[画像]2010年11月9日の衆院予算委の補正審議で、うってかわって政府案を攻撃しだした公明党政調会長の石井啓一さん(NHK映像)。
公明党は11日、党本部(東京・信濃町)で中央幹事会を開き、補正予算案に反対する方針を決定しました。
これは、おそらく、地方議員さんが、「補正に賛成したら、統一地方選を戦えない」と県本部代表を兼ねる国会議員を突き上げたからだと思います。例えば、11月9日(火)の衆・予算委で補正のメニューをことこまかに批判したパネルをもって徹底攻撃した政調会長の石井啓一さんは、茨城県本部の代表です。茨城県議選は来月実施の「プレ統一地方選」と言われていますので、茨城県は既に臨戦態勢でしょう。
このほか新聞報道では、松あきら党副代表のほか、新人の石川博崇さんも「補正反対」を政調全体会で早くから唱えていた、と報じられています。松さんの神奈川はみんなの党の国会議員が3人もいて、民主党除籍組の横浜市議もなかなか良いタマのようです。石川議員は、大阪府の選出です。公明党にとって最も重要な地域ですが、府議会、市議会とも中選挙区のところに、「大阪維新の会」の旋風が来ます。地元のことはよく分かりませんが、おそらく公明党の府議・大阪市議・堺市議の現職たちは「大阪維新の会を倒せ」という戦術をとると、現職である自分へブーメランが返ってくるのでしょう。あくまでも推測ですが、「大阪維新の会の公認候補の人数分は定数が減ったんだと観念して、残りの議席を民主党・自民党から奪おう」と考えるのがフツーだと思います。ですから、「“小沢付き民主党”の補正予算案に反対しろ」と国会議員を突き上げたのでしょう。だから、国会の公明党は、全議員参加の政調全体会を報道陣に公開したうえで、補正反対に舵を切ったのではないでしょうか。
その一方で、中央幹事会は、予算関連法案に関しては、「執行部一任」と決定しました。公明党が「補正反対」「予算関連法案賛成」となると、2010年度第1次補正予算案は参院で否決され、衆院に回付し、衆院での過半数により可決・成立。予算関連法案は、参院本会議で民主党・国民新党・公明党の過半数で可決・成立する見通しとなり、今国会の最大の懸案はメドがつきました。
とはいえ、「予算反対」「予算関連法案執行部一任」とは、公明党が菅内閣の生殺与奪の権を握ったと考えるべきです。補正はいいとして、本予算の採決を向ける来年2月末ごろには、統一地方選スタートまで1ヶ月を切っていますから、極めて厳しい対応が迫られます。
今回は野党各党に事前に補正のメニューを示して要望を聞く格好でしたが、本予算では、自民党は排して、民公代表会談を数回開いて、民公政調会長会議を組織として立ち上げて、いやらしいまでに公明党にすり寄るしかないのではないかと思います。そのくらいやらないと、先は見えてきません。
私は公明党が補正に反対するとは思ってもみず、9日(火)の朝7時のNHKニュースで驚きました。そして、午後1時からNHK中継が入った衆院予算委員会の補正予算案質疑に立った公明党の石井啓一・政務調査会長は、補正のメニューについて、①中小企業に冷たい②地方に冷たい③農家に冷たい--と3つの問題点を指摘しました。
実はここまで、このブログに書いていなかったのですが、私は今国会の召集日の翌日である10月2日(土)の第8回公明党全国大会に取材に出かけ、開会前~大会全部~終了後の第1回中央幹事会のアタマ撮り~記者会見までたっぷり取材させてもらい、「ああ公明党というのはこういう政党か」とじっくり勉強させてもらいました。新党平和や、参院会派「公明」の取材経験はありますが、公明党(New Komeito)になってからの取材は初めて。前日に党本部の広報部に電話して、連絡先をファクスしたら、快く「いいですよ~」ということで、やはり新進党同様に公明党職員は人柄がいいなあと感じました。
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[写真]第8回公明党全国大会のようす、2010年10月2日、東京・品川、宮崎信行撮影
なぜ公明党大会を取材したことを1ヶ月間もこのブログに書かなかったかというと、公明党支持者の方には土足で脚を踏み込まれたかのように思われるかもしれないし、民主党支持者の方には公明党への乗り換えかと思われるのではないか。「李下に冠を正さず」という言葉もあります。誤解を招くようなことははじめから書かないということです。ただ、その理由は一つ、向こう6年以上、民主党が参院で過半数を占められない以上は、民主党と公明党の連携が安定につながり、それが国政の安定につながる、だから公明党のことをもっと知りたい、との私の考えに基づく、それが唯一最大の理由です。
大会会場にはかなり早く着いたので、マクドナルドでランチを買って、休日の風が心地好いテラスで昼食を摂りながら、本を読んでいました。物怖じしない性格の私も、公明党さんの取材は10年ぶりですから少し所在なくなり、「ああ、久保哲司先生がいたらなあ」と思いを馳せました。故久保哲司・元衆院議員は「新進党」準備委員会の党名公募の各党チームで、旧公明党から参加していました。日本新党本部会議室のファックスとハガキの山(当時はメールはない!)の中で集計作業をしている新生党学生塾の僕らに気さくに声をかけてくれ、大阪市交通局時代の武勇伝を話してくれたりしました。僕が日経新聞に就職し、政治部総理番記者になったとき、衆議院議員食堂でお見かけすると、気さくに手を挙げてくれました。当時は新進党衆院議員ということで、2人で食事をしていたもう1人の議員はわざわざ立ち上がり名刺交換をしてくれました。そんなていねいな国会議員はほかにいません。その1年生議員は、斉藤鉄夫さんです。それから数ヶ月後に、小沢一郎氏の手により新進党は解党されてしまいました。斉藤鉄夫さんは新党平和を経て、新・公明党で環境大臣や政調会長を経て幹事長代行になりましたが、どういうわけか、久保さんは自由党(小沢一郎党首)に行ってしまいました。久保さんはその後、新・公明党に戻り2003年に56歳で亡くなりました。このように公明党の衆院議員や都議会議員の知己は若くして亡くなる傾向にあります。これはやはり中間管理職の辛さだと思います。選挙には、本人や家族だけでなく、仲間の生活もかかっているわけです。創価学会の組織力は長期低落傾向にあります。党大会でも「My(マイ)獲得運動を推進してください!」と井上義久幹事長が強調していました。この「My(マイ)獲得運動」とは、現職地方議員がその名刺を使って支持者を集めなさい、という意味でしょうが、創価学会票だけでは当選ラインをギリギリ下回る状況にある現職議員が多いということの裏返しだと、私は感じました。ということは、「小沢付き民主党を倒せ」という地方議員さんから党本部代表(国会議員)への突き上げは相当な圧力でしょう。
補正反対なんて、そりゃないよ~公明党さん・・・「新進党解党被害者の会」の仲間じゃないの~~。1994年12月10日、パシフィコ横浜で一緒に誓った仲じゃないの~~とぼやきたいところですが、公明党さんの現職議員にとってはそれよりも切実な問題が目の前の来年4月にあるわけです。私の気持ちも早くも来年2月末(当初予算の採決)に行ってしまうのですが、やはり予算に反対しても、予算関連法案にはぜひ賛成していただきたい。そして、公明党のある意味立派なところは、民主党が中選挙区での候補者調整を呼び掛けても、それは潔しとしないと思います。例えば、公明党で岡田克也さんへの評価が高いのは、第39回衆院選で公明党政審会長(坂口力さん)を押し出して、初当選した選挙の強さがあると言われています。ちなみに、坂口さんが落選したので、公明党政審会長になったのが、二見伸明さんです。
公明党に信頼してもらうためには、「オープンでクリーンな民主党」を民主党412人がキッチリとやる。例えば、馬淵澄夫国交相が自発的に辞任し、歳費1割削減など身を切る、そして、もちろん小沢問題を処理していくことが重要です。このブログの読者の方から「創価学会員の親戚は、今でも小沢氏を悪く言っているよ」というメールもいただいています。斉藤鉄夫さんは先日のBS11のインサイドアウトで「弱小政党ですから」と卑下するような発言をする一方で、「支持者からは闘う野党になってくれという声が意外と多い」とも話しており、今回の決定を予感させる発言をしていました。民主党議員一人一人がもっと公明党の強さと弱さの両面から事情を知らないと、政権が座礁してしまう可能性が出てきたと感じます。もっと危機感を持って下さい。
なお、2010年度第1次補正予算案とその関連法案は、11月15日(月)の午前9時からの衆・予算委と、午後3時半からの衆・本会議で採決され、可決する見通しですが、尖閣ビデオ問題の政府の対応などに進展が見られない場合は、スケジュールがずれ込む可能性も出てきています。とはいえ、今国会中の補正成立はほぼ間違いないと思われます。が、油断は大敵で、一般法案の審議もドンドン平身低頭で与党理事が野党理事にお願いしないと、統一地方選までに成立が間に合わず、「民主党は実績ゼロ」との批判に、何の罪もない地方議員候補者が涙をこらえながらお詫びし、「何で民主党から立候補しちゃったんだろう?」ということで、選挙前後に各地でトラブルが続出することが予想されます。
公明、補正予算案に反対 | ニュース | 公明党
公明党は11日、東京都新宿区の党本部で中央幹事会を開き、2010年度補正予算案に反対することを正式に決めた。予算関連法案である地方交付税法改正案への対応は党執行部に一任とした。
中央幹事会終了後、山口那津男代表は記者会見し、党の対応について、大要次のような見解を述べた。
一、補正予算案への対応について、3つの理由から反対を表明したい。
一、一点目は公明党が提案した中身が十分に反映されていないことだ。政府・民主党は公明党が提案した項目について、(大枠で)24項目中23項目、95%以上を反映したと提示してきた。しかし、公明党は68項目を精査したが、公明党の要求が予算額で半額以上認められたものは22項目、約32%に過ぎない。極めて不十分な対応であり、政府・民主党の言う95%とはほど遠い。また、多少反映したものも、わずか22項目、約32%に過ぎない。まったく対応していないものも24項目、約35%に上る。
一、二点目は中小企業、地方、農家に冷たい内容であること。中小企業に対しては、緊急保証制度を今年度で打ち切り、(金融)円滑化法の延長について具体的な動きがない。予算委員会の質疑でも前向きな対応(答弁)はなかった。
一、地方に冷たいという点では、地方の使い勝手が良く、独自の事業もできる地域活性化交付金を1兆2000億円規模で手当てすべしと提案した。しかし、補正予算案では、わずか3500億円にとどまっている。交付金の額が大きければ景気対策として機動的で有効な対応ができる。
一、農業では、米価下落に対応するため、30万トンのコメの緊急買い入れなどの出口対策(需給調整対策)を取るべしと提案したが、対応がまったくなされていない。
一、三点目はデフレ(物価の持続的下落)脱却、景気を回復軌道に乗せる中身になっていないことだ。デフレ脱却と財政健全化を両立させるには、使える財源をフルに活用する必要がある。しかし、昨年度決算剰余金が約1兆6000億円ありながら、その半分の約8000億円しか財源にしていない。過去には、特別措置で剰余金全額を年度内に使ってきた。われわれが全額使うよう要求したにもかかわらず、半額にとどめたのは、デフレ脱却への強い対応が見られないことになる。
一、雇用のセーフティーネット(安全網)に一部対応しているが、本格的な雇用創出や民間需要を喚起できる対策にはなりきれていない。結果として、景気の回復軌道にはつながらない。したがって、十分な経済効果は期待できない。
一、公明党は9月2日に(緊急経済対策を発表し)補正予算の編成を求めたが、国会提出まで2カ月近くも経過し、(菅政権の対応が)遅すぎた。(景気の)二番底が懸念される中、日本経済に対する危機感が乏しい。また、政治とカネの問題については、積極的な対応をいまだにとろうとしていない。外交でも度重なる拙劣な対応をしてきた。菅首相の政権運営が問われている。こうした背景があることも指摘しなければならない。
一、(予算関連法案への対応に関して)いろいろな意見はあったが、執行部に一任となった。今後の議論や他党の動き、(補正予算案の)衆院での採決を見た上で、最終的に判断したい。
一、(党内論議で出た意見に関して)2回(議論を)やって、1回目は賛否が拮抗していたが、2回目は、かなり反対論が強くなった。企業・団体関係者や地方議員、党員に幅広く聞いた上で、反対のトーンが強くなったと受け止めている。
[公明党]補正関連法案の賛否を執行部に一任(毎日新聞) - livedoor ニュース
公明党は11日午前の中央幹事会で、政府の10年度補正予算案に反対することを正式に決めた。予算関連法案の地方交付税法改正案には「地方に配慮し賛成すべきだ」との意見が出たが、法案修正も視野に執行部に賛否を一任。補正予算案は15日に与党の賛成多数で衆院を通過し、参院に送付される見通し。山口那津男代表は11日の会見で「中小企業と地方に冷たい内容だ」と述べた。【岡崎大輔】