【参・予算委員会集中審議 2010年11月17日(水)集中審議】
菅改造内閣の最年長閣僚となった北澤俊美・防衛大臣が政権交代ある政治、二大政党デモクラシーにおけるシビリアン・コントロール(文民統制)のあり方について語りました。
北澤さんは、「私は自衛隊のあり方については、シビリアン・コントロールをきちんとしてですね、これが民主党政権がいつまでも長く続くわけではないんです。政治的な中立をどう担保するか、というのが極めて、私にとっては重大なことでありまして、そのことのために粛々とさせていたただく」と述べました。
これはさきの航空自衛隊入間基地の航空祭で、「航友会」の荻野光男会長が「一刻も早く菅内閣をぶっ潰せ」「民主党内閣では国が持たない」などと発言したとされることから、自衛隊法61条や自衛隊法施行令87条にもとづき、「誤解をまねく行為がないように」「当面の暫定措置として協力団体の代表のあいさつの要旨を参考情報として内局に上げてほしい」という趣旨の通達を出したことを、自民党の衛藤晟一さんが問題視しました。
北澤さんは「今日は全国へTV中継していますから、いい機会であると思います」として、
「自衛隊は国家と国民の生命と財産をしっかり守っていく、国土を守っていく、そういう団体が、これは一政党のため、一内閣のためではないんです。中立性をどう担保するかというのが極めて重要なことでありました、これがもし自民党内閣のときであっても自衛隊法に基づいてたぶん同じことをなさるんだと思います」と二大政党デモクラシーにおけるシビリアン・コントロールに関して、「北澤指針」というべき答弁を議事録に残しました。そのうえで、北澤さんは、今の民主党政権下で、「自民党をぶっ潰せ」という発言があったとしても、同じ通達を出しただろう、と答弁しました。
ところが、衛藤さんは、この「自民党も同じことをやっただろう」という北澤答弁を、「自民党も同じことをやっただろ!」という喧嘩文句と勘違いし、「過去の自民党政権でそのような通達を出したことはない!」という的外れな主張をし、答弁の撤回と謝罪を求め出しました。衛藤さんは、衆院自民党時代に、厚労部会で安倍晋三さんのお友達(兄貴分)の武闘派議員として知られ、「武闘派」というのは自民党用語で、要するにお馬鹿ちゃんという意味ですが、衆院議席を失い、3年前の第21回参院選で安倍総裁枠の全国比例で参院に転じました。私は、北澤大臣が答弁の冒頭から、「自衛隊法61条では~」「自衛隊法施行令87条では~」と法令を引用しているので、衛藤さんに通じるのかなあと思っていましたが、案の定、聞き違いも含めて尻すぼみの質問になってしまいました。ただ、今次補正の参院での審議は、衛藤さんを切り込み隊長に、参院自民党はすさまじい猛攻撃をみせており、補正予算審議が難航して、今週を迎えました。
その一方で、問題発言があった入間航空祭では、民主党小沢グループ・一新会(倶楽部)の松崎哲久衆院議員が駐車場で航空自衛官と小競り合いを起こしていたことが、明らかになっています。まさに国難です。
[追記 2010年11月22日(月)午前9時50分]
参・予算委では一般質疑(関係閣僚出席)が午前9時16分に開会し、自民党の佐藤正久さんの質問で、松崎哲久議員が「話を聞きたいから来てくれ」という口実で、11月4日、議員会館に入間基地の航空指令(空自制服組)を呼び出し、抗議していたことが分かりました。また入間航空祭の話だけでなく、“夏の納涼祭”の抗議もしていたようです。北澤俊美・防衛大臣は「後日知った」として、事実関係を認めました。また、防衛副大臣が松崎議員から聴取し、党に報告する(した?)民主党の“乞食”議員のふるまいは極めて残念です。[追記終わり]
今週中に補正予算案の採決をめぐる衆参の両院協議会が開かれると思われますが、この両院協議会の議事録というのは、2009年1月から、北澤さんの指摘で初めて議事録が作成されるようになりました。これを振り返って、北澤さんは「これから政権交代ある政治になると、二院制によるねじれがまま(=度々)起きるだろう。ねじれ国会としての高い知見を持つべきだという考え方が両院から多く出た」と語ったうえで、りましたが、「政権交代ある政治になると、衆参ねじれがまま起きるだろう」という予想があっという間に的中してしまいました。
国難のときこそ、防衛大臣の泰然自若が必要です。最年長閣僚、北澤俊美の男子の本懐を感じたところです。
航友会会長が「言論統制」と政権批判 民主党内からも撤回要求- MSN産経ニュース
北沢俊美防衛相らの指示で自衛隊行事での民間人による政権批判を封じる防衛事務次官通達が出された問題で、通達のきっかけとなる発言をした自衛隊のOBなどで構成する民間団体「航友会」の荻野光男会長(88)が21日までに産経新聞のインタビューに応じた。
荻野会長は通達を「民間人への言論統制で許せない」と批判。自民党政権時代にも首相の靖国神社参拝を求めるなど批判したが、「規制はなかった」と振り返り、「民主党政権を批判したから通達を出したと思う」との認識を示した。
民主党政権で国の防衛がないがしろにされている現状に、「警鐘を鳴らしたかった」と強調。旧陸軍パイロットという戦争経験者として、「今の政治に求められているのは『国の守り』であると伝えていかなければ」とも語った。
また、民主党の松崎哲久衆院議員が7月の航空自衛隊入間基地(埼玉県狭山市)での納涼祭で、車の呼び寄せをめぐり空自隊員とトラブルになり、「腹を立てていた」と指摘。このトラブルが通達の一因になったとの見方も示した。
一方、21日になり民主党内からも通達撤回を求める声が上がり始めた。ある民主党幹部は「ファシズムまがいの言論統制をした汚点として残すわけにはいかない」と述べた。自衛隊内でも「思想信条の自由を定めた憲法19条の精神に反する」(幹部)との批判がくすぶっており、防衛省は通達撤回の検討を余儀なくされそうだ。
今月3日の入間基地での航空祭で、荻野会長は「菅(直人)政権をぶっつぶしましょう」と発言。これを受け、防衛省は10日付で通達を出し、自衛隊施設内での行事について、(1)政治的行為と誤解されることを行わないよう参加団体に要請(2)誤解を招く恐れがある場合は参加を控えさせる-などの対応策を指示した。