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2012年08月08日 | 読書
 夏旅に文庫本三冊をバッグに入れたが,読了したのはこの一冊。

 『かばん屋の相続』(池井戸潤 文春文庫)

 名前は知っていたが初めて読む作家である。元銀行員というキャリアを生かした短編集らしい。
 それぞれが小気味よく展開して読ませる作品だった。
 金融に関する専門的な用語もあるにはあったが,なんとなくわかる程度に説明がつけられていた。
 ただ,頻繁に出てきて少し気にかかったのが「稟議書」という言葉。

 「リンギショ」と読むのかな,融資に関わる提案書のようなものだろうと思いながら読み進めた。
 それで何も支障はなかったし,後で辞書を引いてみて「稟議」自体が「文書で承認・決裁を求める」ということを確かめた。

 それにしても繰り返し出てくるこの用語は,いわば融資係を務める職員にとっては一つの大きな象徴なのだろうなと感じた。

 「熱のこもった稟議書」という表現も出てきている。
 いわば企業の将来を見定めた自分の判断が問われることだ。その意味では支援,応援という気持ちも込められるのかもしれない。
 もちろん現実には甘い人情論は通用しないだろうが,そんなロマンを包括する要素があるからこそ,小説が生まれるのではないか,という考えも浮かぶ。

 教育現場には「稟議」という形式はほとんどないだろうが,それはそれとしても見たいのは「熱」なんだよな,と暑い夏に考えた。
 

 夏旅スナップとして,三つほどアップした。

 題名をつければ「山」「道」「海」である。
 http://spring21.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-6e89.html