哲学者の中村雄二郎に『術語集』という岩波新書がある。ひょっとしてこの書の中に技術の定義が書かれていないかと思って調べてみたが、残念ながら載っていなかった。
それでしかたなく、岩波『国語辞典』第3版を開いてみたら、「科学を実際に応用し、人間生活に役立てるわざ」とあった。
もう一つ『広辞苑』第5版を引いてみると、「科学を実地に応用して自然の事物を改変・加工し、人間生活に役立てるわざ」とある。
どちらも似たような語義である。なかなかわかったようなわからないような。だが、これがやはり技術の定義なのであろう。
武谷三男の『物理学入門』(季節社)に『自然科学辞典』(霞書房)所載の用語の説明のうちに、武谷が執筆したものが採録されていることを思い出した。それで調べてみると、技術という用語の定義は載っていないが、「技術論」は説明があった。
この冒頭には技術の用語の説明がある。「技術は人間の合目的的行動を可能にする原理的な要素であるが」、「社会と自然とにまたがる、人間の実践の基本的な概念である」との説明があった。
用語「技術論」の説明によると武谷氏は自分の技術論の定義ばかりではなく、「労働手段の体系説」についても紹介がされている。