いつだったか孫のいるところで、もしか私の本『四元数の発見』を英訳して出せれば、孫への遺産となるかもしれないと言ったら、普通はそういうことに関心を示さない息子の配偶者が「ふぅん」という目つきをしたとか、言って妻がいつも私をからかう。
早く英語に翻訳して印税をもらったらというのだ。そしてそのことはひょっとしたら、孫への私からの少ない遺産となるかもしれない。妻にしても自分がその印税を獲ろうという意図はない。ただ単に私を励ましてくれているのだ。だが、どうも体の健康が怪しくなってきている。これはある程度年だから仕方がない。
タイトルのdie Tantiemeはディ タンティエーメとでも発音するのであろう。ほぼ60年くらいドイツ語を勉強してきたが、なかなか覚えられない言葉ではある。それはいかに私が印税などというものに縁遠いかということを示してもいる。
そうは言っても2度3度といくらかの印税をもらった経験はあるが、それで私の家の家計が潤ったというほどのことはなかった。ちょっと自分の関心のあるテーマの古本を買い集めるのに少しだけ財政的に役立ったというくらいの効用しかなかった。
もっともいつだったかそういうことを市役所の吏員さんの前で口走ったら、その収入に見合った市民税をとか言われて私の方がびっくりしてしまった。30万円にもみたない印税にまだ市民税をかけたいというのだから。確定申告をしていると言ったら、それ以上は言われなかったが。