田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

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フィルム・インスパイアード・ツーリズム

2015-11-14 21:46:29 | 大学公開講座
 今、映画に触発されて、物語の舞台になった地を訪問する旅の形態が盛んになっているという。北大講座「記憶をめぐる観光論」の最終講座はフィルム・インスパイアード・ツーリズムの実態についての話を聴いた。 

 北大観光学高等研究センター主催の「記憶をめぐる観光論」の第7講(最終講座)が11月12日(木)夜に開講された。今回は「映画の記憶がもたらす観光現象――フィルム関連アーカイブとの関係性」と題して観光学高等研究センターの内田純一准教授が講師を務めた。

               

 フィルム・インスパイアード・ツーリズム(film inspired tourism)とは、先述したように映画に触発されてロケ現場などを旅する観光形態を指す言葉である。
 言葉は別にして、こうした旅の現象が起こっていることについて私はかなり前から認識していた。

 映画「ラブ・レター」が韓国で大ヒットし、ロケ地だった小樽市に韓国人観光客が大挙押しかけたとか、道東地方をロケした中国映画「狙った恋の落とし方」が中国では三人に一人が観るほど大ヒットとなり、道東地方は中国人観光客が溢れるような状態になったと聞いていた。ちなみに私はこの両方のフィルム(映画)とも過去に観ることができた。

                   

                   

 映画とは異なるが日本においてテレビドラマ「冬のソナタ」大ヒットし、日本人女性が大挙して韓国のロケ地に押しかけたこともフィルム・インスパイアード・ツーリズムの一つだろう。

                   

 一方、観光客を受け入れる側も関連のフィルムの保存に努めるなど、フィルム関連アーカイブに力を入れているという。
 北海道を例にとると、札幌の「北の映像ミュージアム」、「渡辺淳一文学館」、旭川の「三浦綾子記念文学館」、富良野の「『北の国から』資料館」などなど…。

 内田准教授はこうした事例とは別に、メディアがイメージを創り、そのことで観光現象を起こした例を紹介した。それは「ハワイ」である。ハワイを南国の楽園かのようなイメージを創り上げたのはアメリカのメディアだという。
 アメリカ政府は1894年にハワイ共和国を樹立させ(これはアメリカ化の政策だったそうだ)、アメリカ人の観光保養地化を進めたそうだ。
 そのためにハリウッドでハワイの映画を作り、音楽も本国で作られたそうだ。一方、ワイキキの浜には大量の砂を運び込み、現在のような浜辺を創出したそうだ。こうしてハワイはいわばメディアが観光現象を作った例だという。

 この講座で今回の「記憶をめぐる観光論」の全7講座が終了した。
 講座の副題は「アーカイブ構築とアイデンティティ形成」というものだったが、この意味するところは、地域の観光資源に気付くことと、そしてそれを記録として残していくことによって、地域の観光産業が隆盛し続けることに繋がるという趣旨の講座だったと理解した。