『お世継ぎ:世界の王室・日本の皇室』

八幡和郎、2005、『お世継ぎ:世界の王室・日本の皇室』、平凡社
この本はなかなかにくい構成となっている。前半は世界の王室の結婚問題にかかわるゴシップを並べておいて、その後、天皇位継承の歴史をレビュー、最後は、現状の継承問題をクローズアップして、さらには国旗・国歌問題や改憲問題にまで言及する。語り口はソフトなのだが、中身は、なかなかシリアスである。
この本を読んでの素直な感想は、たぶん、皇室の継承問題は破綻するだろうということか。というのも、まず、前提は継承問題の論議はすでに下世話なレベルになっているということだろう。下世話といって悪ければ、皇室に対する一般の関心が、美智子妃から雅子妃の療養問題、さらには嫁姑問題、出産育児問題、皇太子と秋篠宮の結婚問題について、国民と同じなのではないかという「親しみ」を感じるまでになっている。そして、それにもかかわらず、官僚組織である宮内庁をはじめとする省庁(皇室会議議長は総理大臣)が、管理能力を失っているように見えることであろう。
さて、くわえて、皇室の問題は、日本国民の問題でもあることだ。その意味は、先行きの見通しがつかずに、問題解決が困難ということである。たとえば、少子高齢化、生殖医療の発達をあげてみよう。少子化対策として明確な政治的判断が示されておらず、これは、先日のNHKにおける討論番組における猪口少子化担当大臣のうやむや下発言とずばり切り込んだ遥洋子がシンボリックな関係に見えるところである。そして、初産年齢が上がり、子供を望む家族は、生殖医療に依存する率が上がっている状況である。また、女性天皇あるいは女系天皇のトピックは、下々の別姓結婚や女性の就労、少子化の進行などの問題とパラレルである。
皇位継承問題は破綻するだろうと著者は述べてはいないが、解決すべき課題がたくさんあることをあげている。それは、国旗・国歌問題や改憲問題、天皇家の教育問題、さらには、伝統文化の保持にかかわる天皇行事の数々や天皇家の祝事の観光的意義にまで及んでいる。これを見ても、この問題が皇位継承にのみ限定できないことをはっきりと、示していることでも明らかである。
小泉改革も結構だけれど、そろそろ先の見えた小泉さんに代わって、次の首相候補の方々は、これらの点、ちゃんと意識しておられるのかどうか、うーん、難しかろうな。本書でも言及されているが、民主党の次期代表候補の小沢一郎氏が皇太子の「人格否定発言」は「内閣総辞職に値する」と自らも、一時当事者であったことを忘れたかのような発言に及んでいることを見ても、与党野党を含めて自覚がないといえよう。
秋篠宮一家のおめでた宣言でいったん収束したかに見える皇位継承問題ではあるが、この宣言だけでは何の解決にもなっていないという点でも、この問題は、まだまだウォッチしておく必要があるだろう。
この本はなかなかにくい構成となっている。前半は世界の王室の結婚問題にかかわるゴシップを並べておいて、その後、天皇位継承の歴史をレビュー、最後は、現状の継承問題をクローズアップして、さらには国旗・国歌問題や改憲問題にまで言及する。語り口はソフトなのだが、中身は、なかなかシリアスである。
この本を読んでの素直な感想は、たぶん、皇室の継承問題は破綻するだろうということか。というのも、まず、前提は継承問題の論議はすでに下世話なレベルになっているということだろう。下世話といって悪ければ、皇室に対する一般の関心が、美智子妃から雅子妃の療養問題、さらには嫁姑問題、出産育児問題、皇太子と秋篠宮の結婚問題について、国民と同じなのではないかという「親しみ」を感じるまでになっている。そして、それにもかかわらず、官僚組織である宮内庁をはじめとする省庁(皇室会議議長は総理大臣)が、管理能力を失っているように見えることであろう。
さて、くわえて、皇室の問題は、日本国民の問題でもあることだ。その意味は、先行きの見通しがつかずに、問題解決が困難ということである。たとえば、少子高齢化、生殖医療の発達をあげてみよう。少子化対策として明確な政治的判断が示されておらず、これは、先日のNHKにおける討論番組における猪口少子化担当大臣のうやむや下発言とずばり切り込んだ遥洋子がシンボリックな関係に見えるところである。そして、初産年齢が上がり、子供を望む家族は、生殖医療に依存する率が上がっている状況である。また、女性天皇あるいは女系天皇のトピックは、下々の別姓結婚や女性の就労、少子化の進行などの問題とパラレルである。
皇位継承問題は破綻するだろうと著者は述べてはいないが、解決すべき課題がたくさんあることをあげている。それは、国旗・国歌問題や改憲問題、天皇家の教育問題、さらには、伝統文化の保持にかかわる天皇行事の数々や天皇家の祝事の観光的意義にまで及んでいる。これを見ても、この問題が皇位継承にのみ限定できないことをはっきりと、示していることでも明らかである。
小泉改革も結構だけれど、そろそろ先の見えた小泉さんに代わって、次の首相候補の方々は、これらの点、ちゃんと意識しておられるのかどうか、うーん、難しかろうな。本書でも言及されているが、民主党の次期代表候補の小沢一郎氏が皇太子の「人格否定発言」は「内閣総辞職に値する」と自らも、一時当事者であったことを忘れたかのような発言に及んでいることを見ても、与党野党を含めて自覚がないといえよう。
秋篠宮一家のおめでた宣言でいったん収束したかに見える皇位継承問題ではあるが、この宣言だけでは何の解決にもなっていないという点でも、この問題は、まだまだウォッチしておく必要があるだろう。
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