放射性同位元素の原子核はアルファ崩壊とベータ崩壊、ガンマ崩壊する。
言うまでもなく、アルファ崩壊は原子核からアルファ粒子(ヘリウムの原子核)が放出する現象であり、ベータ崩壊は原子核から電子が放出される現象である。
ところが、ではベータ崩壊によって放出される電子は原子核の中に定常的に存在しているのではないかと思うかもしれないが、そうではないことがわかっている(注1)。
原子核の中に定常的に含まれない電子がどうしてでてくるのか。不思議に思うかもしれない。原子核の中に定常的に存在しているのは陽子と中性子であるが、このなかの中性子が崩壊して陽子、電子と反ニュートリノが放出される(注2)。
上に書いたことはよく知られているのだが、昔書いていたが、未発表であったエッセイの付録にこのことを書き加えようかなと思っている。
このエッセイのタイトルは「素数の系列」である。なんで、素数の系列と原子核の崩壊とが関係するのか不思議に思う人もおられようか。それはエッセイを読んでのお楽しみとしよう。
早ければ、12月発行の「数学・物理通信」に発表するつもりである。
(注1)アルファ崩壊は普通の量子力学で取り扱えるが、ベータ崩壊は粒子の生成消滅を記述する場の量子論が必要であった。
(注2)化学元素は原子核と電子から構成されている。ベータ崩壊で放出される電子は原子核外の電子とは同じ電子であるが、原子核外の電子ではない。
(2020.11.21付記) 「素数の系列」というタイトルのエッセイはもともと小川洋子さんの小説『博士の愛した数式』(新潮文庫)を読んで2以外の素数は2つの系列となるということを知ったのだが、その理由がわからなかった。
そのことをこのブログで書いたところ N 先生から素数は2以外はすべて奇数だから自明であると指摘されて、ようやくわかったということを述べたものである。
そのいきさつから、このブログがこのエッセイを書くことになったきっかけであった。