3冊の岩波「数学公式集」I, II, IIIは理工学系の人なら大抵はもっている公式集だと思う。
いま、このIIIがいつの発行か見てみたら、初版が1960年の発行だとわかった。昔からあると思っていたが、私ぐらいの年に者になるとそれほどこの公式集も古くはなかったのだなと思う。因みに私は1958年に大学に入学して、卒業は1963年である。
私が3冊のこれらの公式集を初めて買ったのは1965年くらいだと思う。いまもっているのはその後の出版で1975年の14刷である。
その後もう30年以上経っているので、すでに訂正がされているとは思うが、数日前に超幾何関数で三角関数のsin, cosとか双曲線関数sinh, coshを表すところを調べて見た。
これらを級数で表してみると係数がうまく出てこないことに気がついた。どうも間違っているらしい。
それで、念のために別の公式集を見てみたら、そこに出ている式と明らかに違っている。公式集は間違っていては困るが、やはり人間のやることだから間違いは避けられない。
それに普通の関数を超幾何関数で表したときに本当にそれがあっているかどうかまでは1960年に発行されてから、少なくとも1975年までの15年間には検算した人はいなかったということだろう。
以前にもこの数学公式集に小さな間違いを見つけて連絡をしたことがあったが、岩波書店の社員はみな忙しいのだろう。編集者からなんの連絡もなかった。
いや別にそれを恨みに思っているわけではない。常に小さな間違いでも増刷するときに訂正を繰り返しているだろうから、すでに出版社の方では訂正済だった可能性もある。
しかし、大きな公式集には間違いが絶えることはない。これはどうしても不可避のことであろう。人間のやることはやはり神のやることではないので、誤りは仕方がない。
あるロシアの科学者が編纂した分厚い公式集があり、E大学に勤務していたときに、それを校費で購入してもっていたが、それの公式に誤りがあったということを同僚の研究者から聞いたことがあった。研究上で使って見たら結果がおかしいので、よく調べて見たら、公式が間違っていたという。
その誤りを発見したグルジア出身だった大柄の美人の女性の大学院生がいた。その後、この方は指導教官の先生からの教官としての採用したいとの提案を振り切ってアメリカに永住移住したが、日本に居ても身分が安定しているわけではないとの判断だったのだろう。