【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

菅・岡田コンビ、きょうも前をのみ見つめながら歩く

2010年11月29日 21時46分00秒 | 第176臨時国会(2010年10月)熟議


[画像]日韓図書協定に署名した日韓外相ら、2010年11月14日、横浜、政府インターネットTVの「週刊総理ニュース」からキャプチャー

 会期末ウィークの初日だというのに、日曜日に一年一度酔っぱらい、話す際に身振りを多用する小生は勢い余って、右腕の筋を伸ばしてしまい、朝一番で整体治療を受けてテーピングしてもらいました。昨年のゴールデンウィークも静岡でビラを配っているときに、ラターシュから攻撃を受けて寝込んでしまい、直後の、代表辞任に伴う代表選のスタートダッシュに失敗し、民主党社長にふさわしいかどうか分からないが日本国のリーダーにふさわしい候補を十分にサポートできず落選してしまい、今の国難を思うと、慚愧に堪えません。

 そんな中でも精神力の強い、菅直人・岡田克也コンビはきょうも、前をのみ見つめながら前進しました。

 菅総理は、日韓議員連盟と韓日議員連盟の合同総会で、朝鮮王朝儀軌の韓国への引き渡し(返還)を約束した条約「日韓図書協定」の今国会中の承認(批准)をお願いしました。11月25日放送のBS11番組で、公明党代表の山口那津男さんが「公明党の歴代の代表は韓国との関係を深めてきた」と強調した上で、「(朝鮮王朝儀軌などは)朝鮮総督府が正当に取得した物だが、日韓友好に鑑みお返しする(べきだ)」としました。

 日韓併合条約は100年前、国際法上は正当に発効した二国間条約です。とはいえ、朝鮮王朝儀軌の引き渡しを今国会で全会一致で成立(承認→批准)すれば、日本生まれ(大阪府生野区)の韓国の李明博大統領にソフトなサポートを送ることができます。外交にはソフトパワーとハードパワーの双方が必要です。日韓併合100周年である2010年は残り33日間しかありません。国会の会期でいうと、あと4日間です。何とかフルスピードで通してほしい。次の100年のために。これは予算が0円でできる国際交流事業ですから、事業仕分けの対象にもなりません。自民党議員の一部には、ナショナリズムを煽るためにこの承認案件を先送りしようとしている人がいます。実際、自民党はそういった姿勢で支持を回復している面もありますが、民主党だろうが、公明党だろうが、自民党だろうが、日本国の国会議員として責任ある態度で、次の100年に「リンゴの木の実」を残すべきです。

 話題は変わりますが、岡田克也幹事長は月曜定例の役員会で、「もし小沢氏が政倫審に出席しない場合、例えば議決で出席を促すこともある」と述べた、と報じられています。政倫審規程の本人申し立てではなく、委員申し立てによる政倫審開催を提案する、という一歩前に進んだ提案です。この件に関しては、先週木曜日の定例会見(月、木)の中で、私が質問しています。

(抜粋引用はじめ)

民主党 web-site 岡田克也幹事長会見(2010年11月25日)記録

【記者】本人申し立ての政倫審ではなく、委員申し立ての政倫審の開催といったことを考えているか。

【幹事長】何度か申し上げておりますのは、やはり今まで実績のある政治家ですので、ぜひご自身の判断で、政倫審でお述べいただきたいと考えております。これは私だけではなくて、役員会で確認された方向性であります。

(抜粋引用おわり)

 ということで本人申し立てによる政倫審開催が望ましいというのは、岡田幹事長によると、「私だけではなくて、役員会で確認された方向性」ということですが、会期末ウィーク初日の役員会で委員申し立ての政倫審に岡田さんが踏み込んで言及したところ、朝日新聞報道では、「ところが小沢氏に近い輿石東参院議員会長らが慎重意見を述べ、結論は出なかった」とのことです。定例役員会は次回は12月6日(月)だと思いますので、会期延長がなければ、ことしの国会はもう終わりということになります。

 3つめの話題ですが、自民党の後藤田正純議員が筆頭発議者になっている「財政健全化責任法案」は絶対に審議入りすべきではありません。この法案をよく読んでみたら、これは明らかに自民党の“噛ませ犬”です。あまりにも政府をガチガチにしばる内容。法案盛り込まれた向こう10年間のスケジュールで、民主党政権をがちがちに縛って、国会で度々追及していくという魂胆がありありと見て取れます。また、その10年間に政権交代したら、自民党政権は自分たちの法案(法律)だといって修正するか、反故にしてしまうでしょう。仮に審議入りして、廃案、否決となれば「民主党は“財政健全化責任法案”に反対したから、財政健全化への責任を放棄した無責任与党だ!」と演説しまくるんでしょう。昔から自民党はそういうやり方をしてきました。もちろん、「土井たか子さんが首相になって日本が社会主義になってもいいんですか?」という演説は最強でしたが、その手法をいつまでも引きずらせるわけには行きません。静謐で熟議の国会が求められる時代背景になってきていることを理解しないと、自民党に未来はありません。

 最後まで粘り強く、辛抱強く2010年国会を仕上げましょう。

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 以下は、関連の報道や、官邸の発表文です。

李大統領12月訪日の可能性 首相、図書協定に協力を - 47NEWS(よんななニュース)

 菅直人首相は29日午前、国会内で開かれた日韓・韓日議員連盟合同総会に出席し、韓国の李明博大統領が12月半ばに来日する可能性が高いと言明した。その上で、訪日の際に朝鮮半島由来の「朝鮮王室儀軌」など図書計1205冊を韓国に引き渡すため、今国会中の「日韓図書協定」承認に向け、超党派の協力を呼び掛けた。

asahi.com(朝日新聞社):小沢氏の招致、岡田幹事長が「政倫審議決で促す」案 - 政治

 民主党の岡田克也幹事長は29日の党役員会で、野党が要求している小沢一郎元代表の国会招致について、本人が出席を受け入れない場合、衆院政治倫理審査会の議決で実現させる方針を提案した。議決では民主党も賛成し、党としてこの問題に一定のけじめをつける姿勢を示す狙いがあるが、慎重論が出たため結論を持ち越した。

 出席者によると、岡田氏は「もし小沢氏が政倫審に出席しない場合、例えば議決で出席を促すこともある」と提案した。ところが小沢氏に近い輿石東参院議員会長らが慎重意見を述べ、結論は出なかった。

 岡田氏はその後の記者会見で、小沢氏招致が実現していないことについて「統一地方選や国会での野党との連携の障害になっている」と強調した。政権運営が厳しさを増す中、年明けの通常国会を乗り切るには小沢氏の招致は不可避と判断したとみられる。

日韓図書協定の署名(2010年11月14日)首相官邸ホームページ

 菅直人内閣総理大臣と李明博(イ・ミョンバク)大韓民国大統領の立会いの下、日本側・前原誠司外務大臣と韓国側・金星煥(キム・ソンファン)外交通商部長官との間で、「図書に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定」(日韓図書協定)の署名が行われました。

 この協定は、本年が日韓関係にとり節目の年に当たることを踏まえて未来志向の日韓関係を構築していく観点から8月10日に発表された内閣総理大臣談話を受け、政府が保管している朝鮮半島に由来する特定の図書を韓国政府に対して引き渡すことについて規定するものです。この協定に基づく図書の引渡しにより、日韓両国間の文化交流及び文化協力の一層の発展並びに両国及び両国民間の友好関係の発展に資することが期待されます。

 この協定は、日韓各政府が、それぞれの国において必要な国内手続(日本については国会の承認が必要。)が完了した旨を相手国政府に通告し、遅い方の通告が受領された日に効力を生じます。

内閣総理大臣談話(2010年8月10日)首相官邸ホームページ

 本年は、日韓関係にとって大きな節目の年です。ちょうど百年前の八月、日韓併合条約が締結され、以後三十六年に及ぶ植民地支配が始まりました。三・一独立運動などの激しい抵抗にも示されたとおり、政治的・軍事的背景の下、当時の韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷付けられました。

 私は、歴史に対して誠実に向き合いたいと思います。歴史の事実を直視する勇気とそれを受け止める謙虚さを持ち、自らの過ちを省みることに率直でありたいと思います。痛みを与えた側は忘れやすく、与えられた側はそれを容易に忘れることは出来ないものです。この植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、ここに改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明いたします。

 このような認識の下、これからの百年を見据え、未来志向の日韓関係を構築していきます。また、これまで行ってきたいわゆる在サハリン韓国人支援、朝鮮半島出身者の遺骨返還支援といった人道的な協力を今後とも誠実に実施していきます。さらに、日本が統治していた期間に朝鮮総督府を経由してもたらされ、日本政府が保管している朝鮮王朝儀軌等の朝鮮半島由来の貴重な図書について、韓国の人々の期待に応えて近くこれらをお渡ししたいと思います。

 日本と韓国は、二千年来の活発な文化の交流や人の往来を通じ、世界に誇る素晴らしい文化と伝統を深く共有しています。さらに、今日の両国の交流は極めて重層的かつ広範多岐にわたり、両国の国民が互いに抱く親近感と友情はかつてないほど強くなっております。また、両国の経済関係や人的交流の規模は国交正常化以来飛躍的に拡大し、互いに切磋琢磨しながら、その結び付きは極めて強固なものとなっています。

 日韓両国は、今この二十一世紀において、民主主義や自由、市場経済といった価値を共有する最も重要で緊密な隣国同士となっています。それは、二国間関係にとどまらず、将来の東アジア共同体の構築をも念頭に置いたこの地域の平和と安定、世界経済の成長と発展、そして、核軍縮や気候変動、貧困や平和構築といった地球規模の課題まで、幅広く地域と世界の平和と繁栄のために協力してリーダーシップを発揮するパートナーの関係です。

 私は、この大きな歴史の節目に、日韓両国の絆がより深く、より固いものとなることを強く希求するとともに、両国間の未来をひらくために不断の努力を惜しまない決意を表明いたします。


郵政改革法案、野党の審議入り拒否で今国会成立厳しい情勢 衆・総務委

2010年11月29日 18時55分39秒 | 第176臨時国会(2010年10月)熟議
 民主党の鉢呂吉雄国対委員長は29日、国民新党の下地幹郎幹事長に郵政改革法案(閣法)の審議入りで「党内プロセスに務める」と語ったと報道されていますが、みんなの党の柿沢未途・衆院議員は自身のツイッターで、総務委、与党からいきなり17時30分に理事懇(理事会に先立つ理事懇談会)を開きたいとの提案」があったとつぶやいた上で、「野党は揃って理事懇を蹴る方針」だと明かしました。衆議院のホームページによると、衆・総務委にはみんなの党の理事はいませんが、唯一の委員である柿沢さんはオブザーバー参加を許されているのだと思います。

(柿沢未途さんのツイートから引用はじめ)

総務委、与党からいきなり17時30分に理事懇を開きたいとの提案。どうやら国民新党の手前、郵政法案を形だけでも審議入りさせろと上から指示があったようだ。こんな一方的なやり方は認められず、野党は揃って理事懇を蹴る方針。実質審議の時間もないのに、こんな体裁だけ取り繕うのに付き合えない。

http://twitter.com/#!/310kakizawa/status/9156167649464320

(引用終わり)

 みんなの党など野党の抵抗で、郵政改革法案の第176臨時国会での成立は厳しい情勢になってきました。