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「対応技術」を高めるために・その1

2006年08月09日 | 読書
 題名に惹かれて、二冊セットの本を買った。

 『子どもへの対応技術の解明・上巻』と『同・下巻』(明治図書)である。

 著者は、「授業の原理原則トークライン」編集長の小林幸雄氏。向山洋一氏の実践追究にかけては、TOSSの中でも屈指の一人であろう。

 小林氏の実践を中心に、ライブやDVD資料をもとにした向山実践の分析が内容である。
 個々の事例に参考になることは多かったが全体として構成に統一感がなく、「解明」という言葉にはそぐわないように感じた。どういう原理・原則があるか、記述の仕方を含めてもう少し明快さがほしい。
 しかし、少し不満を持ち読み進めたことで、かえって「対応技術とは何か」という本質的なことを考えたことも確かである。

 「対応」とは、「相手や状況に応じて事をすること」である。いうまでもなく児童生徒が対象となる。
 「対応」は、期間によって例えば「年間における対応」や「1時間における対応」というように、また関係によって「担任としての対応」や「初めて会う人としての対応」というように細分化されるだろう。対象が個別か全体かという区分もあるだろう。
 ここではそれらが混同されているのだが、メインと考えていいのは下記のことであるにちがいない。上巻の第一章の冒頭の記述である。

  授業中のさりげない教師の「助言、励まし、ねぎらい、評価」など、子どもへの対応

 つまり1時間の授業中の個別対応を主とみる設定である。この本を手にした私自身の関心もそこが大きい。
 そして「対応技術」となれば、それは前書きの部分にこんな書き方で結論づけられている。

 瞬間的に対応できる腕は、「選択能力」と言ってもよいだろう。
 バックボーンとして持っている種々の技術から最善のものを、瞬間的に選択できる技能、それが、プロのなせる対応技術である。

 
 対応技術は、種々の技術を持っていることが前提にあり、それを相手・状況に応じて選択し発揮するものといえよう。自らの対応技術を測るために、容易な考えも浮かんでくる。
 例えば、「小さい声で発表した子」に対してどんな言葉かけをするか。
 思いつくままに、その方法を挙げてみる。…ここでは数が多ければ多いほどいい。
 そしてその子がどんな性格、状態であるか、どの程度の能力なのか想定してみる。
 この子の場合はこれ、もしこうだったらこうといくつかに類型しておく…そうしたシュミレーションをすることは有益だと思う。
 
 しかし、肝心なことはまだまだある。

 「声が小さい子どもへの対応」として向山氏の例が紹介されている。

 「○○さんが聞いていなかったから、もう一度言って」


 この言葉かけの素晴らしさはいくつかの視点で分析できる。(明日へ)