『天皇とアメリカ(集英社新書)』
本書が出版されたのは、2010年2月、出版程なく購入したはずだから、10年以上もデスクサイドで積読していたことになる。この間、東日本大震災があり、天皇の譲位があった。アメリカでは、オバマ政権2期のあと、トランプ政権が続くなど、大きな変動が相次いでいる。すくなくとも、本書を読み終えた段階では、著者二人がその後どのような思索を重ねたか、おさえてはいないが、続編を期待したいところだ。
本書のキーは、ヨーロッパから独立してアメリカ大陸を西進して、太平洋をわたり、日本の開国の契機をつくり、交戦関係に入ったアメリカを象徴するものが「宗教」であり、近代化のプロセスを担ったのは一見復古主義に見えた天皇制が「近代」を象徴するという見立てに基づいた議論が展開されたということである。このことは、繰り返し両者が語っている。
本書の続編としてもこの「宗教」と「近代」という、一見逆転したかに見える対概念が有効であるのか、議論が待たれるところと思う。