田布施町の古道をいろいろ調査しています。今回、江戸期や明治期に麻郷の人々が室積の普賢さまのお祭りまで歩いてお参りするルートの一つであった、伊佐里ヶ峠(いざりがとうげ)を歩いてみることにしました。麻郷の高松八幡宮近くから登り、伊差里ヶ峠を越えて麻里府の大泉寺に出ます。
今回は大泉寺側から登ってみることにしました。しかし、峠道は山の中で消失しており、とんでもない場所に出てしまいました。
大泉寺の伊佐里ヶ峠入口 伊佐里ヶ峠直下の平らな場所
大泉寺横の道を入ると、すぐに道が途切れていました。この道は、今や伊佐里ヶ峠へ行く道ではなくお墓に行く道となっていました。そこで、茂っていた藪をくぐるようにして無理して道を進みました。しばらくすると、イノシシの足跡が顕著な道が上へと続いていました。獣道化した道をどんどん進むと、40分位して山の頂上らしき場所に着きました。ここまで来ると、道はまったく消失していました。尾根と思しき線をひたすら進みました。ひざ上にまで茂るシダをかき分けるようにして一番高い峰に到着しました。そこからは、竹尾方面の山々が見えました。ここから、谷筋に向かって降りることにしました。これが大間違いでした。
伊佐里ヶ峠の頂上付近、ここからの下り道を誤る
伊佐里ヶ峠の頂上付近からどう進めば良いか困りました。50年近く使われていない道ですので、道しるべなどはありません。降りる道に見えた獣道を下ることにしました。どんどん下ると、歩きやすいものの暗い杉林に迷い込みました。その杉林に残る獣道をどんどん進むと、昔田んぼではなかったかと思われる湿地帯に出ました。しかし、ここから道が全くありません。
道を迷っているさなか、綺麗な薄緑色のウスタビガの繭を発見しました。良いことは、この美しい繭を発見したぐらいでした。
迷い込んだ暗い杉林 薄緑が綺麗なウスタビガの繭
湿地帯をあれこれと歩きつつ、水の流れる方向に藪こぎしながら歩きました。野いばらに手や足を引っかかれて血がにじむほどほどです。だいぶ迷い歩くと、ぽっかり向こう側に工場らしき建物が見えました。この建物は少なくとも、私が到着目標にしていた麻郷にある建物ではありません。しばらく藪こぎをしてその建物に着きました。とにかく、山を抜けることができてほっとしました。
その建物は車の板金関連の工場でした。その建物で作業している方に声をかけて、この場所を聞きました。すると、唖然としました。その場所は、麻里府上組の元焼き場があった場所近くでした。そして、もう一度びっくりすることがありました。私と話をしたM氏は、私の中学生時代の同級生だったのです。彼と同じクラスになったことがあります。本当に奇遇です。彼と、子供の頃の話などで少しの間談笑しました。
藪の中から見えたM氏の工場、この建物が見えた時ほっとする
家に帰って、伊佐里ヶ峠の道のどこを間違えたのか振り返りました。すると、大泉寺わきからすぐのA地点ですでに間違えていました。尾根に沿って行かなければならないのに、谷すじに入ってしまいました。その後、峠のB地点に着いたのは間違いではありませんでした。しかし、ここから大きな誤りを犯してしまいました。一度、頂上を乗り越えて東に向かい、谷筋に向かいD地点(高松八幡宮近く)に向かわなくてはなりませんでした。しかし、B地点すぐの谷筋に降りてしまったのです。その結果、まったく逆方向のC地点に向かってしまいました。近いうちに、もう一度チャレンジしてみようと思います。
50年の月日はすごいものです。昭和30年代まで使われていた峠道は、見るも無残に消失していました。明治時代頃、峠には茶屋があったと記録に残っています。その当時、この峠を行き来する人々が絶えなかったのてしょう。もう一つ分かったことは、この峠の名前の由来です。峠付近はずり落ちてしまいそうな急坂です。背中を曲げるようにしながら登る姿が峠名になったと思われます。やれやれ、山の中で迷子になったのは久しぶりです。
黄色が本来の伊佐里ヶ峠の道、橙色の線のように道を迷う
ちなみに昭和49年の伊佐里ヶ峠付近の航空写真を見ると、峠の痕跡が残っています。この当時ならば、まだ峠をかろうじて行き来できたのではないかと思います。これらの古道が使われなくなったのは昭和30代後半以降です。日本の高度成長期とモータリゼーションが普及する時期と重なります。
昭和49年当時の伊佐里ヶ峠の航空写真、すでに道は痕跡程度にしか見えず
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麻郷側から歩いてみました。
しかし、峠から麻里府側の道は草木が茂っていました。
来年の冬に大カマを持って再度行き、
草木を切り倒しながら麻郷から麻里府大泉寺まで峠を越える計画を立てています。
上郷から室積の伊保木に通ずる山道もありますが、多分、麻郷の人達はその昔、二つの山越えをして室積の普賢へと向かわれたのでしょう。けれども、海沿いに行くよりはるかに近道ですね。