すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

少し寂しい読後感

2009年11月17日 | 読書
 熊谷達也の『新参教師』(徳間書店)を読んだ。
 結構長い教職歴を持つ熊谷がどんなふうに書くのだろう。かなり興味があった。

 帯に書かれているこの言葉。

 学校の常識は世間の非常識ってホント?

 確かにその通りと断言できることはいくつかあるが、そう言いながらどの範囲が「世間」かという気もするし、それよりも教育界の地域による違いの方がより衝撃をうけたりするのが多くの教員たちなのでは…。なかなか難しいものです。
 さて、書店のPRにはこんな表現がされている。

 教育現場の荒廃が叫ばれる現代に問題提起する、いまだからこそ読んでほしい問題作。

 それほどのものではない、というのが正直な評価。
 馴染み深い仙台が舞台であり、学校の職場内にありがちな人物設定は、すらすらと読み進んでいくための大きな要素だが、何かガツンとした歯ごたえは感じない。

 主人公が最後に「子ども・生徒」に目を向けるのは予想された結末だけれど、そこへのたどりつき方はちょっと淡泊すぎるのではないか…新参教師の教室場面、授業場面が少ないと思ってしまうのは、仕事に向ける比重が違うのだろうか。職員室は現場の一つでしかない。何か周辺をなぞったというイメージは抜けない。

 「邂逅の森」「漂泊の牙」路線の方がずっといいなあ、と思うのはけして私だけではないと思う。
 コミカル要素を入れたり、いわゆる跳んでるキャラクターを登場させたりしているが、それはどこかの作家に任せて、もっと東北の自然にじっくりと向き合ってほしい…そんな読後感を持ってしまったことは少し寂しい。