「線形代数学」は「微分積分学」と共に大学の専門基礎教育で学ぶべき科目になってもう久しい。私のような老人は「線形代数学」は専門基礎の科目として学ばなかったたぶん最後の世代に属するであろうか。
私の世代でもすでに京都大学に入学した友人は佐武一郎の『行列と行列式』(裳華房)で線形代数を学んでいたらしいから、すでに線形代数は私の当時でも部分的には専門基礎科目になっていたのであろう(注)。
だが、私の学んだ大学ではまだそこまで線形代数が一般化していなかった。私の数年後の学年ではすでに線形代数が専門基礎の科目になっていたと思う。私の一年あとに同じ大学で学んでいた妹はまだ私の学んだテクストと同じテクストで専門基礎の数学を学んでいたから、線形代数を学ぶということになったのは少なくとも私の学んだ大学ではまだ1年後ではなかったらしいが。
これは旧教養部の数学のテクストは昔の旧制高校の数学のテクストの焼き直しだったからであろうか。もちろんのことだが、教養部で数学を教えてもらった先生方もすでに亡くなって久しい。
(注)佐武一郎の『行列と行列式』(裳華房)はその後で『線形代数学』と改称されて、同じ裳華房から出版されており、またこの本の英語版も出ているはずだが、よくは知らない。私はまだ新しい『線形代数学』の版をもっていないが、そろそろ購入すべきかと考えているこのごろである。