第一の岸壁を山遊会の方のサポートによって何とか乗り越えたものの、第二、第三の壁と次々と試練が待ち受けていた。私は必死で何とかパーティーに付いていたものの限界を感じ始めていた…。
※ 渓流を避けて岸壁を登っています。これは「高巻き」かな?
渓流沿いを遡行するとき、水際の岩場を横へ横へと移動することを「へつり」というそうだ。「へつり」が無理な時に大きく迂回して登ることを「高巻き」と呼ぶそうである。
私たちは第一の壁を乗り越えた後も、「へつり」と「高巻き」を繰り返しながら徐々に高度を上げていった。
※ こちらは渓流の側のところを伝ってゆく「へつり」というのか?
その頃には私の体力はもう限界に達していた。そのためもあり、全体のペースがかなり遅くなっていたと思う。これまでの登山でそうした経験はなかったが、これ以上はパーティーの皆さんに迷惑がかかると思い「先に行ってくれ」と告げたところ、リーダーは全体を休ませる措置を取ってくれた。私だけではなく、パーティーの人たちもかなり疲れていたようだ。
激しい疲労は私から写真を撮る余裕を完全に奪ってしまった。したがって、このあたりからの写真は極端に少なくなってしまった。
※ 渓流も上の方へ行くと残雪が残り、そこがトンネル状になっていた。
何度も休憩を繰り返しながら、第二の壁を迎えた。第一の壁である程度要領を掴めたためだろうか、今度は助けを借りずになんとか壁を乗り越えることができた。
このあたりからは頂上に向かってさらに傾斜がきつくなってくる。皆さん疲れのためか無口になっていたが、リーダーたちの励ましに助けられながら登りつづけた。
そうした中、頭上を覆いかぶさるような岩壁が現れた。第三の壁である。ウェストコルと呼ばれる岸壁の切れ目に向かって岩壁状に延びたルンゼ(岩溝)という形状を一人ひとり慎重に登った。
ここを登りきると急に視界が開けた。遠くの山々が遠望でき、涼風が頬を撫でてくれた。「ここまで来ると頂上は間もなくです」というリーダーの声に励まされ、比較的ゆるやかになった登山道を登りつづけた。
※ 登山路はこの大壁の切れ目(ルンゼ)を登って行った。
登り続けて3時間30分後の12時15分、小さな標識が目に入った。定山渓天狗岳(天狗山)頂上である。あまり広くない山頂は私たちだけで一杯になった。私はすき間を見つけて崩れるように座り込んだ。
3時間以上も行動し続けて空腹のはずなのだが、疲れからか食欲がない。それでも妻が作ってくれたおにぎりを1個だけ無理やり押し込んだ。
※ ウェストコルを上がって見えた光景です。手前が烏帽子岳、奥が神威岳です。
腰を下ろして休んだことで少し気力を取戻し、山頂の様子をカメラに収めようとした。ところがカメラが作動しないのだ。ふだん私はカメラを首からぶら下げたまま行動し、気に入ったところで直ぐにシヤッターを押すようにしている。しかし、今回は途中からカメラを構える余裕などなくなりウェアの内側に押し込めて登山に集中した。そのことで体内から出る熱や汗の影響を受けてしまったのかもしれない。残念だが山頂や下山の様子は一枚もカメラに収めることができなかった。
※ 頂上から見た「さっぽろ湖」です。
山頂は異常に虫が多かった。山頂だけではなく、登る途中でも動きを止めると体にまとわりついてきた。(何という種類の虫だろうか?)とにかくおちおち休んでもいられない気分だ。山頂滞在時間40分でそそくさと下山を開始した。
※ これがこの日最後の写真となった一枚です。雲に隠れていますが、右が羊蹄山、左が無意根山です。
下山は下山で難しい下りだった。リーダーが「登山事故の8割は下山時に起こっています」という。今回のようにぬかるんでいたり、岸壁が濡れている場合は特に慎重を期さねばならなかった。
それでも筋力が衰えて登りに苦労した私には下山時の方が少しは余裕をもって下りることができた。
三か所の岸壁のところでは一人が下りきってから、次が下りるようにするなど慎重に、慎重に下った。慎重に下ってはいても足腰に疲れが貯まっていたのだろう。私は2度、3度と足を滑らし尻もちをつくことになってしまい、ウェアやザックは泥にまみれてしまった。
それでも何とか事故なく、登りのときより時間をかけて16時35分、白井二股の駐車場に帰り着くことができた。
今回の登山で自分の筋力が思っていた以上に衰えていることを自覚させられた。それでも登山から三日経った今、あの厳しい山を登りきることができたことに充足感を抱いている。サポートしていただいた山遊会の皆さまには感謝感謝である。
これからはあまり高望みせずに、自分に適した山を選びながら山歩きを楽しみたいと思う。という私だが懲りもせずにまた今週山行を計画している。
ところでクリーンハイク(清掃登山)の方だが、山遊会の方たちは火ばさみとゴミ袋持参で登ったのだが、ほとんど登山道でゴミを見かけなかったようである。「近ごろはマナーが良くなったんだねぇ」と言っていたが、私たちのマナーはこうしたところでも確実に向上しているようだ。いわゆる日本人の民度が高くなってきているということだろうか?
※ まだ余裕のあった頃に登山道で見た山野草の一部です。
※ タニウツギ
※ エンレイソウ
※ シラネアオイ
【定山渓天狗岳 登山データー】
標 高 1144.9m (標高差755m)
駐車場 白井二股の入林名簿小屋脇に10台程度駐車可能
行 程 白井二股→(35分)→天狗岳登山口→(1時間05分)→大高巻き→(1時間50分)→定山渓天狗岳山頂→(2時間00分)→大高巻き→(1時間05分)→天狗岳登山口→(35分)→白井二股
時 間 登山(約3時間30分) 下山(約3時間40分)※休憩時間を含む
天 候 快晴、無風
登山日 ‘13/06/16
※ 渓流を避けて岸壁を登っています。これは「高巻き」かな?
渓流沿いを遡行するとき、水際の岩場を横へ横へと移動することを「へつり」というそうだ。「へつり」が無理な時に大きく迂回して登ることを「高巻き」と呼ぶそうである。
私たちは第一の壁を乗り越えた後も、「へつり」と「高巻き」を繰り返しながら徐々に高度を上げていった。
※ こちらは渓流の側のところを伝ってゆく「へつり」というのか?
その頃には私の体力はもう限界に達していた。そのためもあり、全体のペースがかなり遅くなっていたと思う。これまでの登山でそうした経験はなかったが、これ以上はパーティーの皆さんに迷惑がかかると思い「先に行ってくれ」と告げたところ、リーダーは全体を休ませる措置を取ってくれた。私だけではなく、パーティーの人たちもかなり疲れていたようだ。
激しい疲労は私から写真を撮る余裕を完全に奪ってしまった。したがって、このあたりからの写真は極端に少なくなってしまった。
※ 渓流も上の方へ行くと残雪が残り、そこがトンネル状になっていた。
何度も休憩を繰り返しながら、第二の壁を迎えた。第一の壁である程度要領を掴めたためだろうか、今度は助けを借りずになんとか壁を乗り越えることができた。
このあたりからは頂上に向かってさらに傾斜がきつくなってくる。皆さん疲れのためか無口になっていたが、リーダーたちの励ましに助けられながら登りつづけた。
そうした中、頭上を覆いかぶさるような岩壁が現れた。第三の壁である。ウェストコルと呼ばれる岸壁の切れ目に向かって岩壁状に延びたルンゼ(岩溝)という形状を一人ひとり慎重に登った。
ここを登りきると急に視界が開けた。遠くの山々が遠望でき、涼風が頬を撫でてくれた。「ここまで来ると頂上は間もなくです」というリーダーの声に励まされ、比較的ゆるやかになった登山道を登りつづけた。
※ 登山路はこの大壁の切れ目(ルンゼ)を登って行った。
登り続けて3時間30分後の12時15分、小さな標識が目に入った。定山渓天狗岳(天狗山)頂上である。あまり広くない山頂は私たちだけで一杯になった。私はすき間を見つけて崩れるように座り込んだ。
3時間以上も行動し続けて空腹のはずなのだが、疲れからか食欲がない。それでも妻が作ってくれたおにぎりを1個だけ無理やり押し込んだ。
※ ウェストコルを上がって見えた光景です。手前が烏帽子岳、奥が神威岳です。
腰を下ろして休んだことで少し気力を取戻し、山頂の様子をカメラに収めようとした。ところがカメラが作動しないのだ。ふだん私はカメラを首からぶら下げたまま行動し、気に入ったところで直ぐにシヤッターを押すようにしている。しかし、今回は途中からカメラを構える余裕などなくなりウェアの内側に押し込めて登山に集中した。そのことで体内から出る熱や汗の影響を受けてしまったのかもしれない。残念だが山頂や下山の様子は一枚もカメラに収めることができなかった。
※ 頂上から見た「さっぽろ湖」です。
山頂は異常に虫が多かった。山頂だけではなく、登る途中でも動きを止めると体にまとわりついてきた。(何という種類の虫だろうか?)とにかくおちおち休んでもいられない気分だ。山頂滞在時間40分でそそくさと下山を開始した。
※ これがこの日最後の写真となった一枚です。雲に隠れていますが、右が羊蹄山、左が無意根山です。
下山は下山で難しい下りだった。リーダーが「登山事故の8割は下山時に起こっています」という。今回のようにぬかるんでいたり、岸壁が濡れている場合は特に慎重を期さねばならなかった。
それでも筋力が衰えて登りに苦労した私には下山時の方が少しは余裕をもって下りることができた。
三か所の岸壁のところでは一人が下りきってから、次が下りるようにするなど慎重に、慎重に下った。慎重に下ってはいても足腰に疲れが貯まっていたのだろう。私は2度、3度と足を滑らし尻もちをつくことになってしまい、ウェアやザックは泥にまみれてしまった。
それでも何とか事故なく、登りのときより時間をかけて16時35分、白井二股の駐車場に帰り着くことができた。
今回の登山で自分の筋力が思っていた以上に衰えていることを自覚させられた。それでも登山から三日経った今、あの厳しい山を登りきることができたことに充足感を抱いている。サポートしていただいた山遊会の皆さまには感謝感謝である。
これからはあまり高望みせずに、自分に適した山を選びながら山歩きを楽しみたいと思う。という私だが懲りもせずにまた今週山行を計画している。
ところでクリーンハイク(清掃登山)の方だが、山遊会の方たちは火ばさみとゴミ袋持参で登ったのだが、ほとんど登山道でゴミを見かけなかったようである。「近ごろはマナーが良くなったんだねぇ」と言っていたが、私たちのマナーはこうしたところでも確実に向上しているようだ。いわゆる日本人の民度が高くなってきているということだろうか?
※ まだ余裕のあった頃に登山道で見た山野草の一部です。
※ タニウツギ
※ エンレイソウ
※ シラネアオイ
【定山渓天狗岳 登山データー】
標 高 1144.9m (標高差755m)
駐車場 白井二股の入林名簿小屋脇に10台程度駐車可能
行 程 白井二股→(35分)→天狗岳登山口→(1時間05分)→大高巻き→(1時間50分)→定山渓天狗岳山頂→(2時間00分)→大高巻き→(1時間05分)→天狗岳登山口→(35分)→白井二股
時 間 登山(約3時間30分) 下山(約3時間40分)※休憩時間を含む
天 候 快晴、無風
登山日 ‘13/06/16