反数(はんすう)という用語を知っている人はあまりいないのではないか。これについてはずっと前にもこのブログで書いたことがある。それがいつだったかは覚えていない。
私が反数という用語を知ったのは遠山啓『数学入門』(岩波新書)読んでだったと思う。遠山さんは私たちがあまり使わない、いろいろな用語を使う人だったので、これはてっきり遠山さんの作った用語だと思っていた。
ところが、Bellの『数学をつくった人々』(東京図書)を読んでいたら、反数という言葉を見かけた。それで一般的用語であることを知った(注1)。
もっともそれが英語でもともとどういうのかはそのときはわからなかった。しかし、Bellがつかっているのだから、それに対応した英語があるには違いないとは思った。
どういう機会だったかもう覚えていないが、「反数」の元の英語はoppositesというのだと知ったのはそれからどれくらいたっていたのだろう(注2)。
反数とは足し算や引き算で出てくる用語であり、もしある数 a があると、それの符号を変えた -a のことである。
掛け算や割り算であれば、a に対して b をかけて1になる数があり、この数を逆数とよぶ。ab=1となる b は b=1/a である。加減算での逆数ともいえるものが反数だった。
(注1) ちなみにBellの『数学をつくった人々』の原題は"Men of Mathematics"だったと思う。
(注2) 反数をopposite numbersと書いていたが、英和辞典を引いてみたら、これはもっと別な意味らしい。武藤、三浦『算数・数学用語辞典』(東京堂出版)で反数を引いたら、そこには対応した英語がなぜか書かれてなかったが、私がボールペンの赤字でoppositesと書き入れていた。
これは銀林浩・純 父子の著書『数・数式と図形の英語』(日興企画)で知った用語であった。ちなみにBellの『数学をつくった人々』(東京図書)の訳者の一人は銀林浩さんである。
また余計のことだが、銀林さんの名前は「ひろし」ではなく、「こう」というらしい。銀林さんは一度だけ高知での数教協全国大会でお見かけしたことがあるが、貴公子のようなとてもハンサムな方であった。
(2020.6.26付記) 反数をopposite numbersという訳語も正しいらしい。ただ、opposite numberで英和辞典を引くと「反数」という訳語はでて来ない。