すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

曲芸に、すぐれた授業の要素を見る

2006年08月01日 | 雑記帳
 魅せられた芸がある。

 新宿末広亭、七月下席昼の部の唯一の曲芸である。
 「ボンボンブラザース」という名のコンビで、出番が主任の前なので、かなりのベテランと見た。曲芸としてよくあるバランスをとる芸で、鼻の上に乗せるというものだ。

 そこに乗せられたのは、長さが50センチメートルばかりの細長い紙片である。

 このシンプルな芸に魅せられた。
 重さのない紙ゆえにできることだろうが、紙が斜めの状態になっても身体の位置を微妙に変えることでバランスを保つことができる。あやうく倒れるところを体の動きでカバーしていく。この繰り返しが演じられるのだが、不思議に見飽きない。観客も一体化したように声を出したりしている。

 なぜ、これほどまでに魅せられたのか。
 場面を思い起こしながら、考えた。

 一つは素材のシンプルさであり、身近さである。
材質が少し固めの厚紙であり、どこにでもあり、誰もがその重さを想像できる。
 次に、倒れそうで倒れないぎりぎりのラインを見せていることである。
繰り返した中には失敗もあったので、限界が客にも分かっている。
紙なので、何回もやり直しがきくというメリットもあったはずだ。
 そして、演ずる場所を広範囲にとり、動きにも変化を持たせている。
舞台の右左はもちろん、客席に降りて、そして後ろ向きで上るなど、演者は様々に動き、観客に期待を抱かせていた。

 シンプルさ、身近さ。
 ぎりぎりのライン。
 そして、変化を持たせる。

 
 すぐれた授業の要素として語られることばが、そこにもあった。