物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

ベクトル解析の重要な定理

2019-02-08 10:20:01 | 数学

ベクトル解析の重要な定理はGauss, Stokes,Greenの定理であることは疑いがない。

ところが、これらの定理の歴史は書かれていないとCroweはいう。

The history of these Theorems has never (to my knowledge) been written. It essentially lies outside the the province of the history of vector analysis, for the theorems were all developed originally for Cartesian analysis, and by people who did not work with vectors. (Crowe "A History of Vector Analysis" (Dover) 146)

もっと詳しいコメントをCroweはそのあとにつけているが、ここでは省略する。要するに、いまではベクトル解析の重要な定理として私たちが学ぶ、これらの3つの定理はベクトル解析よりもかなり以前に発見されていたという。

このコメントの中にStokesの定理はStokesが試験に出題したとある(同書147)。試験に出題したのだから、もちろん証明はついていない。Kelvinの名前もこのコメントに出てきている。

こういう事情を知りたくなったのはもちろんベクトル解析に関心があるからであるが、歴史的な事実は複雑であることがうかがい知れる(注)。

(注)私が歴史に関心をもつのは歴史そのものに関心があるからではない。そうではなくて、これらの定理の発見法的な証明がわからないかと思うからである。

ところがいくつかの本を読んでみたのだが、発見法的に証明をしてくれている書はほとんどないのが、実情であり、残念である。


材木の重さ

2019-02-07 12:34:41 | 物理学

材木の重さを計るのに材木屋はどうしているか。実際に秤の上に材木全体を乗せられれば問題はない。

だが、それができないときに、材木の片一方は別々に持ち上げられるとする。このときにまず右でも左でもいいが、その端をもちあげて、その重さを測り、続いてその反対側の重さを測る。もちろん、片側を持ち上げたときにもう一方は地面についている。それでもその和をとれば、それは材木全体の重さとなっている。

これは大学に入った後で、金原寿郎『物理の研究』上(旺文社)の演習問題を解いて知った。たぶん間違っていないと思う。ちょっと手を動かして計算をしてみればいい。

ところで私がこのことをそのころまだ存命だった私の母に話したところ驚いたことに、母がそのやり方を知っていたことだった。そうやって材木屋は大きな丸太の重さを知っていると教えてくれた。

別に、私の母は材木屋の娘であったわけではない。どうしてそういうことを知っていたのか聞かずじまいであったが、もしかして女学校の理科で学んだことでもあったのか不思議でならない。

 


プラニメーター

2019-02-07 11:27:56 | 数学

プラニメーターなんて言葉を知っている人は一般人でどのくらいいるのだろう。

高校生のころ、数学で微分積分学をはじめて学んだころ、元技術者だった父の持っていた器具の中にこのプラニメーターがあった。

これは曲線の内部の面積を、その周りの曲線をなぞることによって、求める器具である。そういう説明をそのころ父から聞いたことがあった。

普通には、まわりの囲む曲線の長さを知ったとしてもその面積を知ることはできないのはだれでも知っている。だが、囲む面積の周りの曲線をなぞることで、何らかの方法で曲線が囲む平面上の面積がわかるというのは不思議であった。

ところが、それからもう60年以上になるが、そういうことがどうしてできるのか疑問に思ったことはなかった。ところが昨夜クライッイグの『技術者のための高等数学』(培風館)の第2巻『線形代数とベクトル解析』のベクトルの積分法のところを読んでいたら、グリーンの定理の応用として、この周りの曲線からその曲線に囲まれた面積を知る公式が導かれていた(注)。

そして、これはプラニメーターの原理だとあった。それでようやく昔の父から聞いた話を思い出したというわけだ。いまどれくらいプラニメーターという語が知られているのかわからない。技術者にとってはプラニメーターは珍しくもない器具かもしれないが、一般の人にとってはそんなものは不用であろう。

プラニメーターは英語ではplanimeterと綴る。訳として岩波の英和辞典ではプラニメーターと面積計とがあった。単に面積計といわれてもどういう風にして面積を出すのかはわからないであろう。

(注)グリーンの定理はちょっと3次元でのストークスの定理の2次元の特別な場合みたいな定理である。ストークスの定理をだれが発見したのか知らないが、Kelvin卿からこの定理を教えられたストークスがケンブリッジ大学の試験に出したとかで、一般にはストークスの定理として知られるようになったとは最近どこかで読んで知った。

要は面積分をその周囲の線積分に変換したり、逆に線積分を面積分に変換したりするときに使うのがストークスの定理である。

 


『江沢洋選集』

2019-02-06 11:16:08 | 物理学

が日本評論社から発行されはじめた。

ようやく、第1巻『物理の見方・考え方』を手に入れた。第6巻まで発行される予定である。企画・制作は亀書房である。

江沢洋先生は有名な物理の研究者であるし、また教育に熱心なことでもよく知られている。その書かれた文章もわかりやすい。私 も先生の書かれた本やエッセイを読むのが好きな一人である。まあいわば、ファンの一人である。

だから、この江沢洋選集が広く読まれることを祈っている。今回の第1巻にしてもちゃんと書かれたときの情報だけではなく、その後こともup-to-dateに書き加えられている。

この第1巻に寄稿した田崎晴明さんのエッセイを読んだが、江沢洋先生が自分の時間は惜しまずに使うのにもかかわらず、若い人は自分の時間を大切にせよということを守られているということを知った。感動的でもある。


複素解析とベクトル解析

2019-02-06 10:53:41 | 数学

複素解析とベクトル解析との関係はどうなっているのだろうか。そういうことを説明した文献はあまり見たことがないのだが。

ベクトル解析の起源は四元数だという。四元数といってもその元1, i, j, kの前の係数は実数であることが仮定されている。

これはもちろん複素数でもa+biとしたときのa, bは実数であるとの了解がある。同様に四元数a+bi+cj+dkのa, b, c, dは実数をとることにしている。

普通のベクトル解析だとその成分は実数であるとする。成分が複素数のベクトル空間もあろうが、普通のベクトル解析では実数の成分である。


なかなか進まない

2019-02-05 10:45:29 | 物理学

とは、小川修三先生の『量子力学講義ノート』の編纂である。

第1部はすでに「素粒子論研究」電子版に載せたが、いまは第2部であり、第3章「離散固有値問題」、第4章「連続固有値問題」第5章「行列力学」にとりかかっている。

式はおおかた入力したが、図の入力が残っているのと、式の番号とかをいま調節している、これが結構手間がかかる。

それに一行一行、書いてある内容の私の理解がなかなか進まないということがある。ある程度まとまれば、友人とか知人に見てもらうこともできるのだが、それまでになかなか達しない。そういうことで本当にカタツムリの歩みよりものろい。

それでもいつかは終わるとは思うのだが、仕事をしない日もあるのでなかなか進まない。


最近読み返した書

2019-02-05 10:25:29 | 数学

最近読み返した書とはいってもいつものことながら、部分的な読書である。

一つは『ファインマン物理学』のIII巻の「べクトルの積分」の章である。つぎに長沼伸一郎『物理学の直観的方法』の第5章「ベクトルのrotと電磁気学」である。これはrotの物理的意味について書かれているので、有名である。

これは、いわゆるガウスの定理とストークスの定理を復習するために読んだものである。ほかにも部分的に読んだ本があるが、ちょっと秘密にしておきたい。すべての手の内をさらけ出すのはもったいないから。こちらは、ちょっとベクトル解析と関係がなさそうに思える書である。

それで、さらにいまクラツイグの『線形代数とベクトル解析』(培風館)の第4章「ベクトルの積分法」を読み始めた。

これはベクトル代数の方はなんとか私には会得ができたと思うが、ベクトル解析が会得できていないというか自信がないことによっている。

他の本も読むかどうかはこの最後の本を読んで考えるつもりである。要するに私がベクトル解析の分野をどの程度了解できるかによっている。

他にも読んでみたいと考えている本は(もちろん部分的に読みたいという意味だが)溝畑茂先生の『数学解析』である。


水に源あり、木に根あり

2019-02-04 12:13:30 | 日記

「水に源あり、木に根あり」とは月替わりカレンダーに書かれた文章である。これには英語もついていたが、そちらのほうは思い出せない。

こういう気の利いたカレンダーをつくるのはアメリカのベンジャミン・フランクリンからはじまったと、もう半世紀以上前の私の高校時代に英語のN先生から聞いた。

almanacとかこういうカレンダーのことを言ったはずだと英和辞典を引いてみたら、確かにこの語almanacがあった。calendarも使われるが、ちょっと意味がちがうようだ。

そういえば、英語でも私たちの知った語とあまりなじんだ語ではないが、英語の常用語として使われる語が違うものがある。

まずは弁護士だが、一般にはlawyerかと思うが、普通にはattorneyのほうがよくつかわれるのではないか。私などは、大学の教養課程で学んだ法学の先生が口癖のように言っていた、

A good lawyer is a bad neighbor. (よき法律家は悪しき隣人である)

などからlawyerという語に親しんできたが、その後attorneyという語を知った。こういう同義語とか類義語は日本語でもたくさんあるのだが、現時点ではなかなか思い出せない。

そういえば、地図などもmapもあるが、world atlasなどもある。いま辞書を引いてみるとatlasには地図帳という訳がついていた。だからちょっと意味がちがうのだろう。

以上少しだけ知っている英語の類義語を述べてみた。最所フミさんの『英語類義語活用辞典』(ちくま学芸文庫)にはcalendarとかmapは載っていない。ほかには私は英語の類義語辞典はもっていない。


だれか訳してくれませんかね

2019-02-02 09:51:30 | 数学

Paul J. Nahin, "Inside Interesting Integrals" (Springer)である。これは定積分のやり方を書いた本であるらしい。

私にも「定積分の求め方」という書きかけの数学エッセイがあるが、これがなかなか完成しない。その構想を私ではない、電気工学者のナーインがすでにきちんと形にしたらしいのが、この冒頭にあげた本である。

こういう構想は私にはとてもよく理解ができる。このブログのどこかにも「定積分の求め方」というタイトルですでに定積分の求め方を箇条書きに書いておいた。

そういえば、この著者ナーインは『虚数の話』(青土社)とか『オイラー博士の素敵な数式』(日本評論社)を出している(注1)。

『虚数の話』のほうは訳がおかしいとのことだが、それでも私が「数学・物理通信」5巻3号のエッセイ「虚数とカルダノの公式」に書いた虚数の世間的な認知は3次方程式の解でようやく行われたという話も入っているらしい(注2)。

私はナーインとは独立にいろいろな構想をもったのだが、ナーインはそれをすでに形ある本として書いてあるらしい。これはナーインも私も数学者ではないことがその大きな理由であろう。

(注1)『オイラー博士の素敵な数式』はそのタイトルからの想像に反して、テーマとしてはフーリエ変換を取り扱ったものだという。購入されるときは注意をされたほうがいい。内容を知ったうえで購入されるなら、それはまったく問題ないのだが。

(注2)「数学・物理通信」はインターネット検索すれば、すぐに名古屋大学の谷村先生のサイトにたどり着ける。いつでも閲読可能である。ちなみにこのサーキュラー「数学・物理通信」の編集発行人は私(aoyama)である。


4語で説明

2019-02-02 00:01:32 | 日記

昨夜の「SNS英語術」で頭に残った4語の英語である。

終わりに聞いた

Tomorrow is another day.

はGone with the wind(風と共に去りぬ)のほとんど終末のセリフである。昔だから、もう50年以上も前のことだったか。ヒロインのスカーレット・オハラのいうセリフだが、その字幕は「明日は明日の風が吹く」というようなものだった。

ようするに、希望をもとうという話である。これはいいと思う。

鳥飼久美子さんが引用していた、有名な言葉はマルチン・ルーサー・キングの

I have a dream.

であった。これもいいですね。「私には夢がある」という有名な文句です。

つまらない例としては

Make America great again.

トランプ大統領の言葉ですが、これには大いに異論ありです。本当にアメリカを偉大にするのならいいのですが、アメリカを貶めてしまう怖れが大ですものね。


ベクトルの積分

2019-02-01 11:48:34 | 数学

『ファインマン物理学』III巻のベクトルの積分の箇所を昨夜終わりまで読んだ。ほぼ全部分かったと思うが、まだ十分に運用できる自信はない。

だが、もう何回か読み直しをしたい。Gaussの定理とStokesの定理への障害が低くなったと感じている。もっと詳細に検討を時間をかけてしていきたい。

まだ自信ができたとは言えないが、心理的なバリヤーはとても低くなったと感じている。これもある種のファインマンのマジックに私がかかっているためかもしれない。

rot Aとかdiv Aとかの物理的意味の解説は長沼伸一郎さんの『物理数学の直観的方法』(通商産業研究社)がとりあげて以来の一つのトピックスであるが、これについては非線形波動の研究で有名だったった広田良吾さんの解説もある。これとか溝畑茂先生のStokesの定理は微積分の基本定理の拡張だとの話しもある。

こういったものを、すこしづつ寄せ集めて、なっとくできるベクトル解析のテクストをいつかつくりたいと思う。

こういうベクトル解析の本を見たことは私はないのだが、すでに太田浩一(東大名誉教授)さんが『ナブラのための協奏曲』(共立出版)にすでに書いているのかもしれない(注)。最近のベクトル解析の本では微分形式で書かれたものも多々あるのは参考になる。それの代表は倉田令二朗『数学と物理学との交流』(森北出版)であろう。

『数学と物理学との交流』にはいわゆる森ダイアグラムも出ている。これも私の「ベクトル解析」のテクスㇳの構想の中に当然入っている。昨日ちらっと森毅の『ベクトル解析』(日本評論社)を見たところでは、Stokesの定理とかは扱っていなかったように思えた。

(注)『ナブラのための協奏曲』をまだ見かけたことがない。だからわからないのである。

おおむね、太田さんの本は好評のようだが、手厳しい批評をする人もいるのはちょっとおもしろい。

ひょっとしたらたら、そういう人こそ太田さんの本のいい読者かもしれない。太田さん個人はそういう人との言い分を苦々しく思っているとしてもである。

(2020.2..3付記) その後、『ナブラのための協奏曲』を手に入れた。だが、まだ詳しく読んでいるわけではない。