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フィンランド・メソッドは「型」の教育

2006年08月02日 | 読書
 東京駅前の大きな書店には、以前から読みたいと思っていた「フィンランドの教育」に関しての本が平積みされていた。
 その中でも読みやすそうな『図解フィンランド・メソッド入門』(北川達夫・経済界)を購入し、読んでみた。フィンランド大使館に外交官として勤めたキャリアを持つ著者は、フィンランドの教育メソッドに関しての造詣が深く、その普及会会長という肩書きも持っている。国の全体的な姿も含めて概観するには適した書物だった。

 「発想力」「論理力」「表現力」「批判的思考力」そして「コミュニケーション力」と分類されて、いくつかの方法が具体的に記されていた。
 今まで見聞きした方法・技術とかなり似通っているものも多いが、初めて目にした興味深い方法もある。
 例えば「作文」の分野では、次の設定など非常におもしろいと感じた。
   15個の単語を使って、できるだけ短い作文を書く
   知られている物語の、ある要素だけを変えて書き換えてみる


 しかし考えてみれば、そうした個々のネタとしておもしろいものは、我が国の教科書の中にも散見されるようになってきている。ただ、それらがどういう位置づけになっているか体系立てられたものがない、いやあったとしても現場の教師の多くには見えない、というのが現状であろう。その意味で、やはり日常的に使える教科書づくりが、大きなポイントになってくると改めて思った。

 著者は、我が国の児童生徒の「発想力の低下」を取り上げ、あとがきにこう記している。

 「自由」という言葉にとらわれすぎて、何かを強いることを極端に恐れ、必要な訓練すらほどこさなかった結果、自由に発想する力すら育てられていないのではないでしょうか。


 発想力に関しての比較データがあるのかどうか定かではないが、画一的な発想になっているという印象は私も持っている。これを打開していくには、逆説的ながら「一定の型」を与えることが効果的だと著者は言う。まったく同感である。「豊かな」という形容詞に惑わされて、観念的な指導に向かいがちな国語教育の現状は改めなければならない。

 フィンランド・メソッドの一つの要点が「型」にあることは、もっと強調されていい。