【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

補正、衆・予算委を23時45分に通過 野党、議論しながら協力も 国会に新しい風

2010年11月15日 23時51分07秒 | 第176臨時国会(2010年10月)熟議
[写真]衆院予算委員長の中井洽(なかい・ひろし)さん

(このエントリーの初投稿は11月15日午後9時15分)

[衆院本会議 2010年11月15日(月)]

 午後9時過ぎに開会し、議事進行係が「内閣官房長官、仙谷由人君不信任決議案」を緊急上程しました。提出者は佐藤勉さん(自民党国対委員長代理)ら5名。閣僚の不信任決議案は堂々巡りで採決されます。最新の情報は、入っておりませんが、この後、馬淵澄夫国交相の不信任決議案も提出されると思います。採決の結果、否決される見通し。この後、補正予算案の採決などのため、衆・予算委が再開することになると思います。また、歳入関連法案を審議する衆・総務委はすでに流会になっています。最終的には補正予算は衆院を通過しますが、参院の補正審議の最終局面で、仙谷、馬淵両大臣の問責決議案が提出された場合、可決される可能性が高く、今国会のヤマ場となります。ただし、補正予算そのものは、衆院での再議決(予算案に関しては過半数でオーケー)され、可決し、真水で5兆1000億円に流れるようになる見通しです。

 きょうからあすにかけてが、衆院でのヤマ場、来週が参院でのヤマ場となります。ただし、繰り返しますが、補正予算そのものの成立は確実な情勢で、国会では一般法案審議と政府では本予算案の編成に重点が移っていくと思われます。岡田克也幹事長は15日の記者会見で、「走りながら考える。走りながら協力関係を構築していく」と述べ、与野党幹事長会談、政調会長・国家戦略相による事前説明などのねじれ対応プロセスを微修正することを示唆しました。

 自民党の塩谷立・元文科相は、仙谷氏を「司法試験と学生運動だけの学生時代を送った」「国会をディベートの場だと勘違いしている」と激しく批判しました。一方、反対討論に立った民主党の大島敦さんで、この人は人間的に立派な方ですが、演説の冒頭から「けんけんがくがく」という誤った日本語、よくあるんですが、小姑のようですが、僕としては気になるミスから始まりました。どうして、こういうところのチェックが入らないのか、そのプロセスが気になります。

 仙谷、馬淵両大臣への尖閣問題での、検察の処分保留、ビデオの非公開措置、第5管区海上保安官による動画のYouTube流出(警視庁・東京地検が逮捕せず任意の聞き取りを継続中)などが理由のようです。仮に参院での問責の可能性が出てきた場合は、責任問題以前に、国政の遅滞を招かないための自発的な判断も求めたいと思います。

 岡田克也幹事長は15日の記者会見で、馬淵大臣の責任について問われ、「不信任に値するとは考えていない」との認識を示しました。また、補正審議については、「これ以上にていねいなやり方はあるんだろうかという気がする。(衆・予算委の)集中審議をやればやるほど、野党が攻勢に出た」として、政府案を組む段階から、野党の要望を聞くという異例のやり方をしながら、採決に反対する姿勢を示している自民党ならびに公明党ら野党を批判しました。

[追記 2010年11月15日(月)午後10時5分]
 仙谷由人官房長官不信任案は、およそ1時間の審議のうえ否決。引き続き、馬淵澄夫国土交通大臣の不信任案が緊急上程されました。

[追記 2010年11月15日(月)午後10時55分]
 馬淵国交相不信任案は、投票総数467、賛成151、反対316で否決されました。この後、横路孝弘議長は、「ただいま議場内交渉係が協議中ですのでしばらくお待ち下さい」と発言し、議員は本会議場に張り付いたままとなっています。衆議院ネット中継にちらりと映った場面では、議長席の画面左の交渉スペースに、野党の議場内交渉係(議運委員の一部)が集まっていますので、投票のプロセスに何か瑕疵があるというようなことを井上茂男・事務次長に行っている可能性が高いように思います。このような件はそんなに長引かないと思います。

[追記  2010年11月15日(月)午後11時5分]
 タイヘン珍しいことがありました。本会議場での議場内交渉係(各党の衆・議員運営委員)が相談し、鬼塚誠・事務総長、井上茂男事務次長らが横路議長の下に行き、ペンを持って議長が「これでいいの」などと確認した後、「お諮りいたします。日程第1、日程第2は後回しにすることにご異議ありませんか?」とマイクで問うと、どよめく議場が「異議無し」と全会一致。日程第1、日程第2はそれぞれ補正予算案と予算関連法案(地方交付税法案)だったんだと思います。これを後回しにし、日程第3の「民事訴訟法改正案」について、奥田建・法務委員長が報告し、全会一致で可決。日程第4の「雇用・能力開発機構法廃止法案」について、牧義夫・厚生労働委員長が報告し、起立採決の結果、賛成多数で可決。2つの法案が参院に送られました。これは野党側の協力もあったということで、“法律工場”がうまく回りました。その後、「後回し」だった日程第1、日程第2について、議事進行係の小宮山泰子さんが後日にすることを発議し、了承されました。午後11時5分、横路議長は「本日はこれにて散会します」と宣言しました。思ったより早く終わりました。この後、衆・予算委をやるのかは分かりませんが、おそらく流会すると思います。衆・総務委は早い段階ですでに流会しており、補正予算・関連法案の衆院通過はあす以降となりました。
民主党の鉢呂吉雄さんは「オープンな国対委員会」を掲げていますが、55年体制のシナリオ通りの国会運営と違い、ハラハラしながらも、きっちり国民にオープンな国会運営は続いています。オープンで、透明な議事進行のために費やされる若干のムダに見える時間は、これは“民主主義のコスト”と呼ばれます。時間がもったいないなら国会をやめて明治時代前半のように、内閣独裁に戻せばいいだけの話です。

[追記 2010年11月15日(月)午後11時25分]
 衆・予算委の再開を中井洽委員長が宣言しました。自民党の馳浩さんから「予算の撤回のうえ編成がえを求める動議(組みかえ動議)」が提出され、提案理由説明がありました。続いて、みんなの党からも浅尾慶一郎さんが「予算の撤回のうえ編成がえを求める動議(組みかえ動議)」を提出し、提案理由説明をしました。公明党は提出しませんでした。早口の中井さんは、自民党動議、みんなの党動議の別々の案をひとまとめにして討論することを宣言。両案に反対する立場から、民主党の金森正さん(比例単独東海)がお歳には思えないほどの若々しさで、地方議会経験を生かしたなめらかな滑舌でスピード討論。続いて、自民党の小里泰弘さんが、「政府案反対・自民党組みかえ動議賛成」で討論をゆっくりとした口調で始めました。

[追記 2010年11月15日(月)午後11時30分~59分の間]

 次に組みかえ動議は出していない公明党から遠山清彦さんが討論。「中小企業に冷たい、地方に冷たい、農業に冷たい」として政府案に反対しました。このフレーズは公明党で統一されています。自民党案、みんなの党案は「賛同できる部分はあるが、反対だ」と述べました。なお、遠山議員は極めて早口で、与党に協力的でした。公明党の対応「したたか」という表現しかありません。続いて、共産党を代表して笠井亮さんが討論。政府案、自民案、みんな案に反対。ただし「早口協力」は評価できます。続いて、社民党の1期生・服部良一さん。政府案「賛成」自民案「反対」みんな案「反対」と述べ、拍手がわきました。ちょっとたどたどしい服部さんですが、「最後に菅総理、小泉・竹中弱肉強食路線からの転換をめざして政権交代の原点に戻って下さい」と1期生らしい意見でしめくくりました。続いて、みんなの党の浅尾慶一郎さんがゆっくりとした口調で討論に立ちました。「菅内閣は政権の体をなしていません」との厳しい切り出し。「みんなの党は日銀法改正を準備しています」と政府案ではなく、減税措置を盛り込んだ編成替え動議で設備投資を促進する金融・税制面を促した上で、「政府案に反対」と述べました。この後、「国民新党・新党日本」の統一会派を代表して、下地幹郎さんが「政府案に賛成、自民案・みんな案に反対」として討論しました。日をまたぐまで、あと15分です。なんとか間に合いそうです。

 午後11時43分。中井委員長が討論終局を宣言。まず、自民党組みかえ動議(武部勤君ほか2名提出)は起立少数で否決。つづき、みんなの党の組みかえ動議(浅尾君提出)も起立少数で否決。そして、11時44分、平成22年度補正予算3案(一般会計、特別会計、政府関係予算)を起立採決し、起立多数で可決しました。11時45分、委員長は衆・本会議への委員長報告書作成の一任をとりつけたうえで、散会を宣言し、「ご苦労様でしたー」と大声で叫びました。

 というわけで、政府案に堂々と組みかえ動議を提出した自民党、みんなの党。そして、公明党は反対しながらも、審議には協力という風に、以前とは徐々に違った緊張感と実質審議のある衆院予算委員会でした。

 今後の日程ですが、報道をご参考にしていただきたいですが、あす午前9時半からの衆・総務委で予算関連法案を可決の上、午後1時からの衆・本会議に予算と関連法案を議題にし、可決のうえ、参院に送付。参・本会議での代表質問はすでに終わっていますので、参・予算委で趣旨説明のうえ基本的質疑が2日間程度NHK入りで行われると思います。そして週明けにも参院の予算委や本会議で採決の上、「否決」されます。繰り返しますが、「否決」です。それを衆院に回付。衆・本会議でふたたび採決し、過半数の賛成で可決・成立する運びとなりそうです。このエントリーはこれで終わりです。

おめでとう自民党55周年「候補者になりませんか?」とビラを配る底力

2010年11月15日 20時27分34秒 | 政権交代ある二大政党政治の完成をめざして

[画像]自民党総裁の谷垣禎一さん、第22回参院選の自民党CM(YouTube)からキャプチャ

 おめでとうございます。

 きょうは自民党の結党55周年です。帝国議会開設時の「自由党(板垣退助)vs立憲改進党(大隈重信)」、その後も大政翼賛会直前まで、名前を変えながらも、主に「立憲政友会vs民政党」と、せっかく複数あった自由主義政党ですが、天皇制廃止と社会主義・共産主義をソ連の指導・資金援助による暴力革命という手法でめざした日本社会党・日本共産党という目の前の恐怖を克服するために保守合同ということになってしまい、昭和30年(1955年)11月15日、東京・神田にあった中央大学の講堂で自民党(自由民主党)が産声をあげました。

 「政治は国民のもの」で始まる自民党立党宣言では、「第一に、ひたすら議会民主政治の大道を歩むにある。従ってわれらは、暴力と破壊、革命と独裁を政治手段とするすべての勢力又は思想をあくまで排撃する」とあり、時を経た今でも、共産主義を唱える政党がわが国に存在するという現実を忘れずに、改めて、自由主義、民主主義に立った現代日本の立脚点を忘れないようにしたいものです。

 立党宣言の結びは、「われらは、秩序の中に前進をもとめ、知性を磨き、進歩的諸政策を敢行し、文化的民主国家の諸制度を確立して、祖国再建の大業に邁進せんとするものである。右宣言する。昭和三十年十一月十五日」とあり、戦後日本の再興にかける政治家としての使命感が伝わってきます。

 「ひたすら議会民主政治の大道を歩む」とか、「秩序の中に前進をもとめ、知性を磨き、進歩的諸政策を敢行し」とか、岡田さんかよ!という気になりますが、谷垣禎一総裁・石原伸晃幹事長らにもぜひ体現していただきたいと願います。

 また「党の政綱」の中の、「3.経済自立の達成」の書き出しに「通貨価値の安定と国際収支の均衡の上に立つ経済の自立繁栄と完全雇用の達成をはかる」とあり、経済政策のいの一番として、野田佳彦財務大臣や白川方明日銀総裁にもくりかえし読んでいただきたいようなことが書いてあります。そして、「原子力の平和利用を中軸とする産業構造の変革に備え、科学技術の振興に特段の措置を講じる」とのシメの文に、資源の無い日本の経済成長に向けた自民党の見通しの確かさとその実績を認めざるを得ません。ここなんかは、谷垣総裁にも自信を持って、演説なんかに使ってほしいと思わせる文です。

 そして、「5.平和外交の積極的展開」に垣間見える「国際連合への加入を促進するとともに」との文に、ハッ!と手を止めました。自民党結党は1955年11月で当時の日本はまだ国連に加盟していなかったんです。松岡洋右から時代が止まっていた。国連安保理が「日本の国連加盟」を全会一致で決議したのは、その1年後の1956年12月だったんですね。おととい(2010年11月13日)の横浜での日米首脳会談でオバマ大統領から「日本の国連安保理入りのサポート」の表明がありましたが、当たり前と思える国連も、当たり前でなかったということを再認識しました。

 そして、「6.独立体制の整備」では、「平和主義、民主主義及び基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、現行憲法の自主的改正をはかり、また占領諸法制を再検討し、国情に即してこれが改廃を行う」という文。これに関して言えば、自民党は53年間も与党にいて、憲法改正(自主憲法制定)という党是を達成することができなかった。これは自民党の反省すべき点です。教育基本法や地方自治法の改正はなりましたが、自民党が自ら残し、かつ野党・自民党の政権交代戦略にも重くのしかかる課題なのではないでしょうか。そして、最後の文、「世界の平和と国家の独立及び国民の自由を保護するため、集団安全保障の下、国力と国情に相応した自営軍備を備え、駐留外国軍隊の撤退に備える」とあります。これを読むと、「駐留外国軍隊の撤退」はアンハッピーなことであり、そういうアンハッピーな不測の事態に備えて、自衛隊をつくった、と。そしてその現状認識は、半世紀経った今も変わらないばかりか、より的確さを増している。

 高邁な理想と怜悧な現実認識が渾然一体となった結党宣言文に、自民党が政権という重荷を半世紀担い続けた秘策をみた気がします。とはいえ、やはり1970年代以降は、遅くとも冷戦後は、私たちは、政権担当能力がある自由主義政党を2つ持たなければならなかった。いわば経済成長に目が行ってしまい、少し先を見通した政治システムを作るということをしなかった。そこに人間の性(さが)をみる気がします。お隣の中国の現状などを見ても、人はお金がある間は、お金に踊らされます。与党・民主党議員の一部にもそれを感じますが、せめて高邁な理想と怜悧な現状認識は、自民党を少し見習ってほしいです。アメリカでは共和党(Republican Party)のことを、古き良き党、グランド・オールド・パーティー、Grand Old Party、GOPと呼ぶことがあります。これは、下院議員の略称がRep.で、共和党の略称とまったく同じ3文字なので混同しやすいという理由もあり、TVニュースなど極めて日常的な場面で頻繁に使われる表現です。先週の衆・予算委で岩屋毅・影の防衛相が総理の外交姿勢を「腰抜けだ」となじりましたが、そういう理論や理屈を超越して伝わってくるものがある。自民党も日本のグランド・オールド・パーティー、“古き良き日本”を守る党という心構えを持ってもらうと、日本人として非常に心強く感じます。

 民主党の岡田克也幹事長は15日の記者会見で、「ぜひ頑張ってほしいな、と思います。なかなか選挙区がたくさん空いている状況のようですが、若い良い人材をたくさん擁立して、立ち直っていただきたい。やはり、自民党、民主党、それぞれがしっかりしないと健全な民主主義というのはできませんので、ぜひ元気になって頑張ってほしいなと思います」とエール。

  
[画像民主党幹事長の岡田克也さん、2010年11月15日、民主党本部ホームページ内の動画から

 そのうえで、外相時代の経験も踏まえて、「国会でいろいろなやりとりがあります。与党時代にこの人がこんなことを言う人だとは思わなかったぐらいの厳しい言葉も飛んできます。言葉だけでなくしっかりと政策で、中身で議論できればいいな、もちろんそういう立派な議論をする方もいらっしゃるわけですけど、国会の中で実質的なしっかりとした議論をしたいものだと思っております」と語りました。記者会見の司会は党副幹事長(埼玉12区)の本多平直さんが務めました。

 私は1974年生まれですが、前世紀の後半には、自民党員であることが社会的経済的成功者であることのステータスシンボル(社会的地位の象徴)である面があり、これが日本における政権交代可能な二大政党デモクラシーの導入(復活)を阻害していた点があると思います。その自民党も全国の100前後の衆院支部長(次期総選挙公認候補予定者)を探していて、なかなか困っている選挙区もあるようです。衆参とも民主党が独占している山梨県の自民党を伝える、山梨日日新聞の記事。

[引用はじめ]

支部長公募スタート 自民県連 - 山梨日日新聞 みるじゃん
山梨県内のニュース(山梨日日新聞から)2010年11月02日(火) 
   
 自民党山梨県連(堀内光雄会長)は1日、次期衆院選候補となる衆院山梨1~3区支部長の公募をスタートした。20日まで自薦のほか、各選挙区の県議や市町村支部長らによる他薦で応募を受け付ける。
 公募初日の1日朝、皆川巌幹事長ら県議3人がJR甲府駅南口で通勤客らに「候補者になりませんか」などと声をかけながらチラシを配り、公募のスタートをPRした。同日は県連事務局に応募方法などについての問い合わせが数件あったものの、応募は1件もなかった。
 支部長公募をめぐっては、自民党を離党した長崎幸太郎前衆院議員が週明けにも、2区に応募する方針。夏の参院選で敗れた宮川典子氏、3年前の参院選に立候補した入倉要氏の名前も挙がっている。両氏とも「現時点では白紙」としているが、県議らが他薦で応募する可能性がある。このほか、1区支部長への復帰に意欲を示している赤池誠章前衆院議員は近く後援会幹部と協議して対応を決める。
 公募は3選挙区ごとに行い、挙がった候補の中から県議を中心とした「選考・擁立委員」が選考。年内にも新しい支部長の選任を目指している。新しい支部長は次期衆院選の自民党公認候補となる見通し。

[引用おわり]

 この皆川幹事長、ググッたら、元県会議長のようです。県会議長経験者が武田信玄の巨像がある甲府駅前で、「自民党の候補者になりませんか」と声をかけ、チラシを配る。そこに自民党の底力を改めて、感じた次第です。 自民党が落ちたのではありません、ただ野党にポジションが変わっただけです。私たちがそういう配置換えをしただけのことです。


[画像]第22回参院選の自民党CM(YouTube)からキャプチャ

民主党がイチバンになったり、自民党がイチバンになったりしながら、日本をもう一度イチバンの国に、そして、一人一人のイチバン、一家族一家族のイチバンを実現していきましょう。