すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

発想、追究の目とババベラ

2006年08月23日 | 雑記帳
 地元の出版社「無明舎出版」の舎主である安倍甲氏の講演を聴いた。

 『地方の時代 秋田から文化を発信』という演題であったが
ダイレクトにそのことを主張したり、推進したりという中身ではなかった。
 しかし編集者、出版経営者として様々な事柄についてのユニークな視点が満載されており、
訥々とした語り口ながら、あっという間と感じた80分間だった。

 「先生になりたくて教育学部に入ったが、今になると、ならなくてよかった」

という冒頭の言葉に、同世代が多い会場からは笑いが漏れた。
 団塊の世代であり、ビートルズ世代である安倍氏だが、一番ぴったりくるのは

 魚肉ソーセージ世代

だと言う。そうなると私自身にも当てはまることだ。
 そして、こんな言い方をした。

 「時代に食べさせられていた」

 本当のソーセージではなくいわば「かまぼこ」である魚肉ソーセージが
1951年に登場し10年間で800倍もの売り上げを記録する背景は
ビキニ沖のまぐろ漁業との関係があることなど、実に興味深かった。
 そして、ある学者が「貧乏人の肉食トレーニング」と名づけたことも
歴史的に見ると、実に納得のいくものだった。

 その後も、書店の消滅、出版社の現状やハンバーグにおける都市伝説、
そしても今や秋田の一つの象徴でもある「ババベラアイス」について等々
実に興味をそそられる話題が続いた。
 「ババベラ」については単行本の計画があるそうで、
商標権との問題があっても裁判覚悟で発刊にこぎつけたいと熱く語っていた。
 本当に楽しみである。

 テーマとの結びつきがなかなか感じられなかったのだが
最後の段階で、「食」を視点にして秋田の文化の区分けをされたことで
結局、安倍氏が何を言いたいのか、つかめたような気がした。
 
 物事の表面、言葉の上っ面だけを見ない
 なぜ、どこから、いつから…、あれはどうするといった疑問を忘れない


 編集の仕事は、発想と追究の塊だなと、改めて思った。
 秋田県人であっても、こうした疑問をもった人は少ないのではないか。

 路上のババベラの売り子は、どこでおしっこをするのか