何十年前に立てられたのだろうか、定かではないほどの古さで
国道沿いにあるバス停留所とは思えないくらいだった。
たぶん…このバス停留所が立てられた時には
国道も舗装などされていなくて
砂利道に一日に数えるくらいのバスが…。
しかも 田舎のバスはおんぼろ車、とか歌にあったような気がする。
バスが過ぎると、砂埃が舞い上がっていたのだろう…。
こういうバス停留所を見ていると
時は夏、日傘を差した着物の女の人や
開襟シャツにボストンバッグを提げた一見紳士
ハンチングを被った行商人だとか…。
そんな姿の人が、こんな停留所でバスを待っていたのだろうか。
遠い昔に思いを馳せる。
中を覗くと、腰をかけたら一発で壊れてしまうような作り付けのベンチは
誰も座った形跡もなく埃で真っ白だった。
辛うじて目新しいものと言えば
手前にある干からびた土が入っただけのプランターがひとつ
そこには雑草が枯れ切っていた。
波トタンの屋根は錆びて、柱も何年か風雨にさらされて来た様な
ちょっと寄りかかったら倒れてしまうようなバス停留所。
そういえば…バスに乗らなくなってしまってから
どのくらい経つのか…昔の交通手段はバスだったのに。
今もこのバス停留所から、バスに乗る人はいるのだろうな…。
まわりの景色とかけ離れてしまったこの場所だけが
なんだか取り残されたような、異空次元に迷い込んだような錯覚に囚われた。