すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

野球から派生する筋を

2012年08月16日 | 読書
 夏季休暇最後の日,午前に文庫本を一冊,教育書を一冊読む。
 昼食は久々にそばの老舗に出かけ,その後からはビデオ三昧。いい一日だった。

 とりあえず,文庫本の感想メモを。

 『あるキング』(伊坂幸太郎 徳間文庫)

 単行本が出たときにペラペラと見たので,野球に関する話であったことは知っていた。
 仙台在住だから楽天がモデルになるのかな,キングだから「王」そのものか「○○王」などが関係するだろうか…そんな勝手な想像は持っていた題名だ。

 ようやく文庫化だが,徳間文庫ってなかなか渋くないですか?初めてのはずでしょう。
 それはともかく,本の帯にこんなふうに惹句が書かれている。

 今までの伊坂作品とはひと味違う

 朝風呂から読み始めて一気に読了。
 確かにひと味違う感じはするが,「やはり伊坂」ということもファンであれば見つけるだろう。
 受け止め方は様々だが,私なりのポイントは二つ。

 一つはやはりキャラが立つ。個性的な登場人物たちである。
 つまり,ほとんどが曲者であることだ。
 平凡な人物と見せておいて,その心の深層を描くのが巧みなのでそう思うのだろう。

 もう一つは,引用の巧みさ。
 今回は圧倒的に『マクベス』である。自分が読み込んでいればもっと楽しめるのだろうが,それでも演劇の台詞から引いてくるのはインパクトが強いし,十分読者を楽しませる。

 この小説は,何でも雑誌連載,単行本,文庫本とかなり手が入れられて,違ったバージョンになっているらしい。そこまで手を広げ検討する意欲はないが,著者自身も楽しんでいることが想像できる。

 さて,肝心の野球だが,実際の試合場面などはほとんどなく,少なくともスポーツ小説とは呼べない。
 野球というメジャーなスポーツを巡る様々な人間の交錯するドラマということだろうが,他のスポーツで代替できたかというとそうでもない気がする。

 オリンピック種目でなくとも,この国では野球に集う人たちの熱はやはりまだまだ大きいと思わざるを得ない。この小説からそんなことを考えた。

 地元の中学が全県大会制覇し,東北大会を経て,全国大会出場を決めている。
 http://www.zenchu-baseball2012gunma.com/team/tohoku3.htm
 そして甲子園では,秋田商業が初戦を勝ち抜き三回戦に駒を進めた。
 http://www.nikkansports.com/baseball/highschool/news/p-bb-tp3-20120816-1001403.html

 結局,過疎県,過疎地域の宣伝?鼓舞?になってしまったが,野球から派生する筋の多様さや強さはかなりなものだということか。