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キャッチボールと洗濯と

2007年05月01日 | 読書
 伊集院静氏の著した『MODESTY』(ランダムハウス講談社)を読んだ。

 サブタイトルが「松井秀喜 つつしみ深い生き方」である。アメリカで『HIDEKI MATSUI』として発刊されたものの日本版ということらしい。

 氏と松井選手との交流は有名なことであり、エッセイ等で書かれてあるのを何度も目にしている。
 出会いから、メジャー行きの決断、渡米そしてデビュー、怪我からの復帰までが氏の目を通して描かれている。
 
 この本は別の言い方をすると、一種のファンレターでもある。小説のなかで芯のある人物を描くことに抜群の才能を見せる作家が、ファンレターを書くとこういう感じになるのだろうな、と感心させられた。
 
 またこの本には、野球をどこまでも愛する氏の独白がちりばめられていて、その面でもおもしろい。
 例えば、氏のもとに「子育て」に関して相談しにくる若い父親、母親に対してこう返答するという。

 (父親に対して)
 「野球をさせなさい」
 「キャッチボールは会話なんです」


 (母親に対して)
 「泥だらけのユニホームを毎日、洗っておあげなさい」

 最近、「キャッチボール」をモチーフとして文庫を2冊刊行した伊集院氏であるが、その中にもキャッチボールの持つ精神性が強く表れていたように思う。
 
 子育てに、言葉は欠かせないことである。
 この本にある松井選手の「悪口を言わない」というエピソードの中でも、その思い出の中での父親の一言は心を打つ。
 しかし同時に、言葉以上に伝わることも世の中にはあるのだ、ということをある章のタイトルは教えてくれている。

 父と息子のキャッチボール
 母の洗ったユニホーム