田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 81 北のカナリアたち

2012-10-17 21:47:10 | 映画観賞・感想

 暗い、暗い…、オープニングから暗かった。冬の北の空は重い鉛色が広がり、冬の北の海は濃い藍色が波打つ…。そしてストリーがまた重く暗い…。そうした中、北の島の分校に響く子どもたちの清らかな歌声が画面に清々しい風を送る…。 

       

 人生とはなんと不条理なことか…。
 島の分校に通う信人に父母はなく祖父に育てられているが、貧しく吃音のためいつもいじめられていた。そんな中に赴任したはる先生(吉永小百合)は信人の歌の才能を見抜き、信人を中心とした分校の子どもたち6人の合唱は島の人々の心を優しく包み、子どもたちも合唱の楽しさに気付き明るく生活していた。
 ところがある事情によってはる先生は島を去らねばならなくなった。せっかく明るさを取り戻した信人だったが、また元の生活に戻ってしまった。

          

 長じて20年後、信人(森山未来)は幾多の変遷をして関東のとある街で鳶職として職を得ていた。(というよりも学歴もない信人には鳶職に職を得るのが精一杯だった)
 ところが信人は理不尽な鳶職の親方のやり方に怒りを抑えかね、反撃に出たところ事故のような不運に見舞われ親方を殺めてしまい、殺人犯として追われる身となってしまう。

 幼い日を過ごした島に逃げ帰ったが、間もなく見つかり逮捕されるのだが、その前に島の分校の6人が集まり、20年間歌を忘れていたカナリアたちが再び懐かしの歌を歌った。
 久しぶりに子どもの日に還った信人だったが、待っているのが塀の中とはなんともむごすぎる…。
 生まれたときから負の連鎖に絡め取られたよう信人の人生…。
 その不条理さに涙腺の弱くなったオヤジは涙せずにはいられなかった。

          

 珍しく試写会の入場券が舞い込んだ。10月15日、道新ホールで行われた道新試写会で吉永小百合主演の「北のカナリアたち」を観た。
 その吉永小百合だが、吉永小百合は吉永小百合だった。
 誠実な淑女のイメージそのままの役どころだったが、そのイメージを壊すような場面もこの映画の中にはあるのは一つの見どころか? 彼女は60歳と40歳の役を演ずるのだが、そこに違和感はなくいつまでも若く美しい吉永小百合であった。

          

 吉永小百合の映画はヒットしないなどというおかしなジンクスが巷間伝えられることがあるが、本作はどうだろうか?
 子どもたちの清々しい歌声。演技達者が揃った脇役陣。北国の小島の厳しくも雄大な自然。そして主演の吉永小百合のしっとりとした演技…。
 魅力はいっぱいである。はたしてジンクスを打ち破れるのか? はたまたジンクスは続くのか?
 願わくばたくさんの人たちが映画館に足を運んでもらい、人生の不条理に涙し、子どもたちの清々しい声に心ときめいてほしいと思うのだが…。
 11月3日よりロードショー上映が始まる。