すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

便利,幸せ,共通善

2012年08月03日 | 読書
 夏休みに入り,勤務は定時が基本としているので,やはり時間的な余裕が生まれている。棚に押し込められたままの雑誌などをぺらぺらとめくってみるのも,こういう時だ。
 全然読んでいなかったページなどが多く,それなりに楽しめるものだ。

 雑誌『考える人』(新潮社)の昨年秋号を見ていたら,こんな連載があり思わず読み込んでしまった。

 「便利」は人間を不幸にするのですか?

 珍しい問いとは言えないが,昨年のことを考えれば,やはりこの問いは今私たちが考えるべきとても重要な柱に違いない。

 著者は佐倉統氏(東大教授)。内容は,電力とエネルギー政策。当然原発問題が中心である。
 私程度の者でも理解できる言葉と論理で,実に明快だと感じた。
 これを読んでいて,教育現場にも当てはまる考えが多くにあり,様々な事案が頭を廻った。触発された文章を引用する。

 確率的な全体の話と個別のケースの話にギャップがある。

 (北村正晴氏・東北大教授の引用として)
 「安全最優先」というのは,ある種の思考停止言語です。


 例えばこれらのことは,安全・安心が叫ばれている現場のなかで,常に意識したいことだし,教育課程そのものの組み立てにあたって,当然持ち合わせていなければいけない思考だと思った。

 そして,放射能の知識に関して,学校教育の重要性を訴える次の文章は,広い意味で,今いろいろな内容が託されている学校が,取捨選択の芯としてぜひ持ち合わせたい意識だ。

 「なんか,学校で昔やった」というかすかな記憶が,現象への距離感を縮め,いくばくかの身体感覚をもたらし,生活の一場面として対象と付き合えるきっかけになることはありえる。

 だから,「便利」であるべき物事に目を向けること,またあえて不便な手間のかかることも手放さないことが求められているのだと思う。
 それは,多様な価値観から「共通善」を探るための基盤となる。
 それを組織的にやれるのはやはり学校なんだなあ,そんな結論が見えてくる。