すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

熱、いまだ褪めずに

2009年11月09日 | 雑記帳
 赤い大きなリボンをつけた年配の方が、協議の途中に発言を求めた。
 78歳だという。おそらく県の国語教育界をリードされてきた大先輩なのだろう。

 昭和63年の話だと聞いた。
 今はもうない東京教育大学の付属小で、青木幹勇先生の退官の授業が行われたという。その席にはかの倉澤国語教育学会会長と、西郷文芸研会長が招かれていて、意図的に論争が仕掛けられていたのだと語った。結局西郷氏が来ないで実現しなかったらしいが。
 青木幹勇先生が授業したのが、大造じいさんとガンのこの最終場面であったという。
 そして場面全体を取り上げたのではなく、取り上げた箇所はここであったという。

 バシッ!
 快い羽音一番。一直線に空へ飛び上がった。
 
 残雪の様子に視点をあてた指導だったという。
 その詳細については語らなかったが、この部分で授業の大半を使う指導とはどのようなものだったろうか。想像してみることは楽しい。

 夏に弘前で野口芳宏先生が授業なされたのも、同じ最終場面であったことを思い出した。
 この部分も問いかけられた。たしか、ここでのまとめは「野性」であったと思う。
 そう考えると、場面冒頭「なぜ、おりの中に入れたか」の問いから始まった野口先生のお考え…いわゆる動物文学の読み方といったことに通ずるような気がして、ますますその素材研究の深さが迫ってきたことが記憶にある。

 そうしたことも含め、いささかセンチメンタルとは思うが、年配の方の歴史を感じさせる発言に国語教育への熱のようなものを感じて、いい刺激を受けた会であった。