すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

分かるための道具,仕掛け

2012年08月29日 | 読書
 なんという題名の新書か忘れてしまったが、このような文章に深く頷いたことがある。

 「わかることは、分けることがはじまりです。」

 「分かる」と表記することの訳もそれで納得がいくし、世の中を認知していくことは、すべて「分ける」ことから始まっていると考えることは、まんざら的を外していないと思った。

 いつから書棚に積まれていたか思い出せないほどだが、ようやくこの本を読み終えた。

 『関大初等部式 思考力育成法』(関西大学初等部 さくら社)

 奥付を見たら2月20日とある。
 ちょうど2月に本県の教育研究発表会に参加したとき、「思考力」をテーマにしたある学校の研究発表があり、興味深く聞き入った。
 それもきっかけになったし,ネット上の紹介などもあって手にしたのだと思う。

 私が聞いた発表の内容も「思考ツール」の活用に焦点が当てられていており、「思考の内容・要素」とまとめられたものと、本著が掲げた「思考スキル」には共通の部分があった。
 しかし、その進め方、子どもに対する働きかけの手法は当然異なっている。

 思考スキル18項目を、最終的に6項目に絞り込んだところが、この本(実践)の大きな価値のように思う。
 さらにシンキングツールの図化だ。実際に授業にかけてみないと評価できない面はあるが、このシンプルさが価値ある道具になると思う。

 かの発表では、児童に提示しているツールの主は「語り始めの言葉をまとめたもの」であり、そうなると誰しも予想できるように、かなり膨大な項目、量の提示となる。
 多くの現場で、それに類した掲示を見かけるが、実際には活用できていない面も少なくないだろう。まして思考力となれば、20項目もある思考の内容・要素に対応する語り始めの言葉は、かなり範囲が広いはずだ(ゆえに絞り込みも難しい)。

 そこで、図の登場となる。
 我々世代にはお馴染みの?ベン図だけでなく、Xチャート、ボーン図など自分がまだ使っていない形式もあり、興味がそそられた。
 おそらく、それらの図を使って作業するなかで、豊富な語り始め、書き始めの言葉が意識されることは間違いないと言っていい。

 「思考力育成」は、言うまでもなく「言語活動の充実」と重なる。そのものであるといってもいいのかもしれない。
 しかし、だからといって、単純に言語技術をたくさん教え込むことで成立するものではない。

 その観点からも,授業における「道具」や「仕掛け」の必要性、有効性を感じさせてくれる一冊だった。

 こじつけのようだが,その道具も仕掛けもほとんどが,結局「分ける」ために使われている。そしてそれは「分かる」ためなのだ。