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田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

天売島から世界へ

2015-11-08 23:01:33 | 講演・講義・フォーラム等
 それは普通の講演とはまったく様相の異なった講演だった。画が出る、動画が出る、音が出る…。臨場感あふれる自然界の野鳥の姿を余すところなく提示しながら、自然と人間の共生を訴える秀逸の講演だった…。 

 11月7日(土)午後、エルプラザにおいて北海道自然観察協議会創立30周年記念公開シンポジウムが開催され、参加してきた。
 そのシンポジウムの冒頭に行われたのが、自然写真家の寺澤孝毅氏による「1羽の青い鳥から始まった軌跡の地球紀行」と題する基調講演だった。
 いささか大仰な講演題にも映るが、そこには寺澤氏ならではの思い入れが込められた講演題であることが講演を通じて伝わってきた。

                  
                  ※ 講師の寺澤孝毅氏です。

 講演題にあるように寺澤氏と野鳥との出会いは4才のときの青い鳥と出会ったことがその始まりだそうだ。その青い鳥はそのときは分からなかったが、ルリビタキではないかという。それ以来、氏は野生の鳥に興味を抱き、追い続けたそうだ。
 長じて教育大学を卒業した寺澤氏は野鳥が豊富に棲息する天売島に赴任を申し出たという。念願どおり天売島に赴任した寺澤氏は、文字どおり野鳥、特に天売島にのみ生息するオロロン鳥(ウミガラス)にのめり込んでいくことになる。

        
        ※ 絶滅寸前だった天売島のオロロン鳥(ウミガラス)は最近徐々に回復傾向にあるそうです。

 小学校教員として10年を過ごした天売島で過ごした寺澤氏は、そこで教員を辞して野鳥や自然を相手にする専門家として独立した。彼はこの点について多くを語らなかったが、この転身が彼にとっては人生の大きなターニングポイントだったと思われる。

 この決断が文字どおり寺澤氏に翼を与えたようだ。自由な活動の場を得た彼は自然写真家としての評価を得て、仕事の範囲がどんどんと広がっていった。これまで訪れた世界のサンクチュアリは10ヶ国を下らないという。
 その中からロシア・サハリン沖にあるチュレニー島と、北極圏にあるスバールバル諸島の野鳥たちが群舞する様子を動画と音で示してくれた。それはもう野鳥の楽園そのものだった。

        
        ※ サハリン沖にあるチュレニー島で海岸を埋め尽くすように棲息する野鳥たちです。

 寺澤氏は自らの講演のスタイルを「Photo & Sound Live」と称しているようだ。多くの言葉を要するより、多くの情報を参会者に与え、訴求力も大きいと思われる。このスタイルで寺澤氏は学校をはじめさまざまなところで講演活動を展開しているようだ。

        
        ※ 北極圏のスバールバル諸島の上空を群舞する野鳥たちの様子です。

 世界各地を旅して、寺澤氏は改めて確信したという。サハリンや北極には生命が溢れていたという。
天売島もボートで10分も島を離れれば、そこには手つかずの自然があるという。寺澤氏によるとそこは「ひとつの地球のモデル」であり、「万物共生の島が天売島」だと…。
 そんな天売島の海域にも野鳥のエサとなる小魚が減少してきているという。それは人間の活動によるところが大きいと指摘する。
 人間が生活していくための生産活動を規制することは難しいが、贅沢を戒め自然と共生するという思いを一人ひとりが持ってほしい、と寺澤氏は最後を締めた。