには必要な施策です、すると、どうしても充電という要素が必要性として大きくなるわけです。もっとも、それほど深刻に考えずとも、補給品目に電源という分野が加わったのみ、緊急用太陽電池や発電機などでも補助できる、と考えるべきなのでしょう。

 電力の補給態勢は一応重要な命題です、これは、例えば陸上自衛隊へ全般配備が成った広帯域多用途無線機がデータ通信能力を付与させたものの電力消費が大きくなり予備電源携行の負担など、電源交換時の情報途絶等の問題が指摘されている部分と重なりますが。四輪駆動軽装甲車に電源充電機能を付与させることでこの問題は解消します。装甲車両の充電能力ですが、例えばアメリカ陸軍が配備しているストライカー装輪装甲車等は兵員用に充電コンセント13カ所を配置しました。

 航空機動旅団、装甲車21両を駆使する中隊戦闘群、この能力を確たるものとするべく、提案したものが四輪駆動軽装甲車ですが、ストライカー装輪装甲車等は装甲車での充電、増大する歩兵用情報装置への充電能力を付与しています、我が国にも必要な視点です。空中機動部隊と云えば軽歩兵との印象が強いものですが、軽歩兵部隊であっても情報端末は情報共有の視点から不可欠であり、その上で軽歩兵部隊に発動発電機と発電機用燃料を人力携行させるには如何にも重過ぎ、こうした視点から車両との連携、空中機動ではなく航空機動としての視点を提示しました。

北大路機関:はるな くらま
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8.15:終戦71周年 あらゆる戦争と国家間紛争は話し合いにより解決する事が出来る

2016-08-15 22:44:04 | 北大路機関特別企画
■太平洋戦争も話し合い解決した
 本日はあの太平洋戦争終戦から71年となる終戦記念日です。終戦、と云えば我が国ではどの戦争かを問う必要がない、それほど長い平安の時代、これはあの戦争で得た数少ない我が国の恩恵であり、戦火と戦禍に倒れた方々の犠牲により成り立ったものです、そこで終戦記念日ならではの話題を、考えてみたいところ。

 あらゆる戦争と国家間紛争は、話し合いにより解決する事が出来る。話し合いにより解決を、という視点、今回はこの視点について戦後71年という記念日に考えてみましょう、意外に思われるかもしれませんが、あらゆる戦争と国家間紛争は話し合いにより解決する事が出来ます、実際問題、話し合いにより解決できなかった戦争は国家間の戦争という概念が誕生して以降、それほど多くはありません、ですから、話し合いにより解決できないのかという平和主義という視点からの問いは、所謂現実主義視点と理想主義視点との間で奥の議論と論争の題材となるものですが、当方としては現実主義の視点から極論としまして、可能である、という回答を呈示する事としています。

 太平洋戦争も話し合いにより終戦となりました。太平洋戦争は我が国が連合国とのポツダム宣言を受諾し終戦となっており、あの第二次世界大戦さえも話し合いにより解決された訳です。相手国家を根幹から破壊するまで継続する国家間戦争と云えば、カルタゴとローマ帝国のポエニ戦争が代表する古代戦史には当然の戦争形態でしたが、国際関係の延長線上として戦争が位置付けられるようになった近代以降、講和条約を結ばないまま相手を破砕した事例は中国のチベット侵攻等限られたもので、多くの場合講和会議という、双方の合意を以て停戦状態へ移行しています、ですから話し合いにより解決しました。

 それならば、膨大な犠牲者を出す話し合いによる解決は受け入れられるのか。終戦記念日に考えなければならないのは、戦争を話し合いにより解決するのではなく重要なのは戦禍に国土国民を巻き込まないという決意が重要である為です、即ち、我が国が共有する認識での平和とは、戦火に巻き込まれないことにあり、話し合いにより解決することはその手段であって目的ではない為です。話し合いにより解決するまでの間に膨大な犠牲者を払って解決の糸口を探すようでは、平和裏に解決したとは言えません、これは、話し合いにより解決する戦争が国民にとり平和的であったかと問われれば、あの太平洋戦争が話し合いにより解決したことは事実であっても、話し合いは平和を意味するものではなく、故に太平洋戦争が平和的に解決されたとは言えない、でしょう。

 不戦の誓い、という言葉も我が国では好んで用いられる言葉なのですが、非常に難しいのは、不戦として戦争、攻撃を受けた場合でも回避し続ける事は国土が戦禍に見舞われる事を意味しまして、これは目的としての平和ではなく、手段としての平和を用いる場合の非常な懸念すべきものとなります。防衛や安全保障を研究する際、戦争が好きなのか、学部時代は人殺しが好きなのか、と実際に何度も罵られましたが、これは単純に手段としての平和を目的とする視点と、平和を手段として用い目的とは必ずしも重ねる事を優先度として重視しない視点との齟齬と云えます、話し合いにより戦争を解決する事は、平和裏に戦争を解決するとは意味を同じくしない。

 戦禍を避ける、国土を戦災により荒廃させず、国民を戦禍から守り、平和を謳歌し自由と繁栄を享受するためにはどうすればよいのか。平和の視点を考えますと、国家主権を捨てて降伏すればよい、という声もありますが、しかしこれでは、降伏した後に戦勝国が利する新政権を樹立し、その政権が日本国憲法を徐々に破棄し、例えば戦勝国側について戦争を求める事例は、世界史を見ますと敗戦国から自国軍補充兵力を招集する事例は多く、植民地地域からの人員徴発による動員は、例えば第一次世界大戦におけるイギリスの重要な戦力源ともなっていました、ですから、降伏した場合、国家主権を喪失すれば、云いたいことさえも封じられる状況へ甘んじて追いやられる事を意味しますので、話し合いで戦争を解決するまで時間を掛ける事で犠牲は増えます、故に不戦と敗戦は、国民を戦禍から守る事と両立できません。

 防衛と安全保障、という視点ですが、これは平和を手段として用い、平和を目的よりも手段として重視する視点からは忌避されるものとなってしまいました。我が国は終戦の日から実に71年もの長い平和の時代を謳歌し、今日の終戦記念日を迎える事となりましたが、その背景には非常に危うい状況下、防衛力を整備し、同盟国との協力を進展させ、警戒監視と抑止力の維持に努めてきました。平和を手段として第一に考えるのか、平和を目的として第一とするのか、後者の努力が防衛力を整備し法整備を重ねてきました。我が国では、手段としての平和と目的としての平和の齟齬が続いていますが、忘れてはならないのは、全ての戦争は話し合いにより解決しますが、話し合いにより解決するまでの間の膨大な犠牲者をどのように考えるか、手段と目的の齟齬が国土と国民を戦火と戦禍に巻き込まないよう、考えてゆきたいものです、ね。

北大路機関:はるな くらま
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防衛省、新型地対艦ミサイル開発へ概算要求盛り込みへ 南西諸島防衛視野に射程300km想定

2016-08-14 21:44:03 | 先端軍事テクノロジー
■南西諸島防衛の地対艦ミサイル
 読売新聞が報じたところによれば、政府は南西諸島防衛を強化する視点から新型の地対艦ミサイル開発を開始するとのこと。

 これは来年度予算概算要求へ開発予算が盛り込まれる新装備で、射程は300kmを想定、宮古島など先島諸島に配備する方針で、我が国島嶼部周辺に展開する他国軍艦などを近傍の島嶼部陣地から攻撃する能力を持たせるといい、2023年頃に配備を目指すもよう。防衛省では南西諸島近海での軍事行動を強化する中国軍の行動を視野に南西諸島防衛の強化を進めており、新型地対艦ミサイルについても、その一環といえるでしょう。

 新型地対艦ミサイルは北海道や九州の地対艦ミサイル連隊に配備されています88式地対艦誘導弾SSM-1の後継という位置づけと考えられますが、その射程はこれまで導入が何度か検討されたATACMS陸軍戦術ミサイルの射程と重なります、ATACMSは陸上自衛隊でも運用中で方面特科部隊全般支援火力の中枢と位置づけられるMLRSの戦術ミサイル型で、2000年代初頭に導入を検討した際、射程過大として連立与党の一部からも反対の声が上がり導入されませんでした。

 300kmという射程ですが、これは従来の88式地対艦誘導弾が冷戦時代、最大の脅威を受けていました北海道へのソ連軍着上陸を阻止するべく射程を180kmとしたものを南西諸島防衛へ再検討した結果のものと考えられます。180kmという射程は、北海道中央部の大雪山など山間部に掩砲所を建設し、戦術核攻撃を含めた脅威から部隊を防護しつつ、北海道を最大の脅威を受けた北部地域、北方領土からの東部地域へ、また道都札幌を狙う石狩湾方面への着上陸、どの方面からの着上陸へも対応する射程として要求されたと考えられます。

 南西諸島防衛を主眼とする新地対艦ミサイルは、その着上陸想定範囲が北海道島よりも広範囲に及び、且つ、多数の島嶼部に展開させる場合、現在の88式地対艦ミサイルでは180kmの射程とした場合、連携が非常に困難となります。石垣島、沖縄本島、奄美大島、この三箇所に展開し、データリンクにより連携する場合には300kmという射程が最低限必要となる、という要求が反映されたことが考えられます。この射程ならば、石垣島、沖縄本島、奄美大島に配備する事でぎりぎり南西諸島全域に防衛網を構築出来るでしょう。

 ミサイルの性能は未知数ですが、我が国の新装備は既存の技術を基盤として新型装備へ反映させるため、ASM-3として今年度いっぱいで航空自衛隊のF-2支援戦闘機用対艦ミサイルの開発が完了します。新地対艦ミサイルは、ASM-3の技術が応用されると考えて間違いなく、超音速巡航能力と超低空巡航能力を併せ持ち、プログラミング飛行方式を採用し同時多方向飽和攻撃、つまり目標を様々な方向から迂回し同時弾着させ、相手の防空能力の限界点を越え撃破する能力が付与される。

 また、88式地対艦誘導弾に採用されたデジタルマップ機能を用いた地形回避能力も継承される事が考えられ、島影など目標へ有利な地形を利用し接近する機能も付与される事が考えられ、アメリカが運用するハープーンミサイルやトマホークミサイルと比較した場合、これらは亜音速ミサイルである為、迎撃しにくい、日本へ着上陸を試みる艦艇にとっては、最高度の防空艦も含め非常に厄介な、日本としては頼れるミサイルとなります。自衛隊の装備は多用途ヘリコプターはじめ様々なものが南西諸島仕様となっていますが、これもその一つ。

 GPS誘導方式が慣性航法装置に加え採用されるとのことで、これは陸上目標に対する誘導を想定していると考えられます。陸上目標への対処としましては先進対艦対地弾頭技術の研究、としまして防衛装備庁では既に開発に着手しており、海上目標の他、複合指向性貫通弾を用い陸上防衛に資する地対地打撃力が示唆されています。地対艦ミサイルであり、88式地対艦誘導弾の後継という位置づけ、12式地対艦誘導弾システムと協同するとの位置づけではありますが、上記視点から将来的には方面特科部隊のMLRSが老朽化した際、後継装備と位置づけられる可能性もあります。

 新型地対艦ミサイルは、これまで陸上自衛隊の88式地対艦誘導弾が、護衛艦むらさめ型以降艦対艦ミサイルとして採用されたSSM-1へと発展しています。即ち、この新ミサイルは将来に海上自衛隊の護衛艦やミサイル艇、場合によっては潜水艦へも搭載される可能性があります。ASM-3派生型となった場合、その意味するところは、海上自衛隊の対艦ミサイル戦闘に関しても現在のハープーンミサイルやSSM-1を用いた海上戦闘から、長射程の超音速ミサイルによる戦闘へ、技術的に発展する可能性もかんがえられる。

 ただ、課題も残ります。支援の施設部隊と情報部隊による目標情報捕捉、地対艦ミサイル部隊の自衛戦闘能力についてです。冷戦時代、北海道に展開した88式地対艦誘導弾部隊は施設部隊の坑道中隊により地下へ掩砲所を構築し航空攻撃から部隊を維持する事が出来ましたし、普通科部隊と高射特科部隊による支援を受ける事が出来ました、この部分について、南西諸島には北海道程部隊を掩蔽展開できる地形がなく、この点、平時からコンクリート製掩体を構築する、地下通路に配置するなど、考慮する必要があるでしょう。

 標定についても、沿岸監視部隊を増勢する、無人偵察機部隊を整備する、電子隊を新編し電子標定を行う、など考える必要があります。標定し目標の位置が判明しなければミサイルを投射できません、このため、情報小隊を離島に分散させ、通信基盤と衛星通信能力など合わせ標定と情報伝送を行う必要がありますし、ミサイル部隊の展開場所と射撃陣地に予備陣地の選定など、やる事は山積しています。しかし、これにより島嶼部防衛が大きな前進の転換点へ就くことを意味し、この持つ意味は非常に大きいといえるでしょう、更なる情報、概算要求の公表を待ちたいですね。

北大路機関:はるな くらま
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航空防衛作戦部隊論(第四〇回):航空防衛力、戦闘地域となる基地周辺国民保護と装備離隔

2016-08-13 22:16:12 | 防衛・安全保障
■基地防衛の難しい一面
 航空防衛力、戦闘地域となる基地周辺国民保護と装備離隔、という視点について。基地防衛は、非常に難しい一面を有しています。

 航空自衛隊の基地施設は市街地市域拡大により、開庁当時は一面の農地であった地域や牧草地に林野と周辺の人口密集地は無かったものの徐々に市域拡大により市街地が周辺部を埋める事となっています。もちろん、民有地であることから基地周辺に住宅地を建設する事は自由なのですが、基地建設から数十年を経て転居した方々が、基地騒音に対し苦情を示す事が多くなっているのは承知の通りです。

 その上で、基地は防衛施設出る為有事の際には航空攻撃及びミサイル攻撃に曝されます、航空自衛隊の任務は航空優勢維持であり、この関係上航空自衛隊基地が攻撃に曝されない程度に迎撃態勢を維持する事が望ましい訳ですが、時際には専守防衛であるため、第一撃をどうしても受動して防衛体制を構築する構図となります。これが基地防空という命題を難しくしてしまう訳です。

 すると、基地防空隊が高射機関砲及び携帯地対空ミサイルにより接近経路上の戦闘爆撃機を、将来的に3P弾など高性能弾薬を用いる機関砲が配備された場合には精密誘導爆弾を空中にて迎撃し、短距離地対空誘導弾や基地防衛用誘導弾等が発射母機若しくは巡航ミサイルを直接防護します。防護する、とは聞こえがいいですが、航空優勢を喪失した場合には付随被害が周辺部に及ぶ、という事でもある。

 この為、基地周辺10km圏内は戦闘地域となり、この圏内には撃墜する航空機の破片落下等危険が生じるわけです。元々、日本国土を攻撃する勢力に攻撃による被害の責任はある訳ですが、基地を攻撃された際の付随被害は当然想定する必要があり、この命題に対し無策では、防衛任務を継続する自衛隊を指揮命令する政府と主権者である国民との距離に空隙が生じかねません。

 そうしますと、付随被害を回避する観点から、周辺自治体との緊密な連携を採ったうえで、周辺地域からの疎開、屋内退避の施策検討、公共施設の危険地域における代替避難施設の確保など、真剣に検証しなければならない命題といえるでしょう。拠点航空基地周辺地域における非戦闘員退避は付随被害防止と憂い視点からの一つの重要要素ですがその極限と共に併せて考えるべきは基地施設の離隔、でしょう。

 この苦肉の策としまして、これまでに提示しました施策は有事の際に周辺国道沿いへ施設の一部を離隔配置するというものを提示しました。離隔、といいますのは、平時において運用する大型格納庫を可能な限り有事の際には基地周辺へ分散し、可搬式航空格納庫へ一機一機を話して配置すると共に、航空機周辺への警備要員を配置し非正規部隊による攻撃を警戒しつつ航空攻撃からの生存性を確保する、というもの、勿論この施策は一般道路を通行するというようなものではなく、外縁沿いの敷地内での離隔も含みます。

 併せてもう一つの離隔の方式は基地周辺部へ広報施設を建設し、若しくは防音緑地帯を可能な限り維持し、有事の際にはこの地域へ航空機を離隔する、航空機を離隔できない場合でも、関連機材を離隔配置する、という施策です。この具体的施策として考えられるものは、周辺地域への民有地を臨時借り上げし可搬式格納庫へ配置する、とまでは行かなくとも関連資材の分散配置などは検討されるべきで、指定公共施設を設定し有事の際には基地から道路沿いに展開するというものが考えられる。

 実際問題、拠点航空基地は航空攻撃の目標となりますが、我が国へ直接脅威を及ぼす周辺諸国は残念ながら精密誘導爆撃能力が端緒の段階であり、基地周辺への被害の可能性は否定できません、更に、長距離打撃力として巡航ミサイルを重視している為、基地防空任務の結果としての付随被害もまた否定できません、この為、状況が一定以上長期化する場合などには、国民保護計画の一環として広域避難の計画は検討されるべきでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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平成二十八年度八月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2016.08.13/14)

2016-08-12 21:33:52 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 リオデジャネイロ五輪開催中、東シナ海では中国公船が大船団と共に我が国南西諸島近海を遊弋し緊張が高まり、南シナ海では中国軍の不法占拠に激怒したヴェトナム海軍がこれ以上自国領を占拠されぬよう南沙諸島にミサイルを展開させた今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 お盆休みの時期となりましたが、この時期は自衛隊でも行事は行われません。体験航海や展示訓練等も実施されません。しかし、こんな時期だからこそ、基地の周辺散策などお勧めできるかもしれません、海上自衛隊HPなどで基地のある街、として様々な特集がありますので、参考にしてみてはどうでしょうか。

 横須賀のヴェルニー公園、佐世保の佐世保港、舞鶴の前島埠頭フェリーターミナル、呉のアレイからすこじま、海上自衛隊基地の近くにはこうしたフネを眺める場所がありまして、お盆の時期では多くの艦艇が母港に憩う時期です。ただ、近年、平時の警戒監視任務もおおきくなっており,舞鶴からは環太平洋合同演習へ護衛艦ひゅうが、などが派遣中となっています。

 さて。駐屯地祭、開門前に並び開門と同時に第一線へ颯爽とかけてゆく方々、当方もそうありたいと思うところですが、撮影していますと考えさせられるのは撮影位置は必ずしも同じ場所である必要はない、というものでした。例えば観閲行進などは、訓練展示とは比較にならないほど多数の車両が一枚の写真に収められるので、勿論最適な撮影位置を選びたい。

 観閲行進は鉄道車両の変遷写真のように、可能ならば正面に近い場所から撮影しますと、観閲行進の待機車両から観閲台正面を通り会場目いっぱいに行進する様子を撮影できます、観閲行進の勇壮な様子こそ式典の華、と考えて撮影位置を探しますと、意外と穴場が多く、観閲行進直前まであまり人が集まっていない、というような場所もそれこそありました。

 第11旅団の真駒内駐屯地、第2師団の旭川駐屯地、第5旅団の帯広駐屯地、少し勇気が必要ですが、会場の端っこの方にこそこうした撮影に最適な場所が多く、そしてこれは他地域禁止地区や通路ではなく、一般開放されている場所、として確認をしなければ失敗しかねないのですが何度も確認した上です。穴場の撮影位置、探してみるのも面白いものです。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・自衛隊関連行事はなし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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