[写真]参院自民党の礒崎陽輔さん、2011年11月21日、参議院インターネット審議中継からキャプチャ。
【2011年11月21日(月)参・予算委】
参・予算委が月曜日午前9時から、参・本会議が午後1時設定という異例な国会日程となっています。
参・予算委は平成23年度第3次補正予算(案)のしめくくり質疑に入りました。採決のうえ、可決(民公自)。本会議に緊急上程のうえ成立する見通しです。
しめくくり質疑で、参院自民党は礒崎陽輔・理事を起用しました。
礒崎さんは、2012年3月31日までに国会に提出しなければいけない、と解釈されている「消費増税準備法案」について、附則104条は「景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする」との条文から、経済状況が好転していなければ、2012年3月31日までに消費税増税準備法案を出さなくてもいいという趣旨と思われる発言をしました。政府に対する一つのヒントだと思います。
震災後、参院自民党は、82人中十数人の議員が質問者、提案者、答弁者としてヘビーローテーションで登場する「正念場」となっており、その他大勢の議員がいつか造反などのスタンドプレーにでないか懸念されます。先週の衆院本会議でも自民党の谷公一さんが礒崎さんが8月に提出した復旧交付金の法案について「いわば礒崎法案と呼ぶべきものだ」として、閣法に取り込まず、参法として審議、成立させるべきだという趣旨の演説をしました。今までの日本の国会ではあまりなかったシーンです。ただ、法案をよく読んだら、紐付きなので、そのまま成立させるべき法案ではない、と私としては判断しました。
それはさておき、自民党の前の与党期最後となった第171通常国会で成立した「所得税法など国税改正法」の「附則104条」について、礒崎さんは「私が書いた」と述べました。礒崎さんは当時1回生で2年目の議員でしたが、党税調の事務局をやっていたのでしょうか。礒崎さんは地方税制を企画する自治省出身で、総務省自治税務局と財務省主税局は「50年戦争」と呼ばれる激しい対立関係のなか、国税と地方税をめぐる議論を続けてきました。
野田総理は、社会保障と税の一体改革について、消費税増税法案は2012年度、社会保障の一体改革成案の一連の法案は2013年度に出すというタイムスケジュールを重ねて提示しました。しかし、「一体」とは「同時」と同じ意味。これは民間の複式簿記ではイロハのイ。国の単式簿記の社会で生きてきて、さすがの財務官僚も勘違いしたのではないか、と私は推測しています。
なお、礒崎さんの「ヒント」は、民主党も自民党も方向性は一致している消費増税準備法案を提出させずに、平成24年度の特例公債法案の成立(参院での自民党の賛成が不可欠)を衆院解散の6月前後への前倒しに引き換え条件として明確化させるゆさぶりかもしれません。これについて、衆院予算委でのしめくくり質疑で自民党の元財務大臣・伊吹文明さんも「消費税増税準備法を成立させて、(民主党が)選挙に負けたら、(消費税増税のプログラムは)どうするんですか。日本の未来のために、民主党は党をまとめて(第46回衆院選)マニフェストに(消費税増税を)入れてください。自民党もマニフェストに入れますから。以上!」と述べて、質疑をしめくくっています。
自民党のターゲットが消費税増税準備法案ではなく、平成24年度特例公債法案であることが浮き彫りになりつつあります。
[衆議院議案ホームページから引用はじめ(注:現在は法律案ではなく法律)]
第一七一回
閣第六号
所得税法等の一部を改正する法律案
(所得税法の一部改正)
(略)
附則
(税制の抜本的な改革に係る措置)
第百四条 政府は、基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成二十年度を含む三年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。この場合において、当該改革は、二千十年代(平成二十二年から平成三十一年までの期間をいう。)の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とするものとする。
2 前項の改革を具体的に実施するための施行期日等を法制上定めるに当たっては、景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、予期せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとするものとし、当該改革は、不断に行政改革を推進すること及び歳出の無駄の排除を徹底することに一段と注力して行われるものとする。
3 第一項の措置は、次に定める基本的方向性により検討を加え、その結果に基づいて講じられるものとする。
一 個人所得課税については、格差の是正及び所得再分配機能の回復の観点から、各種控除及び税率構造を見直し、最高税率及び給与所得控除の上限の調整等により高所得者の税負担を引き上げるとともに、給付付き税額控除(給付と税額控除を適切に組み合わせて行う仕組みその他これに準ずるものをいう。)の検討を含む歳出面も合わせた総合的な取組の中で子育て等に配慮して中低所得者世帯の負担の軽減を検討すること並びに金融所得課税の一体化を更に推進すること。
二 法人課税については、国際的整合性の確保及び国際競争力の強化の観点から、社会保険料を含む企業の実質的な負担に留意しつつ、課税ベース(課税標準とされるべきものの範囲をいう。第五号において同じ。)の拡大とともに、法人の実効税率の引下げを検討すること。
三 消費課税については、その負担が確実に国民に還元されることを明らかにする観点から、消費税の全額が制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用に充てられることが予算及び決算において明確化されることを前提に、消費税の税率を検討すること。その際、歳出面も合わせた視点に立って複数税率の検討等の総合的な取組を行うことにより低所得者への配慮について検討すること。
四 自動車関係諸税については、簡素化を図るとともに、厳しい財政事情、環境に与える影響等を踏まえつつ、税制の在り方及び暫定税率(租税特別措置法及び地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)附則に基づく特例による税率をいう。)を含む税率の在り方を総合的に見直し、負担の軽減を検討すること。
五 資産課税については、格差の固定化の防止、老後における扶養の社会化の進展への対処等の観点から、相続税の課税ベース、税率構造等を見直し、負担の適正化を検討すること。
六 納税者番号制度の導入の準備を含め、納税者の利便の向上及び課税の適正化を図ること。
七 地方税制については、地方分権の推進及び国と地方を通じた社会保障制度の安定財源の確保の観点から、地方消費税の充実を検討するとともに、地方法人課税の在り方を見直すことにより、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系の構築を進めること。
八 低炭素化を促進する観点から、税制全体のグリーン化(環境への負荷の低減に資するための見直しをいう。)を推進すること。
[引用おわり]
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