ご存じの方が多いと思われるが、日本のプロレタリア文学の代表作とされる小林多喜二原作の「蟹工船」の映画である。最近(2009年)リニューアル化されて話題になったようだが、私が観賞したのは1953年制作の俳優:山村聰の脚本・監督の作品の方である。
私が足繁く通っている「めだかの学校」は、今年度は昭和期、それも北海道に関わりある映画を鑑賞することを主とした学習を進めるそうだ。
その4月分、第1回目としてとして去る4月13日(月)午後、1953(昭和28)年制作の「蟹工船」を鑑賞した。
原作の「蟹工船」は小林多喜二によって1929(昭和4)年に発表された作品である。
北海道との関わりという点では、蟹工船の母港が函館港ということだろう。
当時の日本は軍国主義の世の中で、人権などは顧みられず、下層階級は搾取されるだけの悲惨な状況だったが、蟹工船の内情はその象徴でもあったようだ。そのことを作品として発表し告発した(?)多喜二は、そのことが原因となって治安維持法違反(?)で投獄され、獄死するという悲惨な状況も生まれたことは良く知られたところである。
映画の方であるが、1953年の制作というせいであろうか、白黒画面の粗さは我慢できるとしても、トーキーの状況が最悪だった。浜言葉、古い言葉遣いのせいもあるが、聞き取れない部分が多かった。だからセリフの機微がまったく伝わってこなかった。
映画のおおよその流れは理解できたとしても、映画の流れの中でそれぞれが交わす会話が分からないほどストレスを感じるものはない。その点は非常に残念だった。
映画は悲惨な蟹工船内の労働現場をこれでもか、これでもかと活写した後、現場監督のあまりにも極悪非道な扱いに労働者たちが立ち上がった。しかし、親会社の意向を受けた現場監督が要請した海軍の兵隊たちの銃弾によって次々と倒れてしまうという悲惨な結末で映画は終わる。
映画の出来としては、当時の悲惨な状況のみが強調されすぎた感があり、ストーリーとしての出来が良かったとは私には思われなかった。ネット上で75歳になる映画ファンが綴っていた感想が私の印象と重なるので紹介しておくことにする。
時代的軍国調思想が出ていてよかった
話が淡々と進み、深い感情的情愛がなかった!
もっと人情味のあるストーリーにできなかったか?